小規模事業者は、販売する商品やサービスのインボイスを作成する義務があります。付加価値税 (VAT) を免除されている小規模事業者には、いくつかの特別な規則が適用されます。この記事では、小規模事業者向けの免除の適用方法、小規模事業者がミスのないインボイスを作成する方法、これに関連して事業者が考慮すべき点について説明します。
本記事の内容
- 小規模事業者向けの免除の概要、およびその適用方法
- 小規模事業者向けの免除のメリットとデメリット
- 小規模事業者がインボイスを作成する方法
- 付加価値税が誤って表示された場合の対処法
- 小規模事業者のインボイスに対して支払いが行われない場合の対処法
小規模事業者向けの免除の概要、およびその適用方法
ドイツの VAT 法 (Umsatzsteuergesetz、または UStG) 第 19 条に基づく小規模事業者向けの免除は、年間売上高が少ない事業者の事務手続きと税負担を軽減することを目的としています。自営業者やフリーランサーは、この免除を利用することで、付加価値税の納税義務を負わずに済みます。したがって事前の VAT 申告やインボイスへの VAT 表示の義務はありません。
事業者は、開業時に 税務登録に関する質問票 で小規模事業者の免除を申請することも、後から税務署に申請することもできます。この免除は、開業年または前年の売上が 2 万ユーロ未満で、かつ当暦年の売上が 5 万ユーロを超える見込みが小さい場合に有効です。
売上が制限未満の事業者には、免除を利用しないという選択肢もあります。この決定は法的に 5 年間有効で、その期間内は小規模事業者向けの免除に戻すことができないため、注意が必要です。
小規模事業者向けの免除のメリットとデメリット
付加価値税の納税義務が免除されるため、小規模事業者向けの免除は、新たに設立された法人やどちらかと言えば副業として事業を行っている人に適しています。必要な帳簿記入が少なくて済み、VAT の事前申告などの作業に要する時間を節約できます。提示する価格に VAT が含まれないため、小規模事業者は商品やサービスをより安価に提供でき、競争上のメリットが得られます。
技術設備や車両などのアイテムに対する大規模な投資では、小規模事業者向けの免除にそれほどメリットがない場合もあります。仕入 VAT の控除資格がない限り、ビジネス上の購入については税務署から 付加価値税 の払い戻しはありません。
小規模事業者がインボイスを作成する方法
サービスや配送の提供が商業上完全に行われた後は、インボイスを発行する義務があります。UStG の第 14 条第 2 項では、6 か月以内にサービスのインボイスを発行しなければならないと規定されています。この期限を過ぎると、最悪の場合罰金を科される可能性があります。
無料のインボイステンプレートがオンラインで多数提供されており、任意のワープロソフトで使用できます。小規模事業者は付加価値税やその他の税金を提示することを認められていないため、テンプレートにそれらが表示されていないことを確認する必要があります。
インボイス作成プログラムを使用してインボイスを作成することもできます。これらのプログラムは通常は無料ではありませんが、使用するとインボイス作成プロセスの多くの側面を自動化できます。
小規模事業者のインボイスに必須の情報
UStG 第 14 条第 4 項で、以下の必須情報が規定されています。
サービスを提供する事業者のフルネームと住所
ドイツで事業を法人として (つまり Aktiengesellschaft (AG)、Gesellschaft mit beschränkter Haftung (GmbH)、Unternehmergesellschaft (UG) のいずれかとして) 行っているのではない場合、自分個人の名前と事業所の住所を記入します。サービスの受取人のフルネームと住所
メモ: 250 ユーロ未満の少額インボイスの場合、この情報は厳密には必要ありません。サービスを提供する事業者の納税番号または VAT ID 番号
自然人として取引している場合は、個人の納税番号を記入します。インボイスの発行日
顧客にインボイスを発行する日付です。インボイス番号
各インボイスに一意のインボイス番号を付すことにより、インボイスを特定しやすくなります。番号の使用は一度限りとし、連続した番号の一部でなければなりません。最初のインボイスにインボイス番号が「10000」と記載されている場合、次のインボイスは「10001」と記載されている必要があります。
メモ: このモデルに基づいて、いくつかの一連の番号を使用することもできます。そのようにすると、インボイスに年ごとに番号を振ることができます (例: 「2023-10000」)。提供した商品またはサービスの量または対象、および種類
インボイスアイテムの下に、各アイテムに連番を付して、販売した商品またはサービスの数量、単位、名称、および単価と合計価格を記載します。
注: 誤解や起こり得る疑念を招かないよう、商品やサービスの名称は正確に記載します。さまざまなサービスを 1 つのアイテムにまとめるべきではありません。透明性を確保するため、それらのサービスを実施された個々のサービス構成要素に分けて記載します。配達日またはサービス実施日
サービスや配送に複数の日数を要した場合は、全期間を記載する必要があります。
注: サービスの実施日とインボイスの発行日が同じ場合は、記載された日付の横に「サービス実施日はインボイス発行日と同じ」ことを示す注記を記載することもできます。請求金額 (事前に合意したボーナスや割引を含む)
顧客が支払う最終金額を計算する際には、小規模事業者向けの免除に従って、付加価値税が表示されていないことを確認します。最終金額は、個々のアイテムの合計と同じになります。UStG 第 19 条に基づく付加価値税免除への言及
小規模事業者であるために付加価値税を表示していないことを、インボイスに記載する必要があります。アイテムの一覧の下に、UStG 第 19 条に関する簡潔な言及を記載するだけで十分です。
例: 「UStG 第 19 条によりインボイスに付加価値税は記載しておりません。」
その他の任意情報
インボイスに必須情報をすべて記入したら、任意情報を追加できます。重要なものの 1 つは、支払い期限に関する情報です。これより、顧客に明確な情報を提供し、キャッシュフローをよりよく管理できるようになります。インボイスに支払い期限を記載していない場合、ドイツ民法 (Bürgerliches Gesetzbuch、または BGB) の法定支払い期限である 30 日が適用されます。
支払い期限の一般的な記載方法には、「お支払いは 14 日以内にお願いいたします」や「このインボイスに対するお支払いは (日付) までにお願いいたします」などがあります。
その他の有用な情報として、電話番号やメールアドレスなど、顧客が疑問点の問い合わせに使用できる連絡先の詳細があります。請求金額を銀行振込で受け取りたい場合は、銀行情報も記載する必要があります。
インボイスの送付
インボイスが完成した後も、送付するまでに考慮すべき点がまだいくつかあります。UStG 第 14 条第 1 項では、インボイス文書が真正で、適切な状態にあり、判読可能でなければならないと定められています。インボイスの送付元を明確に識別できれば真正性が保証されます。法的な必須情報が完全であれば、文書は適切な状態にあると言えます。
インボイスがこれらの条件を満たすなら、顧客に紙媒体で送付することも、顧客の同意 (非公式であっても) を得たうえでメールなどの電子媒体で送付することもできます。税務アドバイザーや法務専門家が送付するインボイスには、その署名も含める必要があります。
保存義務
インボイスの原本は、UStG 第 14b 条に基づき、10 年間保存する義務があります。これは、自分が発行したインボイスにも、購入した商品やサービスに対して受領したインボイスにも適用されます。この期間は、インボイスの発行日からではなく、インボイスが発行された暦年の終わりから始まります。
メモ: インボイスは、コンピューターに保存しているだけでは不十分です。文書が失われると (ハードドライブの破損などにより)、税務署の監査で刑事罰の対象となる可能性があります。理想的なのは、インボイスを印刷してフォルダーにファイリングするか、個人用のクラウドストレージにデジタル形式で保存するか、オンラインのインボイス作成プログラムにアップロードするなどして、何らかの形でバックアップを取ることです。
付加価値税が誤って表示された場合の対処法
小規模事業者が発行するインボイスに誤って付加価値税が表示されていることがしばしばありますが、これは悪い結果を招く可能性があります。この種の誤りは、小規模事業者向けの免除に精通していないか、誤ったインボイステンプレートを使用していることが原因で生じます。
インボイスを会計システムに記録する前にこのような間違いに気づいた場合は、訂正したインボイスを提供することができます。これを行うには、同じインボイス番号を使って訂正版を顧客に送付します。顧客は 2 通のインボイスをどちらも保存する必要があります。必須情報に間違いや不足があるものの、依然として会計システムへの記録が必要なインボイスでは、加えられるあらゆる訂正に対してこの手続きが適用されます。
誤りに気づいたのがインボイスを記録した後だった場合は、理論上は、表示されている付加価値税を税務署に納付する義務が発生します。請求書の再発行 を発行することで、このコストと不払いによる刑事罰の可能性を回避することができます。請求書の再発行には、その旨が明記され、独自のインボイス番号を付す必要があります。書面で元のインボイスとそれに対応するマイナスの金額を参照することにより、誤ったインボイスを無効にできます。
小規模事業者のインボイスに対して支払いが行われない場合の対処法
設定されている支払い期限を顧客が守らない理由はさまざまです。小規模事業者のインボイスが届いているかどうか (行方不明になったり迷惑メールとして処理されたりしていないかどうか) を顧客に問い合わせることもできます。小規模事業者のインボイスに記載した関連情報、つまり支払い期限や銀行口座の詳細がすべて正しいかどうかも確認します。
あるいは、新たな支払い期限を記載した 支払いのリマインド通知 を発行することも選択できます。誤解を避けるため、関係するインボイス番号を必ず参照しておきます。
支払いのリマインド通知を送付してもインボイスが未払いのままである場合は 督促状を発行 ができます。督促状は最大 3 通発行できます。段階的に緊急度を上げて顧客にインボイスへの支払いを促し、遅延利息に言及します。
顧客が BGB 第 286 条に基づく滞納になる場合は、代わりに法定督促手続きを開始することができます。