ペイメントゲートウェイとは、オンライン取引および対面取引の決済を安全に承認するテクノロジーです。複数のペイメントゲートウェイを使用することで、企業はより多くの顧客に対してより柔軟に処理ツールを用意し、リーチを拡大し、取引に関する詳細なインサイトを集められます。
複数のペイメントゲートウェイを使用することのメリットとデメリット、それらを連携し対応する方法、および複数のペイメントゲートウェイを連携する場合の必須機能について説明します。
この記事の内容
- 複数のペイメントゲートウェイを用いるメリット
- 複数のペイメントゲートウェイを用いるデメリット
- ペイメントゲートウェイを連携する方法
- 複数のペイメントゲートウェイに対応する方法
- 複数のペイメントゲートウェイを連携する場合の必須機能
複数のペイメントゲートウェイを用いるメリット
複数のペイメントゲートウェイを採用することで、事業のグローバル展開を促し、さまざまな顧客のニーズを満たし、リスクを軽減することができます。以下では、複数のゲートウェイを用いることで得られるであろうメリットをいくつかを見ていきます。
戦略的冗長性: オンライン取引では、障害点が 1 つあるだけで重大な収益損失につながる可能性があります。複数のペイメントゲートウェイを連携することで、企業にとって重要な継続性ある強力なインフラストラクチャが構築されます。サイバー攻撃、技術的な問題、または定期的なメンテナンスが原因でゲートウェイの 1 つに障害が発生しても、別のゲートウェイが引き継ぐことができるため、中断されることなく取引を続行できます。この冗長性により、売上が確保され、顧客との信頼関係が強化されます。
グローバル市場への参入: 各ペイメントゲートウェイは、異なる通貨、地域、および現地特有の決済手段に対応しています。海外展開を目指す企業は、複数のゲートウェイを使用することで、市場全体で各地域に合わせたショッピング体験を提供できます。たとえば、あるゲートウェイがヨーロッパで SEPA 取引に対応していても、別のゲートウェイがアジア市場で人気のあるモバイル決済を効率的に処理できる場合などです。この戦略により、新しい市場での顧客満足度と購入完了率を大幅に向上させることができます。
競争力のある経路選定: 取引手数料は、ゲートウェイ、取引タイプ、クレジットカード会社によって異なります。高度な経路選定アルゴリズムを採用することで、リアルタイムの手数料評価に基づき、最も費用対効果の高いゲートウェイを、取引ごとに動的に選択できます。最適経路選定として知られるこの手法は、取引手数料を大幅に節約し、財務関連の業務を広く最適化できます。
承認率: ペイメントゲートウェイが異なれば、金融機関やその基盤となるテクノロジーとの関係も異なり、取引の承認率に影響がおよびます。アメリカでクレジット取引の承認率が高いゲートウェイは、ブラジルのデビットカードではうまく機能しない可能性があります。取引を複数のゲートウェイに分散させることで、企業は取引の種類と場所に応じて各ゲートウェイの強みを利用して、全体として承認率を戦略的に向上させることができます。
消費者の嗜好: 顧客体験がブランドロイヤルティを左右することが多い時代には、複数の決済オプションを提供することが不可欠です。消費者が異なれば、各種決済手段やゲートウェイに対する好みや信頼レベルも異なります。複数のオプションを用意することで、顧客の好みを満たし、信頼を築き、チェックアウトプロセスを専門仕様にできます。
リスクの軽減と法令遵守: 単一のゲートウェイに依存すると、サービスが中断したり法令遵守が脆弱になったりというリスクにさらされます。ゲートウェイが異なればセキュリティ機能も異なり、ヨーロッパの GDPR やカリフォルニアの CCPA など現地の規制に準拠していることが多いため、複数のゲートウェイを使用することで、企業はリスクを分散し、国ごとに規制基準への継続的な遵守を維持できます。
ゲートウェイ固有の機能: 一部のゲートウェイには、サブスクリプションサービス、B2B 取引、デジタル商品の販売など、特定のビジネスモデルに特に役立つ機能があります。高度な不正防止、継続請求のサポート、詳細なデータ分析が可能ですので、取引プロセスを改善し、ビジネスインテリジェンスを高めることができます。
複数のペイメントゲートウェイを用いるデメリット
複数のペイメントゲートウェイを連携することは一般的に有利ですが、提供しているインサイトを連携し、管理し、分析するという点で、課題に直面する可能性があります。詳しく見てみましょう。
管理: 各ゲートウェイには、独自のインターフェイス、設定、および連携要件があります。これらのシステムを管理するには、時間とリソースを投資し、うまく連携して機能することを確認し、パフォーマンスを継続的に監視しなければなりません。
コスト: 複数のゲートウェイを使用すると、競争力のある取引手数料でコストを節約できる可能性がありますが、運用コストが高くなる可能性もあります。各ゲートウェイには、独自のセットアップ料金、月額料金、および取引手数料が含まれる場合があります。複数のゲートウェイを維持すると、特に各ゲートウェイで処理される取引がコスト削減につながる量に達していない場合は、全体として費用が膨らむ可能性があります。
システム連携: 複数のペイメントゲートウェイを連携することは、技術的に困難な場合があります。各ゲートウェイには異なる連携プロトコルが必要な場合があり、すべてのシステムが連携して企業の中央システムと連携するようにするには、かなりの IT 専門知識とリソースが必要になる場合があります。
顧客体験: 複数の決済手段を提供すると、顧客体験にばらつきが出る場合があります。ゲートウェイごとに決済インターフェイス、処理時間、利用可能な決済オプションが異なると、顧客を混乱させたり、スムーズな決済プロセスが損なわれたりする可能性があります。
データインサイト: 取引が複数のゲートウェイに分散している場合、データの集計と分析が難しくなる場合があります。このような状況では、販売動向を追跡し、顧客の行動を理解し、情報に基づいたビジネス上の意思決定を行う能力に影響が出る可能性があります。
カスタマーサポート: 問題が発生した場合に、複数のゲートウェイが関与していると、問題の解決はより複雑になる場合があります。顧客は返金やチャージバックによる問題に直面する可能性があり、サポートチームはシステム間で問い合わせを処理することに熟達している必要があります。
ペイメントゲートウェイを連携する方法
ペイメントゲートウェイを連携する方法はいくつかあります。以下のオプションから選択するか、特定のゲートウェイには直接連携を使用し、他のゲートウェイには決済オーケストレーションプラットフォームまたは決済サービスプロバイダー(PSP) を選択するなど、ハイブリッドなアプローチを採ることが可能です。このアプローチで、カスタマイズの柔軟性と使いやすさのバランスを取ります。ここでは、さまざまな連携の方法を紹介します。
各ゲートウェイとの直接連携
直接連携とは、アプリケーションプログラミングインターフェイス (API) とソフトウェア開発キット (SDK) を使用して、各ペイメントゲートウェイをウェブサイトに直接個別に連携することを意味します。これにより、決済フロー、ユーザーインターフェイス、データ処理をカスタマイズおよび制御するための柔軟性が、最大限に高まります。ただし、この方法は時間がかかり、技術的にも困難であり、ゲートウェイ API は変更される可能性があるため、継続的なメンテナンスが必要です。
ペイメントゲートウェイアグリゲーター
この種のプラットフォーム (Stripe など) は、複数の決済手段を単一ポイントで連携し、場合によっては複数の基盤となるゲートウェイへと接続します。この連携方法はセットアッププロセスがシンプルであり、通常は、セキュリティ強化と法令遵守に対応しています。ただし、カスタマイズが制限される場合があり、直接連携よりもコストがかかる可能性があります。
決済オーケストレーションプラットフォーム:
これらのプラットフォームは、ウェブサイトと複数のペイメントゲートウェイの間のミドルウェアレイヤーとして機能し、インテリジェントな経路選定、フェイルオーバー処理、連携レポートなどの機能があります。これにより、複数のゲートウェイの連携と管理がスムーズになり、アグリゲーターよりも柔軟性が高く制御しやすくなります。また多くの場合、購入完了率の最適化やコスト削減のための機能も含まれています。ただし、他のオプションよりもコスト高になる可能性がありり、セットアップと構成に技術的な専門知識が必要になる場合があります。
E コマースプラットフォームのプラグイン
多くの一般的な E コマースプラットフォーム (Shopify、WooCommerceなど) にはプラグインまたは拡張機能があり、複数のペイメントゲートウェイとの連携をシンプルに行えます。これらはインストールと構成が簡単で、多くの場合、広く使われているゲートウェイとあらかじめ連携されています。ただし通常、直接連携と比較するとカスタマイズのオプションが限られており、必要なゲートウェイや機能をすべてサポートできない場合があります。
複数のペイメントゲートウェイに対応する方法
事業に複数のペイメントゲートウェイを使用することを決定したら、運用を計画、構成し、監視を継続する必要があります。ここでは、開始するための手順を説明します。
ニーズを評価する
対応する決済手段と地域を決定します。
各種ゲートウェイを調査し、その機能、手数料、使用できる決済手段を比較します。
連携方法を選択する
- 直接連携、決済オーケストレーションプラットフォーム、PSP、またはハイブリッドなアプローチから、どれを使用するかを決定します。技術的なリソース、予算、および必要な制御レベルを検討します。
連携を実装する
各ゲートウェイまたはプラットフォームが提供するドキュメントとガイドラインに従って、それらをシステムに連携します。
入念にテストして、すべての連携が正しく機能していることを確認します。
経路選定ルールの設定
- 決済オーケストレーションプラットフォームまたは PSP を使用している場合は、決済手段、通貨、金額、リスクレベルなどの要素を考慮して、各取引に使用するゲートウェイを決定する経路選定ルールを設定します。
監視と最適化
ゲートウェイ間で取引の成功率、拒否率、処理手数料を追跡します。
経路選定ルールと設定を調整して、パフォーマンスとコスト効率を最適化します。
複数のペイメントゲートウェイを連携する場合の必須機能
複数のペイメントゲートウェイをサイトまたはアプリケーションに連携する場合は、必ず以下の機能を採用して、貴社と貴社の顧客に最も適した決済プロセスを作成してください。
インテリジェントな経路選定と負荷分散: 取引の種類、金額、通貨、カード発行会社、またはゲートウェイのパフォーマンスに基づき、取引の経路選定を動的に行い最適なゲートウェイへと送信します。これは、承認率の向上、コストの削減、障害発生時の冗長性の確保に役立ちます。
フェイルオーバーと再試行のロジック: ゲートウェイに障害が発生した場合、または取引が拒否された場合は、別のゲートウェイで自動的に取引を再試行することで、売上の損失を防げます。
統合されたレポートと照合: すべてのゲートウェイからの取引データを統合する一元化されたダッシュボードまたはレポートシステムを使用すると、追跡、照合、および支払い分析を効率化できます。
不正利用の検出と防止: 不正取引から身を守るため、3D セキュア認証、住所確認、ベロシティチェック、高度な不正検出アルゴリズムといった機能を採用してください。
セキュリティと法令遵守: PCI データセキュリティー基準 (PCI DSS) など、機密性の高い顧客データを保護する業界標準に必ず準拠するようにします。
複数の決済手段に対応: 複数のゲートウェイを使う場合は、クレジットカードやデビットカード、デジタルウォレット (Apple Pay、Google Payなど)、銀行振込、現地特有の決済手段など、幅広い支払い方法を受け付けられる機能が不可欠です。これにより、世界中の対象者にリーチし、多様な顧客の好みに応えることができます。
カスタマイズ可能な決済体験: ブランディングとユーザー体験の要件に合わせて決済プロセスをカスタマイズできるよう柔軟性を重視して、カスタム決済フォームを作成し、ロゴを追加し、現地語に適応させるオプションを検討してください。
拡張性と柔軟性: 事業に合わせて拡張でき、将来的に決済戦略を変更または追加した場合に、対応できるソリューションを採用してください。必要に応じてゲートウェイを簡単に追加または削除できるかどうかを検討します。
開発者目線の API および SDK: 総合的で十分に文書化されている API および SDK であれば、連携プロセスがシンプルになり、カスタマイズと制御がよりスムーズになります。
信頼できるカスタマーサポート: 迅速で知識豊富なカスタマーサポートは、大変重要です。ペイメントゲートウェイの連携を行っているときや使用中に発生する可能性がある問題を、解決する際に支援してもらえます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。