ヨーロッパの事業者と顧客にとって、SEPA 送金は、ユーロ建て決済によるシームレスなクロスボーダー取引を可能にする決済処理の重要な一要素です。
単一ユーロ決済圏 (SEPA) は、法人と個人が加盟 36 カ国において国内取引と同じ快適さでユーロ建ての電子決済を送受信できる決済フレームワークです。
継続支払い、サプライヤーへの支払い、公共料金請求書の支払いを処理している事業者は、経理業務を効率化し、コストを削減するためにも、SEPA 決済スキームがどのように機能するかを理解しておく必要があります。この記事では、SEPA とは何か、SEPA 送金の仕組み、そして企業が SEPA を使用して簡単にクロスボーダー決済を行う方法についてご説明します。
この記事の内容
- SEPA とは何か
- SEPA 加盟国一覧
- SEPA の仕組み
- SEPA 決済の方法
- SEPA 決済にかかる時間
- SEPA のための口座は必要か
- SEPA 域外の事業者はヨーロッパの銀行口座を開設すべきか
SEPA とは何か
SEPA は Single Euro Payments Area (SEPA) の略です。これは、キャッシュレス決済をシンプルにし、EU 加盟国内および EU 加盟国間の取引に一貫性を持たせるための制度です。欧州決済協議会 (EPC) によって設立され、欧州中央銀行の規制下にある SEPA は、個人と法人が国境に関係なく、国内の支払いと国境を越えた支払いを同条件で行うことを可能にします。
SEPA は現在、年間約 500 億件 の取引を処理しています。これらの取引には、SEPA クレジットトランスファー、SEPA ダイレクトデビット取引、デビットカード決済が含まれます。SEPA は 2008 年 1 月に SEPA クレジットトランスファー、続いて 2009 年 11 月に口座振替とデビットカードをスタートさせました。
SEPA の目標は原則的にアメリカの ACH や Fedwire のネットワークと同じです。すなわち、すべてのユーザーに一貫したフレームワークを提供しながら、金融機関の間で標準化された取引を促進することがその目標です。SEPA が設立されるまで、加盟国は個々の国内市場に細分化され、国境を越えた取引を処理する際に摩擦が生じていました。クロスボーダー取引には時間と多大なコストがかかる上に、複雑な銀行事務が必要でした。
SEPA の設立にあたっては、送金のための共通の基準と手順のほか、インフラストラクチャの開発も必要でした。これらをすべての加盟国が導入しました。SEPA は、口座間の資金移動を阻む障壁を最小化しただけでなく、EU と周辺国全体での資本移動に関わるコストの削減という思いがけない追加的なメリットをもたらしました。SEPA は、これを運用する地域の経済を活性化させ、全世界の消費者と企業に利便性をもたらしました。

SEPA 加盟国一覧
2025 年現在、SEPA ゾーンに含まれるのは次の 36 カ国です。オーストリア、ベルギー、ブルガリア、キプロス、クロアチア、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド共和国、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スロバキア、スペイン、スウェーデン、ならびに EU 以外の加盟国であるアイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン、スイス、アンドラ、バチカン市国、モナコ、サンマリノ、イギリス。

SEPA の仕組み
SEPA の標準化された決済スキームでは、SEPA 域内のユーロ建て銀行口座からの口座引き落としが利用可能です。それは、加盟国内で国内決済や国境を越えた取引を簡単に、低料金で実行できるということでもあります。口座保有者と決済サービスプロバイダー (PSP) は、SEPA を利用すれば、他の国を旅行中でも口座振込で支払いを受けたり、銀行口座から電子的に払い出しを行ったりすることができます。
消費者取引の場合、事業者は SEPA を利用すれば、SEPA ダイレクトデビットスキームで加盟国内の顧客口座から代金を直接引き落とすことが可能です。
SEPA は、次の 4 つの決済処理スキームで構成されます。
- SEPA クレジットトランスファー:SEPA 加盟国全体での標準的な単発の決済
- SEPA Instant クレジットトランスファー:10 万ユーロを上限とするリアルタイムの即時決済
- SEPA ダイレクトクレジットコア:主に公共料金の支払い、サプライヤーへの支払い、ローン返済などの定期的な支払いに使用されます
- SEPA ダイレクトデビット B2B:SEPA ダイレクトデビットコアに似ていますが、ダイレクトデビットコアよりオーソリ要件が厳しい B2B 取引専用です
SEPA 決済の方法
SEPA 域内のすべての銀行口座には、国際銀行口座番号 (IBAN) と銀行識別コード (BIC) (アメリカの銀行口座番号に相当するヨーロッパの口座番号) が割り当てられています。ACH ネットワークと Fedwire ネットワークによる国内送金には両当事者の銀行口座番号とルーティングナンバーが必要です。同様に SEPA 送金でも、その取引に関係するすべてのヨーロッパの口座の IBAN 識別コードが必要です。
ここで各種の SEPA 送金の仕組みを簡単にご説明します。
SEPA クレジットトランスファー: SEPA クレジットトランスファーは、IBAN コードを持つ銀行間で行われる単発の送金です。これらの送金はユーロ建てで行われ、一般に消費者が SEPA 加盟国で何かを購入した場合に使われます。SEPA 域内に拠点がない事業者は、この種の送金を利用できません。これは、送金元金融機関と受取金融機関の両方が SEPA 加盟国になければならないためです。
SEPA Instant クレジットトランスファー:大抵の場合、口座間送金では、送金リクエストを送信し、完了するまでに数時間から数日待つ必要がありますが、SEPA Instant の場合は 10 万ユーロを上限としてリアルタイムでの送金が可能です。SEPA 域内の 2 人の口座所有者は誰でも日時を問わず、この方法でユーロ建て取引をいつでも完了することができます。取引は直ちに処理されます。SEPA Instant クレジットトランスファーの 99% は 5 秒以内に完了します。 また、SEPA Instant クレジットトランスファーはスマートフォンで実行することができます。
SEPA ダイレクトデビット: SEPA ダイレクトデビット は、海外 (EU 域外) の事業者が SEPA 域内の口座と取引するための最も一般的な方法です。Stripe のお客様にとって、SEPA ダイレクトデビットは繰り返し使える 通知式の決済方法です。つまり、顧客と内部で関連付けられ、事業者が承認されたキャパシティの範囲内で繰り返し使用できる決済方法だということです。これは、事後通知型の決済方法 でもあります。つまり、取引の処理が終わってからでないと取引の成否がわからないということです。取引の処理には数日かかる場合があります。

SEPA 決済にかかる時間
ほとんどの SEPA 決済は、処理開始後 1 営業日以内に完了します。ただし、次の通り、処理に要する時間は使われる決済スキームによって異なります。
- SEPA クレジットトランスファー:営業日の場合は 24 時間以内に決済されます。
- SEPA Instant 決済:年中無休 24 時間対応可能で 10 秒以内に完了します。
- SEPA ダイレクトデビット取引:特に SEPA 域外の地域からのクロスボーダー決済を処理する場合は、通常 3 〜 6 営業日かかります。
SEPA のための口座は必要か
事業者が SEPA ネットワークを使って決済を処理するために SEPA のための銀行口座を改めて用意する必要はありません。SEPA 自体は金融機関ではなく、加盟国内にある銀行が使用するシステムです (つまり、独自の口座を発行することも保持することもありません)。事業者の銀行口座に IBAN 番号が付けられており、その事業者が SEPA 加盟国に拠点を置いているのであれば、SEPA のネットワークとそこで動作する製品をすでに利用できる状態です。
アメリカを含め、SEPA 加盟国に拠点を置いていない事業者でも、SEPA 加盟国に居住する顧客の決済に対する消費者取引に関係するという理由で、SEPA の一部の機能を使用できる場合があります。
SEPA 域外の事業者はヨーロッパの銀行口座を開設すべきか
その事業者がユーロ圏諸国で事業を展開している場合、または SEPA 域内に子会社を持つ場合は、現地の SEPA 口座を開設すると便利かもしれません。
SEPA と連携された銀行口座を持つ事業者は、高速で低料金の SEPA 送金を利用できます。また、低廉な手数料で現金を引き出すことができ、クロスボーダー取引の手数料も安く抑えられます。
Stripe のユーザーは、コードを変更しなくても、Stripe ダッシュボード で SEPA ダイレクトデビットその他の支払い方法を追加することができます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。