解約管理に関する基礎知識: 事業者向け戦略ガイド

  1. はじめに
  2. 解約の種類
  3. 解約率の計算方法
  4. サブスクリプションビジネスにとって解約が極めて重要である理由
  5. 解約の原因を特定する方法
  6. 解約管理の戦略
  7. Stripe にできること

解約率 は、利用者またはサブスクリプション登録者が、一定期間内で、製品やサービスの利用を中止する時期を映しています。これは、企業が顧客維持、ロイヤルティ、全体的な満足度を評価するために追跡する指標です。高い解約率は、相当数の利用者が離れていることを示し、製品やサービス、市場競争、カスタマーサービス戦略に問題があることを示唆している可能性があります。

どの企業においても、解約率を低い水準で維持することは、顧客が満足していて、ロイヤルティが保たれ、競合会社に切り替える可能性が低いことを意味します。解約を理解することで、企業は、貴重な顧客基盤に適応し、これを維持するための戦略を立てて、長期的な安定性を確保することができます。

以下では、解約管理について事業者が知っておくべきことを、その重要性と対処方法の詳細を含め、詳しく見ていきます。

この記事の内容

  • 解約の種類
  • 解約率の計算方法
  • サブスクリプションビジネスにとって解約が極めて重要である理由
  • 解約の原因を特定する方法
  • 解約管理の戦略
  • Stripe にできること

解約の種類

解約率は単なる 1 指標ではなく、企業と顧客の関係を示す複雑な信号です。解約について調べるには、顧客とのやり取り、顧客の満足度、ロイヤルティを詳しく見る必要があります。以下では、解約の種類と、それが企業にとって何を示唆するのかを説明します。

  • 自発的な解約: 自発的な解約 (能動的な解約とも呼ばれます) は、利用者が、ある企業との関係を終了することを意図的に選んだときに発生します。これは、より深い問題を反映していることが多く、利用者の期待と製品の価値提案との間のギャップや、カスタマーサービスに対する不満を表している可能性があります。この種の解約を追跡する場合、解約後の聞き取り調査やアンケートを行うことで、有意義な情報を得ることができます。フィードバックに耳を傾け、それを製品の改善や顧客体験戦略の指針として利用して、行動することが重要です。この種の解約には、解約の理由、カスタマーサービスのチケット、利用パターンなど、解約につながるデータが残るという特徴もあります。このデータを利用して、顧客体験において顧客がストレスを感じた瞬間を特定し、それを緩和するための介入を設計することで、解約を防ぐことができます。

  • 意図しない解約: 意図しない解約は、支払いの失敗やサービスの問題など、多くの場合は利用者にはどうにもできない理由が原因で発生します。意図しない解約を減らすには、決済処理、強力なカスタマーサポートシステム、事前対応のためのアウトリーチプログラムの計画を立て、解約に気付いていない可能性のある利用者のエンゲージメントを取り戻す必要があります。

  • 受動的な解約: 受動的な解約は、利用者からの動きがないまま発生する解約の一種です。利用者は、特に手続きを取ることなく、製品やサービスとの関係を絶ちます。これは、エンゲージメントの欠如や、利用価値を忘れてしまったことを示唆しています。受動的な解約を検知するには、エンゲージメントの指標を注意深く観察する必要があります。たとえば、ログイン回数の減少、活動の低下、更新の失敗などの指標です。受動的な解約に対処するには、パーソナライズしたマーケティングやコミュニケーションを通して、見過ごされている可能性のある価値を再認識してもらい、利用者のエンゲージメントを取り戻します。

  • レベニューチャーン: レベニューチャーンは、利用者数だけではなく、売上金額に焦点を当てて、解約を財務的な視点から見たものです。ビジネスにとって、支出額の低い利用者を多数失うことと、高額の利用者が少数離脱することを区別することが重要です。この視点から、財務面での影響に基づいて顧客維持の取り組みの優先順位を決めることができます。レベニューチャーンを分析した結果、階層化された顧客維持戦略を策定するようになり、時には、最終的な収益への影響が最も大きい高価値顧客セグメントに重点を置くことがあります。

それぞれの解約の種類は、ビジネスで不足している点と成功している点を示しています。解約に対して細やか対応を行うことで、分析結果を、持続可能な成長のための資産へと変えることができます。

解約率の計算方法

解約率を計算することで、顧客維持とビジネスの健全性についての貴重なインサイトを得ることができます。一般的な計算方法は以下のとおりです。

  • 期間を決める: 解約率を測定する期間 (1 カ月、四半期、1 年など) を選びます。

  • 解約を定義する: 対象となるビジネスで、何をもって解約とするかを定義する必要があります。サブスクリプションサービスの場合は利用者がサービスをキャンセルしたとき、アプリの場合はユーザーが一定期間にわたってログインしなかったときを解約と呼ぶことができます。

  • 顧客基盤を把握する: 期間の開始時点での利用者の人数を特定します。この期間が始まる前に製品やサービスの利用を開始していた利用者のみを含めてください。既存の利用者が期間中に解約したかどうかを正確に把握するためです。

  • 解約した利用者を数える: 選択した期間中にサービスを解約した利用者の数を数えます。

  • 計算する: 解約率を計算するには、解約した利用者の数を、期間開始時の総利用者数で割り、100 を掛けてパーセンテージを出します。

解約率の計算式を以下に示します。

解約率 = (解約した利用者の数 / 期間開始時の総利用者数) × 100

たとえば、月初の利用者数が 200 で、月末までに 10 人が解約した場合、月間解約率は以下のようになります。

解約率 = (10 / 200) × 100 = 5%

これが基本的な計算式ですが、期間中の新規顧客獲得や失った利用者の価値 (レベニューチャーン) を考慮する、より複雑な計算方法もあります。

サブスクリプションビジネスにとって解約が極めて重要である理由

サブスクリプションビジネスにとっては、解約は最大の懸念事項の 1 つです。それには、以下のようにさまざまな理由があります。

  • 顧客獲得単価 (CAC) と顧客維持費用: 各利用者を獲得するために投資したリソースは、その利用者が解約すると失われてしまいます。高い解約率は事業者の資本をすぐに枯渇させてしまう可能性があり、失ったサブスクリプション登録者の代わりとなる新たな利用者を見つけるには多大なコストがかかるため、事業を維持できなくなります。

  • 顧客生涯価値 (LTV) への影響: 解約が発生すると顧客の LTV が減り、その顧客から事業者が得られると期待される合計売上高が減ってしまいます。LTV が減ると、次第に売上が減少し、ビジネスの成長のために再投資できる資本が制限されることになります。

  • 潜在的な問題の示唆: 高い解約率は、製品やサービスの潜在的な問題を示唆する可能性があります。たとえば、顧客の不満や、提供されている製品やサービスと市場ニーズが合致しないなどです。また、競合他社がより魅力的なものを提供している場合、その競争力の強さを反映している可能性もあります。

  • 成長と解約: サブスクリプションビジネスが拡大するためには、成長 (サブスクリプション登録者の獲得) が解約を上回らなければなりません。解約率が高いと、顧客獲得のスピードを上げなければならないという圧力がかかり、質よりも量を重視しがちになります。

  • 収益の予測可能性: サブスクリプションモデルの強みの 1 つは、収益源を予測できるという点です。解約によって、この予測が不安定になり、財務の予測が複雑化し、投資家の信頼に悪影響を与える可能性があります。

  • 顧客データの流れの中断: サービスを改善し、パーソナライズするためには、顧客データが継続的に流れてくることが重要です。解約によってこの流れが中断されると、進化する顧客の要望に合わせてサービスを改善し、調整することが難しくなります。

  • 口コミと市場の認識: 離れていくサブスクリプション登録者は、特に、不満が原因で離れていく場合は、不愉快に感じたことを他の人と共有する傾向があります。このような否定的な見方がソーシャルメディアで急速に拡散されて、ブランドや顧客を引き付ける力に影響を与える可能性があります。

解約は、単なる監視対象の数値ではありません。サブスクリプションビジネスの健全性と長期的な持続可能性を多角的に示すものなのです。解約に対処するには、データに基づく、総合的な戦略が必要です。成長と顧客獲得に力を入れつつ、顧客満足度と顧客エンゲージメントも同じように優先する必要があります。

解約の原因を特定する方法

解約の原因を特定するには、厳密な分析と、顧客の動向パターンを鋭い目で観察することの両方が必要です。以下に、利用者の離脱の裏にある原因を特定する方法をご紹介します。

  • データを深く掘り下げて調べる: 顧客データの徹底的な分析を始めます。使用状況の傾向を調査し、たとえば、解約した利用者がほとんど使っていなくてエンゲージメントが低下している特定の機能を調べます。この調査結果から、改善が必要な製品機能特定できる可能性があります。サービスがもたらす価値が全体的に低下していることもあるかもしれません。

  • 利用者のフィードバック: 直接のフィードバックの力を過小評価しないでください。退会者への聞き取り調査やアンケートは、利用者がなぜ離れるのかについて、率直な理由を知るための貴重な情報源となります。サービスに不満があるのか。競合他社の機能の方がもっと魅力的なのか。数値スコアを付けてその理由を説明してもらうことで、定量的かつ定性的なデータを得ることができます。

  • サポートチケットの分析: 利用者が解約の前に問題を提起していた場合、その問題を詳しく調べます。複数の利用者が共通して抱えていて、満足する解決を得られなかった苦情や問題はなかったでしょうか。これを調べることで、利用者が離れていく原因となった運営上または製品関連の欠陥を明らかにできる可能性があります。

  • 市場の変化: 市場の動向や競合他社の動きを注意深く観察しましょう。時として、外的要因によって解約の原因が増えることもあります。たとえば、利用者の好みの変化や、競合他社が破壊的な代替製品を市場に投入したなどです。

  • セグメンテーションの研究: 顧客基盤をセグメント単位に分解して、各グループの解約パターンを調べます。特定のセグメントの解約率が高い場合、利用者のニーズと製品の機能または料金体系が合致していないことを示唆している可能性があります。

  • コホート分析: コホート (同じ月に登録した利用者の集団など) ごとにライフサイクル全体での利用者の行動を観察します。これにより、一定期間における特定のオンボーディングプロセス、季節的傾向、または製品やポリシーの変更が解約に関係しているかを明らかにすることができます。

  • ユーザビリティテスト: 製品ではなく、ユーザー体験に問題がある場合もあります。ユーザビリティテストを実施して、サービスのどの部分で利用者がストレスを感じているか、どこで問題に直面しているかを確認しましょう。

  • 財政的な要因: 料金体系の検討も見落とさないようにしましょう。利用者の視点から見て魅力的で公正なプライスポイントを維持できているか、定期的に評価します。解約の理由として、経済的な理由がよく挙げられているためです。

これらの方法を組み合わせることで、解約の原因を多角的に見ることができます。原因が 1 つだけということはまれで、多くの場合は複数の要因が重ね合わさった結果として解約が発生します。この知識を利用して、利用者にとって価値のあるサービスを届けることを目標に、解約の原因に先回りして対応することができます。

解約管理の戦略

  • カスタマイズした予測的解約モデル: 顧客データプラットフォームと連携するカスタム機械学習モデルを開発します。このモデルでは、利用状況の統計以外のさまざまな変数 (たとえば、サポートチケットのセグメント、支払い履歴、ソーシャルメディアのエンゲージメント) を分析して、解約のリスクのある利用者を予測します。このモデルを使用すると、リスクのある利用者を早い段階で特定し、目標を絞った顧客維持戦略を開始できます。

  • 価値を重視した製品進化: 利用者が製品のさまざまな側面でどのようにやり取りするかを確認するために、詳細な行動分析を実施します。高度な A/B テストを利用して、機能の変更を実験し、変更が顧客維持に与える影響を評価しましょう。この分析結果に基づいて製品を定期的に更新し、変化する利用者のニーズや好みに適応させていきます。

  • コホートに基づく顧客維持キャンペーン: 利用者の行動、顧客獲得チャネル、ライフサイクルの段階に基づいて利用者をコホート単位にセグメント化しましょう。各コホート向けに、カスタムの顧客維持キャンペーンを設計します。たとえば、特定のマーケティングキャンペーンで獲得したユーザー集団は、行動や解約リスクが他のユーザーとは異なる可能性があります。これらのインサイトを基に、コミュニケーションと顧客維持の取り組みをカスタマイズしましょう。

  • 高度な顧客の健全性スコアリング: 健全性スコアシステムを利用して、顧客満足度と顧客エンゲージメントのさまざまな指標を集めましょう。たとえば、ネットプロモータースコア (NPS)、機能の利用状況、サービスとのやり取りのデータです。このスコアを利用して、顧客セグメントごとにコミュニケーションの優先順位を付け、介入をカスタマイズします。

  • 行動に基づくメール送信プログラム: 特定の顧客行動に反応する自動メールマーケティングシステムを用意しましょう。ユーザーが一定期間ログインしていなかった場合は、自動的にメールを送って、見逃したはずの貴重なインサイトや更新情報を伝えます。ユーザーが利用のマイルストーンを達成した場合は、祝福のメッセージを送信し、次のステップを提示します。このようなタイムリーで行動に基づくメールによって、重要な時期ごとに利用者のエンゲージメントを取り戻すことができます。

  • 高価値顧客向けの戦略的なアカウント管理: 高価値顧客を特定し、これらの顧客に専任のアカウントマネージャーを割り当てます。このマネージャーは、これらの顧客の事業目標を理解し、どうすれば自社のサービスがその目標達成のために貢献できるかを検討し、目標達成のために確実に貢献できるようにします。このように特別な配慮をすることで、最も重要な顧客セグメントの解約を大幅に減らすことができます。

  • 透明性のある機能ロードマップ: 製品開発プロセスに利用者を参加させ、新機能に対する提案や投票をしてもらいます。製品ロードマップを公開し、利用者のフィードバックがどのように反映されているかを示します。この共同の取り組みにより、ユーザーの間に当事者意識を生じさせ、解約の可能性を減らすことができます。

  • 動的な料金体系モデル: 使用量その他のマイルストーンに基づいて価格が調整される料金体系モデルを探求しましょう。たとえば、サービスからより多くの価値を得ている利用者を別の価格帯に移行させ、あまり使用していない利用者には一時的な割引や請求の一時停止を特典として付与することで、財政的制約による解約を防止します。

  • カスタマーサポートのエスカレーション方法: 問題に遭遇した利用者のために体系的なエスカレーション方法を策定し、最初の窓口で問題を解決できなかった場合はより専門的なチームにすぐにエスカレーションできるようにします。このタイムリーな対応によって、解約の原因としてよく挙げられる、不満の累積を防ぐことができます。

  • コミュニティーの構築: 製品やサービスのコミュニティーを作りましょう。たとえば、ユーザーグループを作成したり、オンラインフォーラムやユーザー会議を開催したりします。強力なコミュニティーがあると、ユーザーが互いにサポートを提供することができ、利用者とブランドの関係も強化できます。

解約低減の戦略には、定期的なデータ分析、顧客関係の慎重な管理、サービスの柔軟な改善が必要になります。これらの対応は 1 回実施すればよいというものではありません。利用者と市場のニーズの変化に対応できるように、継続的な調整とレビューが必要です。これらの方法を注意深く利用することで、解約率を資産へと変えて、顧客基盤の中心を強化することができます。

Stripe にできること

Stripe は、以下のように、解約の管理と低減に特に効果的な機能を提供しています。

  • Smart Retries と Stripe Billing: Stripe の Smart Retries 機能は、機械学習を利用して、失敗した支払いの再試行に最適なタイミングを判断します。これにより、支払いの問題から発生する、意図しない解約を減らすことができます。業界データに基づいて取引に最適な日時を分析して、売上回収の可能性が最も高くなるようにリトライスケジュールを調整します。

  • 督促管理: 支払いが失敗した場合やサービスがキャンセルされる前に、利用者に自動メール通知を送ります。この督促プロセスで利用者に支払い情報を更新するように注意喚起することで、サービスの中断を防ぎ、意図しない解約を減らします。

  • サブスクリプションの一時停止: Stripe を利用すると、サブスクリプションをキャンセルする代わりに一時停止するという選択肢を利用者に提案できます。この機能は、一時的な財政的制約が原因で解約を検討している利用者や、短期間だけサービスが不要になる利用者に特に効果があります。

  • カスタマイズした請求サイクル: Stripe を利用すると、請求サイクルを柔軟に設定できます。利用者が自分に合った請求スケジュールを選べるようにすると、満足度が向上し、厳しい請求方法を原因とする解約の可能性を低減できます。

  • 比例配分での支払い: Stripe は比例配分での支払いに対応しているため、サブスクリプションサイクルの途中で別のレベルに変更するプランを提供できます。この機能により、利用者に公正な請求だと感じてもらえることができ、全体的な体験が向上し、解約の可能性が低下します。

  • トライアル期間と割引: Stripe を利用すれば、新規顧客の獲得と既存顧客の維持のための手段として、トライアル期間や割引を簡単に設定できます。購入前に試してみる機会があったり、サービスの継続に際し割引を受けられたりすると、知覚価値を高めて解約を減らすことができます。

  • 売上回収ツール: Stripe の売上回収ツールを利用すると、自動カード更新機能などの機能を使って、より多くの売上を自動的に回収できます。自動カード更新機能は、有効期限切れカードや更新したカードの詳細を自動で更新するというものです。

  • 分析とレポート: Stripe の詳細な分析とレポート機能を利用すると、売上を追跡し、解約の背後にある原因を評価できます。この評価結果を活用して、解約低減に的を絞った戦略を策定できます。

  • サードパーティーサービスとの連携: Stripe の豊富なアプリケーションプログラミングインターフェイス (API) や、顧客関係管理 (CRM)、カスタマーサポートプラットフォームなどのサードパーティーサービスとの連携を利用すると、顧客との関係の管理を通して、事前対応的に解約に対処できます。

上記の各機能を既存の顧客体験戦略に注意深く織り込んでください。そのためには、顧客ライフサイクルを意識し、これらの機能をどこで利用すれば解約防止の効果を最も高めることができるかを知る必要があります。Stripe のプラットフォームには、総合的な解約低減戦略を支援するデータとツールが用意されています。ただし、自社の顧客基盤に響く方法で、解約に影響している具体的な要因に対処するためには、これらのデータとツールを企業がどのように活用するかにかかってきます。

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