2025 年以降、ドイツの事業者には企業間取引 (B2B) における電子請求書の発行が義務付けられます。それに伴い、XRechnung 請求書が新たな標準規格になります。この記事では XRechnung 請求書の概要と作成方法、およびメリットについて説明します。また、XRechnung の代替手段や、事業者の会計プロセスに電子請求書を導入する際に必要な事項についても解説します。
この記事の内容
- XRechnung 請求書とは
- ZUGFeRD 請求書とは
- XRechnung 請求書の作成方法
- XRechnung 請求書のアーカイブの必要性
- XRechnung 請求書のメリット
- 2025 年以降に事業者に生じる請求書関連の義務
- XRechnung 請求書に対応するために事業者に求められること
XRechnung 請求書とは
XRechnung は、電子請求書のデータを交換するためのドイツの標準フォーマットです。XML フォーマットをベースとしているため、XML 請求書とも呼ばれます。XRechnung の内容と法的効力は従来の請求書と同じですが、紙の請求書や PDF 形式の請求書と違って簡単には読み取れません。XRechnung 請求書はコード行のみで構成されており、付属の XML データセットを用いることで電子的に処理できます。
XRechnung 請求書は、2017 年に欧州標準化委員会 (CEN) が制定した請求書に関する欧州規格 EN 16931 に準拠しています。このガイドラインでは、欧州全域で使用される電子請求書をどのように構造化するかが指定されています。必須の事項として、電子請求書は構造化された電子フォーマットによる発行、送受信、処理が可能でなければなりません。ただし、具体的な構造は欧州各国の判断に委ねられています。XRechnung は数ある選択肢の 1 つであり、ドイツでは XRechnung 以外に ZUGFeRD というフォーマットも利用できます。
ZUGFeRD 請求書とは
ZUGFeRD 請求書はハイブリッドの電子請求書です。これはドイツ語の「Zentraler User Guide des Forums elektronische Rechnung Deutschland」の略であり、「ドイツ電子請求書フォーラムの基準ユーザーガイド」という意味になります。ZUGFeRD 請求書は、XML と PDF の請求書フォーマットを統合したものです。XRechnung 請求書はコードで書かれているため読みづらいということが大きな理由となって、ドイツとフランスが共同で ZUGFeRD を開発しました。この ZUGFeRD 請求書は XRechnung とは異なり、機械だけでなく人間も読むことができます。PDF ファイルで構成されているため、見た目は従来の請求書と変わりませんが、XML データセットが埋め込まれています。そのため、受取人が XML データを技術的に処理できない場合に、請求者は ZUGFeRD 請求書を送ることができます。また、XRechnung 請求書がグラフィック要素や個別フォントに非対応であるのに対し、ZUGFeRD 請求書は事業者のコーポレートデザインに沿ったデザインにできるというメリットもあります。ZUGFeRD 請求書は、国際的には XRechnung 2.0 や Factur-X 請求書とも呼ばれています。
XRechnung 請求書の作成方法
XRechnung 請求書を作成するには、専用の会計ソフトウェアを使う方法、オンラインジェネレーターを利用する方法の 2 種類から選択できます。会計ソフトウェアの大手プロバイダーは、すでに標準サービスの一部として XRechnung 請求書の機能を提供しており、それらを利用すると、わずか数クリックで自動的に請求書の作成と送信ができます。同様の方法でアーカイブも可能です。オンラインジェネレーターも基本的に同様のサービスを提供していますが、請求書をダウンロードしてアーカイブするステップが追加で必要になります。大量の請求書を処理し、適切に保管したい事業者には、ソフトウェアソリューションの方をお勧めします。特に ZUGFeRD 請求書の場合は、オンラインジェネレーターで無料作成できる請求書の数に制限があり、デザインオプションも限られているケースが多いためです。
上述の 2 つの方法に加えて、PDF ファイルを XRechnung フォーマットに変換する方法も可能です。このようなサービスを有料で提供しているサービスプロバイダーも、いくつかあります。
原則として XRechnung 請求書には、従来の請求書と同じ必須情報、すなわち、業務委託者と請負業者の名前、住所、納税者番号、付加価値税 (VAT) 識別番号、請求日が含まれます。ただし、XRechnung 請求書には、受取人用のルート ID (経路 ID) という情報 も表示されます。この最大 40 文字の文字列により、明確かつ電子的に請求書の宛先を指定し、転送することが可能になります。この番号は、XRechnung 請求書の buyer reference (購入者リファレンス) フィールドで指定します。使用頻度の高いサプライヤー番号に関しては、請求書の受取人にルート ID を要求するとよいでしょう。
XRechnung 請求書のアーカイブの必要性
XRechnung 請求書は、他の形式の請求書やあらゆる業務関連書類と同様に、10 年間保管する必要があります。保存期間は、請求書が作成された年の最終日から起算します。「Grundsätze zur ordnungsmäßigen Führung und Aufbewahrung von Büchern, Aufzeichnungen und Unterlagen in elektronischer Form (GoBD)」(電子的方法による帳簿、記録および文書の適切な管理と保管、に関する原則) は XRechnung 請求書にも適用されます。特に GoBD ガイドラインには、紙の請求書を保管するだけでは不十分であると明記されています。請求書は電子的にアーカイブする必要があり、以降の変更を禁じ、いつでも機械で読み込みと確認ができる媒体にデータを保存することが望ましいと規定されています。
XRechnung 請求書のメリット
従来の請求書と比較して、XRechnung 請求書などの電子請求書にはさまざまなメリットがあります。
- 効率の向上: XRechnung 請求書では、事業者間での請求書データのやり取りが効率化され、スピードアップを実現できます。そのため処理時間が短縮され、決済プロセス全体のスピードが上がります。
- エラーの減少: XRechnung 請求書では、曖昧さのない明確な規格と自動検証により、エラーの発生率が低減します。
- トレーサビリティ: XRechnung 請求書は簡単にデジタルアーカイブでき、いつでもどこでも取り出すことができます。このため、決済の追跡、安全な監査、保存期間の順守を円滑に進められます。
- セキュリティ: 紙の請求書とは異なり、XRechnung 請求書は暗号化技術によって保護することができます。これにより、データの紛失、盗難、改ざんのリスクが低減します。
- コスト削減: XRechnung 請求書は、特に紙の請求書と比べて、印刷や発送、保管にかかるコストを節約できます。
- 環境への配慮: 紙の請求書の廃止は、紙の節約はもちろん、環境保護にもつながります。また、書類を物理的に発送する必要がなくなれば、二酸化炭素の排出量も削減できます。
2025 年以降に事業者に生じる請求書関連の義務
2024 年 3 月 22 日、ドイツ連邦参議院は成長機会法の政府草案を承認し、将来的に B2B 取引において電子請求書を義務付けることを決議しました。この背景には、欧州委員会の VAT in the Digital Age (ViDA: デジタル時代における VAT) という取り組みがあります。ViDA は B2B 取引における電子報告システムの導入について規定したものです。この報告システムは 2028 年から施行される予定になっていますが、2030 年または 2032 年への延期が検討されているところです。こうした将来のデータ交換の標準化に向けた要件の 1 つとして、ドイツでは成長機会法の導入とともに電子請求書の発行が義務付けられます。
これまで事業者は、書面や PDF 形式のファイルで請求書を発行することもできました。しかし 2025 年以降は 2025 年から 2027 年までの以下の経過規定をはじめ、新たな規定が適用されます。
- 2025 年 1 月 1 日以降、VAT 登録事業者はすべて「電子請求書」の発行と受け取りを可能にする必要があります。
- 2025 年および 2026 年は、電子請求書に加え、その他の電子的な請求書や紙の請求書も許容されます。
- 2027年は、2026 年の総収入が 80 万ユーロ未満の事業者に限り、(電子請求書に加えて)他の電子的請求書と紙の請求書を発行できます。
- 2028 年以降は、電子請求書のみ発行が認められます。
非課税収入に関する請求書、少額の請求書、公共交通機関の乗車券類の請求書(UStDV 第 34 条、VAT 実施条例を参照)については、電子請求書の発行義務が免除されます。当該事業者は、XRechnung 請求書を発行する必要はありませんが、受け取りと処理は可能でなければなりません。
ドイツ IT 標準化調整機関 (KoSIT) は、EU の施策を国家レベルで施行するため、 XRechnung 請求書フォーマットを開発しました。このフォーマットは 2017 年 6 月 22 日以降、行政機関における標準規格になっています。当該機関や公営の請負業者と取引する事業者も、この請求書フォーマットを使用しなければなりません。
XRechnung 請求書に対応するために事業者に求められること
2025年 以降は、ドイツの事業者との取引において電子請求書の使用が義務付けられるため、XRechnung 標準規格から免れることはできません。XRechnung は未来の請求書フォーマットです。事業者の規模や会計システムによっては、転換に費用と時間を要する可能性があるため、適切な体制をすみやかに整える必要があります。
まず手始めに、請求書データを XRechnung または XML 形式に変換できるかという点を確認することが重要になります。以前から使用しているソフトウェアで変換できない場合は、他のプログラムやオンラインジェネレーターを使用する必要があります。さらに、送信方法も再検討する必要があります。複数の請求書を当該機関に送る場合、単純なメール送信では最善の選択とは言えません。代替手段の 1 つとして PEPPOL が挙げられます。これは EU が開発した「汎欧州公共調達オンライン」という方式であり、単一のアク セスポイントを介して、それぞれの機関と複数の接続を確立できます。
ただし、こうした技術上の要件に対応するだけでは不十分です。新技術を会計システムにシームレスに統合するためには、担当者への適切なトレーニングも必要になります。また、事業者として XRechnung 請求書と ZUGFeRD 請求書のどちらを送信するかを決定する必要があります。
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