ACH 決済の基礎知識: 概要と利用方法

  1. はじめに
  2. ACHとは何の略か
  3. ACH 決済とは
  4. ACH 送金にかかる時間
  5. 誰が ACH 決済を利用するか
  6. どのようなタイプの ACH 取引があるか
    1. ACH 振り込み
    2. ACH ダイレクト支払い
  7. ACH 決済の仕組み
  8. ACH 決済の利用方法
  9. 企業が ACH 決済を受け付けるには
  10. 企業が ACH 決済を受け付ける場合の費用
  11. ACH 決済と電信送金の違い
  12. ACH 送金と EFT は同じか
  13. 企業が ACH 決済を利用するメリット

これまでに振り込みで給与支払いを受け取ったり、口座番号と金融番号を使用して銀行口座から直接公共料金を支払ったりしたことがあれば、個人としてはもう十分に ACH 決済に慣れていることになります。ただし、企業として ACH 決済を受け付けることについてはどうでしょうか?

ACH は、安価で安全確実に決済を処理できる手段です。購入者は、クレジットカードの利用限度額を気にすることなく、高価なアイテムを購入できます。取引と継続支払いのタイプによっては、ACH 送金を利用することで、企業は取引の処理にかかる時間と費用を節約できます。

この記事では、ACH 送金の仕組みから、ACH を決済手段として受け付けるメリットまで、ACH 決済について知っておくべきことを説明します。

この記事の内容

  • ACHとは何の略か
  • ACH 決済とは
  • ACH 送金にかかる時間
  • 誰が ACH 決済を利用するか
  • どのようなタイプの ACH 取引があるか
    • ACH 振り込み
    • ACH ダイレクト支払い
  • ACH 決済の仕組み
  • ACH 決済の利用方法
  • 企業が ACH 決済を受け付けるには
  • 企業が ACH 決済を受け付ける場合の費用
  • ACH 決済と電信送金の違い
  • ACH 送金と EFT は同じか
  • 企業が ACH 決済を利用するメリット

ACHとは何の略か

ACHはAutomated Clearing Houseの略です。Automated Clearing House は、銀行と信用組合による電子決済と送金のやりとりを一元管理するアメリカの金融ネットワークです。

ACH 決済とは

ACH 決済とは、ACH ネットワークを使用して異なる金融機関の口座間で送金することです。

ACH ネットワークは、銀行、信用組合、決済処理会社からなる大規模なグループが運営する独立した組織である全米自動決済協会 (NACHA) によって管理されています。NACHA 金融機関では、小切手、電信送金、クレジットカード、現金を使用することなく、異なる銀行の口座間で直接送金できます。

ACH 送金にかかる時間

ACH 送金は相手先に届くまでに平均 3 ~ 5 営業日かかりますが、ACH ネットワークには現在 ACH クレジットを処理する選択肢として「当日」、「翌日」、「明後日」の決済が用意されています。

ほとんどの人が ACH 送金は他の電子決済手段よりも時間がかかると考えていますが、以前とは異なり今ではそうとも言えなくなっています。2021 年 3 月 19 日、NACHA の運営規則が変更されて、ACH 取引で当日決済の利用が拡大し、ほとんどの ACH 取引で当日決済が可能になりました。

振り込みの場合、ほとんどの雇用主は給料日の数日前に決済を開始するため、受取人の口座には給料日の 9:00 までに入金されます。

誰が ACH 決済を利用するか

2020 年には、ACH ネットワークは 268 億ドルの決済を処理しました。ACH 決済は、幅広い取引で利用できます。ACH 決済のタイプは次のとおりです。

  • 消費者向けの請求書
  • 税金の還付
  • 納税
  • 退職金口座や投資口座の出資金
  • 業務用購入
  • 慈善団体への寄付
  • 大学の学費の支払い
  • 家族や友人間での送金

どのようなタイプの ACH 取引があるか

ACH 送金には、振り込みとダイレクト支払いの 2 つのカテゴリがあります。ここでは、両者の違いを簡単に説明します。

ACH 振り込み

振り込みは、政府機関や企業から消費者へのあらゆるタイプの送金のことです。振り込みのタイプは次のとおりです。

  • 従業員の給与支払い
  • 雇用主からの業務関連経費の払い戻し
  • 政府給付金
  • 税金の還付
  • 年金と利息支払い

アメリカ人の 93% が給与支払いを振り込みで受け取っています。自身がその 93% に含まれる場合は、ACH 送金で給与を受け取っている可能性が高いと思われます。支払いを受ける際に、給与支払いの金額が自動的に分割されて複数の口座に入金される場合、その仕組みは「分割入金」と呼ばれます。分割入金は、ACH ネットワークでも行われます。

ACH ダイレクト支払い

ダイレクト支払いは、ACH ネットワークによる電子資金振替のもう 1 つのタイプです。口座に入金される振り込みとは異なり、ダイレクト支払いは請求書の支払いなどのように自身の口座から自分で送金する ACH 送金です。

ACH 決済の仕組み

ACH 決済を実施している機関は次のとおりです。

  • National Automated Clearing House Association (NACHA: 全米自動決済協会)
    NACHA は、ACH ネットワークの運用を担当する国営の超党派組織です。

  • Originating Depository Financial Institution (ODFI)
    ODFI は、ACH 送金リクエストを発行する金融機関です。

  • Receiving Depository Financial Institution (RDFI)
    RDFI は、ACH リクエストを受け取る金融機関です。

ODFI は、RDFI にリクエストを送って送金します。この 2 つの金融機関は互いに連絡して、送金元の口座に十分な資金があるかどうかを確認し、あれば送金処理を進めます。

この時点で、ODFI は送金リクエストに関する重要なすべての情報をファイルにまとめます。次の情報が含まれています。

  • 取引時間 (クレジットまたはデビット)
  • 金融番号
  • 口座番号
  • 送金額

ODFI は、一定期間内のすべての ACH 送金リクエストをバッチファイルにまとめて ACH オペレーターに送信します。オペレーターは、そのファイルを RDFI に送信します。引き落とし元の銀行が資金を拠出します。拠出された資金は、ACH ネットワークを経由して送金先の口座に入金されます。

RDFI は、その名前に「receiving (受け取る)」が含まれているにもかかわらず、必ずしも ACH 決済の資金を受け取る銀行とは限りません。リクエストを受け取って、ACH ネットワーク経由で送金を開始するのがその役割です。ODFI は、送金リクエストの発生元でありながら、最終的に資金を受け取る機関になることがよくあります。「originating (発生する)」と「receiving (受け取る)」については、資金自体ではなく、ACH リクエストを指しているとお考えください。

NACHA は、ACH ネットワーク経由で送る一定期間内 (通常は営業日の 6 時間ほど) のすべての送金をバンドルし、その日のうちに何度か間隔を空けて各バンドルを決済します。

ACH 決済の利用方法

ACH 決済は、ほとんどの金融機関のオンラインメンバーポータルまたは電話で開始できます。通常必要になる情報は、送信する金額と受取人の金融番号と口座番号だけです。

企業が ACH 決済を受け付けるには

ACH 決済を受け付ける手順は次のとおりです。

1.銀行口座をまだ開設していない場合は開設します。決済処理プロバイダーに加盟店口座がある場合は、そのプロバイダー経由で決済機能を導入できる可能性もあります。
2.ACH 決済を許可するように決済フローを更新します。一般的には、ACH 決済はオンライン決済オプションの標準範囲に含まれていないからです。加盟店サービスプロバイダーは、この更新作業の最善の方法を提示してくれます。
3.購入者に同意書を提示します。同意書とは、企業が購入者の銀行に ACH リクエストを開始することについて購入者の同意を得るための文書のことです。
4.購入者の口座情報を収集し、ACH リクエストを開始します。購入者が ACH 決済を開始することもできますが、通常は企業が開始します。

Stripe の利用者は、決済手段として ACH ダイレクトデビットを開始できます。購入者が銀行口座情報を提供すると、企業はその口座から直接資金を引き出すことができます。1 回限りの購入や継続支払いにも対応しています。Stripe を使用している企業は、これらの ACH デビットをダッシュボードで管理できます。

Stripe など一部の決済処理プロバイダーは、他にも少額入金を使用するオプションなど ACH 決済関連のサービスを提供しています。少額入金は、ACH ネットワークを使用してごく少額のお金 (通常は数セント) を銀行口座に送信し、後で再び口座に戻すことであり、実際の取引を試す前に口座情報を確認するのがその目的です。

企業が ACH 決済を受け付ける場合の費用

ACH 決済を使用するための費用は、決済の処理に使用するプロバイダーによって異なります。Stripe での ACH 決済にかかる費用は 0.80% (上限 5.00 ドル) であり、月額料金や確認手数料はかかりません。そのため、100.00 ドルの決済には 0.80 ドルの手数料が発生し、625.00 ドルを超える決済には 5.00 ドルの費用がかかります。この料金体系モデルは、利用者に定期的に継続して多額の支払いを行う場合に特に便利です。

ACH 決済と電信送金の違い

ACH 決済と電信送金は、どちらも異なる金融機関の口座間で資金を移動しますが、重要な違いが 4 つあります。

ACH 送金
電信送金
ネットワーク
National Automated Clearing House Association (Nacha: 全米自動決済協会) Fedwire Funds Service
スピード
1 ~ 4 日 数時間、最大 2 日間
地域
アメリカおよびプエルトリコ 国際
費用
通常は無料、それ以外の場合数ドル 国内: 最大 35 ドル
国際: 35.5 ドル

ネットワーク
ACH 決済は、NACHA ネットワークを使用して、発行口座から受取口座に移動します。電信送金は、Fedwire Funds Service を使用します。

スピード
従来、電信送金の処理は一般的に ACH 送金よりも高速でしたが、NACHA の規則が変更されたため、今はそうではなくなっています。ACH ネットワークと Fedwire ネットワークによる送金のそれぞれの決済方法のため、送金にかかる時間はさまざまです。

ACH ネットワークは、ほぼ 24 時間体制 (厳密には毎営業日の 23 ¼ 時間) で決済を処理します。ACH ネットワーク経由で送信された決済は、1 日に 4 回処理されます (つまり、送金先の口座に移動されます)。決済を遅くとも 2:15 (東部標準時) までに送信すれば、8:30 (東部標準時) に処理されます。この他に 1 日全体を通して 3 つの同日 ACH 処理スケジュールが存在します。

連邦準備制度の決済サービスを利用できる時間であれば、決済は営業日に処理されます。現時点では、連邦準備制度の決済システムは、毎営業日の 18:30 (東部標準時) に終了します。土日は休業で、月曜日 (月曜日が祝日の場合は火曜日) の 7:30 (東部標準時) に再開します。

地域
ACH 送金はアメリカ国内でのみ使用できますが、電信送金は国際的に送信できます。

費用
ACH 送金は通常、電信送金よりも費用がかかりません。

ACH 送金と EFT は同じか

EFT は、「Electronic Funds Transfer」の略で、電子資金振替のことです。ACH 送金と電信送金の両方を網羅する包括的な用語です。ACH 送金を EFT と呼ぶことも可能ですが、すべての EFT が ACH 送金であるわけではありません。電信送金はその一例です。ACH 決済は特に Automated Clearing House ネットワークを使用しており、他のタイプの EFT には見られません。

企業が ACH 決済を利用するメリット

ACH 決済は、コーヒー 1 杯の購入やレストランでの 1 回の食事の支払いなど、迅速な取引が期待される決済手段には向きません。ACH 送金の送受信と決済の承認に時間がかかるためです。カード支払いやデジタルウォレットなどもっと処理の速い決済手段を利用すれば、企業は秒単位で購入を承認できます。日常のほとんどの取引に望ましいと言えます。

ACH 送金は、多くの場合、これまで顧客が小切手で支払っていたような状況で使用されます。以下に、ACH 決済のメリットをいくつか示します。

費用と時間の節約
ACH 決済には、小切手やクレジットカードよりも優れたメリットがいくつかあります。電子的に送信されるので、小切手よりも処理が速く、送金中に紛失する可能性が低くなります。クレジットカード支払いと電信送金のどちらも、ACH 決済よりも費用がかかる傾向があります。企業にとっては、長期にわたって大幅に節約できることになります。

セキュリティ
NACHA には、ACH 取引に関わる機関や組織を対象とした厳格なセキュリティ規制があります。対象には、ACH 決済を処理する銀行、企業、サードパーティーの決済代行業者などが含まれます。NACHA の規則の中には、すべての機密情報 (たとえば、銀行口座番号) を暗号化する必要があるという要件があります。このため、ACH 決済は不正利用を防ぐのに役立ちます。

経理業務が容易
ACH 送金で経費を支払うと、経理業務を効率化できます。銀行口座やクレジットカードなどあらゆる発生元からの支払いを消し込む必要がありますが、企業の主要銀行口座から開始するように決済を統合すると消し込みが容易になります。ACH 決済は銀行口座間を直接移動し、ほとんどの銀行で継続支払いを設定できるため、繰り返し発生する多くの経費を自動化する場合には、この決済手段がよく選ばれます。

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