統合買掛金とは、組織がすべての出金支払いを 1 か所で管理できるようにするサービスまたはテクノロジーです。小切手、電信送金、Automated Clearing House (ACH) の取引を異なるポータルやスプレッドシートで処理する代わりに、1 つのプラットフォームで各ステップを処理できます。
中規模から大規模の組織の多くは、統合買掛金を採用して、面倒な数々の支払い業務を効率化しています。2024 年には、中小企業の 81% が統合決済ソリューションの導入に前向きな姿勢をみせました。
以下では、統合買掛金の仕組み、このサービスから最もメリットを得られる業界、Stripe がどのように役立つかなど、統合買掛金について企業が知っておくべきことを説明します。
この記事の内容
- 統合買掛金とは
- 統合買掛金が企業にとって重要である理由
- 統合買掛金の仕組み
- 統合買掛金に役立つ Stripe の機能
- 統合買掛金から最も恩恵を受ける業界
- 統合買掛金に関するよくある課題
統合買掛金とは
統合買掛金では、すべての出金支払いが単一システム内に収集されます。仕入先、サプライヤー、サービスプロバイダーへの支払いをまとめて入力すると、正しい書式で送金されます (ある仕入先には ACH 送金、別の仕入先には バーチャルカード、など)。財務チームは、各支払いを手作業で処理する代わりに、単一のインターフェイスを使用してすべてを処理および記録します。
統合買掛金は、仕入先の請求書、請負業者の給与、会費またはサブスクリプション料金、および業務経費の払い戻しに使用できます。またこのテクノロジーでは、承認とスケジューリングの調整と、財務記録の保管も行えます。
統合買掛金が企業にとって重要である理由
適切に構造化された買掛金システムは、ストレスを軽減し、エラーを最小限に抑え、全体的な財務慣行を改善することができます。ここでは、企業に統合買掛金の実装をお勧めする理由をいくつか紹介します。
時間の節約
支払い情報を手作業で入力するのは面倒ですし、小切手、ACH 送金、バーチャルカードなどの支払いの都度、異なる決済ポータルへと切り替えるのも大変です。統合ソリューションにより、これらの余分なステップが不要になります。支払いのバッチを入力し、その発送方法をプラットフォームに決定させることで、財務スタッフはその他の有意義な仕事に集中できます。
データが予測可能に
支払いログがさまざまなスプレッドシート、メール、または複数のソフトウェアプラットフォームに散在していると、データを見失いがちです。統合型システムを採用すると、発生した各取引が集約され、単一の台帳またはダッシュボードに保存されます。これにより、どのベンダーに支払ったか、いくら支払ったか、いつ支払いを行ったかについて、一貫した記録を作成できるため、予測や追跡がしやすくなります。
エラーのリスクを軽減
統合買掛金では、標準化されたプロセスと検証手順を実装することで、ミスやエラーの可能性を減らすことができます。すべての買掛金が 1 つのシステムにあるため、再入力のときに金額を誤ったり、古いベンダーの詳細に依存したりする可能性が低くなります。一部のソリューションでは承認の階層が加わるため、必要に応じて、機密性の高い支払いに慎重を期すことができます。
ベンダーとの関係を強化
ベンダーは、迅速で正確な支払いを期待しています。取引が遅かったり、不正確であったりすると、これまで築いてきた関係に影響が出る可能性があります。出金支払いを統一することで、正確かつスケジュールどおりに支払いを行いやすくなり、パートナーとの強い関係を維持するのに役立ちます。
拡張機能
ビジネスが拡大するにつれて、請求書と受取人の数が急速に増加する可能性があります。統合買掛金により、取引量の増加に伴う間接費を削減できます。複数の人を雇って別々のプロセスを処理する代わりに、構築済みの集中型決済ハブを使用して、業務を拡大できます。
統合買掛金の仕組み
統合買掛金は、複数の支払いチャネルを 1 つの調整されたフローに同期することで機能します。詳細はプロバイダーによって異なる場合がありますが、ここでは、統合買掛金システムの使用方法の概要を説明します。
受取人の情報
ビジネスの支払い先には、パートナー、ベンダー、フリーランサーなどがあり、それぞれに独自の支払い設定と銀行があります。統合買掛金ソフトウェアは、これらすべての情報を単一のデータベースに保存するため、新しい請求書が届くたびに詳細を追跡する必要がありません。
一括支払い
各支払いを個別に開始する代わりに、関連するすべての請求書または支払いを収集し、まとめてそれらの支払いのスケジュールを設定します。これは、毎日、毎週、またはビジネスに適した特定の予定に従って行います。出金のスケジュールを安定させるために、一定の間隔で特定のベンダーに支払うことを選択する組織もあります。
自動ルーティング
ソフトウェアは、各取引に使用する決済手段を決定します。これにより仕事量を増やすことなく、コスト、速度、ベンダーの好みに基づいて、出金フローを絞り込むことができます。
承認
多くのサービスには、エラーを防ぐため承認の階層が含まれています。小規模な取引は自動的に処理されますが、選択したしきい値を超える場合は、財務マネージャーの承認が必要となります。これにより、企業はより多額の出費をよりつぶさに監視できます。
取引記録
各支払いイベントがキャプチャされ、保存されます。データをエクスポートしたり、会計ソフトと同期したりできます。その結果、支払い額、受取人名、支払いタイプ、および確認の詳細を追跡する連結元帳が作成されます。これらの記録を 1 か所にまとめておくと、税金や外部監査が大幅に効率化されます。
通知と更新
また多くの場合、統合によりリアルタイムの支払い通知が行われます。支払いが完了しない場合 (銀行口座が解約されているなど)、システムから警告が表示されます。そのため支払人も受取人も、支払い未着の件を何日も経ってから知るということはありません。
統合買掛金に役立つ Stripe の機能
Stripe を使用すると、企業は財務タスクの多くを単一のプラットフォームに統合して、入出金を管理できます。ここでは、統合買掛金に関して Stripe がどのように役立つかを説明します。
オールインワンプラットフォーム
Stripe は、サブスクリプションの請求、1 回限りの支払い、B2B 取引の請求書作成など、あらゆるタイプの支払いに対応しています。ベンダーや請負業者への支払いが必要な場合は、Stripe のアプリケーションプログラミングインターフェイス (API) とダッシュボードを使用して、インバウンド収益と並行してこれらの取引を管理できます。
自動化と API
Stripe が提供する機能はプログラム可能であるため、エンジニアリングチームはカスタム買掛金ワークフローを設計できます。請求書の承認時に支払いを自動的にスケジュールする場合は、Stripe の API が役に立ちます。Stripe を既存の会計ソフトウェアや財務ソフトウェアと連携させることで、手作業の仕事量も軽減できます。
照合が簡単に
Stripe は、すべての取引を完全なメタデータで整理し、すべての入金と出金にラベルを付けて追跡します。取引は単一の記録内にあるため、バックエンドで簡単に明細を照合できます。
強力なセキュリティ
機密性の高い財務情報のセキュリティと安全管理を、Stripe は特に大切にしており、ユーザーである企業にそのメリットをお届けしています。機密性の高い支払い認証情報をサーバーに保存する必要がないため、リスクを軽減できます。
グローバルな決済機能
Stripe は、さまざまな国のサプライヤーへの支払いや通貨換算の処理など、国際的に事業を展開するビジネスにとって強力なソリューションです。
さまざまな支払い方法に対応
Stripe は、ACH 送金、電信送金、現地の銀行振込方法に対応しています。つまり、統合買掛金の設定は、各ベンダーまたはパートナーに最も適した方法で使用できます。
統合買掛金から最も恩恵を受ける業界
一部の業界は、スピード、正確性、柔軟性が要求される複雑な支払いを処理するため、統合買掛金に特に適しています。ここでは、このシステムが各業界でどのように使用されているかを説明します。
物流・輸送
物流関連の企業の場合、燃料費、通行料、メンテナンス、下請けドライバー、その他の費用など、支払いは常に悩みの種になる可能性があります。請求書はさまざまなベンダーから発行されるため、請求書ごとに若干異なる場合があります。
統合買掛金システムは、これらすべての支出を追跡するのに役立ちます。一括支払い、承認の自動化、バーチャルカードを使用した期日通りの支払いなどを行えます。タイミングがすべてである業界において重要な機能です。
メディア・広告代理店
広告代理店は、多数の決済手段を管理する必要があります。制作会社に小切手を切ったり、メディアバイイングプラットフォームに送金したり、キャンペーンコピーを手がけたフリーランサーに報酬を払ったりする必要があるかもしれません。支払いが遅れると、連鎖的な遅延が発生し、プロジェクトのタイミングが損なわれる可能性があります。
これらの代理店は、統合決済を使用して、支払いをスケジュールに合わせて調整します。フリーランサーには毎週、メディアプラットフォームには毎月支払う必要があったとしても、大丈夫です。さまざまな業務をシステムが処理しますので、ベンダーを満足させ予算を守るのに役立ちます。そして、すべてがきちんと記録されるため、後で簡単に参照できます。
教育・非営利団体
学校や非営利団体は、助成金、学生奨学金、コミュニティイベントのケータリングなど、さまざまな支払いニーズを抱えることがよくあります。また、監査や寄付者報告で財務状況を説明する必要もあります。
統合買掛金は、支払いを一元化し、自動的に分類します。たとえば、運営コストとプログラム経費を分離して、支援者や理事会メンバーへの報告をシンプルにできます。これにより、管理の仕事を対処可能な量に保ちながら、透明性を維持できます。
建設・不動産管理
建設には、多くの場合、下請け業者、サプライヤー、検査官への支払いや、プロジェクトマイルストーンに関連付けられた進捗支払いなど、さまざまな支払いが混在しています。留保金も発生し、プロジェクトが完全に完了するまで差し引かれます。これらのカテゴリーのいずれかで支払いが遅れると、作業が遅くなったり、緊張が生じたりする可能性があります。
統合システムにより、サプライヤー支払いのバッチ処理、マイルストーンベースの入金のスケジュール設定、抵当権免除の追跡が可能です。不動産管理者は、このシステムを使用して、修理や造園のためのベンダーへの支払いを管理することもできます。
医療・クリニック
保険会社からの償還は言うまでもなく、医療機器を供給するベンダーや検査を処理する研究所など、医療関連の支払いに伴う事務処理は困難を極める可能性があります。また、医療は厳しく規制されているため、すべての取引を記録し、安全に行う必要があります。
統合買掛金を使用しているクリニックや病院では、使い捨て医療用品などの継続支払いは自動化しながら、新しい MRI 装置などの高額なアイテムにフラグを立てて追加の承認を行っています。そのため、自動化による効率と高額取引に必要な監視の厳しさが両立し、監査や法令遵守チェックのための記録も保持されます。
ホスピタリティ・イベント運営
ホテル、ケータリング業者、イベントプランナーは、花屋やミュージシャンから清掃員やレンタルマネージャーまで、多種多様なベンダーと協力しています。季節的な変動や土壇場での変更が加わると、支払いを見落としがちになります。
統合買掛金により、どんなに忙しくても簡単に系統立てて管理できます。たとえば、契約条件に従って、会場や DJ の一部支払いをスケジュールできます。また繁忙期には、定期的なベンダーの支払いをバッチ処理して自動化して、業務を無理なく進められます。
統合買掛金に関するよくある課題
統合買掛金は大いに効果を発揮するのではと思われますが、実装と使用は必ずしも簡単ではありません。ここでは、発生する可能性のある問題をいくつか紹介します。
システムの互換性
企業は、すでにある程度財務ツールに依存しているかもしれません。統合買掛金プラットフォームは、これらのツールと連携させて、データがシステム間を流れるようにする必要があります。企業の財務プロセスが古くなっていたり、高度にカスタマイズされていたりすると、新旧のツールを連携する際に追加の開発作業が必要になることがあります。
スタッフのトレーニング
手作業の手順から自動化されたシステムに移行すると、従業員が方向感覚を失う可能性があります。人は従来の方法を好むものですし、新しいシステムをすんなりと学習できず憤慨するかもしれません。スタッフが自信を持って新しいプロセスの使用を学べるように、綿密なトレーニング計画を作成しましょう。
ベンダーのオンボーディング
ベンダーによって支払いの好みはさまざまであり、すべてのベンダーを 1 つのプラットフォームにまとめるには、銀行情報の収集や新しい決済手段へのサインアップなど、前もって管理作業が必要になる場合があります。これは 1 回限りのハードルにすぎませんが、それでも期待値を管理し、必要に応じて支援を提供する必要があります。
不正確なデータ
複数のソースからデータを取得すると、誤りが発生する可能性があります。フィールドを 1 つ間違えると、支払いの失敗や遅延につながる可能性があります。これらのエラーを回避するには、高品質なベンダーデータと堅実なデータチェックルーチンが重要です。
先行投資
多くの場合、統合買掛金は長期的には企業のコストを節約しますが、これらのシステムは通常、セットアップ、ライセンス、トレーニングのために、先に払う必要があります。古いシステムからのアップグレードは、特に中小企業にとっては大きな出費です。しかし、後で十分見返りを得ることができます。この種のシステムは慎重に計画してから展開しましょう。
データ保護
支払いを処理するシステムには、データ保護の課題があります。統合ソリューションは、暗号化、ユーザー アクセス制御、法令遵守に関するベストプラクティスに従う必要があります。一部の企業では特殊な法令遵守チェックが必要であり、それには、買掛金プロバイダーを選択して構成する際に、より高いレベルのデューデリジェンスが必要です。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。