ドイツの GbR についてビジネスが知っておくべきこと

  1. はじめに
  2. GbR とは
  3. GbR のメリット
  4. GbR のデメリット
  5. GbR の登録方法
  6. GbR の解散方法
  7. GbR から GmbH への転換方法

ビジネスの立ち上げを目指す場合は、自分のニーズに最もよく適した法的形態を慎重に検討する必要があります。GbR は比較的障壁が低いため、創業者によく利用される選択肢です。GbR (Gesellschaft bürgerlichen Rechts、すなわち民法上の組合) の定義、そのメリットとデメリット、登録と解散の方法、GbR から GmbH への転換方法を確認しましょう。

この記事の内容

  • GbR とは?
  • GbR のメリット
  • GbR のデメリット
  • GbR の登録方法
  • GbR の解散方法
  • GbR から GmbH への切り替え方法

GbR とは

GbR は、ドイツ語の「Gesellschaft bürgerlichen Rechts」の略語で、「民法上の組合」を意味します。GbR は、2 人以上が協力してプロジェクトを実現し、共通の事業利益を追求する事業構造です。これは非公式の連携でもかまわないため、GbR はドイツの法律に基づく最も簡略かつ単純なパートナーシップの形態と言えます。GbR は、GmbH や AG などと比べるとそれほど知られていませんが、ビジネスでも非公開のベンチャー企業でもよく見られる形態です。

GbR の設立は、他の法的形態よりも比較的簡単かつ迅速に行えます。このため、さまざまな目的がある中で、特にスモールビジネス事業主フリーランスの専門職、グループ事業所やジョイントベンチャーをまとめるのに最適です。GbR の法的根拠は、ドイツ民法 (BGB) の第 705 項 ~ 第 740 項で規定されています。そのため、GbR は BGB 事業とも呼ばれます。

2024 年 1 月から人的組合法の現代化のための法律 (MoPeG) が施行され、その中で GbR と eGbR が明確に区別されるようになりました。eGbR (「eingetragenen Gesellschaft bürgerlichen Rechts」、すなわち「登録 GbR」) が従来の GbR と異なる点は、新たに追加された会社登記です。この登記により、eGbR には法的能力が認められます。

GbR のメリット

GbR は設立が簡単で、最小限の資金で開業できます。さらに、少数の例外を除き、ほぼすべての想定される目的で GbR を利用することができます。GbR は商業登記を行う必要はありません。もう 1 つのメリットは、他の大半の法的形態とは異なり、GbR には事業用資産としての最低資本金の要件がないということです。このため、資金力が乏しいビジネスオーナーにとって特に魅力的な選択肢となります。

また、基本定款が推奨される場合 (以下を参照) であってもそれが立法機関により義務付けられていないことから、GbR はさらに設立しやすくなっています。基本定款を作成する場合は、GbR のパートナーは、その法的な関係を規定する余地が十分にあります。一般に、GbR のパートナーには数多くの共同決定の機会があります。

GbR の会計処理も、ビジネスの設立と同様に簡単です。年間利益が 6 万ユーロ未満、年間売上が 60 万ユーロ未満であれば、貸借対照表または年次財務諸表の作成や公表の義務はありません。事務処理の手間は、簡易な損益計算書を作成することだけです。この点については、所得税法第 4 条第 3 項を参照してください。GbR で損失が生じた場合は、パートナーが自己資金で比較的簡単に損失を補填することができます。

GbR のデメリット

GbR は、設立に 2 人以上が必要であるため、個人事業主には適しません。また、GbR の商号に架空の名前やブランド名を含めることはできないため、パートナーの創作性に制限が課されます。

決議に対する明確な変更が基本定款で規定されていない限り、決議は全員一致の場合にのみ可決されるため、意思決定が妨げられ、プロセスに遅れが生じる可能性があります。

株式資本がないことで、さらなる潜在的なデメリットもあります。とりわけ、GbR は投資家から信頼性が低いとみなされるため、他の法的形態と比べて投資家間の評判が芳しくない傾向があります。成長のために投資家に大きく依存しているスタートアップの場合は、GbR が適しているかどうかを慎重に検討するべきです。

しかし、GbR の最大のデメリットは、ビジネスの資産に対する賠償責任の限度が設けられていないことです。パートナーは常に自分自身の個人資産で賠償責任を負います。

さらに、GbR の年間余剰金がパートナーに移管され、それぞれの個人の納税申告を通じて課税されることも、デメリットとみなされる可能性があります。

GbR の年間収入が 50 万ユーロを上回ると、法律により自動的に商企業に分類され、その後は一般的なパートナーシップ (合名会社、すなわち OHG) へ転換しなければなりません。個人の場合は、このような強制的な転換がデメリットと見なされる可能性があります。

GbR の登録方法

GbR の登録は比較的簡単ですが、いくつか実行すべき手順があります。それに加え、すべての法的要件を確実に満たすために、税務アドバイザーや弁護士に相談することをお勧めします。

  • 基本定款を作成する (任意)
    法律では義務付けられていませんが、パートナーは GbR の設立前に基本定款を作成するべきです。この中で、事業の目的、責任の配分、意思決定、利益の分配、賠償責任など、GbR の基本的側面が規定されます。最も重要なポイントを書面で明示することで、GbR 内で対立が生じる可能性を抑えることができます。

  • 名前を選択する
    GbR はパートナーシップであり、企業ではないため、取引上の正式な名称はありませんが、それでも商号は必要です。商号には、「GbR」と並んでパートナーの名前が含まれます。これは、GbR が、ビジネスの経済的責任を負う人物を示す公的な登記簿に登録されないためです。GbR を構成する個人に関する透明性を確保するために、商号が必要であり、公式文書や GbR のウェブサイトにそれを記載する必要があります。GbR の名前は、事業分野を指定するなど、ビジネスの目的も反映していることが望ましいとされます。パートナーは、名前の決定後、それが利用可能かどうか現地の商業登記所または登記機関に確認する必要があります。

  • ビジネスを登録する (商業的な事業体の場合のみ)
    GbR として商業活動を行う者は誰でも、現地の登記機関に登録しなければなりません。登記機関は管轄の税務署に関連情報を転送します。しかし、GbR がフリーランサーの共同体である場合は、登記機関に登録する義務はありません。ドイツにおけるさまざまな種類の自営業に関する詳細は、これに関する Stripe の記事をご覧ください。

  • GbR を税務署に登録する
    商業的な事業体がビジネスを登録すると、その後、税務署から連絡があります。ただし、フリーランサーが GbR を設立する際は、自分で税務署に連絡しなければなりません。どちらの場合も、パートナーが税務登録フォームに記入する必要があり、その後、税務署がこの情報を確認します。最後に、将来のあらゆる税務手続き時に記載しなければならない納税番号が GbR に割り当てられます。GbR が国外で事業を行う予定である場合は、パートナーはこのフォームで付加価値税 (VAT) 登録番号も申請することができます。

  • 商工会議所に GbR を登録する (商業的な事業体の場合のみ)
    登記機関が GbR の登録を税務署に転送するのと同様に、商工会議所 (IHK) も通知を受けます。IHK はその後、GbR のパートナーに登録フォームを送付します。営利的な事業体は、IHK への加入が必須です。一方、フリーランサーは一般的に IHK に加入しません。

  • GbR の商業登記を行う (任意)
    厳密に言えば、GbR は商業登記を行う必要はありませんが、商業的な業務がある場合は、任意で登録することができます。現地の地方裁判所で、対応する登録が行われます。

  • 社会保険事業者に従業員を登録する
    GbR が従業員を雇用している場合は、社会保険事業者に従業員を登録し、社会保険の負担金を支払わなければなりません。このためには企業番号が必須条件です。申し込みは雇用局で行うことができます。社会保険料を支払う必要がある従業員については、GbR は税務署に所得税を支払うことも義務付けられています。さらに、従業員は法定傷害保険への加入、雇用主の損害賠償責任保険組合への登録も必要です。

  • ビジネス用銀行口座を開設する (任意)
    ビジネス用銀行口座は、GbR の法的要件ではありません。しかし、事業資金と個人資金を区別しておけるように、新しい銀行口座を開設することが推奨されます。

  • 会計処理プロセスを確立し、保険に加入する
    キャッシュフローが少ない GbR であっても、適切な会計処理を行わなければなりません。とりわけ納税申告書を正しく作成するため、内外のリソースを利用して会計処理プロセスを確立する必要があります。さらに、事業活動に保険が必要かどうか、必要な場合はどの保険が適しているかも慎重に検討するべきです。

GbR の解散方法

GbR が解散される理由はさまざまです。一時的あるいは期間限定の事業の終了や支払い不能のほか、事業の中心的な目的が長期にわたり履行されていないことや、この目的が達成されたことなどの理由があります。ただし、パートナーの死亡により、GbR が自動的に終了することはなく、結果的に事業を運営できるパートナーが 1 人になった場合でも例外ではありません。このようなケースでは、GbR は個人事業主として事業を継続します。

根本的原因にかかわらず、GbR の解散は以下の手順で実行されます。

  • 基本定款を確認する
    解散時に適用される明確な規定は、基本定款内に記しておくことが理想的です。このため、GbR を解散する際は、まず基本定款を参照するべきです。

  • 決議を可決する
    GbR を解散するには、全パートナーの全員一致による決議が必須です。これについて、正式に書面に記録する必要があります。

  • 負債を精算する
    GbR の解散は、あらゆる負債の返済が完了した後にのみ可能です。従って、事業者は、何よりもまず未払いの請求書と税金をすべて支払わなければなりません。

  • 資産を売却する
    負債の清算が完了し、GbR が解散されると、ビジネスの残りの資産は売却され、パートナー間で分配されます (ドイツ民法第 735 条を参照)。分配は、資本金に比例して行うか、基本定款内の取り決めに従って行うかのいずれかです。

GbR から GmbH への転換方法

GbR が成功を収めるほど、パートナーの個人的な賠償責任リスクも高まります。これが、GbR から GmbH に転換する理由の 1 つです。GbR の資産を有限責任会社に移管する方法は主に 2 通りあります。1 つはビジネスの法的形態を変更すること、もう 1 つは現金以外により法人化することです。

パートナーシップ法の改正が施行された 2024 年 1 月 1 日以降、eGbR (すなわち、会社登記簿に登録された GbR) であれば、GbR から GmbH に直接転換することが可能になりました。会社登記を行わない従来の GbR の場合は、GmbH への転換前に、一般的なパートナーシップ (OHG) やパートナー企業として登録するなどの中間的な手順がまだ必要です。

どちらの場合も、法的形態の変更を進めるため、詳細な転換報告とパートナーの決議が必要になります。当然ながら、公証を受けたパートナーシップ契約書の作成など、GmbH を設立するための基本規定を遵守しなければなりません。その際、GmbH が GbR の法的後継者となり、すべての権利、義務、資産が移管されます。

GbR から GmbH に転換する 2 つ目の方法 (現金以外による法人化) では、パートナーシップおよびそのすべての事業資産が現物拠出の形で GmbH に引き渡されます。所有権の移転を規制する民法に従って、GbR の資産をすべて移管する必要があります。

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