先進技術を駆使するソフトウェアプラットフォームが成長するにつれて、顧客体験を可能な限り自社で管理することが、製品の永続的な定着とブランドロイヤルティを生み出す上で重要となっています。しかし多くのビジネスで、決済はサードパーティープロバイダーによって支えられていることがよくあります。
自社製品に組み込まれた埋め込み型の決済機能や金融サービスを自社で管理しカスタマイズすることで、ビジネスの差別化を推進し、成長のための手段にできるので、収益を促進し、決済機能が収益の中核となるよう変革し、顧客に提供する価値と機能を拡大する力が得られます。
現在、埋め込み型の決済技術を採用する企業の数が伸びています。2020 年の調査によれば、59% の事業者が埋め込み型の決済システムを利用していると回答しています。2022 年に Stripe が Edgar, Dunn & Company と協力して実施した調査では、中小事業者の 67% が少なくとも 1 つのクラウドベースのソフトウェアソリューションをサブスクリプションしていると回答し、そのうちの 73% が 1 つ以上のソフトウェアツールに決済機能を統合していると回答しています。また、ソフトウェアベンダーが提供する金融サービスを今後検討する可能性が高いと回答した割合は 65% に上っています。
この記事では、ペイメントファシリテーション (Payfac) およびサービスとしての Payfac とは何か、どのような仕組み・活動なのか、そして事業者にとってどのようなメリットがあるのかをご紹介します。
この記事の内容
- ペイメントファシリテーター (Payfac) とは
- Payfac アズ・ア・サービスとは
- Payfac の役割
- Payfac になるには
- Payfac アズ・ア・サービスを利用する場合と Payfac になる場合の比較
- Payfac アズ・ア・サービスを利用するメリット
- Payfac アズ・ア・サービスであるプロバイダーに求めるべきもの
- Stripe の Payfac ソリューション
ペイメントファシリテーター (Payfac) とは
ペイメントファシリテーター (Payfac) とは、サービスプロバイダーの一種であり、クレジットカードやデビットカード、ACH、eCheck など、さまざまな形態の電子決済を事業者が受け付けられるようにするサービスを提供します。ペイメントファシリテーションとは、すべての関係者にとって、取引や決済をより簡単、迅速、快適にするプロセスのことをいいます。これには、決済手段の設定や管理、決済処理、取引の消し込み、不正利用からの保護など、幅広い活動が含まれます。ペイメントファシリテーションの目的は、個人や事業者の決済プロセスを簡素化するとともに、決済の安全性、効率性、アクセス性を確保することにあります。
Payfac アズ・ア・サービスとは
Payfac アズ・ア・サービスとは、ターンキー型のペイメントファシリテーションモデルの 1 つです。このモデルにおいては、クレジットカードやデビットカード、ACH、eCheck などの電子決済を受け付けるために必要なツールとインフラを、外部企業が事業者に提供します。事業者が決済処理をアウトソーシングできるようにし、自前のインフラを構築して維持する必要をなくすことで、必要となるリソースの数は、従来型の Payfac の構築と管理に必要だった数と比べてほんのわずかで済みます。
Payfac が提供するもの
従来型の Payfac は、電子決済の受け付けと処理に必要なペイメントゲートウェイと加盟店アカウントを提供することで、事業者がさまざまな形態の電子決済を受け付けることを可能にする役割を果たします。最近では、リスク評価、法令遵守、不正利用の検出と防止、チャージバック管理、レポート機能と分析など、さらなる機能やサービスも提供するケースが増えています。
以下は、大半の Payfac が提供している基本的な機能とサポートの概要です。
ペイメントゲートウェイ
Payfac は、事業者のウェブサイトと決済代行業者の仲介役を果たすソフトウェアである、ペイメントゲートウェイを提供しています。ペイメントゲートウェイは、クレジットカード番号などの顧客の決済情報を、検証と処理のために、事業者のウェブサイトから決済代行業者へ安全に送信できるよう支援します。加盟店アカウント
Payfac は、事業者が電子決済を受け付けて処理できるようにする、一種の銀行口座である加盟店アカウントも提供しています。加盟店アカウントはペイメントゲートウェイに関連付けられ、成功した取引から得られた資金を事業者の銀行口座に入金するために使用されます。リスク評価
Payfac はリスク評価を行います。リスク評価とは、決済を処理する事業者の能力を評価するプロセスであり、これは通常、その事業者の信用、財務状況、所有権を確認することで行われます。このプロセスにより、事業者が財務的に安定していて、受け取った資金を確実に管理できる状況にあることを確認します。法令遵守
Payfac は、PCI-DSS、マネーロンダリング防止 (AML)、本人確認などの規制要件の面での法令遵守にも対応しています。これらのセキュリティ基準に準拠することで、機密性の高い顧客情報の安全な取り扱いや、マネーロンダリング対策、顧客の本人確認が確実なものとなります。リスク管理
Payfac はリスク管理にも対応しています。リスク管理とは、事業者とその顧客に対する潜在的なリスクを特定し、評価し、優先順位付けするプロセスのことをいいます。これには、不正利用の検出と防止、チャージバックなどをはじめとする、潜在的なリスクが含まれることがあります。レポート機能
Payfac は、事業者が自社の取引を追跡し、口座残高を表示し、決済を監視できるレポート機能を提供しています。
Payfac になるには
事業者によっては、サードパーティープロバイダーを Payfac として利用する代わりに、自社が Payfac になることで決済を内製化する方式を選んでいる場合もあります。ユーザーがサブ加盟店であるプラットフォームやマーケットプレイスでは、Payfac になることで、サブ加盟店がよりシンプルに自社でオンライン決済を設定することができます。Payfac として活動するプラットフォームで事業を展開するのであれば、アクワイアリング銀行、ペイメントゲートウェイ、およびその他のサービスプロバイダーと連携する必要はなくなります。
ただし、Payfac になるには、加盟店アカウントの開設、加盟店 ID (MID) の取得、PCI DSS 認証の取得など、かなりの量の事前準備と継続的な対応が必要です。プラットフォーム側は、セキュリティ要件と法令遵守上の要件を満たし、カードネットワークに登録し、サブ加盟店に提供するすべての機能を円滑に利用できるようにするために必要な運用インフラを構築・維持しなければなりません。また、プラットフォームが従来型のペイメントファシリテーションを内製化する場合、法令遵守ポリシーを作成・実施する責任を負うことになるため、それに伴ってかなりのリスクに晒されることにもなります。
プラットフォームが Payfac になるために必要なことについて詳しく知るには、Payfac についてのガイドをご覧ください。このガイドは、導入方法から、投資時間とコスト、法令遵守上・維持管理上の考慮事項まで、関連するあらゆるトピックをカバーしています。
Payfac アズ・ア・サービスを利用する場合と Payfac になる場合の比較
Payfac と Payfac アズ・ア・サービスは相互に関連性がありますが、それぞれ明確に異なる概念です。どちらも事業者が決済を内製化する手段を提供していますが、似ているのはその点だけです。Payfac アズ・ア・サービスを利用することと、Payfac になることを比較してみると、事業者側から見たその違いは、所要時間、コスト、リスクの 3 つということになります。一言でいえば、Payfac アズ・ア・サービスを利用する場合は、これら 3 つとも大幅に抑えられます。
Payfac とは、決済処理サービスを他の事業者に提供する企業であり、事業者とアクワイアリング銀行の仲介役を担い、事業者に代わって決済処理を取り扱います。一方、Payfac アズ・ア・サービスとは、企業が他の事業者に対し、Payfac サービスを利用状況に応じて有償で提供するビジネスモデルを指します。すなわち、事業者が決済処理をサードパーティープロバイダーにアウトソーシングし、そのサードパーティープロバイダーが、事業者に代わって決済処理を管理する責任を負うのです。Payfac アズ・ア・サービスであるプロバイダーは、提供するサービスの対価として手数料を請求します。この手数料は、多くの場合、処理する各取引の金額に対する割合で設定されるか、取引 1 件あたりの定額手数料となります。
Payfac と Payfac アズ・ア・サービスの主な違いは、決済処理システムを自社で所有しているかどうかと、決済処理に対する事業者の管理レベルです。Payfac モデルでは、事業者が決済処理システムを自社で所有し、直接管理します。他方、Payfac アズ・ア・サービスモデルでは、サードパーティープロバイダーが事業者に代わって決済処理システムを所有して管理します。
従来、Payfac になることで埋め込み型決済システムを内製化することは、プラットフォームにとって、提供する顧客体験と金融サービスを管理できる立場を保ちながら、同時に埋込型金融サービスからの収益を最大化できるようにする上で、大変な負担を伴うやり方でした。しかし、最近は状況が変わってきています。Stripe が提供しているような、Payfac アズ・ア・サービス機能が、プラットフォームのペイメントファシリテーションをアウトソーシングするデメリットを軽減するホワイトラベルソリューションを提供するようになってきているのです。
Payfac アズ・ア・サービスを利用するメリット
Payfac アズ・ア・サービスは、事業者の中でも特に中小規模の企業にとって、使い勝手が良く費用対効果の高い決済処理ソリューションを提供しています。そのようなソリューションを利用することで、決済を自社で管理する必要がなくなり、代わりに本来の業務活動に集中できるようになります。以下に挙げるこのアプローチのメリットは、中核となる専門知識の範囲が金融サービス以外であるプラットフォームにとって、より一層大きな意味合いがあります。
決済の収益化の実現
金融サービスを埋め込むことにより、顧客あたりの収益を、従来型モデルの 2 ~ 5 倍に伸ばせます。また、Payfac を利用することで、顧客満足度の向上、市場におけるリーチの拡大、データインサイトの向上を実現でき、これらすべてが決済の収益化とプラットフォームの成長の促進に寄与します。決済の収益化という面では、Payfac であるプロバイダーを利用して決済を内製化することで、プラットフォームは取引手数料から新たな収益源を創出できるようになります。
プラットフォームがサブ加盟店に提供するサービスの幅を広げていくことで、埋込型金融サービス関連の収益が拡大します。たとえば、Stripe の Payfac ソリューションは、ローン、カード発行プログラム、POS 決済、早期入金など、他の金融サービスからプラットフォームが収益をさらに引き出せるよう支援します。従来型の Payfac ソリューションの場合は、オンラインでのカード支払いのみに限られます。
セキュリティと効率性
Payfac アズ・ア・サービスであるプロバイダーを利用することには、不正利用やデータ漏洩に対するセキュリティ保護対策を強化できるというメリットもあります。プロバイダーは通常、暗号化、トークン化、多要素認証などの高度なセキュリティ対策を導入して、顧客データのセキュリティを確保できるようにしています。また、Payfac アズ・ア・サービスは、決済処理に伴う多くの手動作業を自動化して、事業者の決済処理の効率性を向上させることができます。その結果、取引の処理時間を短縮し、誤りを減らし、細部まで行き届いた実用的なレポートを作成することが可能となります。
その他、Payfac アズ・ア・サービスであるプロバイダーを利用する主なメリットには、以下のようなものもあります。
- 決済を収益化
- 決済の受け付け開始を数分で実現
- ソリューションをカスタマイズ可能
- 複雑さを軽減
- 時間とリソース投資を削減
- リスクを軽減
- メンテナンスは最小限で済む
- 決済に関する専門技術とサポートを利用できる
先進技術を駆使するプラットフォームの多くは、自社の専門分野ではないというシンプルな理由で、決済の内製化という考えを捨てています。プラットフォームは、Payfac アズ・ア・サービスを利用することで、Payfac である場合に得られるすべてのメリットを享受できます。その分野の専門知識が別途必要になることはありません。ここでいうメリットとは、外部の業界最高クラスの決済テクノロジーと不正防止機能を利用できること、さらには、Payfac ソリューションを絶えず見直し、改良し、進化させている金融サービス専門家による、コンシェルジュサービスのような水準のサポートを受けられることなどを指します。
Payfac アズ・ア・サービスであるプロバイダーに求めるべきもの
自社のビジネスニーズと、自社がサポートするサブ加盟店のニーズに最適で、Payfac アズ・ア・サービスとして理想的なプロバイダーを見つけるには、機能とサポートに関して、以下を含む数多くの点を評価する必要があります。
法令遵守とセキュリティ
Payfac が PCI-DSS などの規制要件に準拠していて、電子決済処理のためのセキュアな環境を確実に提供できることを確認しましょう。セキュリティと法令遵守の面でしっかりとした実績があり、トークン化、暗号化、不正利用の検出と防止などの対策を実施している Payfac を探すことが重要です。決済処理能力
クレジットカード、デビットカード、ACH、eCheck など、決済処理のための幅広い選択肢を用意している Payfac を探しましょう。現在受け付けている決済の種類と、今後受け付ける予定の決済の種類を考慮してください。カスタマイズ可能な実装
Payfac によっては、カスタマイズ可能な実装を提供することで、その Payfac のサービスを事業者の既存システムに簡単に統合できるようにしている場合もあります。そうすることで、接続プロセスの時間を短縮し、複雑さを軽減できるのです。手数料と料金体系
さまざまな Payfac の手数料と料金体系を比較して、支払う金額に見合った最善の価値を得られるようにしましょう。透明性のある料金体系を提示し、提供するサービスに関連する手数料を明確に理解できるようにしている Payfac を探すことが大切です。顧客サポート
Payfac が扱う財務機能はビジネスの運営に不可欠であるため、模範的な顧客サポートを提供している Payfac を見つけることが重要です。例としては、24 時間 365 日の電話・メールでのサポートや、FAQ、ガイドなどのオンラインリソースを挙げることができます。拡張性
ビジネスニーズの変化に合わせて、Payfac がサービスを確実に拡張できることを確認しましょう。確認する事項には、取引数の増加、新規の決済手段への対応、新たなシステムとの接続に対するサポートなどが含まれます。レポート機能と分析
Payfac によっては、事業者が自社の取引を追跡し、口座残高を表示し、決済を監視できるレポート機能と分析機能を提供している場合があります。埋め込み型の決済機能や金融サービスを組み込むことで、顧客に関する膨大なデータが得られます。理想的には、データを統合し適用するための構築済みのメカニズムを提供できる Payfac を見つけたいものです。
Stripe の Payfac ソリューション
Stripe が提供する Payfac アズ・ア・サービスは、金融サービスの中でも特に決済機能をソフトウェアに完全に埋め込むことで、プラットフォームの収益向上を支援できるように設計されています。そのため、プラットフォームはスムーズかつ速やかに市場に参入できる一方で、セットアップのコストを抑えながら収益化の可能性を最大限に引き出すことができます。また、Stripe の Payfac ソリューションでは、カード発行やローン支給など、その他の金融サービスをホワイトラベル化することもできます。
Stripe の包括的な決済処理サービスを導入すると、プラットフォームは幅広い電子決済を受け付けることができ、実装も簡単です。このサービスはセキュアであり、法令遵守も徹底できるほか、不正利用の検出と防止、チャージバック管理、透明性のある柔軟な料金体系、レポート機能と分析などの追加機能を提供しています。
Stripe の API ファーストなソリューションを活用するプラットフォームは、あらゆる側面で理想的な顧客体験をデザインできます。具体的には、以下のようなことが可能です。
- ユーザー体験の全般的カスタマイズ、構築済み UI コンポーネントの活用
- 入金タイミングの設定
- 料金体系と手数料の設定
- 複雑な資金移動の管理
- 財務レポートの実装と統合
- ビジネスのグローバルな拡大。マーケットごとに現地の銀行口座の開設や法人の設立をする必要がない
- 顧客への新たなサービスの提供による、決済以外の分野への事業拡大。たとえば、POS 決済、請求書作成、決済カードの発行、サブスクリプション、融資など
- 独自の顧客体験設計
- 売上の最大化
- 競争市場における差別化の実現
Stripe の Payfac ソリューションは、プラットフォームがサードパーティの Payfac の利用をためらう原因となっている難点や欠点の具体的な解消を目指して設計されています。世界でトップクラスの急成長を遂げているプラットフォームの多くが、Stripe の Payfac ソリューションを利用して SaaS 収益を促進し、決済機能が収益の中核となるように変革して、新たな金融サービスを提供しています。
Stripe の Payfac ソリューションについて、詳細はこちらをご覧ください。Stripe が貴社のビジネスの成長をどのようにサポートできるかについてご相談をご希望の場合は、お気軽にお問い合わせください。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。