消費税の計算方法とは?本則課税・簡易課税方式について解説

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  1. はじめに
  2. 消費税の計算方法とは?
    1. 消費税の課税標準額とは?
  3. メインとなる 2 つの消費税の計算方法 & 2 割特例
    1. 本則課税方式
    2. 簡易課税方式
    3. 2 割特例を用いた消費税の計算方法
  4. 消費税の計算方法を正しく理解して確定申告を行うために
  5. よくある質問
    1. Q: 内税 (税込価格) から消費税を計算する方法とは?
    2. Q: どんな取引が消費税の課税対象?
    3. Q: 消費税の申告・納付期限はいつ?

消費税とは、事業者が消費者に代わって間接的に国に納める税金です。

そのため、消費税は基本的に消費者が負担するものではありますが、商品やサービスの購入時に事業者が消費税を受領することによって、回収した消費税を納税する義務が発生します。

課税事業者が消費税を適切に納付するためには、納めるべき税額を各自で計算したうえで税務署に納税する必要があります。したがって、消費税の計算方法を正しく理解したうえで適切に手続きを進めることが大切です。

本記事では、日本の確定申告に用いる消費税の計算方法として、本則課税方式、簡易課税方式に加え、2 割特例の計算式についてわかりやすく解説します。

目次

  • 消費税の計算方法とは?
  • メインとなる 2 つの消費税の計算方法 & 2 割特例
  • 消費税の計算方法を正しく理解して確定申告を行うために
  • よくある質問

消費税の計算方法とは?

冒頭の解説のように、消費税は、消費者の代わりに事業者が納める税金です。そのため、課税事業者は消費者から受け取った消費税を、所轄の税務署に必ず納めなければなりません。

納める金額については原則として、仕入税額控除の適用分が事前に差し引かれます。つまり、消費税の計算方法とは基本的に、「課税売上にかかる消費税」から「課税仕入れなどにかかる消費税」を差し引いたものであることを覚えておきましょう (のちほど「本則課税方式」にて詳しく解説します)。

消費税の課税標準額とは?

まず、消費税の計算方法を理解するうえで、消費税の課税標準額についても押さえておく必要があります。

消費税の課税標準額とは、日本国内での取引における課税資産の譲渡等の対価の額 (※) をいいます。商品やサービスにかかる消費税額は課税標準に税率をかけて算出されるため、課税標準額は、納付する消費税額を計算する際の基礎となる金額になります (参考資料: 国税庁『課税標準』)。

わかりやすくいうと、消費税と地方消費税を含まない「税抜きの課税売上高 (課税取引の売上高) 」が課税標準額ということになります。

(※) 課税資産の譲渡等の対価の額とは、資産の譲渡、資産の貸付け、役務 (サービス) の提供の対価として受け取る金額のことで、金銭以外に権利や経済的利益を受け取る場合もあります。

メインとなる 2 つの消費税の計算方法 & 2 割特例

消費税の確定申告の際は、正確な納税金額を算出する必要があります。

国税庁によると、事実と異なる申告や、申告に遅れがあった場合は加算税や延滞税などの附帯税が課せられる恐れがあるため、申告期限に間に合うよう余裕を持って準備を始めることが大切です。

消費税の納付額の計算方法については、各事業者の状況によって選ぶ方法が異なり、「本則課税方式」と「簡易課税方式」の 2 種類があります。この 2 種類の計算方法に加えて、任意で免税事業者から課税事業者になった事業者を対象に、インボイス制度の経過措置として設けられている 2 割特例を用いた計算方法もあります。

  • 本則課税方式
    本則課税方式は、仕入税額控除を適用する一般的な計算方法として、業種に関係なくどの事業者も使用できます。別名「一般課税」、「原則課税」とも呼ばれます。

  • 簡易課税方式
    簡易課税方式は、比較的小規模の事業者に配慮した計算方法です。本則課税方式と比べて計算方法が簡便化されているため、より簡単に納税する消費税額を計算できます。

  • 2 割特例
    もともと免税事業者から自らの意思でインボイス制度に登録して課税事業者となった場合に適用可能な 2 割特例では、消費税の納税額を売上にかかる消費税額の 2 割に軽減させることができます。適用期間は、インボイス制度開始後の 2023 年 (令和 5 年) 10 月 1 日 から 2026 年 (令和 8 年) 9 月 30日までに属する課税期間となるためご留意ください。

2 つの消費税の計算方法と 2 割特例 - 日本の確定申告における消費税の計算式 (本則課税、簡易課税、2 割特例) の一覧

それぞれの方式による消費税の計算について、以下にご紹介します。

本則課税方式

本則課税方式による消費税の税額計算方法では、「課税売上高にかかる消費税額」から、事業者が「仕入れや経費にかかった消費税額」を差し引いて納税額を算出します。この差し引きのことを仕入税額控除と呼びます。

本則課税の計算式

  • 課税売上高にかかる消費税額 − 仕入れ・経費にかかる消費税額 = 消費税の納付額

注意点として、消費税を計算する際は、10%、8% の税率ごとに区分して計算する必要があります。また、取引のうち、非課税取引がある場合は、それらの取引を除いて計算します。

このように、売上高や仕入れの際に複数の税率の商品が混在していると、特に細かい取引を日々取り扱う事業者の場合、計算が煩雑になる恐れがあります。さらに、現行のインボイス制度のもとで適格請求書を受け取ることができなかった場合、仕入税額控除の適用を受けられず、申告時の計算がさらに複雑になる可能性があります。

そこで、事業者が条件を満たしている場合に限られますが、より簡単な消費税の計算方法となる簡易課税制度を用いることができます。

簡易課税方式

簡易課税方式とは、「課税売上高にかかる消費税額」と「みなし仕入率」のみで納税額を計算する方法です。

消費税額の簡易な計算方法として知られている簡易課税方法は、基準期間の課税売上高が 5,000 万円以下の課税事業者のみ選択することが認められています。

また、簡易課税方式を選択するためには、課税期間の開始日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を管轄の税務署に提出する必要があります。そのため、たとえ基準期間の課税売上高が 5,000 万円以下の場合でも、届出の手続きを事前に済ませないと簡易課税方式の適用を受けることができないので注意しましょう。

なお、簡易課税方式は、上述のように「みなし仕入率」を用いて消費税の納付額を計算します。ただし、その率は事業区分によって異なるため、注意が必要です。

事業区分ごとのみなし仕入率は以下のとおりです。

事業区分
みなし仕入率
該当する事業
第 1 種事業 90% 卸売業 (他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業) をいいます。
第 2 種事業 80% 小売業 (他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第 1 種事業以外のもの)、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)をいいます。
第 3 種事業 70% 農業・林業・漁業 (飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業 (製造小売業を含みます)、「電気・ガス・水道事業」は電気業、ガス業、熱供給業および水道業をいい、第 1 種事業、第 2 種事業に該当するものおよび加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除きます。
第 4 種事業 60% 第 1 種事業、第 2 種事業、第 3 種事業、第 5 種事業および第 6 種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業などです。なお、第 3 種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第 4 種事業となります。
第 5 種事業 50% 運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます)をいい、第 1 種事業から第 3 種事業までの事業に該当する事業を除きます。
第 6 種事業 40% 不動産業

参考資料: 国税庁『簡易課税制度の事業区分

簡易課税の計算式

  • 課税売上高にかかる消費税額 − (課税売上高にかかる消費税額 × みなし仕入率) = 消費税の納付額

例: 小売業を経営する事業者の課税売上高が 3,000 万円で、課税売上高にかかる消費税は 10% のみで軽減税率の適用がない場合

上記の表のとおり、小売業のみなし仕入率は 80% となります。したがって、簡易課税の計算式を用いると、消費税の納付額は次のようになります。

  • 3,000 万円 × 10% − 3,000 万円 × 10% × 80% = 60 万円
消費税の計算方法: 簡易課税方式 - 条件を満たした事業者は、簡易課税方式を用いて消費税を計算することができます。この消費税の計算式では、課税売上高にかかる消費税額に、業種ごとに異なる一定の割合 (みなし仕入率) をかけることで、その金額を仕入れにかかった消費税額とみなして計算します。

なお、簡易課税方式は、非課税取引を分ける必要がなく、原則の本則課税方式に比べて消費税額の計算がシンプルなため、比較的経理業務への負担増加を避けることができます。また、本則課税方式とは異なり、インボイス制度への影響がなく、請求書などの証憑書類が不要なため、免税事業者との取引についても、これまでどおり継続して取引を行うことができます。

ただし、仕入れなどにかかった消費税額が大きい場合にみなし仕入率で計算すると、仕入額控除を用いた本則課税方式よりも、実際に支払う消費税額が多くなる可能性があります。また、簡易課税方式を選択すると、最低 2 年間は継続した適用が求められます。

そのため、消費税の計算方法を選ぶ際は、今後の自社の展望や事業計画の見通しを立てたうえで、現在の状況に適したものを選ぶようにしましょう。

2 割特例を用いた消費税の計算方法

インボイス制度の経過措置として先ほどご紹介した 2 割特例は、免税事業者から課税事業者に変更した事業者が対象です。この特例は、条件を満たしていれば適用にあたって特に手続きは必要ありませんが、消費税の確定申告の際には、申告書に「2 割特例を適用した旨」の追記が必要となります。

参考資料: 国税庁 『2 割特例用 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き』

2 割特例の計算式

  • 課税売上高に係る消費税額 × 20% = 消費税の納付額

例: 課税売上高が 800 万円で課税売上高にかかる消費税が 80 万円 (10%) 、一方、仕入れにかかった税抜価格が 200 万円で、その消費税が 20 万円 (10%) の場合

  • 80万円 × 20% = 16 万円

同じ条件で、本則課税方式を用いて消費税の納税額を計算すると、以下のように納税額は 60 万円となり、2 割特例と比べてはるかに高くなることがわかります。

  • 80 万円 − 20万円 = 60 万円

なお、適格請求書発行事業者となるために免税事業者が課税事業者に変更する場合、適格請求書発行事業者の登録申請書の該当箇所にチェックを入れて提出するか (2023 年 10 月 1 日~2029 年 [令和 11 年] 9 月 30 日の日の属する課税期間中のみ)、消費税課税事業者選択届出書を税務署に提出すれば課税事業者になることができます。

ただし、個人事業主などの免税事業者がインボイス制度に登録するかしないかについては、それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社の事業規模や損益を考慮したうえで、慎重に決めることが大切です。

関連記事:『個人事業主のインボイス制度への対応: 売上 1,000 万円以下の場合

消費税の計算方法を正しく理解して確定申告を行うために

以上、消費税の計算方法について解説しました。

消費税の計算方法には、本則課税方式、簡易課税方式の 2 種類に加え、一定期間において設けられた2割特例があります。消費税の納税が義務付けられている課税事業者は、正しい税額を納めるためにも、これらの消費税の計算方法を理解し、確定申告に備えるようにしてください。

これまで免税事業者であった事業者が、インボイス制度への対応を目的に新たに課税事業者となった場合は、有効期間中において 2 割特例を活用するとよいでしょう。

また、時代の変化とともに DX 化への取り組みがますます必要とされている今日においては、消費税に関する事務作業をスムーズかつ効率的に行うために、複数の税率に対応した計算ソフトを用いたり、経理を自動化する機能を導入を検討してみるのも対応策の 1 つと言えるでしょう。

Stripe では、ニーズに応じてカスタマイズが可能な消費税の自動計算機能を備えた Stripe Tax を提供しています。すべての電子取引において税務処理が自動化されるので、業務効率のアップを実現できます。

よくある質問

Q: 内税 (税込価格) から消費税を計算する方法とは?

A: 消費税の確定申告に必要な計算方法では、課税標準額(税抜きの課税売上高) が基本となります。一方で、もとの価格に消費税を加えた価格となる「内税」の商品価格から消費税を確認する計算方法についても知っておくと便利です。

内税の場合、まず (1 + 税率) で商品価格を割ります。これによって税抜きの価格が計算でき、そこから該当する税率をかけることで消費税を調べることができます。

たとえば、標準税率 10% の商品で内税 11,000 円の場合の計算式としては、以下のとおりです。

  • 税込価格 11,000 円 ÷ (1 + 0.1 [税抜価格の算出]) × 税率 10% (0.1) = 1,000 円

また、消費税が軽減税率の 8% の場合は、以下のように商品価格を1.08 で割る計算式となります。

  • 税込価格 10,800 円 ÷ (1 + 0.08 [税抜価格の算出]) × 税率 8% (0.08) = 800 円

Q: どんな取引が消費税の課税対象?

A: 消費税が発生する取引のことを課税取引といいますが、日本国内で消費税の納税が義務付けられる課税取引には、日本国内にて行う取引、事業者が事業として行う取引などいくつかの要件があります。詳しくは関連記事の『消費税の課税取引とは?』をお確かめください。

Q: 消費税の申告・納付期限はいつ?

A: 消費税の申告と納付期限は同一で、法人の場合は事業年度の終了日 (決算月末日) の翌日から 2 カ月以内となります。たとえば、事業年度の開始が毎年 4 月 1 日で終了が 3 月 31 日であれば、納付期限は 5 月 31 日です。

一方、個人事業主の申告期限については、その年の翌年の 3 月 31 日まで (土日にかかる場合は次の月曜日) です。また、所得税の申告期限 (3 月 15 日) とは期限日が異なるため、くれぐれも注意が必要です。

この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。

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