ドイツの UG (有限責任)、重要なポイント

  1. はじめに
  2. UG (有限責任) とは
  3. UG と GmbH の違い
  4. UG の設立方法
  5. UG の社名の要件
  6. UG の責任
  7. UG に課せられる税金
    1. 法人税と連帯付加税
    2. 営業税
    3. VAT
    4. キャピタルゲイン税
    5. その他の税金

会社を設立するときは、最初にどの法的形態を選ぶかで、その後のあらゆる手続きが決まります。有限責任事業者会社 (UG) は、ドイツで最も一般的な会社形態の 1 つです。創業者にとって多くのメリットがあることが人気の要因です。いくつかのポイントは特筆に値します。こちらの記事では、UG とは何か、および UG と GmbH との違いについてご紹介します。また、UG の設立方法、UG を命名する際の要件、責任および税務に関して従うべき規制についてもご紹介します。

この記事の内容

  • UG (有限責任) とは
  • UG と GmbH の違い
  • UG の設立方法
  • UG の社名の要件
  • UG の責任
  • UG に課せられる税金

UG (有限責任) とは

UG は、ドイツ語の Unternehmergesellschaft (英語で 「entrepreneurial company」、起業家的会社のこと) を略した言葉で、有限責任会社のことを指します。GmbH の特殊形態の 1 つであり、「mini-GmbH」や「small GmbH」、「1 Euro-GmbH」と呼ばれる通称でも知られています。つまり、個別の法的形態というより、GmbHG (有限会社法) 第 5a 条により特別なルールが適用されている GmbH とみなされているということです。たとえば、UG の会社は、事業取引を行うときに「有限責任」と明記することが義務付けられています。それにより、従来の GmbH との区別を明確にすることができます。

UG は、創業者や若い起業家が、財務リスクを対応可能なレベルに保ちつつ、法人の法的安全性と専門性を享受できるようにするために、2008 年から導入されました。以来、有限責任 UG はドイツで高い人気を保っています。UG の成功は、イギリスの「Limited company」(有限会社) に似かよっているかもしれません。

UG と GmbH の違い

UG (有限責任) と GmbH の大きな違いは、必要な株式資本の額です。GmbH を設立する場合、25,000 ユーロ以上の株式資本が必要になります。UG の場合、この要件は株主あたりわずか 1 ユーロです。こうした自己資本の安さが、UG をとりわけ資金の限られている創業者に適したものにしています。

このような特殊なルールがあることから、UG では、株式資本が GmbH と同額の 25,000 ユーロに達するまで、年間利益の 4 分の 1 を準備金として蓄積することが義務付けられています。準備金がこの金額に達すると、UG は GmbH に移行することができます。

UG と GmbH のもう一つの大きな違いは設立にかかる費用です。GmbH の場合、設立費用は平均 500~1,000 ユーロです。これには、顧問および公証人、事業登録、商業登記簿への登記などの費用が含まれます。一方、UG は 300 ユーロ程度で設立が可能です。ただし、標準的な登録 (下記参照) を使用することが条件です。

以下に、UG と GmbH の主な違いについてまとめます。

UG
GmbH
株式資本
1 ユーロ以上 最低 25,000 ユーロ
設立準備金
年間利益の 25%、最大 25,000 ユーロ 法的要件なし
スタートアップ費用
250 ~ 300 ユーロ 500 ~ 1,000 ユーロ
事業者名
「UG (haftungsbeschränkt)」または「Unternehmergesellschaft (haftungsbeschränkt)」を含める必要がある 「GmbH」を含める必要がある

UG の設立方法

UG の設立方法は 2 種類あります。1 つ目は、標準的な登録による方法です。2 つ目は、カスタマイズされた定款を使用する方法です。両方とも書類の目的は同じであり、そこで株主の権利と義務を規定します。

標準的な登録とは、標準化された書式を使用する方法で、その内容は法律で規定されています。この書式は、定款、株主名簿、管理者の任命の組み合わせから成ります。UG は原則として 1 人以上で設立が可能です。ただし、標準的な登録を使用する場合、株主の人数は 3 人までです。また、取締役として任命できるのは 1 人のみです。標準的な登録を使用する利点は、必要となる作業を対応可能な範囲に抑えられ、費用も抑えられることです。公証人の費用も抑えることができます。

定款を使用して UG を設立する場合は、上記よりも多くの手続きが必要になりますが、同時に自由度も上がります。こちらの方法を利用すると、個人は、利益の分配、相続、売却権に関して備えておくことができます。さらに、株主または取締役の人数を自由に決めることができます。営業年度も自由に決められ、暦年に対応させる必要はありません。UG の場合、設立時点で、将来的に会社形態を変更するかどうか検討しておく必要があります。たとえば、今後、経営陣をもう 1 人追加する予定があるのであれば、標準の登録は適さない可能性があります。標準の登録の方法は変更が不可能であることから、こうしたシナリオでは定款を使用する必要があります。その場合は追加の費用が発生します。定款を使用して UG を設立した場合は、誰でも随時変更を加えることが可能です。その場合、追加で発生する費用は、公証人の費用のみとなります。

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UG の社名の要件

UG の社名は、その事業を容易に特定できるものでなければなりません。また、他の会社と明確に区別できる必要があります (ドイツ商法第 18 条第 1 項を参照)。よって、業界名や一般的名称を使用した社名では要件を満たせません。また、名前は一意でなければなりません。さらに、会社の活動、規模、地位、所在地、関係者などに関して誤った判断に導くような、誤解を招く言葉を使うことは禁止されています。名前に文字または数字の配列のみを使用することも禁止です。

以上の要件を満たしていれば、UG の株主は自由にビジネス名を選ぶことができます。架空の名前を含め、どのような名前でもほぼすべて使用できます。ただし、名前には「UG (haftungsbeschränkt)」または「Unternehmergesellschaft (haftungsbeschränkt)」という表記を含める必要があります。請求書、通信文書、ウェブサイトも含めて、正式な取引では必ずこの名前を使用しなければなりません。広告やソーシャルメディア上の投稿では、法的形態を付記する義務はありません。

UG の社名の一例を以下にご紹介します。

  • Computerservice UG (haftungsbeschränkt) Mainz
  • Schmidt & Müller Elektronik Unternehmergesellschaft (haftungsbeschränkt)
  • Portraitfotografie Sunlight UG (haftungsbeschränkt)

特定の名前を使用できるかどうかの判定は、関係する登記裁判所の地方裁判官が行います。裁判官が許可した場合、その UG は商業登記簿に登記できます。また、商工会議所 (IHK) で予備審査を行うこともできます。IHK でビジネス名の審査を行えば、そのビジネス名が登記裁判所で拒否されるか許可されるかを予測することが可能です。

UG の責任

UG は GmbH の特殊形態の 1 つであり、法人であるため、自律的な法人格を有しています。UG の責任は、その名前が示す通り有限です。GmbH と同様、株主および取締役の責任は会社の資産までに制限され、個人の資産には及びません。この点は、GbR のようなパートナーシップと比べて大きなメリットと言えます。財務リスクが制限され、個人が破産する恐れがないためです。UG の株主が個人的に責任を負うのは、意図的な、または重大な過失による不正行為が発生した場合のみです。

UG に課せられる税金

UG は、さまざまな税金を課せられます。税金の種類は、会社の利益や規模、その他要件に応じて変わります。こうした税金には、以下のものがあります。

  • 法人税
  • 連帯付加税
  • 営業税
  • 付加価値税 (VAT)
  • キャピタルゲイン税
  • 雇用税 (任意)
  • 固定資産税 (任意)
  • 土地譲渡税 (任意)

法人税と連帯付加税

UG は法人であるため、法人税法 (KStG) の対象となります。利益には 15% の税金が課されます。課税対象額の決定のため、UG は、法人税申告書と年次財務諸表とを毎年税務署に提出します。

加えて、UG は、法人税額の 5.5% の連帯付加税を支払う必要があります。

営業税

ドイツの企業は、営業税を支払うことが法律で義務付けられています。この義務は、商業登録事務所に登録している UG にも適用されます。営業税の額は、UG の利益と、関連する地方当局が適用している営業税の評価率によって決まります。

VAT

UG は、ドイツ国内で販売した商品とサービスに対して、19% または 7% の VAT を支払う必要があります。ただし、売上高が低い場合、UG は小規模事業者向けの規定により VAT を免除される場合があります。この規定は、前年の年間売上高が 22,000 ユーロ以下で、当年の売上高が 50,000 ユーロを超えることが予測されていない場合に適用されます。この前提条件は、VAT 法 (UStG) 第 19 条に規定されています。

キャピタルゲイン税

企業が配当を配る場合、それに対して 25% のキャピタルゲイン税と 5.5% の連帯付加税を支払う必要があります。この税金は、企業が徴収し、毎月税務署に送金されます。

その他の税金

雇用税、固定資産税、土地譲渡税は、すべての UG に義務付けられているわけではありません。これらの税金は、特定の状況においてのみ適用されます。

UG が従業員を雇用している場合は、従業員の給与に応じた雇用税を毎月支払う必要があります。雇用税の金額は、各従業員の給与と個別の状況に応じて変わってきます。

固定資産税は、企業が開発地または未開発地を所有している場合のみ支払う必要があります。不動産の単価を評価のベースとし、これに税率 0.0035 を乗算します。その後、固定資産税の測定額に、市区町村の個人の固定資産税の評価率を乗じます。

UG が自身の資産を用いて不動産を購入する場合、土地譲渡税が 1 回限りで適用されます。税額は、土地の購入金額に、州ごとの税率を乗算して算出します。税率は 3.5~6.5% です。

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