ドイツの GmbH の株式資本

  1. はじめに
  2. GmbH の株式資本とは
  3. GmbH の設立時に必要な株式資本額
    1. 最初に入金する金額
  4. 株式資本の形態
  5. 株式資本の入金方法
  6. 株式資本を維持する義務: 株式資本は自分で使えるか?
  7. 株式資本の代わりとなる方法
    1. 「正規の」 GmbH に代わる形態
  8. 株式資本は貸借対照表にどのように記載されるか
  9. GmbH が解散すると株式資本はどうなるか

株式資本は、ドイツの GmbH (有限責任会社) の支柱であり、GmbH のあらゆる事業活動の財務基盤です。会社法の最も基本的な概念の 1 つであるこの株式資本は、GmbH の設立、経営、さらには解散に際しても重要な役割を果たします。こちらの記事では、ドイツの GmbH の株式資本に関する法的要件や、重要な要素についてご紹介します。

この記事の内容

  • GmbH の株式資本とは
  • GmbH の設立時に必要な株式資本額
  • 株式資本の形態
  • 株式資本の入金方法
  • 株式資本を維持する義務 - 株式資本は自分で使えるか
  • 株式資本の代わりとなる方法
  • 株式資本は貸借対照表にどのように記載されるか
  • GmbH が解散すると株式資本はどうなるか

GmbH の株式資本とは

GmbH の株式資本とは、その会社の設立時に株主が入金する資本金のことです。株式資本は GmbH の財務基盤となり、回収可能な資産となります。

GmbH が倒産すると、株式資本が債権者を保護することになります。つまり、株主、顧客、サプライヤーの担保となるのです。また、現金や現物出資で提供され、売掛債権の形態を取ることもあります。株式資本は公証人が管理する特別な口座に支払われます。公証人は、会社法人等番号の認証も行います。

GmbH の設立時に必要な株式資本額

ドイツで GmbH を設立する際に必要になる株式資本の額は、法律で決められています。GmbHG (有限会社法) 第 5 条第 1 項では、株式資本は 25,000 ユーロ以上と規定されています。設立時に、株式資本をこの額ですべて発行しなければならないわけではありません。株式資本の一部は、将来の投資の準備金として、あるいは事業活動の担保として機能します。ただし、会社設立時には 12,500 ユーロ以上を入金する必要があります。

株式資本の額は、株主の責任に影響します。GmbH は法人であるため、株主の責任は、一般に自身の出資の範囲内に留まります。つまり、GmbH が倒産しても、通常は株主の個人資産に影響が及ぶことはありません。

最初に入金する金額

GmbH を設立する際は、さまざまな法的要件を考慮することになります。入金する株式資本の額もこれに含まれます。GmbH を設立するときは、株式資本は現金か現物出資で支払います。最低金額の 12,500 ユーロは、直ちに入金する必要があります。残りは、GmbH の設立から 5 年以内に支払います。株式資本の必要額が即時に入金されなかった場合、株主は不足分を支払う責任を負うことになります。これは、GmbH が倒産した場合に、負債の清算に株主の個人資産が使われる場合があるということを意味します。

この入金要件に従わなかった場合、重大な結果につながりかねません。たとえば、GmbH が「虚偽のビジネス」とみなされ、株主が会社の負債を負うことになり、責任の限度が株主の全資産にまで及ぶことになるなどです。要するに、GmbH を設立するときは、設立メンバーは、株式資本を入金する要件をしっかりと理解しておかなければならないということです。法的リスクを回避し、確固たる財務基盤の上でビジネスを運営するために、こうした法的要件には必ず従わなくてはなりません。

株式資本の形態

ドイツで GmbH を設立するときは、株式資本はさまざまな形態をとることができる、ということを認識しておくことが重要です。ドイツの GmbH では、株主は、株式資本の拠出方法を現金、機械、不動産、その他の資産などから自由に選ぶことができます。それにより企業は、自社の財務基盤を個々の状況に適応させることができます。

株式資本として拠出可能な形態を以下にご紹介します。

  • 現金: 株式資本を入金する際の最も一般的な方法が現金です。株主は、合意済みの金額を現金で入金することで出資します。入金は、その GmbH 専用の特別口座に対して行われます。GmbH は、この流動資産を、投資、運営費、その他の費用などにすぐに使うことができます。

  • 現物出資: 株主は、現金の他、現物で出資することもできます。たとえば、機械、車両、オフィス設備などの資産から、特許や商標といった無形資産まで、出資が可能です。現物出資の評価は、通常は専門家が行い、法的な要件を満たす必要があります。

  • 不動産: 出資のもう 1 つの方法が、不動産を使った方法です。たとえば、土地、建物、その他種類の不動産を使用できます。ここでも、GmbH の資産の価値を正しく判定するため、適切な専門家による評価が必要になります。

  • 売掛債権: 現金、現物出資、不動産の他に、第三者からの売掛債権を入金の際に使用することもできます。たとえば、GmbH が設立前からサービスの提供を始めており、その代金が未払いである場合などがこのケースに該当します。売掛債権の評価では、その GmbH におけるそれらの価値も判定する必要があります。

株式資本の入金方法

株式資本は、適切かつ合法的な方法で入金する必要があります。最も一般的な方法は、現金入金による方法です。株主は、合意済みの金額を、その GmbH の専用の銀行口座に送金します。この口座は通常、公証人が開設します。GmbH の会社法人等番号の認証も、この公証人が行います。株式資本を現物出資、不動産、売掛債権で行う場合は、専門家によるそれらの評価と、法的要件の遵守が必須となります。

資本金は、常に公証人の管理の下で入金されます。公証人が入金をチェックし、すべての法的要件が満たされていることを確認します。公証人は、GmbH の会社法人等番号の認証も行うなど、設立手続きを合法的に進めるための重要な役割を果たします。

株式資本を維持する義務: 株式資本は自分で使えるか?

株式資本を維持する義務は、債権者の保護と会社の財務安定性確保のため、ドイツの GmbH における基本の法的要件となっています。株式資本を使用することは、厳しく規制されています。この規制により、GmbH はさまざまな法的義務を果たし、確固たる財務基盤の上で事業を運営することが可能になっています。有限会社法では、株主は GmbH の株式資本が永久に維持されるようにしなければならないと規定されています。

この義務は、資本金の使用に以下のような効果をもたらしています。

  • 責任の制限: 株式資本は、GmbH が倒産したときにその債権者を保護します。株式資本を個人的な目的に使用しないことで、株主は、責任が及ぶ範囲を会社の資産に制限することができます。つまり、株主の個人資産にリスクが及ぶことはありません。

  • 株主への分配の禁止: 株式資本は、確固たる法的基準に則って、適切に利益を分配する時期に行われる場合を除いて、株主に安易に分配したり払い戻したりすることはできません。

  • 事業運営での使用の禁止: 株式資本は、GmbH の通常の事業運営に使用することを目的としたものではありません。株式資本は、債権者の担保として機能することをその目的としています。よって、GmbH は株式資本を投資費用や運営費用に充てることはできません。会社は、こうした目的には、所有する資産や借入資本を使用します。

  • 資本維持ルールの遵守: 株主は、株式資本が、損失や分配によって法律で規定された最低金額を下回らないように維持する義務があります。維持できなかった場合、株主はその損失に対して個人的な責任を負う場合があります。

株式資本の代わりとなる方法

正規の GmbH では、株式資本の、文字通り直接代わりとなる方法はありません。株式資本はこの法的形態の根幹であり、最低株式資本は法的要件となっているためです。

ただし、GmbH の財務基盤を強化する、あるいは追加の資金を集める方法はいくつかあります。

  • 増資: GmbH は、株主からの追加出資により株式資本を増やすことができます。それにより、会社の財務安定性が強化され、より多くの資金を投資や成長に回すことができます。

  • 準備金の積み立て: 株式資本を増やす代わりに、GmbH は利益を保持して、貸借対照表に準備金として記載することができます。これらの資金は財務上の準備金として、投資や、必要に応じて損失の補填に使用することができます。

  • 他人資本: GmbH は、株式資本と同じように、銀行やその他金融機関からの借り入れにより外部から資本を調達することができます。それにより、株主の持ち分を増やすことなく追加資金を調達できます。

  • エクイティファイナンス: GmbH は、会社の株式を外部の投資家に売却することで資金を調達することもできます。この方法は、大規模な設備投資や拡張計画でとりわけ有効です。

  • 提携やジョイントベンチャー: GmbH は、他の会社との提携やジョイントベンチャーを通じて追加の資金調達を行うこともできます。他の会社と協力することで、費用やリスクを分散でき、ビジネスチャンスを広げることができます。

「正規の」 GmbH に代わる形態

従来の GmbH に代わる形態、とりわけ設立資金が限られている創業者に適した形態がいくつかあります。これはつまり、株式資本に代わる方法があるということでもあります。その 1 つが mini-GmbH です。「起業家法人 (有限責任)」または「UG (Unternehmers Gesellschaft)」ともいいます。

mini-GmbH あるいは UG は、GmbH の特殊形態の 1 つです。資金が限られている創業者でも簡単にビジネスを始められるようにするために導入されました。UG の設立には、従来の GmbH のような 25,000 ユーロの最低資本金は必要ありません。UG は、1 ユーロの株式資本で設立できます。

mini-GmbH のメリットを以下にご紹介します。

  • 少ない資本で開始できる: UG は 1 ユーロの株式資本で設立できるため、資金が限られている人でも簡単にビジネスを始めることができます。

  • 柔軟性が高い: UG の設立後は、株式資本を、最低金額の 25,000 ユーロに達するまで徐々に増やしていくことができます。この金額に達すると、UG を従来の GmbH に移行させることができます。

  • 責任が制限されている: GmbH と同様に、UG の株主の責任は、会社の資産に限定されます。責任の限度が個人の資産に及ぶことはありません。

開始のハードルは低いものの、UG の設立には特定の制約が伴います。従来の GmbH に比べると、正式なビジネスとして捉えられないことが多いためです。このことは、たとえば取引上の関係に影響を及ぼすことがあります。さらに、株式資本を徐々に増やして UG を GmbH に移行させる (それが目標である場合) のであれば、長期的な財務計画が重要な役割を果たすことになります。

株式資本は貸借対照表にどのように記載されるか

株式資本は、GmbH の貸借対照表の中心的要素です。そこには会社の財務基盤が反映されています。GmbH の株式資本は、貸借対照表の純資産の部に記載されます。株式資本は、自己資本の中で、多くの場合、個別の項目として記載されます。株式資本が会社の財務基盤としていかに重要であるかがそこに表れています。

GmbH が設立されると、株式資本は、貸借対照表の資産側に借方として記録されます。これは、株式資本が会社に帰属する資産であるためです。同時に、株主による出資を記録するために、対応する貸方が貸借対照表の負債側に記録されます。

資本が追加されると、出資された追加の資金が、借方として貸借対照表の資産側に記録されます。株主による出資を記録するために、対応する貸方が貸借対照表の負債側に記録されます。その結果、株式資本もそれに応じて増加します。

GmbH が解散すると株式資本はどうなるか

GmbH の解散は、法的、財務的なさまざまな要素が絡み合う大きな出来事です。

GmbH が解散すると、その会社は清算の手続きに入ります。資産が売却され、負債が支払われ、売却で得た収入は株主に分配されます。この手続きの間、株式資本は手つかずで残され、債権者の担保としての機能を持ちつづけます。

残りの株式資本を株主に払い戻すことができるのは、清算手続きが完了して負債がすべて支払われた後です。払い戻しは、通常は株主構造に従って行われます。ただし、株式資本は、清算が完了しすべての負債が支払われた後に、はじめて払い戻すことができます。

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