ドイツにおけるグロスとネットの違い

  1. はじめに
  2. グロスとネットとは
  3. グロス価格 (税込価格) とネット価格 (税抜価格) の違い
    1. グロス価格とネット価格の変換
  4. 請求書を作成する際の考慮事項
  5. グロス給与とネット給与の違い

購入や給与交渉、領収書で日常的に目にする用語に「グロス」と「ネット」があります。グロスとネットの使い分けには注意が必要で、遅くとも請求書を作成する段階でこれらを記載する必要があります。ここでは、グロスとネットの正確な意味、グロス価格 (税込価格) とネット価格 (税抜価格) の違い、請求書を作成する際の考慮事項を説明します。

本記事の内容

  • グロスとネットとは
  • グロス価格 (税込価格) とネット価格 (税抜価格) の違い
  • 請求書を作成する際の考慮事項
  • グロス給与とネット給与の違い

グロスとネットとは

グロスとは、税金が差し引かれる前の金額を指します。言い換えれば、控除を反映させるための調整がまだ行われていない金額です。その一方で、ネットは源泉徴収および減価償却または償却により減額調整された金額を表します。ネット金額は税金を一切含まないため、グロス金額を上回ることはありません。

グロス価格 (税込価格) とネット価格 (税抜価格) の違い

商品を購入したりサービスの支払いをしたりするときに受け取る請求書にはグロス価格 (税込価格) とネット価格 (税込価格) が示されています。グロス価格は購入者が最終的に支払う金額です。グロス価格には、それよりも少ないネット金額に加え付加価値税も含まれます。買い物をする個人は、会計で実際に支払うこととなるグロス価格に特に注意する必要があります。

しかし、企業にとって重要なのはネット価格です。VAT 登録済みの企業はネット価格に基づいて価格設定を行います。また、企業が購入を行う際に最終的に支払うのはネット価格であるため、企業にとって実際に重要なのはこの価格のみになります。個人とは異なり、企業には付加価値税が課せられません。仕入 VAT の控除により、企業は購入およびサービスで支払った VAT を VAT 納税額から差し引くことができます。従って、支払い済みの VAT と VAT 納税額は最終的に差し引きゼロになります。

グロス価格とネット価格の変換

19% の VAT を含むグロス価格をネット価格に変換するには、グロス価格を 1.19 で割ります。

例: グロス価格 119 ユーロ ÷ 1.19 = ネット価格 100 ユーロ

7% の VAT を含むグロス価格をネット価格に変換するには、グロス価格を 1.07 で割ります。

例: グロス価格 107 ユーロ ÷ 1.07 = ネット価格 100 ユーロ

ネット金額をグロス金額に変換するには、同じ処理の逆算を適用します。

ネット価格を 19% の VAT を含むグロス価格に変換するには、ネット価格に 1.19 を掛けます。

例: ネット価格 100 ユーロ x 1.19 = グロス価格 119 ユーロ

ネット価格を 7% の VAT を含むグロス価格に変換するには、ネット価格に 1.07 を掛けます。

例: ネット価格 100 ユーロ x 1.07 = グロス価格 107 ユーロ

請求書を作成する際の考慮事項

企業は、該当するサービスを提供してから遅くとも6カ月以内に、他社や法人に対して請求書を発行する義務があります。この義務は、取引が土地に関連する場合を除き、個人には適用されません (ドイツ VAT 法第 14 条または Umsatzsteuergesetz (UStG) を参照)。

請求書の情報は完全かつ正確である必要があります。しかし、グロスとネットという概念を考慮すると、これは一筋縄ではいかないことが分かります。税額を計算するときに、間違った税率の使用といった誤りが起きることは珍しくありません。

請求書に関するあらゆる計算では、商品やサービスについて請求するネット金額が開始点となります。ネット金額に対して標準税率 19%、軽減税率 7% または税率 0% のいずれかを適用します。食品、書籍および雑誌、公共交通機関、コンサートチケット、劇場または博物館、生きた動物には、UStG 第 12 条に基づき 7% の VAT が適用されます。税率 0% が表示される、VAT 免除対象の物品とサービスには、保険契約やローン仲介サービスなどがあります。これらの例外を除くほとんどの物品とサービスには 19% の VAT が適用されます。

所定の税額は 2 つの簡単な計算で算出できます。最初にネット金額を 100 で割り、ネット金額の 1% にあたる金額を算出します。次にその数に対し、税率に応じて 7 または 19 を掛けます。

例: (ネット価格 100 ユーロ ÷ 100) x 税率 7 = 税額 7 ユーロ

例: (ネット価格 100 ユーロ ÷ 100) x 税率 19 = 税額 19 ユーロ

税額をネット価格に足すとグロス価格を得られます。

企業が発行するすべての請求書にはグロス金額とネット金額が明記されている必要があります。これは、総額最大 250 ユーロまでの少額の請求書およびそれ以上の金額の請求書に適用されます。標準的な請求書には、UStDV 第 14 条第 4 項に基づき以下の必須情報を記載することが義務付けられています。

  • 請求書発行者の氏名と住所
  • 発行者の納税者番号
  • 発行者の VAT ID 番号
  • 請求書受取人の氏名と住所
  • 請求書の発行日
  • サービスが提供された日時
  • 請求書の連番
  • 商品またはサービスの名称
  • 商品の数量またはサービスの種類と範囲
  • ネット金額
  • 税率および税額
  • グロス金額
  • 該当する場合は、小規模の事業者を対象とした免除に関する追加注記

注: 小規模の事業は VAT の納税義務が免除されます。そのため、ネット金額を記載する請求書のみを発行し、VAT を含むグロス金額を記載する請求書を発行することはありません。小規模の事業者には、前年度の利益が 22,000 ユーロ以下で、本年度の収益が 50,000 ユーロを超えていないフリーランサー、起業主、自営業者が含まれます。

企業は請求書作成の目的で認定済みの決済サービスプロバイダーを利用することができます。これらの決済サービスプロバイダーは、スマートな請求書作成プログラムに基づいた自動化プロセスを提供しており、税額の計算などの誤りといったエラーが発生する確率を大幅に抑えることができます。

グロス給与とネット給与の違い

グロス給与 (額面給与) とネット給与 (手取り給与) の違いは、雇用契約に記載の給与と、銀行口座に実際に振り込まれる金額を比較するとすぐに分かります。通常、グロス給与は雇用契約に記載される一方で、ネット給与は実際に銀行口座に振り込まれます。雇用主は税金と社会保障負担をグロス給与から差し引き、それを税務署または社会保障局に支払います。残りのネット給与が従業員に支払われます。

納税額はオンラインで計算することができます。ドイツ連邦財務省は、従業員の納税額および社会保障負担を計算するためのオンライン計算機を提供しています。これにより、グロス給与からネット給与を算出できます。必要なのは雇用形態、年間グロス給与、年金負担額の入力だけです。この計算機では、連帯納税関係にある配偶者または登録済みのパートナーと、独身の個人を判別します。自営業者およびフリーランサーは所得税計算機を使用することもできます。

グロス給与は、ネット給与、税金、社会保障負担額で構成されます。その内訳は以下のとおりです。

  • 雇用税: 所得税として知られる普遍的な課税で、ドイツにおけるすべての自然人の収入に対して適用されます。この法的根拠は所得税法 (Einkommensteuergesetz、略名: EStG) です。自営業者は厳密な意味での所得税を支払い、従業員はそれに相当する雇用税を支払います。雇用税は、企業が関連の税務署に納付する所得税の特定の形態です。年間所得税の納税を月割で前払いするものと考えることができます。雇用税の水準はケースごとに異なり、各個人の給与と状況を反映する形で調整されます。

  • 健康保険: ドイツ保険契約法 (Versicherungsvertragsgesetz、略名: VVG) 第 193 条は、健康保険に関する一般義務を 2008 年より定めています。ドイツに居住するすべての人は民間または公的の健康保険制度に加入することが義務付けられています。雇用主と従業員は、年金、失業手当、長期介護保険と同様に、費用を平等負担します。健康保険の負担額には基本負担額と追加負担額の両方が組み込まれます。基本負担額はすべての健康保険業者で共通のグロス給与の 14.6% に相当します。負担評価額の上限は月 4,987.50 ユーロまたは年間 59,850 ユーロです。追加負担額は、それぞれの健康保険業者によって設定され、現在の平均は1.6%です。

  • 年金保険: 従業員は年金保険への加入も義務付けられています。また、自営業者、見習い、育児者などはドイツ社会法 (Sozialgesetzbuch、略名: SGB) 第 4 編に基づき保険に加入することが義務付けられている場合があります。年金保険負担額の水準はグロス給与の 18.6% で、負担評価額の上限は、ドイツの新連邦州では月 7,100 ユーロ、旧連邦州では月 7,300 ユーロです。

  • 失業保険: グロス給与の 2.6% が失業保険に配分されます。負担評価額の上限は、年金保険に関連する金額に基づきます。SGB 第 3 編第 25 条に基づき、すべての従業員は給与の多寡に関わらず保険に加入することが義務付けられています。パートタイマーは失業保険の義務から除外されます (SGB 第 3 編第 2 条第 27 項)。

  • 長期介護保険: 公的健康保険の加入者には長期介護保険制度も自動で適用されます。民間健康保険の加入者は民間の長期介護保険に加入できます。負担率はグロス給与の 3.4% です。子どものいない人は 0.6% を補完し、25 歳未満の子どもが 2 人以上いる家庭は控除が適用されます。

  • 傷害保険: 社会保障のもう 1 つの形態に傷害保険があります。雇用主は、自社が加盟する公的保険機関を通じてこの強制保険に加入し、その支払いを行う必要があります。これは、職場や通勤での事故にあった従業員に公的保険が適用されることを意味します。従業員はこの保険の費用を負担する必要はありません。傷害保険の負担率はグロス給与の 1.6% です。自営業者は民間の傷害保険に加入することができます。

  • 教会税: 教会員は教会税を通じて教会に資金を提供します。公に認められた教会の会員は、雇用税または所得税の 9% (バイエルン州およびバーデン=ヴュルテンベルク州では 8%) を教会に支払います。教会税は税務署によって徴収され、教会に納付されます。

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