今日、わたしたちが日常的に利用するスマートフォンは、電話通話や SMS 以外にも、動画視聴やショッピング、ネット検索、支払いなどさまざまな用途で利用されており、デジタル社会を生きるわたしたちの日常生活においてなくてはならない存在となっています。
特に近年では、日本をはじめ世界各国でキャッシュレス決済が普及し、人々はより簡単にスマートフォンなどのモバイル端末から買い物を楽しむことができるようになるなど、ショッピングシーンの簡便化、多様化が進んでいます。たとえば、EC モールのようなショッピングサイトにおいても、消費者によるモバイル端末利用を後押しするためのアプリ開発は今や当たり前で、アプリ経由のオンラインショッピングはより一層活発化しています。
このようなモバイル端末を用いて行われる取引のことを「モバイルコマース」と呼びます。また、モバイルコマースに該当する取引には、ショッピングのほかにもさまざまな種類があります。本記事では、モバイルコマースの基礎知識について、日本の市場規模、種類、メリットや注意点を踏まえて解説します。
目次
- モバイルコマース (M コマース) とは
- 日本のモバイルコマースの市場規模
- モバイルコマースの種類
- モバイルコマースのメリット
- モバイルコマースの注意点
- Stripe Payments でできること
モバイルコマース (M コマース) とは
冒頭でも解説したように、モバイルコマース (M コマース) とは、スマートフォンやタブレットのようなモバイル端末を用いて行われる商取引を意味します。たとえば、アプリやモバイルサイトから商品やサービスを購入する際、事業者側が提供するオンライン決済を利用してモバイル端末上で支払いを完了するのも、モバイルコマースの 1 つです。最近ではこれらの決済手段についてもクレジットカード決済だけでなく、QRコード決済や ID 決済、キャリア決済などのスマホ決済が提供されるようになり、わたしたちの購買行動を取り巻く環境は、より一層効率化しています。
なお、後ほど「モバイルコマースの種類」にて詳しく解説しますが、モバイルコマースについてはオンラインショッピングだけにとどまらず、以下のような取引もモバイルコマースに該当します。
- デジタルコンテンツのサブスクリプション・都度購入
- 現在地情報をベースにしたロケーション機能の活用 (ユーザーの現在地情報に基づき、その地域に特化した情報を活用して商品・サービスを購入する仕組み)
- モバイルバンキング
- モバイル端末による送金
- モバイル決済 (モバイルペイメント)
EC とモバイルコマースの違い
EC とモバイルコマースの違いについては、混乱してしまうことがあるかもしれません。EC は日本語では「電子商取引」といい、インターネット上で行われる商取引すべてをカバーする言葉です。一方、モバイルコマースはモバイル端末に特化した EC で、アプリやモバイルサイトを用いて行われる商取引を意味します。そのため、スマートフォンを利用する場合はモバイルコマースに該当しますが、パソコンによる EC サイト経由の商取引はモバイルコマースに含まれません。このように、モバイルコマースは EC の一部として位置付けられ、EC はより幅広い定義であるということを覚えておきましょう。
モバイルコマースの市場規模
日本のモバイルコマース市場は年々拡大しています。一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム (MCF) が実施した市場規模調査によると、2023 年のモバイルコマース市場規模は 9 兆 5,866 円 を記録し、前年比では 112% となっています。
モバイルコマース市場の成長の背景としては、スマートフォンの急速な普及にともない、インターネットの接続環境が大幅に改善され、消費者の購買行動がより一層多様化したことが考えられます。また、コロナ禍によるオンラインショップの需要拡大に対応すべく、EC サイト各社において以下のようなさまざまな施策が講じられたことも、市場の成長に寄与しています。
- EC サイトのモバイル端末へのシステム対応
- 決済環境の最適化
- アプリの利便性向上
モバイルコマースの種類
モバイルコマースの種類は「モバイルショッピング」、「モバイルバンキング」、「モバイル決済 (モバイルペイメント)」と大きく 3 つに分けられます。1 つひとつみていきましょう。
モバイルショッピング
モバイルショッピングはその名の通り、モバイル端末で行うオンラインショッピングのことです。モバイルショッピングの最大のメリットは、時間や場所を選ばず買い物を楽しめるという利便性にあります。たとえば、気になる商品があるけれど、仕事で一日中忙しく実店舗に足を運ぶ余裕がない場合でも、オンラインショップから休憩時間などに商品を購入することができます。また、新幹線の指定席や、コンサートチケットを発売日時と同時に予約したいとき、モバイルショッピングであれば、実店舗に出向くことなくモバイルサイトやアプリから簡単に予約および購入が可能です。
モバイルバンキング
モバイルバンキングについてもモバイルショッピングと同様、インターネット上でいつでもどこでもスマートフォンを使って振込や残高照会などの取引ができます。そのため、紙ベースの通帳を持参して窓口や ATM に足を運ぶ必要もなく、スマートフォンのアプリからさまざまな銀行取引を行えるほか、問い合わせの際にはチャットボットやチャット専門オペレーターによるサービスを受けることができます。
モバイル決済 (モバイルペイメント)
モバイルコマースの中で最も重要といえるのが、3 つ目のモバイル決済(モバイルペイメント) です。特に多くの人がスマートフォンを所有する近年では、キャッシュレス決済の中でもモバイル決済は世界規模で注目されています。モバイル決済の場合、現金やクレジットカードがなくてもスマートフォンから決済を完了できるため、万が一外出時に財布を忘れたとしても、モバイル決済サービスを提供している店舗や自動販売機、交通機関などを利用することが可能です。
モバイルコマースのメリット
モバイルコマースにはユーザーにとって以下のようなメリットがあります。
優れた利便性を実感できる
ここまでの解説から既におわかりかもしれませんが、モバイルコマースのメリットは、何よりも利便性に優れているという点です。モバイル端末が手元にあれば、時間や場所に関係なく買い物をしたり、動画や音楽などのデジタルコンテンツを購入してすぐに視聴することができるなど、購入にまつわる煩わしさを感じることがないため、消費者の購入意欲が向上します。また、実店舗でもレジでの待ち時間の短縮にもつながるでしょう。
また、モバイル端末に対応済みの EC サイトやアプリの場合、スマートフォン向けにシステムが最適化されているため、スマートフォンからでもパソコンと同じレベルで快適にサービスを利用することができます。
快適でスピーディーな決済体験が可能
モバイル決済の普及によって、私たちの身の回りの決済環境はより快適になり、実店舗、EC サイトを問わず簡単かつスピーディーに支払いが行えるようになっています。
なお、最近では日本の消費者向けのモバイル決済手段だけではなく、海外の消費者を考慮した複数の決済手段を導入する事業者も増えつつあります。たとえば、中国でよく利用されている決済手段として知られる WeChat Pay のように、グローバルな決済手段を自社 EC サイトや実店舗で利用可能にし、海外の消費者を顧客として取り込むことができれば、越境 EC や訪日インバウンドビジネスにも効果的と考えられています。
パーソナライズの強化によって最適なサービスを受けられる
モバイル端末の位置情報や購買履歴データによって、よりパーソナライズされた商品やサービスがユーザーに提案されることがあります。こうした機能により、ユーザーは自身のニーズに見合った商品やサービスを簡単に見つけられるようになります。
また、品切れ中の商品をウィッシュリストに入れたり、再入荷通知を設定をしておけば、プッシュ通知や SMS によるお知らせをリアルタイムに受け取ることができる点も、モバイルコマースのメリットといえるでしょう。
たとえば、ユーザーの位置情報に基づいて、ユーザー本人が求めるものについてより見つけやすい環境を提供する「オムニチャネル」もその 1 つです。オムニチャネルなら、ユーザーがどの位置からモバイル端末を利用し、どのような商品を閲覧しているかによって、ユーザーの現在地から最も近い実店舗の在庫情報を提供することができます。
このようなネットショップと実店舗の連携によって、新たに生み出されるショッピング体験は、顧客満足度の向上につながるだけでなく、事業者側からすると EC と実店舗の双方における売上拡大も期待できます。
モバイルコマースの注意点
モバイルコマースには前述したようなメリットがある一方で、注意しなければならない点がいくつかあります。
画面サイズが小さいため表示に制限が生じる
モバイルコマースにおいては、スマートフォンを利用するケースがほとんどです。つまり、パソコンと比べると画面サイズがはるかに小さくなるため、スマートフォンで表示できる範囲は限られます。そのため、より細かな情報を調べたい際に何度も画面をクリックしたり、他のページに移動しなければならないため、場合によっては不便を感じるユーザーもいるかもしれません。
このような問題を解決するにあたっては、事業者側はモバイル端末向けに EC サイトやアプリを最適化させ「これからもアプリを愛用したい」と思ってもらえるような、シンプルで見やすいデザインや仕組みを構築することが大切です。
インターネットの接続環境によって不便が生じる
モバイルコマースはインターネットを通じて行われる取引となることから、インターネットの接続は必須です。そのため、場合によってインターネットの接続が不安定になり、買い物がスムーズにできないという問題が生じる可能性があります。
したがって、モバイルコマースを利用する間は、安定したモバイルネットワークが維持されていることが大前提といえます。
質の高い決済インフラがキーポイント
決済インフラが十分に整備されているかどうかは、モバイルコマースにおいて欠かせない重要ポイントです。特に、以下の 2 点については注意が必要です。
決済手段の選択肢
選べる決済手段が少ないと、ユーザーは普段よく使う方法で支払いができず、実店舗や EC サイトでの購入を断念する可能性があります。また、自社の店舗でモバイル決済などのキャッシュレス決済を提供していない場合、他の店舗に顧客が流れてしまうリスクも考えられるため、複数の決済手段の導入については、自社の消費者が求めるものを検討してみることをおすすめします。
ただし、やみくもに決済手段をいくつも導入してしまうと、消費者側はどの決済手段を使うべきか迷うこともあるため、自社の商品やサービスを購入する顧客のターゲット層を把握したうえで導入する決済手段を決めることが大切です。
決済の安全性
モバイル決済は利便性が高い一方、消費者によってはスマートフォンから決済を行うことにためらいを覚えることがあります。このような決済に関する安全面での懸念は、モバイル決済に限らず、その他のキャッシュレス決済にもいえることではありますが、事業者側は消費者の安全を最優先し、自社のセキュリティ対策を万全にしたうえで、安全性に優れた決済サービスを導入することがとても大切です。
また、消費者側も、パスワードのような決済に関する個人情報については決して他人と共有せず、常日頃からスマートフォンを含む貴重品の取り扱いには十分気をつけなければなりません。今日わたしたちが利用できるモバイル決済にはさまざまな種類があり、どの決済手段を選ぶべきか迷うことがあるかもしれませんが、まずは安全かつ実用的かを見定めてから、自身にとって最適なものを決済時に選ぶようにしましょう。
Stripe Payments でできること
Stripe Payments は統合型のグローバル決済ソリューションです。成長中のスタートアップから大企業まで、あらゆるビジネスがオンライン、対面、世界各地でスムーズに決済を導入できます。
Stripe Payments の特徴
- 決済体験の最適化: 構築済みの決済 UI、125 種類以上の決済手段、Stripe が構築したウォレット「Link」により、スムーズな顧客体験を実現するとともに、数千におよぶ開発時間を削減します。
- 新市場へのスピーディーな展開: 195 カ国、135 以上の通貨で利用可能な決済オプションにより、世界中の顧客にリーチし、多通貨管理の複雑さとコストを削減します。
- 対面とオンライン決済の統合: オンラインと対面を統合したコマース体験を構築。顧客とのやり取りをパーソナライズし、ロイヤルティを高め、収益拡大を促進します。
- 決済パフォーマンスの向上: ノーコードの不正利用対策や承認率改善のための高度な機能など、カスタマイズ可能で設定が簡単な決済ツールで収益を増加させます。
- 柔軟で信頼性の高いプラットフォームで事業成長: 業界最高レベルの信頼性を備えたプラットフォーム上でビジネスを構築し、拡大。稼働時間は 99.999% を誇ります。
Stripe Payments のオンラインおよび対面決済について、詳しくはこちらをご覧ください。今すぐ開始する場合はこちら。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。