ドイツで事業を始めるには、商業登記簿に登録する必要がある場合があります。この記事では、商業登記簿とは何か、誰が登録すべきか、どのような事象を報告する必要があるかについて説明します。また、登録方法や登録費用、登録の取り消し方法についても解説しています。さらに、商業登記に関連する詐欺から身を守るためのヒントもご紹介します。

本記事の内容

• 商業登記簿とは
  
• 商業登記簿への登録が義務付けられている場合とは
  
• 商業登記簿への登録が義務付けられていない場合とは
  
• HRA と HRB とは
  
• 商業登記簿への登録はどのように行われるか?
  
• 商業登記簿の登録にかかる費用
  
• 企業が商業登記に報告すべき事象
  
• 企業は商業登記の際、詐欺未遂からどのように身を守るべきか?
  
• 商業登記簿の登録を削除する必要がある場合とは
  

商業登記簿とは

商業登記簿 または会社登記は、企業の法的および経済的状況に関する公証された情報を含む公開された名簿です。地方裁判所によって運営されており、主にビジネスの透明性と信頼を確保する役割を果たしています。

商業登記簿に登録されている企業は、登録されていない企業よりも信頼性が高いと見なされます。潜在的なパートナー、投資家、銀行、債権者、または当局は、新しいビジネス関係を締結する前に、商業登記簿の抜粋を要求することがよくあります。商業登記簿は、電子形式のみで保管されています。個人を含む誰でも、無料で企業を検索し、保存されている情報を閲覧できます。

企業にとって、登録には別の利点があります。ビジネス名は、地域内の類似した名前に対して追加の保護を受けます。名前は、商業登記簿に登録された企業のみが商取引で使用できます。

商業登記簿への登録が義務付けられる場合とは

ドイツで 商人 として法的に定義されているすべての個人および企業は、商業登記簿に登録する必要があります。一部の法人は、自動的に商人として分類されます。その一部をここでご紹介します。

• 有限責任会社 (GmbH)
  
• 有限責任企業 (UG)
  
• 合名会社 (OHG)
  
• リミテッド・パートナーシップ (KG)
  
• 公開会社 (AG)
  

商業登記簿への登録は、登録商人 (つまり、商業活動を行う個人事業主) にも義務付けられています。条件は、彼らの活動が商業活動に該当することです。この場合、彼らは「事実上の商人」です。商業活動を必要としない企業は、「任意登録商人」と呼ばれます。事実上の商人は商業登記簿に登録する必要がありますが、任意登録商人は登録するかどうかを選択できます。

ただし、個々のケースでは、明確な法的要件がないため、商業活動が存在するかどうかを判断するのが難しい場合があります。評価基準には、売上高、事業資産、従業員数と拠点数、提供されるサービスの種類や製品の数量などが含まれます。

商業登記簿への登録が義務付けられていない場合とは

商業登記簿への登録は、すべての法的形態で義務付けられているわけではありません。たとえば、営利事業を営まない 中小企業 は登録する必要はありませんが、任意で登録することができます。この場合、自動的に登録商人となり、ビジネス名に「e.K.」という略語を追加するなど、関連するすべての権利と義務を負うことになります。GbR が商業登記簿に登録されると、自動的に OHG に転換されます。

対照的に、フリーランスの専門職 は通常、商業登記簿に登録されません。これは、フリーランスの GbR を設立したり、他の人とパートナーシップを結んだりする場合にも適用されます。これらの法的形態は、フリーランスの職業に関するパートナーシップ登録簿に登録されます。

次の表は、商業登記簿への登録が必要な法人と不要な法人の概要を示しています。

法的形態に基づく商業登記簿への登録義務

HRA と HRB とは

ドイツの商業登記簿に登録しようとすると、必ず「HRA」と「HRB」という略語を目にすることになるでしょう。これらは商業登記簿の 2 つの区分を示しており、登録されている事業の種類が異なります。

登録トレーダー、KG や OHG などのパートナーシップ、および法的商業団体は、「商業登記簿部門 A」(HRA) に登録されます。一方、「商業登記簿部門 B」(HRB) には、GmbH、UG、AG などの企業に関連するすべての情報が含まれています。企業の商業登記番号は、関連する部門の略語 (HRA または HRB など) で始まります。

商業登記簿への登録はどのように行われるか?

ドイツの商業登記簿への登録には、いくつかのステップが必要です。

• 法的形態の選択と準備: 最初のステップは、ビジネスの法的形態を決定することです。また、選択したビジネス名が許可されているかどうかを確認し、定款など、法人設立に必要な書類を作成します。
  
• 公証人との相談: 商業登記簿に自分で登録することはできません。登録書類を準備して提出するには、公証人の手続きが必要です。したがって、最初に公証人を見つけ、相談の予約をしてください。
  
• 必要な情報の転送: 公証人は、商業登記簿への登録を開始するためにいくつかの必須情報を必要とします。この情報は、ビジネスの法的形態の種類によって異なる場合があります。いずれにせよ、以下の情報が必要であり、公証人事務所に提供する必要があります。
  
  • 法的形態および業種
    
  • ビジネス名
    
  • 事業の本社および全支店の名称と住所
    
  • 所有者および無限責任社員 (パートナー) の名前
    
  • 代表者の氏名
    
  • 基本資本、株式資本、またはリミテッドパートナーシップ資本の額
    
• 公証人認証: すべての書類と手続きは公証人によって確認されます。すべてが完璧で正確であれば、ビジネスの創業者または代表取締役が署名を行い、それが公証されます。
  
• 株式資本の入金: 選択した法的形態に株式資本を必要とする場合、これをビジネスアカウントに入金する必要があります。次に、振込明細書を公証人に送ります。
  
• 書類の提出: 公証人は、すべての情報と文書を管轄の地方裁判所に電子的に送ります。
  
• 地方裁判所による審査: 地方裁判所は、提出された書類の完全性と法的適合性を審査します。法的形態と 地方裁判所 にもよりますが、このプロセスには数日から長くても数週間かかることがあります。
  
• 登録料の支払い: 地方裁判所は、登録および必要に応じて公開の費用を含む料金通知を発行します。商業登記簿への登録を完了するには、登録料を支払う必要があります。
  
• 登録と公式通知: 商業登記簿への登録が最後のステップとなります。登録は、電子版 連邦官報 に掲載されています。
  商業登記簿の抄本の受領: 登録後、商業登記簿から抄本が送付され、登記簿に登録された企業の現在の状況が記載されます。重要な情報に変更があった場合は、管轄の地方裁判所に報告する必要があります。
  

ドイツの商業登記簿への登録:詳細なガイド

商業登記簿の登録にかかる費用

ドイツの商業登記簿への登録費用は、選択した法的形態、株式資本の額、パートナーの数など、いくつかの要因によって異なります。おおよそのコスト見積もりを始めるには、商工会議所 (DIHK) が適した場所です。多くの場合、ここには信頼できる料金の概要が記載されており、商業登記の登録費用と公証人の費用が含まれているのが理想的です。

たとえば、IHK コブレンツ は、2 人のパートナーによる一般合資会社の商業登記登録の総費用を 240 ユーロと計算しています。登録トレーダーの場合、初期登録には 170 ユ ーロ、KG (リミテッドパートナーシップ) の場合、初期登録には入金額に応じて 208 ユーロから 253.60 ユーロの費用がかかります。

公式手数料の詳細については、商業登記手数料規則 (HRegGebV) にも記載されています。

企業が商業登記に報告すべき事象

企業は、商業登記簿に登録された情報に影響を与える特定の事象や変更を直ちに報告し、適切に更新する必要があります。この変更は、商業登記簿の記載が更新されるまで法的に有効になりません。報告する必要がある事象には、次のものがあります。

• 会社名の変更
  
• 事業の本社所在地の移転
  
• 支店の開設、移転、または閉鎖
  
• 経営陣の交代または代表権の変更
  
• パートナーの加入または退出
  
• 定款の変更
  
• 事業目的または活動分野の変更
  
• 資本金の増加または減少
  
• 破産手続き
  
• 事業の解散および清算
  

ほとんどの事象では、新たな公証人の認証が必要です。情報を登録または更新する義務に従わない企業は、管轄の地方裁判所から罰金を科せられる可能性があります。ドイツ商法 (HGB) 第 14 条 によれば、その金額は 5,000 ユーロを超えてはならないとされています。

企業は商業登記の際、詐欺未遂からどのように身を守るべきか?

一部の犯罪者は、商業登記簿の登録や変更がオンラインで公開されていることを悪用しています。この情報を基に、虚偽の請求書や不審な提案を作成し、企業に送付します。一部の企業は、公式の手紙と見分けがつきにくい商業登記簿からの請求書のようなものを受け取ります。企業は、他の既存の登録簿やデータベースに有料で掲載されるという申し出を受けることがあります。

偽の文書や疑わしい要求を見分けるためには、注意深く確認することが重要です。送信者の名前が手がかりになることがあります。これらは通常、「商業登記簿」というフレーズを基にしており、「取引」、「商業」、「登録」などの言葉が含まれています。その結果、「Bundesverlag Anzeiger Handelsregister」や「Deutscher Gewerberegisterverlag」など、誤解を招くようなビジネス名が生まれます。

また、送金先が誰であるかも確認する必要があります。虚偽の請求書には、通常、個人の受取人が記載されています。ただし、商業登記簿への支払いは、通常、管轄の連邦州の司法財務局を通じて処理されます。国際銀行口座番号 (IBAN) が「DE」で始まっておらず、外国の口座を示している場合は、詐欺未遂の可能性があります。

また、支払い条件や延滞料にも細心の注意を払う必要があります。正式な請求書の支払い期限は通常 14 日です。偽の請求書の支払い期限は、たった数営業日であることもよくあります。また、送金が迅速に行われない場合、高額な手数料を請求する可能性もあります。

本物の手紙か偽の手紙を受け取ったかどうかわからない場合は、公証人に連絡してください。

商業登記簿の登録を削除する必要がある場合とは

商業登記簿の登録はいつでも削除できます。そのためには、削除依頼書を公証して、地方裁判所に提出するだけです。商業登記簿の登録を削除すると、事業は正式に終了し、法律上も存在しなくなります。

商業登記簿からの削除は、次のような場合に必須です。

• 事業の解散
  
• 他の事業への合併または譲渡
  
• 商業事業からフリーランス事業への転換
  
• 商業事業から非商業事業への格下げ