顧客が支払いを行うと、その金額が顧客の口座から事業者の口座に瞬時に移動すると考えがちです。しかし実際には、カード発行会社による承認を経てから売上を受け取るまでには一定の時間があります。この間に支払いのキャプチャーが行われますが、その処理方法が、キャッシュフロー、顧客体験、不正利用の被害に遭う危険に影響することもあります。ここでは、支払いのキャプチャーをどのように理解するか、また、社内でどのように戦略的に使用すべきかについて説明します。
この記事の内容
- 支払いのキャプチャーの概要
- 事業者にとって支払いキャプチャーのタイミングが重要な理由
- 支払いのキャプチャーとオーソリとの違い
- 即時キャプチャーと比較して遅延型キャプチャーのメリットが最も得られる業種
- キャプチャーや部分キャプチャーの失敗に付随するリスク
支払いのキャプチャーの概要
支払いのキャプチャーとは、アクワイアラーが顧客の口座から事業者のアカウント (口座) に売上を移動するプロセスを開始する時点です。キャプチャーが行われるのは、顧客の銀行が支払いを承認するオーソリ後、売上が事業者の銀行口座に入金される売上処理の前の時点です。
支払いに「オーソリ済み、未キャプチャー」と表示されている場合、その売上は予約されているものの、回収前であることになります。キャプチャーされた売上は、事業者のアカウント (口座) に送金されます。
通常はオーソリされたとおりの金額をキャプチャーしますが、場合によっては (チップや調整により最終金額が変更された場合など)、キャプチャー金額がわずかに変更されることがあります。多くのシステムでは、キャプチャーはオーソリ後に自動的に行われますが、事業者はこの 2 つのステップを分離して、キャプチャーを後で実行することもできます。
事業者にとって支払いキャプチャーのタイミングが重要な理由
支払いのキャプチャーのタイミングによって、事業者における売上の流れが変わります。キャプチャーのタイミングは、キャッシュフロー、変更やキャンセルの管理のしやすさ、不正利用の抑制方法、さらには取引に対する顧客の認識に影響します。詳しく見てみましょう。
キャッシュフロー
オーソリ直後に支払いをキャプチャーすると、支払いの受領プロセスが開始されます。これは、在庫の注文、サプライヤーへの支払い、給与への充当、成長への再投資のために現金を速やかに利用する必要がある企業には重要なことです。
カードの売上処理は通常 1 〜 3 営業日かかるため、即時には行われませんが、すぐにキャプチャーすることで売上を移動させることができます。キャプチャーが遅れると、キャッシュサイクルが遅くなります。実質的には、顧客への無利子の短期信用供与を延長したり、回収準備が整ったときに顧客に資金があるという実際の保証を得られなかったりします。
柔軟性
キャプチャーを遅らせることで、柔軟性が高まります。取引後まもなく何か変更が生じた場合 (たとえば、顧客によるキャンセル、在庫切れ、エラーの検出など)、完了した支払いを返金するのではなく、オーソリを無効にすることができます。
これが重要な理由は次のとおりです。
資金を移動せずにオーソリを無効にできるため、返金の処理や関連手数料の支払いが不要になります。
顧客のカードに対する予約は、顧客がサポートチケットを提出しなくても自動的に解除されます。
実際には発生していない取引の会計上の仕訳入力を何度も繰り返す必要がなくなります。
このように影響を調整できるため、業務が簡素化され、決済対応の負荷が最小限に抑えられ、顧客体験が向上します。
リスク管理
キャプチャーの遅延は、リスク管理ツールとしても機能します。取引における不正利用が疑われる場合は、オーソリからキャプチャーまでの間の時間を利用して、不正利用チェックの実行、本人確認、異常な注文へのフラグの設定を行うことができます。
警告すべき兆候が示された場合は、オーソリをキャンセルすることで、後でチャージバックに異議を申し立てたり、損失を吸収したりする必要がなくなります。このアプローチにより、高リスクの取引を回避し、不審請求の申し立てを未然に防ぎ、チャージバック手数料を軽減することができます。
即時キャプチャーでは、多くの場合、問題を発見する機会を得る前に売上が移動することになりますが、キャプチャーを遅らせた場合は余裕が得られます。
顧客体験
一部の業種では、顧客が商品の発送時またはサービスの提供時まで請求が行われないものと考えています。支払いのキャプチャーが早すぎると、次のように疑問を持たれる可能性があります。
「発送前の商品について請求されたのはなぜですか?」
「私のお金をずーっと確保しておくつもりですか?」
「貴社の事業は合法ですか?」
ホテルでのチェックアウト時、カスタム品の配達時、入荷待ちの商品の出荷時など、キャプチャーを取引が完了したタイミングまで待つことで、顧客は安心感を得ることができます。一方で、デジタル商品やサブスクリプションのように、即時キャプチャーが有効な場合もあります。重要なことは、キャプチャーのタイミングと価値が提供されるタイミングを一致させることです。
支払いのキャプチャーとオーソリとの違い
オーソリとキャプチャーは同じ決済フロー内の 2 つのステップですが、その目的は異なります。違いを理解しておくことは、リスク、キャッシュフロー、顧客体験を管理するうえで重要です。
オーソリ
顧客が購入を行うと、決済システムから銀行に支払いの実行が可能かどうかを問い合わせます。銀行が承認すると、オーソリになります。売上に対応する資金はまだ移動前ですが、取り置かれているため、顧客が他の場所で使うことはできません。
ほとんどのカードネットワークとカード発行会社のオーソリの有効期間は約 7 日間です。期限前に売上がキャプチャーされない場合、オーソリはリリースされ、支払いは消滅します。
「支払いオーソリ済み、未キャプチャー」などのステータスは、支払いの承認が得られ、完了が可能であるものの、売上がまだ保留中であることを意味します。支払いは受領済みにはなっていません。
キャプチャー
支払いのキャプチャーは、顧客の口座から事業者の口座 (アカウント) への送金プロセスを開始するステップです。この時点で売上が現実のものとなります。
支払いのキャプチャー後は以下のようになります。
銀行から事業者に送金される
顧客のカードに正式に請求される
取引が利用システムと顧客の明細書に完了として表示される
即時キャプチャーと比較して遅延型キャプチャーのメリットが最も得られる業種
キャプチャーに適したタイミングは、事業者が価値を提供する方法によって異なります。商品やサービスが即座に提供される場合は、即時のキャプチャーが理にかなっています。しかし、購入からフルフィルメントまでの間に時間差がある場合や、最終金額が事前にわからない場合は、キャプチャーを遅らせることで管理しやすくなります。
キャプチャーの遅延が適している場合
最終金額が変更される可能性がある場合や、フルフィルメントが後から行われる場合は、遅延キャプチャーが適しています。
遅延キャプチャーが利用される業種では、通常、柔軟性が求められます。次に例をいくつか紹介します。
ホテル: ホテルはチェックイン時にカードをオーソリしますが (多くの場合、追加料金のために余裕を設けます)、請求書の全額が確定すると、チェックアウト時に支払いをキャプチャーします。
レンタカー: レンタカー会社は、車の受け取り時にカードの事前オーソリを行い、レンタカーを返却した後に、燃料費、時間、損傷額を調整して支払いをキャプチャーします。
ガソリンスタンド: 給油時支払いシステムでは、給油開始前に事前設定された金額のオーソリを行い、取引の完了時に実際の給油量に相当する金額をキャプチャーします。
飲食業: レストランは、チップを加算する前に食事代の合計額をカードでオーソリし、後で最終的な金額をキャプチャーします。
__ E コマースの事前注文またはバックオーダー:__ 商品の発送準備ができていない場合、事業者の多くは購入時にカードをオーソリしますが、フルフィルメントまでキャプチャーを遅らせます。こうすることで、購入物の提供前に顧客に請求しないようにします。
カスタムの商品やサービス: 一般には、価格設定がさまざまに異なる受注注文の商品やサービスは事前にオーソリを行い、後から注文の確定時や引き渡し時にキャプチャーします。
このような場合、キャプチャーを遅延させることで、実際の引き渡しのタイミングに合わせて請求を調整します。これにより、事業者は変更を加える余地が生まれ、返金や追加手数料の必要性を減らすことができます。
即時キャプチャーが適している場合
即時キャプチャーは、取引が単純で完結できる場合に最適です。通常、注文のフルフィルメントを即座に行う事業者や、明確に定額の料金を設定している事業者の場合は、即時のキャプチャーが効率的です。これは、次に該当する場合のデフォルトになります。
小売 E コマース: 商品の在庫があり、すぐに発送できる場合は、通常、遅延させる理由はありません。
デジタル商品・サービス: ソフトウェアや即座に提供できるものについては、即座のキャプチャーによって売上が確定され、照合を簡素化できます。
ロータッチ購入: 少額のオンライン取引は、通常、支払いを即座にキャプチャーします。
サブスクリプション請求: 継続請求は、通常、新しい請求サイクルが開始した瞬間にキャプチャーされます。顧客はサービスへのアクセスを続けられ、企業は遅滞なく支払いを受けられます。
キャプチャーや部分キャプチャーの失敗に付随するリスク
キャプチャーを遅らせると、柔軟性は得られますが、リスクも発生します。タイミングやワークフローへの注意を怠ると、売上を失ったり、キャプチャー期間を逃したり、顧客を苛立たせたりすることがあります。ここでは、注意すべき点をご紹介します。
オーソリの期限切れ
カードネットワークやカード発行会社によって異なりますが、通常、オーソリの有効期限は 1 週間以内です。この期限までに支払いをキャプチャーしないと、取引を完了できなくなります。
期限が切れてしまうと、支払いの再オーソリが必要になり、それには顧客が実施するアクションが必要になる場合があるため、新しい支払いが完了するまでフルフィルメントを遅らせなければならなくなります。最悪のシナリオでは、商品やサービスがすでに提供されているときに、損失を吸収しなければならなくなります。
取引量が多い、またはフルフィルメントサイクルが長い企業の場合、この種の見落としが大きな負担になる可能性があります。オーソリの有効期限が切れる前に、保留中のキャプチャーにフラグを設定できるシステムが必要です。
未完了の部分キャプチャー
部分キャプチャーを送信すると、残りの売上はリリースされます。通常、さかのぼって同じオーソリからさらにキャプチャーしたり、新しい取引を再オーソリせずに、後で支払いを「トップアップ」したりすることはできません。元のオーソリで合計額が低く見積もられていた場合 (または決済後に何か変更があった場合)、差額分を負担するか、2 回目の支払いをリクエストすることになりますが、どちらも望ましいとは言えません。
システムによっては、1 つのオーソリからの複数の部分キャプチャーに対応していますが、それにはそのための設定が必要になります。この構成がないと、部分キャプチャーは 1 回限り使用可能な機能のように動作します。
キャプチャーの失敗
オーソリが有効であっても、決済代行業者の技術的な問題、取引情報の不備、あるいはオーソリ後の盗難カードの指定やカードの解約によって、キャプチャー自体が失敗することがあります。
その場合、売上は送金されず、顧客を追跡して新しい決済手段の指定を依頼するしかありません。これにより、遅延、管理オーバーヘッドが発生し、解約を招くこともあります。
管理上のエラー
手動のキャプチャーフローでは、さらなる責務が生じます。チームメンバーが支払いのキャプチャーを忘れたり、キャプチャーした金額に誤りがあったりした場合、その支払いは失敗するか、または請求発生の元になった提供内容が完全には反映されません。
これにより、未回収の売上、消し込みに関する問題が発生し、顧客が請求に不一致があると気付いたときはサポートチケットが発生しかねません。
これを回避するために、事業者の多くはダッシュボードやレポートを使用して、「オーソリ済み、未キャプチャー」の支払いを追跡します。プラットフォームの中には、アラートや自動キャプチャーのオプションを提供しているところもあり、扱う取引が大量にある場合や、小人数のチームで対応している場合に役立ちます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。