ドイツでは、特に B2G (企業対政府) および B2B セクターの企業に遵守が求められる法的要件があることにより、XML 請求書の利用が一般的になりつつあります。しかし、このフォーマットの請求書が使用される背景には何があり、組織での扱いが重要になる理由はどこにあるのでしょうか?
この記事では、XML 請求書の概要、仕組み、XRechnung や ZUGFeRD の請求書との相違点について説明します。また、XML 請求書の具体例を紹介し、このデジタルの請求書フォーマットの数多くのメリットを紹介します。
この記事の内容
- XML 請求書の概要
- XML、XRechnung、ZUGFeRD の請求書の相違点
- XML 請求書フォーマットの仕組み
- XML 請求書: 例
- XML 請求書のメリット
XML 請求書の概要
XML 請求書とは、XML 形式で作成および送信される電子請求書のことです。XML とは「Extensible Markup Language」の略称で、データ構造化の統一言語として国際的に認められています。この語句は、国際的な標準として確立されているため、ドイツ語圏の国では通常、ドイツ語化することなく使用されています。
XML は、インターネット標準化委員会である World Wide Web Consortium (W3C) によって開発された体系的なフォーマットです。テキストデータ構造の初期バージョンは、Standard Generalized Markup Language (SGML) の進化形として 1998 年に発表されました。複雑な先行言語と比較して、使いやすく、プラットフォームに依存することなく、インターネット上での情報交換に適したフォーマットを目指して作成されました。バージョン 1.0 以降、XML は数回更新されています。現在では、データ構造の標準化において中心的な役割を果たしており、ウェブサービス、ドキュメント形式、電子請求書をはじめ、数多くの用途に使用されています。
XML ベースの請求書フォーマットの特徴の 1 つとして、コンピューター処理に非常に適していることが挙げられます。この請求書のレコードはコード行形式で構成され、請求書データのすべてに所定の場所が設定されます。PDF 明細書や紙の文書とは異なり、ソフトウェアで自動的に読み取って処理することができます。
XML 請求書は、2014 年に EU 指令 2014/55/EU により、ドイツ企業も関わらざるを得なくなりました。この指令は、欧州連合 (EU) における公共調達に電子請求書を義務付け、管理を簡素化し、域内の多国間の協力を促進することを目的としています。2020 年 11 月以降、ドイツのすべての発注当局が請求書を電子形式で受け取り、処理できるようにすることを求めています。それ以降、行政機関や連邦当局に請求書を発行するドイツ企業は、XML 形式で請求書を発行する選択をしてきました。
2025 年 1 月 1 日 以降、B2G および B2B 組織に対しては電子請求書と XML 請求書が義務付けられます。2024 年 3 月、ドイツ議会は 成長機会法 を可決しました。この法律では 2025 年以降、企業は電子形式のみを使用して他の組織に請求することができると規定されています。小規模起業家は例外として、請求書を紙または PDF で送付できます。ただし、電子形式で受け取った場合は、電子請求書の受理と処理が義務付けられます。この小規模起業家に対する規制は、2024 年税法に含まれています。詳細は、2025 年の小規模起業家ルールの記事をご覧ください。
企業は、電子請求書に使用するフレームワークを選択できます。中でも XRechnung 形式と ZUGFeRD 形式は、ドイツで最も広く使用されている選択肢です。
XML、XRechnung、ZUGFeRD の請求書の相違点
XML 請求書、XRechnung 請求書、および ZUGFeRD 請求書という用語は、相違点があるものの、同じ意味で使用されることもよくあります。XML 請求書は XML レコードで構成され、電子請求書の一般的な技術的レイアウトを指します。
XRechnung は、XML ファイルのみを含む電子請求書です。ただし、これは Coordination Office for IT Standards (KoSIT) によってドイツの公共機関向けに明確に策定されたフレームワークで、厳格な規制を受けています。2020 年以降、ドイツの発注当局との電子的な交換に使用されています。
ZUGFeRD 請求書は、XML と PDF ファイルが含まれるハイブリッド形式の請求書で、自動または手動で読むことができます。従来の PDF 形式の請求書のように見えるため、受信者が処理する際に追加のソフトウェアを必要としないため、ZUGFeRD は B2G、B2B、および B2C セクターに適しています。このフレームワークは、2014 年に Forum for Electronic Invoicing Germany (FeRD: ドイツ電子請求フォーラム) によって創出されました。
XML 請求書、XRechnung 請求書、および ZUGFeRD 請求書は、EU 指令 2014/55/EU および電子請求書の EU 標準 EN 16931 に従い、法令遵守を実現しています。
XML 請求書フォーマットの仕組み
XML 請求書は従来の請求書と同様に機能しますが、作成したものを配信する必要があります。ただし、作成と受信側の処理に関して、双方にいくつかの技術的要件があります。
技術要件
専用の会計ソフトウェアまたはオンラインジェネレーターを使用して作成することができます。会計プログラムの多くに固有の XML 形式があり、それによって自動作成、配信、およびアーカイブが可能になります。
ウェブベースのツールでも同様の機能が提供されますが、請求書を手動でダウンロードしてアーカイブしなければなりません。一般に、オンラインジェネレーターに適用される作成数に対する制限がないため、請求書を大量に発行し、長期的な目録作成を必要とする企業は、専用のソフトウェアを使用した方が有利です。
XML 請求書を作成する第 3 の方法は、既存の PDF 請求書を XML 形式に変換する方法です。まず、OCR ツールを使用して元のコンテンツを読み取ることから始めます。ただし、この処理でエラーが発生することがあるため、上記の 2 つの方法をおすすめします。
請求書の作成
専用のソフトウェアとインターネットツールのどちらで作成されたかにかかわらず、主な請求書データをシステムに入力する必要があります。ドイツ VAT 法第 14 条 (UStG) では、ドイツの税法に従い、以下の必須情報をすべて含めなければならないと規定されています。
- 受取人および商品またはサービスを提供する企業の氏名 / 正式名称および住所
- 請求書の日付
- 商品またはサービスの引渡し日
- 税務署が供給側企業に発行した納税者番号、または連邦中央税務局 (BZSt) が発行した付加価値税識別番号 (VAT ID)
- 連続した一意の請求書番号
- 配送商品の数量と種類、または提供サービスの範囲と種類
- 総額と正味金額
- 適用税率とそれに対応する金額、または非課税の場合は非課税の根拠の明示
サービスプロバイダー、サービスの受益者、およびサービス自体に関する情報に加えて、実行側企業の銀行情報も XML 請求書形式で照会されます。
最後に、ソフトウェアまたはオンラインジェネレーターで請求書データを XML ファイルに変換します。ファイルは、含まれる情報の構造を指定する詳細な定義に従って作成されます。このモデルは、一般的な XML に従うことも、XRechnung などの特定の請求ガイドラインに従うこともできます。
検証
次に、生成された XML ファイルを検証して、標準に準拠していること、および必要なすべてのデータが正しくフォーマットされていることを確認する必要があります。この検証は、XML バリデーターを使用して実行されます。検証が成功すると、ファイルが技術要件を満たし、エラーなく処理できることが確認されます。検証が完了すると、XML ファイルが最終的なフォーマットに変換されます。
請求書の発送
最後のステップでは、企業から受取人に XML 請求書を送信します。これには、ファイルのアップロード、メールに添付、専用の送信プラットフォームの使用など、いくつかの方法があります。こうした送信プラットフォームの 1 つである PEPPOL (Pan-European Public Procurement OnLine) は、ヨーロッパ全体で認められているネットワークとして、連邦内務省によって推奨されています。これを使用することで、XML 請求書をはじめとするビジネスドキュメントを安全で統一的に交換することができます。企業はこのネットワークを使用することで、政府機関やその他の組織がどのソフトウェアソリューションを使用しているかにかかわりなく、請求書を直接送信することができます。
別の効果的な電子請求書の送信方法として、Stripe Invoicing の使用が挙げられます。Stripeアカウントをお持ちの企業は、Billit パートナーアプリを使用することによって、法規制に従った電子請求書を簡単に作成して送信できます。アプリケーションがセットアップされると、送信を完全に自動化できるため、管理の負担を大幅に減らすことができます。これ以外にもこのシステムには、すべての請求書のステータスをリアルタイムで監視し、透明性の高い追跡と管理を実現できるというメリットがあります。システムにエラーが発生した場合は、ユーザーに通知が届き、問題を素早く特定して解決できます。
請求書の処理とアーカイブ
受取人の側も、請求書データを読み取って処理するための適切なソフトウェアソリューションが必要になります。ソフトウェアによって XML 請求書が企業の会計システムに自動的に統合することができれば、言うことがありません。監査能力を確保するには、法的に義務付けられている保存期間中にファイルが変更されたり、削除されたりしないことを保証できるアーカイブシステムに保存する必要があります。GoBD (電子形式の帳簿、記録、および文書の適切な保管と保持に関する原則) が XML 請求書にも適用されます。
XML 請求書:例
以下は、架空の XML 請求書の例です。A 社は、2024 年 12 月 15 日に B 社への商品配送に対する $1,000 の請求書を発行しています。

XML 請求書ヘッダーには、番号、日付、期日などの基本情報が記載されます。「Seller」 (売り手) と「Buyer」 (買い手) のセクションには、関係する会社の住所と税金データが一覧表示されます。「LineItems」 (ラインアイテム) には、説明、数量、単価、合計金額など、提供される商品またはサービスが一覧表示されます。「Totals」 (合計) セクションには、正味金額、計算された売上税、総額が記載されます。「PaymentDetails」 (支払い情報) 行には、請求会社の銀行情報など、決済手段が記載されます。
XML 請求書のメリット
XML 請求書には、企業のプロセスの効率化、安全性の強化、コストパフォーマンスの向上に役立つ多くのメリットがあります。以下に、主な重要ポイントを紹介します。
法律とリビジョンに関するセキュリティ
XML 形式は、EU 指令 2014/55/EU など、電子請求書に関する法的ニーズのすべてを満たします。さらに、監査に対応可能な方法でアーカイブでき、ドイツの GoBD の要件を満たします。
互換性と標準化
XML 請求書は、国際的に認められた標準を使用してシステムとパートナー間で簡単に交換できます。これにより、使用するソフトウェアに関係なく、国際的なコラボレーションをシームレスに行うことができます。
自動化と効率性
データは構造化され、機械で読み取り可能なため、適切なシステムで XML 請求書を自動的に処理でき、受領した請求書を手作業で処理する必要がありません。このため、時間とコストが節約され、大量の取引を扱う企業には特に有益です。
ミスの削減
この形式は、受け取り側での処理中のエラーを減らすだけでなく、標準化されたデータ構造のおかげで、入力エラーと送信エラーの発生の余地を最小限に抑えます。検証メカニズムによって送信前に情報の完全性と正確性が確認されます。
透明性と制御
XML 請求書は、データの追跡と分析に関しても優れています。Stripe Invoicing などのデジタルツールを使用すると、請求書のステータスをリアルタイムで監視し、必要に応じて措置を講じることができます。これによって企業は債権管理の透明性と効率性を向上させることができます。
コストの削減
XML 請求書を使用すると、印刷や紙にかかる経費が不要になるなど、いくつかの点でコストを節減できます。また、デジタル配信は、従来の郵送よりも高速かつ安価です。自動化により、手動プロセスの人件費も削減できます。
持続可能性
紙の廃止は、持続可能な業務慣行に貢献します。さらに、企業は請求書を物理的に送る必要がなくなり、CO₂ 排出量が削減されるため、環境フットプリントが向上します。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。