オンラインストアを運営するすべてのビジネスオーナーは、顧客の支払い方法を決定する必要があります。ドイツでよく使われる支払い方法は、請求書払いと口座引き落としの 2 つです。
この記事では、これらの決済手段の違いを、それぞれの長所と短所を含めて説明します。また、ドイツの顧客が好む支払い方法と、その支払い方法が小売業者にとって何を意味するかについても説明します。
この記事の内容
- 請求書払いと口座引き落としの違い
- 請求書払いの長所と短所
- 口座引き落としの長所と短所
- ドイツの顧客に好まれる決済手段
- 請求書払いと口座引き落とし:小売業者はどちらを提供すべきか
請求書払いと口座引き落としの違い
請求書払い と口座引き落としは、基本的に決済の処理方法が異なる支払い方法です。
請求書払いの場合、顧客は商品を注文して配達してもらい、受けとった後で支払うだけです。ドイツでは、一般に支払い期限は 14 日以内または 30 日以内です。顧客は事後に支払いを行うため、請求書払いは「ダウンストリーム」型の決済手段と呼ばれます。請求書には、納品された商品またはサービスと支払い金額が明記されています。この正式な支払い請求は、商品と一緒に配達される場合と電子的に送信される場合があります。顧客は期限までに支払うべき金額を事業者の口座に送金します。事業者にとって請求書は販売の証明であり、財務会計の必須部分です。
口座引き落としの場合、支払いは顧客側からの積極的な送金ではなく、顧客の銀行口座から直接引き落とされます。単一ユーロ決済圏 (SEPA) ダイレクトデビットでは、顧客の書面による同意が必要です。この口座引き落とし同意書 を入手することによって、事業者は指定の期日に顧客の銀行口座から未払い金額を引き落とすことができます。
請求書払いの長所と短所
長所
小売業者側:
カゴ落ちのリスクが低い:請求書払いの場合、顧客は機密性の高い支払い情報を提供する必要がないため、購入を見送るリスクは小さくなります。
売上が増える:顧客は商品を受け取ってから支払うだけなので、請求書払いは購入のハードルを下げます。コンバージョン率が高いほど事業者の収益は増えます。
顧客満足度:請求書払いは非常に安全で信頼できる決済手段と考えられています。ドイツの顧客にとって、この点は特に重要なファクターです。さらに、小売業者は支払いを受け取る前に商品を発送するのですから、顧客を信頼しているというシグナルを送っていることになります。したがって、請求書払いは顧客の満足度とロイヤリティにプラス効果をもたらす可能性があります。
競争上の優位性:すべての小売業者が請求書払いに対応しているわけではありません。競合他社は即時払いや前払いしか受け付けないことが多いので、この決済方法を顧客に提供する事業者は他社に差をつけることができます。
顧客側:
秘匿性の高い情報を開示する必要がない:請求書払いを使ってオンラインで商品を購入した場合、氏名や住所などの個人情報は提示しなければなりませんが、銀行口座に関する情報は開示する必要がないので、情報の誤用や不正利用のリスクを最小限に抑えることができます。
商品を確かめられる:顧客は支払いを行う前に、商品を検品したり、試着したり、テストしたりできます。商品に不満があれば簡単に返品できます。代金を支払う必要はありません。商品が破損している場合や不良品だった場合も同様です。
商品不着のリスクがない:注文した商品が届かない場合、顧客は返金を求める必要がありません。商品一式が間違いなく配達された場合だけ支払えばよいのです。
支払いに柔軟性がある:請求書払いでは、いつ支払うかを顧客が決定します。定められた期限までであれば、いつ送金するかを柔軟に選択することができます。
短所
小売業者側:
不払いや延滞のおそれがある:請求書払いの場合、小売業者は代金を前払いしていることになります。顧客による不払いや遅延のリスクを負うのは小売業者です。未払い金残高が大きい場合、事業の流動性に問題が生じるおそれがあります。
事務負担が大きくなる:請求書払いでは、小売業者の事務コストが増大します。未払いの請求書、督促状、支払い催促メッセージの処理のために余分な時間と費用を費やさなければなりません。
返品率が上昇する:請求書払いは顧客にとって非常に便利な決済方法であるため、、返品の増加を招くおそれがあります。オンライン購入の場合、平均するとドイツの消費者の返品率は 11% です。たとえば、商品を選択するためにいくつかの商品を注文しておいて、不要な商品を返品する顧客もいるため、小売業者の物流業務が増えます。
不正行為のリスクがある:直ちに決済を確認しないと、顧客が虚偽の情報を提供したり、意図的に支払いを怠ったりするリスクがあります。架空の身元や誤った住所情報を使って行われた注文は特に問題です。小売業者にとって、これは売上損失の可能性を意味するだけでなく、配達できない商品を輸送するために余分な費用がかかるということでもあります。
顧客側:
信用調査:多くの小売業者は、請求書払いの前に顧客の信用力を確認します。信用情報が芳しくない場合、その決済手段の使用が許可されない可能性があります。
督促手数料:支払いを忘れたり、支払いが遅れたりした場合には、督促手数料、遅延利息、さらには債権回収費用まで請求される可能性があります。
Schufa のスコアに加味される可能性:請求書が長期間支払われないままの場合、小売業者は債権取立会社に問題を委ねるか、あるいは信用情報機関 Schufa へのマイナス点付与を開始することができます。これは、顧客の信用力に悪影響を与える可能性があります。
過剰債務のリスク:同時にいくつもの商品を購入した顧客は、いくら使ったかがすぐにわからなくなります。その場で支払わなくてよいので、実際の経済的負担を過小評価してしまうおそれがあります。
口座引き落としの長所と短所
長所
小売業者側:
事務作業の労力が少ない:口座引き落とし手続きは自動化されています。小売業者は、請求書や催促のメッセージを送信する必要も、支払いの記録を頻繁に取る必要もないので、事務作業が労力が軽くなり、特にサブスクリプションや会費などの継続支払いに関してリソースを節減することができます。
支払いの受け取りが予測できる:口座引き落としでは、所定の日に代金を回収できます。つまり、小売業者は通常、遅滞なく代金を受け取れるということです。これは、資金計画を円滑化し、事業の流動性を高めます。
債務不履行のリスクが低い:口座引き落としでは、小売業者が顧客の口座から直接代金を回収するので、支払い不履行のリスクは小さくなります。ケースバイケースで、チャージバックが起こりえます (たとえば、口座が対象外であったり、口座引き落としが取り消された場合など)。しかし、小売業者には再請求という選択肢が与えられています。
セキュリティ:口座引き落としは、それぞれの支払いが一意の同意書参照番号に紐づけされているという点で、小売業者にとって安全な支払い方法です。つまり、不正利用のリスクは請求書払いの場合よりかなり低くなります。さらに、キャンセルとチャージバックの期間について明確なガイドラインが定められているので、小売業者と顧客の双方が法的に保護されます。
顧客側:
手間がかからない:顧客は支払いに関して積極的に行動を起こす必要がないため、口座引き落とし手続きは非常に便利であり、時間の節約になります。
支払い期限を心配しなくてよい:請求書払いでは、支払い期限に注意を払い、延滞手数料や Schufa 信用レポートへのマイナスエントリーを防がなければなりません。口座引き落としでは、合意した日付に支払いが自動的に引き落とされるため、この問題が解消されます。
セキュリティ:口座引き落としは、それぞれの支払いが一意の同意書参照番号に紐づけされているという点で、小売業者にとって安全な支払い方法です。透明で追跡可能な取引文書が残されるので、未承認の引き落としや不正行為のリスクが軽減されます。
異議を申し立てられる:口座引き落としの場合、顧客は支払いに異議を申し立てることができます。理由を述べる必要はありません。クレジットカード決済とは違い、SEPA ダイレクトデビットへの異議申し立ては最終決定です。小売業者は異議を唱えることができず、顧客との間で紛争を解決しなければなりません。
短所
小売業者側:
顧客の同意が必須:口座振替を処理する場合は、小売業者は SEPA ダイレクトデビット同意書の形で顧客の明示的な同意を得なければなりません。そのためには、同意書をきちんと文書化して保存する必要があるため、追加的な事務処理が必要となります。
チャージバック:小売業者はチャージバックのリスクを負います。顧客の口座残高が不足している場合、またはその他の理由で支払いが拒絶された場合、小売業者は取引を再度要求しなければなりません。その結果、事務作業が増え、チャージバック手数料が発生する可能性があります。
口座引き落としの返金に対する異議申し立ての禁止:顧客が取り消した口座引き落としに対して異議を申し立てることはできません。小売業者は、支払いを再度要求するか、顧客と話し合って解決しなければなりません。
銀行による処理への依存:休日や執行金融機関の技術的問題により、代金回収が遅れる場合があります。小売業者はこれらの外的要因に影響力をほとんど行使できず、銀行による処理が正しくタイムリーに実行されるものと信じるしかありません。
顧客側:
秘匿性の高い情報の開示:口座引き落としを利用する場合、顧客は注文の過程で自分の銀行口座情報を提出しなければなりません。これらの詳細情報は不正に利用されるおそれがあります。また、顧客が誤って詐欺的なオンラインショップやフィッシングサイトに個人情報を送信してしまう危険性もあります。
支払い期限が自由にならない:請求書払いの場合は、設定された期間中であれば顧客が支払いの時期を選択できますが、口座引き落としを使用する場合は自由度が下がります。通常、支払いを遅らせることはできません。
返金が遅い:商品を返品した場合やキャンセルした場合には、すでに徴収済みの代金を返金してもらわなければなりません。この場合、顧客は返金を待たなければならないことがあります。
予期せぬ引き落とし:小売業者が誤って (または意図的に) 顧客と合意していない引き落としを実行することがあります。これに気づかないと、不必要な経済的負担を負わされる可能性があります。
請求書払い |
口座振替 |
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小売業者にとってのメリット |
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顧客にとってのメリット |
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小売業者にとってのデメリット |
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顧客にとってのデメリット |
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ドイツの顧客に好まれる決済手段
顧客にとって、請求書払いと口座引き落としには、どちらも長所と短所があります。ですから、EHI の「オンライン決済 2024」調査の結果は的を射ていると言えます。つまり、ドイツではどちらの決済手段も人気があります。2023 年の E コマース売上に占める割合は、請求書払いが 26.7%、口座引き落としが 16.7% でした。レポートのランキングでは、それぞれ 2 位と 3 位で、PayPal (27.7%) にわずかに及びませんでした。また、数字が示すように、ドイツの顧客は請求書払いのほうを若干好むようです。
請求書払いと口座引き落とし:小売業者はどちらを提供すべきか
ドイツのオンライン小売業者は、顧客に提供する決済手段を慎重に検討すべきです。現時点で選択肢はいくつもあり、請求書払いと口座引き落としはそのうちの 2 つにすぎません。できるだけ多くの顧客の決済ニーズに対応したい事業者は、さまざまな選択肢を提供すべきです。
「2024 年版オンライン決済」調査の結果には、ドイツのショッパーが好む決済手段だけでなく、クレジットカード、請求書、口座引き落としの普及状況に関する情報も掲載されています。請求書払いと口座引き落としの市場カバレッジと人気は相互に依存しています。多くのオンラインショップでこれらの方法による決済が可能であれば、顧客は他のショップでも同様のことを期待するでしょう。したがって、現在請求書払いや口座引き落としを提供していない小売業者は、それらに対応することをお勧めします。
Stripe がサポートいたします
Stripe に代表される決済サービスプロバイダーは、たとえば Stripe Payments ソリューションなどを活用してお客様をサポートします。Payments をお使いいただけば、世界中で支払いを受け付け、請求書支払いや口座引き落としなど、現地で好まれる決済手段を顧客に提供することができます。請求書払いを受け付ける場合は、決済が承認された直後に Stripe からサービス手数料を差し引いた購入代金が届きます。Stripe はそのあとで、貴社のブランド入り請求書を顧客に送信します。お客様は顧客からの支払いを待つ必要がありません。Stripe が顧客に代わって前払い致しますので、お客様は代金支払いを保証され、安心してプランニングを進めることができます。さらに、事前のリスク評価で不払いの恐れがないことがわかった場合に限り、請求書払いの選択肢が顧客に提供されます。
これらの決済方法を検討するにあたり、小売業者は、主に事業戦略、ターゲット層、望ましいセキュリティレベルに基づいてその決済手段の可否を判断すべきです。
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