アメリカで有限責任会社 (LLC) を設立しよう、という理由は多く考えらます。アメリカ市場へと参入しやすくなり、事業に対する信頼性が得られます。また、賠償責任保護や柔軟な税制など LLC のメリットを享受することができます。この選択肢は、アメリカ市民や居住者に限定されたものではありません。非居住者もアメリカの LLC を設立できます。事業を設立するプロセスは非常に簡単ですが、非居住者はアメリカで会社を登録する前に、登録代理人、雇用者識別番号 (EIN)、特定の納税義務などの要件について、学んでおく必要があります。
このガイドでは、設立先の州の選択から税金の申告まで、非居住者が LLC を設立するのに従うべき各ステップを説明します。
この記事の内容
- 非居住者はアメリカで合法的に LLC を設立できるか
- 非居住者の LLC 設立に最適な州の選び方
- 非居住者がアメリカで LLC を設立するためのステップバイステップガイド
- 非居住 LLC 所有者の納税義務
非居住者はアメリカで合法的に LLC を設立できるか
はい、非居住者は合法的にアメリカで LLC を設立できます。プロセスは簡単で、通常、アメリカ居住者の場合と同じです。
非居住者の LLC 設立に最適な州の選び方
非居住者として LLC を設立する場合に、どの州が最適であるかはビジネスニーズと予算によりますので、それらを考慮して選択してください。州ごとに、かかる料金、法律、納税義務が異なります。非居住者の LLC に人気がある州は、以下のとおりです。
ワイオミング州: 手数料が安く、州所得税がなく、プライバシーが保護されます
デラウェア州: 法的なメリットに富み起業を優遇する会社法であるため、投資家を呼び込みたいと思っている企業に適しています
ネバダ州: 所得税がなく、プライバシーが保護され、事業者に有利な法律があります
ニューメキシコ州: 手数料が安く、プライバシーが保護されます
LLC が主にオンラインで運営されている、または特定の州に運営拠点がない場合は、ワイオミング州やニューメキシコ州を選ぶのが良いと思われます。税制上の優遇措置、プライバシー保護、継続的な料金の低さから、多くの場合恩恵を得られます。投資家にとって有利な法律や法的保護が必要な場合は、デラウェア州の方が適しているかもしれません。
ここでは、登録先の州を決める際に考慮すべき要素をいくつか紹介します。
州の申請手数料と継続費用
一部の州では、最初の申請手数料と継続的な手数料 (年間フランチャイズ税など) が低く設定されています。たとえば、ワイオミング州とニューメキシコ州は、他の州と比較して手数料と年間コストが概して低いです。カリフォルニア州とニューヨーク州は手数料と税金が高くなる傾向があり、これらの州で事業を行う予定がない限り、あまり有力な候補ではありません。
税制上の優遇措置
一部の州には所得税やフランチャイズ税がないため、長期的に資金を節約できます。税制優遇の州の例としては、ワイオミング州とネバダ州の 2 つが挙げられます。個人所得税がないため、税負担を最小限に抑えたい非居住者に向いています。
プライバシー
ニューメキシコ州やワイオミング州などの一部の州では、LLC 所有者のプライバシーがより保護されており、メンバーの氏名を公的記録に開示する義務がありません。
法的保護
LLC の法的保護は州によって異なります。デラウェア州には、広範なビジネス法体系と、ビジネス紛争を効率的に処理する専門の衡平法裁判所があるため、法的枠組みが十分に発達しています。さらには賠償責任保護が強力であるため、企業によく選ばれています。
営業拠点
LLC が特定の州に物理的な拠点、従業員、または顧客を持つ場合は、多くの場合、その州で登録するのがベストです。LLC の登録州以外で事業を行うには、「州外資格」が必要になる場合があり、追加の料金と事務処理が発生します。アメリカに固定拠点を持たないオンライン事業やコンサルティング事業の場合、柔軟性があるワイオミング州やネバダ州を選べば、州固有の義務要件を最小限に抑えられることが多いです。
非居住者がアメリカで LLC を設立するためのステップバイステップガイド
ここで、アメリカで LLC を設立したい非居住者向けのステップバイステップガイドをご紹介します。
州を選択する
LLC の設立先の州を選択します。ワイオミング州、デラウェア州、ネバダ州は、税制優遇措置があり、プライバシーを保護でき、継続要件が最小限で済むため人気があります。特定の州に物理的な拠点があるビジネスの場合は、そこで LLC を設立するのがベストです。「州外資格」要件というさらなる手続きを避けられるからです。
ビジネス名を選択する
LLC の名前は、LLC を設立する州で一意である必要があります。対象州の州務長官室のウェブサイトで、名前の空き状況を確認してください。ほとんどの州が、LLC の名前に「LLC」または「Limited Liability Company (有限責任会社)」を含めるよう義務付けています。
登録代理人を雇う
LLC は、設立時に (私書箱ではない) 物理的な住所をもつ登録代理人を指名する必要があります。代理人は、LLC に代わり法的文書や税務上の文書を受け取るため、通常の営業時間内に対応できることが必須です。事業所有者は、個人を雇うか、登録代理人サービスを利用することができます。
組織定款を申請する
定款 (設立証明書と呼ばれることもあります) を州務長官室に申請します。この文書には、LLC の名前と住所、登録代理人の名前と住所、LLC の目的など、LLC に関する基本的な情報を記載します。目的は「合法的な事業活動に従事する」という広い範囲にすることができます。通常 50 ドルから 500 ドルの申請料が州から請求されます。オンラインか郵送で申請しますが、場合によっては対面で提出することもできます。
運営協定を作成する
運営協定は、LLC がどのように運営されるかを概説する文書です。持分比率、メンバーの役割、および利益配分を定義します。運営協定はすべての州で義務付けられているわけではありませんが、争議を解決し、各メンバーの権利と責任を定義するのに役立つため、強く推奨されます。
EIN を申請する
EIN は、アメリカ内国歳入庁 (IRS) が発行する番号で、会社の社会保障番号のように機能します。この番号は、アメリカで銀行口座を開設し、従業員を雇用するために必要です。非居住者は、フォーム SS-4 に記入し、ファックス、郵便、または電話で申請することにより、EIN を取得できます。
アメリカのビジネス用銀行口座を開設する
LLC 向けにアメリカの銀行口座を開設すると、会社と個人の財務を分離し、有限責任の立場を保護することができます。一部の銀行では、ビジネス口座を開設するために直接訪問する必要がありますが、海外のクライアントは通常、何らかの形でこれを回避できるでしょう。たとえば、非居住者にサービスを提供しているオンライン銀行と取引をする、などです。
法令遵守を維持する
事業を始めたら、税金を支払い、規制に従う必要があります。法令順守には、州税および連邦税の支払い、納税申告書の提出、年次報告書の提出、法律で義務付けられている追加の申告手数料の支払いが含まれます。事業所有者はまた、LLC の財務取引、メンバーの貢献、会議の議事録 (該当する場合)、運営協定、定款、年次報告書などの重要な文書の記録を、保管しなければなりません。
非居住者のアメリカ税法に精通した会計士または法律専門家を雇うと、法令順守がスムーズにになると思われます。
非居住 LLC 所有者の納税義務
非居住 LLC 所有者は、アメリカで得た所得に関連する特定の納税義務があります。詳しく見てみましょう。
連邦所得税
LLC 経由でアメリカ源泉所得を得ている非居住者は、その所得に対してのみ課税されます。IRS が課税するのは、アメリカを拠点とする利益であり、非居住者のグローバルな利益ではありません。LLC は「パススルー」事業体であるため、収入は所有者に直接流れ、所有者はそれを個々の納税申告書で報告します。LLC から収入を受け取っていて、アメリカの納税申告書を提出する必要があるが社会保障番号を持っていない場合は、個人納税者番号 (ITIN) が必要になります。
州税と地方税
州が異なれば、事業税と税率も異なります。たとえば、ワイオミング州とネバダ州には所得税がありませんが、カリフォルニア州は州内で事業を行うすべての LLC に年間 800 ドルの税金を課します。アメリカで商品を販売している場合、「売上税ネクサス」 (通常は州内の実店舗、または一定の販売量ですが、この定義は州によって異なります) がある州で売上税を徴収して納付する義務があるかもしれません。遠隔で運営している LLC であっても、事業を行う州の税法を注意深く再確認し、納税義務をすべて果たしているか徹底させることが必要です。LLC が雇用税、売上税、またはその他の特定の税金を扱う場合は、州の歳入局または関連機関に登録してください。
納税申告書
非居住の所有者は、アメリカを拠点とする所得に対する税金を申告して支払うために、フォーム1040-NR を提出する必要があります。メンバーが複数いる LLC の一員である場合、LLC は フォーム 1065 も提出する必要があります。LLC 自体は税金を払いませんが、このフォームでメンバーに割り当てられた収入、費用、および収入を開示します。
非居住 LLC の所有者は、LLC の 25% 以上が外国人による所有である場合、または外国の当事者と取引する場合、フォーム 5472 およびフォーム 1120 も提出する必要があります。これらのフォームで、外国人所有権の詳細と関連する取引を開示します。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。