日本のインボイス制度における消費税の計算方法を解説

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  1. はじめに
  2. インボイス制度 (適格請求書等保存方式) とは
  3. インボイス制度と消費税の関係性
  4. インボイス制度導入後の消費税計算への影響と注意点
    1. 取引が仕入税額控除の適用対象か事前の確認が必要
    2. 端数処理は 1 インボイスにつき税率ごとに 1 回ずつ
    3. 「積上げ計算」が選択可能になった
  5. インボイス制度で用いられる消費税の計算方法
    1. 積上げ計算
    2. 割戻し計算
    3. 消費税の納税金額の計算方法
  6. インボイス制度では積上げ計算の方が有利
  7. インボイス制度のもとで納税額を正確に計算するために
  8. Stripe Invoicing でできること

2023 年 10 月 1 日以来、現在の日本ではインボイス制度が施行されています。インボイス制度は消費税の課税事業者にとって、仕入税額控除に関わるとても重要な制度です。

また、これらの日本の事業者が仕入税額控除を適用するにあたって注意しなければならないのが、インボイス制度における消費税の計算方法です。本記事では、インボイス制度と消費税の関係性や、インボイス制度によって消費税計算はどう変わったのか、各事業者にはどのような対応が求められるのかについて解説します。

目次

  • インボイス制度 (適格請求書等保存方式) とは
  • インボイス制度と消費税の関係性
  • インボイス制度導入後の消費税計算への影響と注意点
  • インボイス制度で用いられる消費税の計算方法
  • インボイス制度のもとで納税額を正確に計算するために
  • インボイス制度における納税額の計算
  • Stripe Invoicing でできること

インボイス制度 (適格請求書等保存方式) とは

頭で解説したように、インボイス制度とは、消費税の課税事業者が納税額を計算する際に対応が求められる制度です。現在の日本の消費税には、10% の標準税率8% の軽減税率があります。インボイス制度は、これら複数の消費税率に対応した仕入税額控除の方式として、区分記載請求書等保存方式に代わって開始されました。

インボイス制度のもとで発行される適格請求書 (通称: インボイス) の記載項目は、インボイス制度開始前まで施行されていた区分記載請求書に比べ、要件がより細かく設定されています。もし、売り手側事業者が発行した適格請求書の記載内容に不備があると、買い手側事業者は仕入税額控除を受けられなくなります。そのため、適格請求書を発行する売り手側は、インボイス制度で定められている要件を十分に理解しておくことがとても大切です。

なお、適格請求書については、必須記載事項が正しく明記されていれば、適格請求書の書き方に関する法的な決まりは特にありません。しかし、インボイス制度に基づいて仕入税額控除が問題なく適用されるためには、適格請求書を受け取る買い手側に配慮した適格請求書のフォーマットを用いることが理想的といえるでしょう。

インボイス制度と消費税の関係性

インボイス制度と消費税は互いに切り離せない関係にあります。では具体的に、インボイス制度は消費税とどのような結びつきがあるのでしょうか。両者の関係性については、まず消費税の仕組みについて理解しておく必要があります。

もともと消費税とは、商品やサービスの購入の際にかかる税金で、消費者が支払う税金です。しかし、消費税は消費者によって直接国に納められるものではなく、商品代金に付け加えることで、消費者側から事業者側に商品代金と合わせて支払われます。その後、消費者から受領した消費税は、事業者が責任をもって所轄の税務署に納税する間接的な仕組みとなっているのです。

たとえば、小売業の場合、商品が出来上がり店舗に納品されるまでには、材料の仕入れから始まり、製造やパッケージングなどのさまざまな工程を経て、最終的に完成した商品が店舗に並びます。こうした B2B 取引上の各工程においては、その都度消費税が発生します。

この際に気をつけなければならないのが二重課税です。インボイス制度では、各工程に関わる事業者が適切に仕入税額控除を受けられるようにすることで、二重課税が発生しない仕組みとなっているのです。

消費税の納税額を簡単に計算式で表すと以下のようになります。

消費税の納税額 = 商品代金 (売上) にかかる消費税 (仮受消費税) - 仕入れ時に支払った消費税

つまり、消費者から消費税を受領する小売業者 A は、商品を仕入れる際に仕入れ元事業者 B に消費税を支払います。A は B に支払った消費税の負担額を、消費者から受領した消費税額から差し引き、その差額を所轄の税務署に納税します。この差し引きこそがインボイス制度において最も重要な要素といえる仕入税額控除になります。

上の図解からもわかるように、消費者が事業者に対して支払う消費税は、商品に関わった各事業者がそれぞれで負担額を計算したうえで納税することになります。しかし、この工程の中に、免税事業者が関わっている場合には注意が必要です。なぜなら、免税事業者からの仕入れについては、買い手側の事業者は原則として仕入税額控除を受けられないからです。

たとえば、商品を仕入れる側が小売業者だった場合で説明します。この場合、売り手側が免税業者であることから、仕入れにかかる消費税は発生しません。つまり、消費税の差し引き額は「0」となるため、商品の売上にかかる消費税全額については、免税事業者から商品を仕入れた小売業者が納税することになります。

一見問題がないように思われがちですが、課税事業者との取引で 50 万円支払った場合と、免税事業者との取引で同額を支払った場合で比べると、前者との取引なら後々に仕入税額控除を受けることができ、納税額の負担が軽減されますが、後者との取引では仕入税額控除は受けられなくなってしまいます。そのため、買い手側としては結果的に、課税事業者との取引の方が納税額を減らすことができ、利益が生じやすくなるのです。

仕入税額控除が適応できるかできないかについては、取引額が大きければ大きいほど、自社の損益を左右するため、重要なチェックポイントとなります。そのため、免税事業者、課税事業者に関わらずすべての事業者は、現行のインボイス制度が自社に与える影響として、どのような問題が生じ得るのか、シミュレーションを行いながら事前にリスク管理を講じる必要があるといえるでしょう。

インボイス制度導入後の消費税計算への影響と注意点

インボイス制度のもとで事業者が消費税計算を行うにあたっては、具体的にどのようなインボイス制度による影響があるのでしょうか。ここでは、インボイス制度の施行にともなう、消費税計算に関する注意点を解説します。

取引が仕入税額控除の適用対象か事前の確認が必要

インボイス制度が開始されている現在において、取引が仕入税額控除の適用対象かどうかを判断するには、以下の条件を満たしているかがポイントとなります。

  • 適格請求書を発行する側がインボイス制度の登録番号を所有する課税事業者、すなわち適格請求書発行事業者であること (インボイス制度に未登録の場合、たとえ課税事業者であったとしても適格請求書は発行できません)
  • インボイス制度で定められている適格請求書の必須記載事項が書類に明記されていること

このように、売り手側の事業形態や、インボイス制度への対応が万全かどうかなど、書類を受け取る買い手側の経理担当者は、上記のポイントについてくれぐれも注意する必要があります。

端数処理は 1 インボイスにつき税率ごとに 1 回ずつ

端数処理とは消費税の計算上、1 円未満の金額が発生した際の処理方法のことです。インボイス制度開始以前の、区分記載請求書保存方式では、商品やサービスごとに消費税の端数処理を行うことができました。しかし、現行のインボイス制度では、1 つの適格請求書につき、税率ごとに 1 回ずつ端数処理を行う必要があります。

つまり、商品やサービスの品目ごとに個別で消費税を計算してから最終的に消費税を合算するのではなく、まず 8%、10% の税率ごとの消費税総計を算出してから、端数を処理します。

たとえば、以下のように消費税 8% の商品 A と B、消費税 10% の商品 C と D を仕入れたとします。この場合、税率が 8% の商品、10% の商品ごとに分けて税抜の合計金額を算出してから、税率ごとの消費税総計を計算します。

取引年月日

品名

数量

単価

税抜金額

消費税額

8/2

商品 A ※

63

187

11,781

8/2

商品 B ※

177

77

13,629

8/10

商品 C

47

57

2,679

8/10

商品 D

47

427

20,069

8% 対象計 (※)

25,410

2,032

10% 対象計

22,748

2,274

表のように、税率 8% の商品の消費税を計算してみると「2032.8」になりますが、端数処理を行うと、消費税は 2,032 円になります。同じく、税率 10% の場合も「2274.8」を端数処理するため、消費税は 2,274 円になります。

「積上げ計算」が選択可能になった

インボイス制度の開始後は、従来の「割戻し計算」だけでなく「積上げ計算」が選択できるようになりました。割戻し計算と積上げ計算、それぞれの計算方法については次章にて詳しく解説しますが、この積上げ計算が可能となったことで、各事業者はいずれかを用いて消費税納付額の計算を行う必要があります。そのため、双方の計算方法については十分理解したうえで、自社にとってより有利なものを選ぶようにしましょう。

インボイス制度で用いられる消費税の計算方法

前述のように、インボイス制度では「積上げ計算」と「割戻し計算」の 2 つから選択が可能となっています。ここでは、それぞれの計算方法を詳しく見てみましょう。

積上げ計算

「積上げ計算」とは、その名のとおり、適格請求書に記載されている消費税額を積み上げる計算方法で、その都度の取引で発生した消費税の金額を足していくことで税額が決まります。

積み上げる消費税額は、適格請求書ごとに端数処理が行われた後のものになります。注意点として、積上げ計算は適格請求書発行事業者のみが選択できる計算方法であることを覚えておきましょう。

積上げ計算の例

税込 300 円 (税率 10%) の商品を 1 万個販売した場合

  • _商品 1 個あたりの消費税額: _

*300 円 × 100/110 × 10% = 27円 *

(もともとの数字 27.27の小数点以下は切り捨て)

  • 1 万個分の販売数を積み上げて計算した税額:

27 円 × 10,000 個 = 270,000 円

消費税額: 270,000 円

割戻し計算

「割戻し計算」とは、インボイス制度の導入以前から採用されている計算方法で、1 年間の総売上に対して消費税額を算出します。つまり、1 年間の税込金額合計から税抜金額合計に割り戻すことによって、消費税額が決まります。また、端数処理はこのタイミングでまとめて行われます。

割戻し計算の場合、積上げ計算のように適格請求書ごとに記載された消費税の金額をその都度合計していく必要がないため、会計業務への負担は比較的小さくなります。

割戻し計算の例

税込 300 円 (税率 10%) の商品を 1 万個販売した場合

  • 税込の売上高:

300 円 × 10,000 個 = 3,000,000 円

  • 税抜金額:

*3,000,000 円 × 100/110 = 2,727,000 円 *

(もともとの数字 2,727,272 を千円未満は切り捨て)

  • _売上にかかる税額: _

2,727,000円 × 10% = 272,700 円

  • _消費税額: 272,700 円 _

なお、実際に消費税を申告する際には、国税分と地方税分を分けて計算しますが、本記事ではわかりやすくするために、国税分と地方税分を合計した税率を用いて計算していることをご留意ください。

消費税の納税金額の計算方法

先ほど「インボイス制度と消費税の関係性」で解説したように、納付する消費税の計算方法は、

「売上にかかる消費税額 - 仕入れにかかる消費税額」となります。

したがって、まずは「売上にかかる消費税額」と「仕入れにかかる消費税額」を、積上げ計算か割戻し計算のどちらかを選択し、それぞれ算出する必要があります。

売上にかかる消費税額は、積上げ計算と割戻し計算のどちらかを選ぶことができます。注意点としては、もし、売上にかかる消費税額について積上げ計算を用いる場合、仕入れにかかる消費税額にも積上げ計算を用いる必要があり、割戻し計算は選択できません。一方、割戻し計算で売上にかかる消費税額を計算する場合、仕入れにかかる消費税額については、積上げ計算でも割戻し計算でもどちらの計算方法を用いても構いません。わかりやすく表にすると、以下のようになります。

インボイス制度では積上げ計算の方が有利

先ほど「インボイス制度で用いられる消費税の計算方法」にて、それぞれの計算例を紹介しましたが、積上げ計算の方が割戻し計算よりも税額が低いことがわかります。これは、端数処理を行うタイミングの違いによるものです。

適格請求書に記載する消費税額の端数処理については、四捨五入、切り上げ、切り捨てなどは任意です。売上の適格請求書で消費税額の端数処理を切り捨てにすれば、積上げ計算のように適格請求書を発行するその都度、円未満の消費税が切捨てられるということになります。そのため、売上にかかる消費税額が低くなり、上述の計算式上において消費税の納付額も低くなることから、積上げ計算のほうが有利になるのです。

特に、小売業のように、事業の性質上適格請求書を発行する機会が多い業種では、積上げ計算の方が、割戻し計算に比べ、大幅に消費税の納税額を抑えることができるといえるでしょう。

インボイス制度のもとで納税額を正確に計算するために

今回はインボイス制度の開始後、事業者がおさえておくべき消費税の計算方法について解説しました。商品やサービスを提供した際に消費者から回収した消費税は、各事業者が責任をもって国に納めなければならない税金です。

課税事業者が消費税を適切に納付するためには、各自で納税額を計算したうえで税務署に納税をします。したがって、納税申告の際は、消費税の計算方法を正しく理解したうえで適切に手続きを進めることが大切です。インボイス制度では、積上げ計算と割戻し計算のどちらかを選べるようになっているため、事業者はどちらを選択するべきか、自社に最適な計算方法を採用するようにしましょう。

また、売り手側事業者がインボイス制度に準じた適格請求書を作成する際には、作業がスムーズに行えるよう、インボイス制度に対応可能な環境をあらかじめ整えておくことも大切です。たとえば、消費税の自動計算機能や会計ソフトのように、作業を最適化できるオンラインツールについては、経理業務において大変便利なため、導入を検討してみることをおすすめします。Stripe が提供する Stripe Invoicing は、インボイス制度に対応し、自動生成機能による請求書の発行と保存を適切に行うことができます。また、売掛金の管理、支払いの回収、取引の照合の自動化など、請求業務に関わるあらゆる機能が備わっているため、よりスムーズで効率的なバックオフィスの改善を図ることができます。

適格請求書の発行に際してはさまざまな要件があり、適格請求書に対応したシステムの導入や、インボイス制度への登録手続きを行うなどの事前準備が必要ですが、一旦準備が完了すれば、以後、より快適に適格請求書に関する業務を行えるようになるでしょう。

Stripe Invoicing でできること

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この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。

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