企業間 (B2B) 決済の自動化とは、テクノロジーを用いて企業間決済を管理・自動化するプロセスのことをいいます。このテクノロジーにより、手動入力の必要性が減り、決済プロセスがよりスピーディーで正確になります。2022 年のレポートによると、調査対象となったイギリス企業の 41%、アメリカ企業の 32% が今後 12 カ月以内に買掛金処理を自動化する予定であることがわかりました。
以下では、B2B 決済の自動化がどのように機能し、どのように利用され、どのように業務を改善できるかについて解説します。知っておくべきことは次のとおりです。
本記事の内容
- B2B 決済の種類
- B2B 決済の自動化とその仕組み
- 決済の自動化が B2B ビジネスにとって有益な理由
- B2B 決済の自動化で改善できるプロセス
- 組織に B2B 決済の自動化を導入して成長を促進する方法
B2B 決済の種類
この項目では、B2B 決済で利用される最も一般的な決済手段をいくつかご紹介します。
銀行振込:電信送金と自動決済機関 (ACH) 送金は、どちらも B2B 決済ではよく利用される決済手段です。電信送金は、銀行間の直接取引であり、通常、急いで支払う必要のある大規模な支払いに利用されます。これらは取消不能であり、特に国際送金の場合、手数料がかかることがほとんどです。ACH 決済は、アメリカ国内の取引で利用される一般的な決済手段であり、電信送金よりも安価ですが、処理には通常数日かかります。
小切手:デジタルソリューションへの移行が進んでいるにもかかわらず、多くの企業、特にデジタル導入が遅れている中小企業や業界では、依然として決済に小切手を使用しています。小切手は一部の電子的方法よりも安価で済みますが、不正利用や紛失のリスクがあり、さらに処理時間も長くなります。
クレジットカード / デビットカード:企業は、利便性と効果的なキャッシュフロー管理のためにクレジットカードとデビットカードを利用しています。カード利用はおまけに、特典、経費記録、不正利用防止のメリットもあります。
デジタルウォレット / オンライン決済プラットフォーム: PayPal、Apple Pay、Google Pay などのデジタルウォレットやオンラインプラットフォームは、B2B 取引でますます受け入れられるようになっています。これにより、企業は銀行情報を共有することなく、電子的に資金をやり取りできます。一部の企業は、国際決済にかかる取引手数料が低いことから、ビットコインなどの仮想通貨を受け入れ始めていますが、ボラティリティーが依然として懸念事項にあります。
発注・請求システム:発注・請求システムは、商品またはサービスが納品された後に請求書発行によって支払いがトリガーされる、伝統的な B2B 決済手段です。最新のシステムでは、このプロセスの多くが自動化されています。
口座引き落とし:口座引き落としでは、別の企業の銀行口座から直接資金を引き出すことができます。これには事前の承認が必要で、通常、サブスクリプションサービスや得意先への支払いといった継続支払いに利用されます。
サプライチェーンファイナンス / ファクタリング:サプライチェーンファイナンスは、企業にサプライヤーへの支払い期間の延長を認める一方で、サプライヤーもオプションで早期に支払いを受けられるようにする一連のソリューションです。これは通常、サードパーティーのプロバイダーによって促進されます。ファクタリングとは、請求書を割引価格で第三者 (ファクターと呼ばれる) に販売し、早期に支払いを受けることを指します。ファクタリングによりキャッシュフローを改善することはできますが、通常、従来の資金調達よりもコストがかかります。
国際貿易:信用状は、売り手への買い手の支払いが時間通りに正しい金額で受け取られることを銀行が保証するものです。契約当事者の信頼性を簡単に確認できない国際貿易で信用状はよく利用されています。国際貿易金融では、船積み書類を担保として、銀行が売り手の代理として買い手から代金を回収する、書類回収という別のプロセスが一般的に用いられています。
B2B 決済の自動化とその仕組み
B2B 決済の自動化とは、ソフトウェアとテクノロジーを駆使して企業間決済プロセスを自動化することをいいます。この項目では、その仕組みをご覧いただけます。
請求書処理
請求書キャプチャーの自動化:システムは、電子メールまたは電子データ交換 (EDI) を介して請求書データを電子的にキャプチャーします。高度なシステムでは、光学文字認識 (OCR) 技術を用いて紙の請求書をスキャンし、データを抽出することもできます。
請求書の照合と承認:自動化されたワークフローにより、請求書と発注書、納品書が照合されます。その後、システムは承認のために請求書を適切な担当者へと送付します。
支払いの実行
支払いのスケジュール:合意された条件に基づいて、システムは支払いをスケジュールし、最適な決済手段を選択します。企業は、早期支払い割引を利用するために支払い期間を最適化するルールを設定したり、キャッシュフロー上の目的で支払い期日まで支払いを遅らせたりすることができます。
決済処理:支払いはスケジュールに従って自動的に実行されます。不正アクセス防止のため、支払い情報は安全に保管・管理されます。
照合と報告
自動照合:支払いが行われると、システムは各支払いを対応する請求書と自動的に照合し、取引を記録します。これにより、正確かつ最新の財務記録を維持できます。
報告・分析:システムは、支払い活動に関する詳細なレポートと分析を生成し、支出パターン、サプライヤーのパフォーマンス、キャッシュフローの改善策に関するインサイトを提供します。
法令遵守とセキュリティ
法規制の遵守:システムにより、すべての支払いプロセスが税法やマネーロンダリング防止 (AML) 法などの関連規制に準拠していることが保証されます。
不正利用の防止:暗号化や多要素認証 (MFA) などの高度なセキュリティ対策によって不正利用を防ぎ、取引を安全に保ちます。
決済の自動化が B2B ビジネスにとって有益な理由
決済の自動化は、B2B ビジネスにさまざまなメリットをもたらします。そのメリットとなり得る点をいくつかご紹介します。
人為的ミスの削減:自動化により、人為的ミスのリスクが軽減され、正確なデータ入力、計算、法令遵守を確保しながら、コストのかかるミスを防げます。
決済プロセスの高速化:自動化により、支払いサイクルや請求書処理、支払いにかかる時間が短縮されるほか、回収スピードと資金管理面が改善します。
手作業の削減: 請求書処理、支払い開始、照合などのタスクを自動化することで、手作業によるデータ入力の手間が省かれ、スタッフはより戦略的な活動に時間を割けるようになります。
リアルタイム追跡:企業は支払いステータスをリアルタイムで追跡して、キャッシュフローや未払いをより詳細に把握できます。
データに基づくインサイト:自動化されたシステムは、支出パターン、サプライヤーのパフォーマンス、財務傾向に関する貴重なインサイトを含むレポートと分析を生成します。
タイムリーな支払い:自動リマインダーと期限内の支払いにより、延滞金の発生を回避し、サプライヤーと良好な関係を保つことができます。一部の自動化プラットフォームでは、ダイナミックディスカウントが適用されることもあります。
透明性のあるコミュニケーション:自動化されたシステムは、支払いステータスに関する明瞭な情報を提供し、サプライヤーとの関係改善に貢献します。
適応性:自動化されたシステムは、ニーズの変化や取引量の増加に合わせて簡単に拡張できます。
グローバル展開:自動化はクロスボーダー決済を容易にし、新しい市場とビジネス拡大の機会を開拓します。
不正利用の防止:決済の自動化により、請求書の重複や不正な支払いなどの不正行為をシステムが検出・防止します。
法令遵守:また、これらのシステムは、企業が規制要件や業界標準を遵守するのにも役立ち、罰則リスクの軽減が期待できます。
B2B 決済の自動化で改善できるプロセス
B2B 決済の自動化により、ビジネスにおける以下のプロセスを変革できます。
調達:自動化により、在庫レベルに基づく発注書の作成、選択したベンダーの管理、電子請求書の処理など、発注から支払いまでの調達プロセスを最適化することができます。また、ワークフローをシステム化することでサプライヤーの比較や交渉の管理を可能にし、企業が最良価格を得られるよう支援します。
買掛金 / 売掛金:請求書のデジタル化、請求書と発注書の照合の自動化、支払いのスケジュール設定、取引の実行が可能になります。売掛金 (AR) に関する場面では、支払いのリマインダーの送信や、入金処理が自動化されるため、タイムリーな請求と迅速な回収が可能になります。
顧客関係管理 (CRM):これらのツールは、顧客とのやりとりを追跡し、顧客行動を分析し、コミュニケーションをパーソナライズすることができます。カスタマージャーニーの最適なタイミングで顧客に連絡し、チャットボットを通じて迅速なカスタマーサービスを提供します。また、自動化により顧客のニーズを予測し、データベースを常に最新の状態に保つことで、サービス提供の改善に貢献します。
サプライチェーンマネジメント:企業は、物流業務の最適化、在庫のリアルタイム追跡、在庫必要量の予測、再注文の発注、出荷から配達までの追跡を自動化することで、サプライヤーとの関係を適切に管理できるようになります。
法令遵守 / リスクマネジメント:決済の自動化は、規制の変更を追跡し、それに応じて内部プロセスを調整するため、コンプライアンス維持に役立ちます。また、取引パターンを分析して、不正利用の可能性を検出・防止することもできます。
人事 (HR):採用から給与計算までの人事プロセスは、自動化の恩恵を受けることができます。自動化されたシステムは、求人情報、応募者の記録、従業員のオンボーディング、給与計算を処理できるため、時間を節約しながら、従業員に関する記録と支払いを正確に管理することができます。
報告・分析:自動レポート作成ツールは、ビジネスプロセス全体からデータを収集し、包括的なレポートを生成します。これにより、企業は実用的なインサイトをすばやく手に入れられ、スピーディーな意思決定と戦略的計画が可能になります。
契約管理:安全な環境で、契約の作成、実行、分析を完全に自動化できます。自動化により、契約は常に一貫性を保ち、法基準に準拠した最新の状態に保たれ、ライフサイクル全体を通じた適切な管理が行われます。
マーケティング:マーケティング自動化ツールは、複数のチャネルにわたるマーケティングキャンペーンの管理および最適化、コンテンツのスケジュールおよび配信、オーディエンスのセグメント化、メッセージ作成のパーソナライズ、キャンペーン効果の追跡が可能です。これにより、マーケティング活動がより効率的になり、投資収益率 (ROI) が向上します。
組織に B2B 決済の自動化を導入して成長を促進する方法
B2B 決済の自動化の導入には、綿密な計画と戦略を要する多段階のプロセスが求められます。自動化を正しく行うことができれば、業務を最適化するとともにその精度を向上させ、ビジネスの成長促進にもつなげられます。この項目では、B2B 決済の自動化を開始するにあたって考慮すべきベストプラクティスをいくつかご紹介します。
小さく始める:まずは、いくつかの主要プロセスを自動化するところから始め、自信と経験を積みながら徐々に規模を拡大して いきましょう。
効果的なコミュニケーション:プロセス全体を通じてすべての利害関係者に情報を提供し、懸念事項にすばやく対処することを心がけましょう。
スケーラブルなソリューションの選択: ビジネスの成長に合わせながら、ニーズの変化に適応できるソリューションを選びましょう。
信頼できるプロバイダーと提携:確かな実績があり、優れたカスタマーサポートを提供しているベンダーを選びましょう。
次に、ビジネスに B2B 決済の自動化を導入するためのプロセスを順を追って詳しく見ていきましょう。
現在のプロセスの評価
既存の決済ワークフローを分析して、ボトルネックやエラーが発生しやすい領域を特定します。時間とリソースを多く消費している手動タスクにも注意を払いましょう。
支払い額、取引タイプ、平均処理時間に関するデータを収集し、自動化の規模を把握します。
目標と目的の定義
決済の自動化によって何を成し得たいのかを決めます。コストの削減、プロセスの高速化、精度の向上、またはこれらすべてでも構いません。
自動化による恩恵がとりわけ大きいと見込まれるプロセスを特定し、その潜在的な影響に基づいて作業の優先順位を決定します。
適切なソリューションの選択
市場に出回っている B2B 決済自動化ソリューションを、機能、拡張性、統合機能、コストなどの要素を考慮しながら比較検討します。
さまざまなソリューションをテストして、既存のシステムやワークフローにどのように適合するかを確認します。
導入計画の策定
現実的な導入スケジュールを設定し、データ移行、システム連携、スタッフのトレーニングに時間を充てます。
導入プロセスに関与する各チームメンバーの役割と責任を明確に決めておきます。
ソリューションの実装
特定のニーズに合わせてソフトウェアをカスタマイズし、既存の会計システムまたはエンタープライズリソースプランニング (ERP) システムに統合します。
既存のシステムから新しいプラットフォームに関連データを転送します。
システムが適切に機能し、要件を満たしているかどうかを入念にテストします。
チームの教育
新しいシステムとプロセスに関する包括的なトレーニングをスタッフに提供します。
フィードバックに積極的に耳を傾け、移行期間中の懸念や課題には適切に対処してください。
監視と最適化
処理時間、エラー率、コスト削減などの主要な指標を監視して、プラットフォームの有効性を測定します。
データとフィードバックに基づいてプロセスを定期的に見直し、パフォーマンスの改善を図ります。
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