ドイツで事業を行うすべての事業者は、GoBD に関連する義務を負います。事業者は、重い罰則や過去に遡っての支払いを避けるために、帳簿に関連する法的規定をよく理解する必要があります。こちらの記事では、GoBD とは何か、誰に適用されるのか、GoBD が規定する原則について説明します。GoBD 準拠とは事業者にとって何を意味するのか、GoBD に関連するプロセスを文書化する方法、GoBD に基づいて証拠資料をアーカイブする方法についても説明します。
この記事の内容
- GoBD とは何か
- GoBD の規則は誰に適用されるか
- GoBD の適用対象となる文書の種類
- GoBD 準拠とは
- GoBD の原則とは
- GoBD 準拠のためのプロセス文書化方法
- GoBD 準拠のためのアーカイブ方法
- GoBD に準拠したソフトウェアとは
- GoBD に違反するとどうなるか
GoBD とは何か
GoBD は「Grundsätze zur ordnungsmäßigen Führung und Aufbewahrung von Büchern, Aufzeichnungen und Unterlagen in elektronischer Form」(電子的方法による帳簿、記録および文書の適切な管理と保管、に関する原則) の略であり、ドイツ連邦財務省による行政規則です。GoBD は、デジタル会計に関して事業者が遵守し、従う必要がある基本原則を定めています。この規則で定めている主な領域は、税務関連の証拠資料の記録、処理、アーカイブの方法についてです。
GoBD は、2014 年に当初は「Grundsätze zum Datenzugriff und zur Prüfbarkeit digitaler Unterlagen」(電子的方法による帳簿、記録および文書のデータのアクセスと可監査性に関する原則 (略して GDPdU)) と「Grundsätze ordnungsmäßiger DV-gestützter Buchführungssysteme」(適切な電子帳簿システムの原則 (略して GoBS)) に置き換わるものとして公布されました。GoBD の改訂版は 2019 年末に公布され、2020 年 1 月 1 日から施行されています。
GoBD の規則は誰に適用されるか
GoBD は小規模事業者から大企業まで、あらゆる規模の事業者に適用されます。自営業者とフリーランサーも、GoBD を遵守する義務があります。GoBD によると、帳簿を付ける必要があるかどうかに関係なく、すべての納税者が GoBD の規定に従う必要があります。帳簿と記録管理の業務の一部または一切を税務コンサルタントなどの第三者に委託した場合でも、責任は納税者が引き続き負います。
GoBD の適用対象となる文書の種類
基本的に、GoBD は課税に関連するすべてのデータに適用されます。ドイツ税法 (AO) 第 147 条第 1 項によると、この対象となるのは、会計関連の帳簿、記録、管理レポート、年次報告書、在庫、ビジネスおよび取引に関連する通信、あらゆる種類の証拠資料です。事業者が発信した会計関連の証拠資料だけでなく、事業者が受領した証拠資料も含まれます。受領した請求書に加えて、税金関連の事柄に触れているビジネス通信やメールも含まれる可能性があります。
基本原則として、事業者は関連データを 6 年間または 10 年間保存する必要があります。保存期間は文書の種類によって異なります (ドイツ税法第 147 条第 3 項を参照)。この期間内は、監査人が、関連する事業者の電子帳簿の全体像を合理的な時間内に把握できなければなりません。いかなる場合も、当該データは業界または事業者自身に依存することになります。一般的に、以下が税務目的の関連データです。
- 銀行口座
- 金融口座と給与
- 原価計算
- 口座関連の証拠資料
- レジシステムからのデータ
- 資産会計
GoBD 準拠とは
事業者は GoBD の遵守を確実に行う必要があります。つまり、GoBD が定める保管期間全体にわたって GoBD の規則に準拠する必要があるということです。これは、当該データが電子形式なのか紙形式なのかに関係なく、課税関連のすべてのデータおよび文書に適用されます。すべてのビジネスプロセスは、完全性、正確性、忠実性、追跡可能性、秩序性、適時性という点で法に従った方法で表現および保管されなければなりません。
GoBD の原則とは
GoBD の原則は以下のとおりです。
- 追跡可能性と検証可能性
- 完全性
- 正確性
- 適時の記帳と記録
- 秩序性
- 不変性
GoBD の原則のうち、最も重要なのは追跡可能性と検証可能性です。事業者は、分かりやすいプロセス文書を維持する義務があります。データ処理の内容、構造、順序、結果を、分かりやすく、かつ、遡って追跡できる形で文書化する必要があります。会計帳簿へのいかなる記入も、対応する証拠資料なしに行ってはなりません。プロセス文書は、GoBD に準拠した現金管理にとっても不可欠です。この文書に記載するプロセスは、実際に採用しているプロセスと完全に一致している必要があります。履歴の観点から追跡可能性を確保するために、プロセス文書についての一切の修正を記録する必要があります。
完全性とは、あらゆるビジネス取引は、保管期間範囲内に例外なく文書化する必要があることを意味します。保管する必要があるすべての文書は、その構成要素と一緒に個別にバックアップする必要があります。収入と支出に関しては、証拠資料には固有の文書番号、日付、金額、数量、発行者と受取人などが記載されている必要があります。
正確性を実現するには、すべてのビジネス取引を、事実に即したやり方で、証拠資料の形式で文書化してアーカイブします。これには、ビジネス取引を正しい勘定科目に指定することも含まれるため、ビジネス取引をどの勘定科目に記帳するかを判断することが重要になります。
GoBD 準拠の目的で、記帳とそのタイミングの両方が重要です。「適時の記帳」の要件を満たすために、ビジネス取引発生後、速やかに記帳する必要があります。ただし、現金を伴う取引と現金の伴わない取引では違いがあります。現金の出し入れを伴う取引は毎日記録する必要がありますが、キャッシュレスの取引は遅くとも 10 日以内に記録する必要があります。
秩序性という原則は、税務コンサルタントや監査人にすばやく状況を把握してもらえるように秩序正しく帳簿をつけることを義務付けています。第三者がいつでも追跡できるように、一定の秩序を守る必要があり、体系的方法で記帳を記録する必要があります。たとえば、現金の記帳とキャッシュレスの記帳は、別々に文書化する必要があります。課税対象の売上、非課税の売上、課税対象外の売上にも、同じことが言えます。すべての証拠資料は、元の形式で入手可能で、読み取り専用かつ機械可読である必要があります。
不変性とは、保管期間中はいつでも、各文書の元の内容を判別できる必要があるという意味です。文書の内容が一部でも変更または削除された場合、その詳細が分かりやすい方法で文書化されている必要があります。最初から最後までつながる形で項目を記録する必要があり、各ステップは追跡可能であること、標識を付けることが必要です。変更された文書は、新バージョンとして保管する必要があります。また、改訂後はバージョン履歴が変更不可能でなければなりません。
GoBD 準拠のためのプロセス文書化方法
事業者には、証拠資料だけでなく、採用したプロセス (たとえば、文書のスキャン) も記録する義務があります。プロセス文書に関しては、プロセス全体を組織の視点と技術的な視点の両方から記載します。
プロセス文書には、以下の情報を記載します。
- 情報のソース
- インデックス
- 処理
- 保管
- 再取り出し可能性
- 機械可読性
- 損失と偽造に対するデータセキュリティ
- 複製
- 証拠資料の記録、処理、保管のプロセス
- 利用した IT
- セキュリティ対策の確立
- アクセス許可のログ記録
- 規則の遵守に関する内部チェック
例: 文書のスキャン
事業者はすべての証拠資料のデジタルバックアップを作成する必要があります。このことは、受領した請求書などの紙の文書にも適用されます。メールで送信された請求書と同様に、記録し、ファイルする必要があります。このために、紙の証拠資料はプロセス文書の一部としてスキャンします。
GoBD では、スキャンした文書は元の文書の外観と一致している必要があると定めています。とりわけ重要なのは、スキャンした文書内でもポインターやマーキングが可視化されるように、すべての色を確実に再現することです。元の形式の元の文書を後で (追加やコメントなどによって) 変更してはなりません。元の文書に修正を加えた場合は、修正済み文書を再度スキャンすることが必要になります。元のバージョンへの明確なリンクも作成する必要があります。事業者は、スキャンした文書とスキャンプロセスのガイドも文書化する義務があります。このガイドでは、以下を明確にする必要があります。
- 文書をスキャンする権限を与えられた人物
- スキャンした内容
- スキャンをいつ実行したか
- スキャン後も元の文書を保管する必要があるか
- スキャンした文書が完全で判読可能であることを確実にするために実施した品質管理方法
- エラーログに記載しなければならない内容
GoBD 準拠のためのアーカイブ方法
事業者は、アーカイブ用に特別なソフトウェアを使用する必要があります。USB ドライブ、ハードドライブ、またはクラウドに保管した文書は、GoBD で求められる高い要件を満たしていません。これらの方式の場合、アーカイブソフトウェアとは異なり、修正をローカルのデータ記憶媒体などにログ記録できないため、偽造に対して保護できません。そのため、文書が改ざんされやすくなります。また、アーカイブソフトウェアを利用しない場合、法定保管期間が守られているかの検査を税務署が行うことができません。
ソフトウェアを利用することで、すべての文書が追跡可能な方法で保管され、(特に不正アクセスの結果としての) 修正から保護されます。アーカイブソフトウェアへの文書の転送には、厳密な法的要件が適用されます。法的要件としては、一般データ保護規則 (GDPR) および「Gesetz zum Schutz von Geschäftsgeheimnissen」(ドイツの営業秘密保護法 (略して GeschGehG)) によるデータ保護があります。基礎となる情報技術が、安全な運用を保証する必要もあります。
特別なアーカイブソフトウェアを使用して、ビジネスのやり取りでの税関連のメールを保管する場合もあります。この場合も、メールボックスまたはハードドライブでのバックアップという簡易的なオプションでは十分ではありません。
GoBD に準拠したソフトウェアとは
GoBD に準拠したソフトウェアのプロバイダーは複数存在します。これらは、GoBD のすべての原則を満たしているはずです。中立的なサービスプロバイダーがこれらのプログラムをテストした結果、GoBD 準拠を示すラベルを授与しています。この認定制度は、適切なソフトウェアを見つけるのに役立ちます。ただし、特定のプログラムを採用するかどうかを判断する際は、各事業者の状況も考慮する必要があります。
採用するソフトウェアは、社内のビジネスプロセスを最新の要件に合わせて調整するという柔軟性を備えたものでなければなりません。
GoBD に違反するとどうなるか
GoBD に違反していることが判明した事業者は、税務署から重い刑罰を科されます。財政当局は基本的にいつでも監査を行うことができます。監査では、金融口座データとプロセス文書の両方に対して、不正がないか調査が実施されます。GoBD の違反は、会計上の不備とみなされます。これは、帳簿と保管に関連する法的義務の違反に相当します。
帳簿に不備がある場合、ドイツ税法第 162 条に従って、管轄税務署がその事業者の課税標準を算出することができます。多くの場合、事業者にとってこれは高額な負担となります。税務署は数字を過大評価する傾向があるためです。この他に考えられる税務上の結果として、過去に遡っての支払いや、それに伴う利息の徴収もあります。ただし、この違反自体が自動的に罰則を伴うものではありません。言い換えると、税務署はすべての誤りに対して罰則を科すわけではありません。その誤りがさらなる会計上の不備につながっている場合、財務状態がゆがんでいる場合、または個々の項目が隠ぺいされていた場合にのみ、刑罰のリスクがあります。
帳簿付けの義務に違反する場合は、刑法上の結果を招く可能性もあります。これには、以下に関する調査が含まれます。
- 破産犯罪
- 文書の隠匿
- 規則の違反
- 税務および行政違反に関するその他の事項
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。