請求書の処理にかかる時間は、業界や財務チームの効率、請求書の量、使用しているテクノロジーなど、さまざまな要因によって異なります。たとえば、小規模な企業では請求書を数日で処理できる場合がありますが、大規模な組織では複数の部門にまたがる承認プロセスが必要なため、処理に数週間かかることもあります。
請求書の処理が遅れると、延滞料が発生したり、サプライヤーとの関係が悪化したりするリスクがあります。また、早期支払い割引の交渉チャンスを逃してしまうこともあります。以下では、業界ごとの一般的な処理時間、その時間に影響を与える要因、そして処理をスピードアップする方法について解説します。
この記事の内容
- 請求書の処理の概要
- さまざまな業界における請求書の一般的な処理時間
- 請求書の処理時間に影響する要因
- ビジネスで請求書の処理をスピードアップする方法
請求書の処理の概要
請求書の処理とは、請求書を受け取ってから支払いを完了するまでの全体的なプロセスを指します。通常、このプロセスには、請求書の内容を確認し承認すること、会計システムへの登録、そして支払いの実行が含まれます。企業によっては、このプロセスを手動で行う場合もあれば、半自動や完全自動のシステムを使用する場合もあります。
さまざまな業界における請求書の一般的な処理時間
請求書の処理にかかる時間は、業界の特性、請求書の量、そしてプロセスの自動化レベルによって異なります。請求書の受領から支払い完了までに要する期間は売上債権回転日数 (DSO) として知られています。以下に、各業界における平均的な DSO を示します。
小売業
平均的な DSO: 3 ~ 7 日
小売業では大量の請求書を処理します。そのため、多くの企業が電子データ交換 (EDI) などの自動化システムを導入し、プロセスの効率化を図っています。
製造業
平均的な DSO: 39 日
製造業では複雑なサプライチェーンを管理しているため、多くの場合、請求書を発注書や納品書と細かく照合する必要があります。さらに、サプライヤーごとに異なる支払い条件が設定されている場合が多く、個別に交渉することもあります。また、納品された部品や材料を手作業で検証・照合する作業も、処理を遅らせる要因です。
ヘルスケア
平均的な DSO: 47 日
ヘルスケアビジネスでは、厳格な規制や監査基準への準拠が求められます。また、医薬品や医療機器、各種サービスに関連した複雑な請求書を照合する必要があります。小規模な機関では、手動での処理がいまだに一般的であるため、さらに処理に時間がかかる場合があります。
ビジネスサービス
平均的な DSO: 41 日
ビジネスサービス業界では、請求書の量が比較的少ないため、処理にかかる時間が短くなります。ただし、この分野では時間給やリテーナー契約、マイルストーン支払いなど、請求書の内容が複雑になりがちです。また、自動化があまり進んでいない場合も多くみられます。
請求書の処理時間に影響する要因
請求書の処理速度は、請求書自体の性質、社内でのプロセス、そして利用しているシステムによって左右されます。以下の要因は処理時間に特に大きな影響を及ぼします。
テクノロジー
請求書の入力をすべて手作業で行っている場合や、物理的な署名の完了を待つ必要がある場合は、処理の遅延が予想されます。どれだけ優秀なチームであっても、人間が対応できるスピードには限界があります。一方、自動化ツールを活用している企業では、処理時間が短縮されます。たとえば、AI を活用したデータキャプチャーや、適切なタイミングで適切な担当者に通知するワークフローなどが有効です。反対に、購買、会計、支払いを統合するシステムを導入していない企業は、こうしたシステムを活用している企業と比べて請求書の処理に時間がかかります。
請求書の複雑さ
請求書が単純である場合 (サプライヤーが 1 社のみ、請求項目が少ないなど)、処理時間は比較的短くなります。しかし、建設業や製造業のような業界では、長期的なプロジェクトや特定の進捗状況に応じた請求書が発生します。これらの場合、発注書や納品書、契約書などと細かく照合する必要があるため、処理に時間がかかります。
承認プロセス
大規模な組織では、安全性を確保するために複数の承認段階が設けられていることがよくありますが、このプロセスが処理の遅れを引き起こす場合もあります。こうした遅延を防ぐには、承認プロセスを効率化するか、特定の基準を設けることが有効です。たとえば、「500 ドル未満の請求書については承認不要」といった基準値を設定することで、処理をスピードアップできます。
請求書の誤り
請求書の情報が不足している場合 (発注書に誤りがある、説明があいまいなど)、処理にさらに時間がかかります。ベンダーが事前に必要な詳細情報を正確に把握していれば、ベンダーとのこうしたやり取りを最小限に抑えることが可能です。
国際決済
国際決済では、通貨換算や外国税の処理、地域ごとの請求書規則 (ヨーロッパの VAT 請求書など) への準拠が必要となるため、処理に時間がかかることがあります。これらの要因が重なると、請求書の処理時間が数週間延びる場合もあります。ただし、こうしたプロセスを自動化したり、グローバルなペイメントプロバイダーと連携したりすることで、時間を短縮することが可能です。
請求書の量
小売業や E コマースのように大量の請求書を処理する業界では、1 件あたりの処理に数分の遅れが生じただけでも、すぐに累積して大きな遅延につながるという業界特有の課題があります。このような課題に対処するため、これらの企業は通常、一括処理が可能なツールに投資して、作業負担を管理しようとしています。
ビジネスで請求書の処理をスピードアップする方法
請求書の処理の遅れがビジネスの停滞を引き起こしている場合でも、正確さを保ちながら処理をスピードアップする方法があります。以下のアプローチを検討してください。
光学式文字認識 (OCR) 技術を使用する: OCR 機能を備えたソフトウェアを使用すれば、スキャンされた請求書やメールで受け取った請求書から、金額や日付、ベンダー名といった詳細情報を自動的に抽出できます。これにより、手作業でのデータ入力を削減することが可能です。
自動照合を活用する: 最新のシステムを利用すれば、請求書を発注書や領収書と自動的に照合でき、例外となるケースのみがレビュー対象としてフラグ付けされます。これにより、ほとんどの請求書処理で煩雑な確認作業を省くことができます。
ワークフローの自動化を取り入れる: 請求書が承認のために適切な担当者や部門に直接送信されるワークフローを導入すれば、混乱が解消され、承認プロセスがスピードアップします。
明確な承認基準を設定する: 少額の請求書 (たとえば 1,000 ドル未満) の場合は、長い承認プロセスを省略します。ボトルネックを回避するために、承認処理をチームに任せてしまいましょう。
モバイル承認を可能にする: マネージャーがスマートフォンで請求書を承認できるようにします。遅延は、承認待ちの間に担当者が席を外していることが原因で発生することがよくあります。
請求書ガイドラインを導入する: ベンダーに対して、請求書に記載する必要がある項目 (正確な発注書番号や具体的な説明など) のチェックリストを共有しましょう。ベンダーがこのガイドラインを守ることで、内容の修正や確認にかかる手間を削減できます。
電子請求書を推奨する: 電子請求書は、紙や PDF 形式のシステムと比べて処理速度が速く、追跡もしやすいため、デジタル請求書を標準にしましょう。Docusign のようなプログラムを利用すれば、承認をデジタルで処理できるため、署名済みの紙書類がスキャンされて返送されるのを待つ必要がなくなります。
請求書が届いたらすぐに対応する: 請求書を月末まで放置するのは避けましょう。請求書をコンスタントに (毎週、あるいは毎日) 処理することで、作業負荷を分散し、締め切り間際のミスを防ぐことができます。
1 つのプラットフォームに集約する: 請求書を 1 つのプラットフォームに集約しましょう。こうすることで、請求書の追跡や検索、更新が簡単になります。SAP、QuickBooks、専用の買掛金管理プラットフォームなどの請求書発行・会計ツールが役立ちます。
例外に優先的に対応する: 一致しない情報や不備のある請求書に優先的に対応し、他の通常の請求書はシステムに任せましょう。ほとんどの請求書は、手作業で確認する必要はないはずです。
指標を定期的にチェックする: 処理の平均所要時間、例外的な処理件数、延滞料金などの主要業績評価指標 (KPI) を定期的にチェックしましょう。こうした指標は、遅延がどこで発生しているか、コストの要因がどこにあるのかを明確にします。このデータを活用することで、プロセスを改善します。
業務システムを統合する: 会計ソフトウェア、調達システム、決済プラットフォームを統合すると、時間の節約だけでなく、重複作業の削減にもつながります。
必要に応じてアウトソーシングを活用する: チームのリソースが不足しているなら、請求書の処理を専門の外部業者に委託するか、AI を活用したサービスの導入を検討してみてください。これにより、チームはより重要な業務に集中する時間を確保することができます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。