支払いはすべて特定の経路をたどります。最も直接的な経路を使用し、問題なく届く場合もあります。また、拒否や遅延が発生したり、取引の特性に合わない代行業者でどうなっているかわからなくなったりするなど、途中で止まってしまう場合もあります。その違いの多くは経路選定によるものです。これは支払いの宛先やそこに到着した後に成功に至る確率を決定づける静的な基盤になります。
経路選定は、事業者が売上の拡大、信頼性の向上、処理コストの削減を積極的に実行できる数少ない手段の 1 つです。これらはすべて、商品や顧客体験を変えることなく実現できます。この記事では、支払いの経路選定の実際の機能、それが重要な理由、拡張時に考慮すべき点について説明します。
この記事の内容
- 支払いの経路選定の概要
- 支払いの経路選定の機能
- 事業者の成長における支払いの経路選定の重要性
- 経路選定ルールの設定時に考慮すべき要素
支払いの経路選定の概要
支払いの経路選定とは、取引が決済ページから承認されるまでのロジックです。支払いがたどる経路 (決済代行業者、アクワイアリング銀行、または決済ネットワーク) を、一連のルールまたはリアルタイムの条件に基づいて決定します。
経路選定は、支払いの承認確率の向上と、コスト、スピード、信頼性を考慮して支払いの処理方法を微調整することに重点を置いています。これは、バックグラウンドで数ミリ秒のうちに実行されるスマートな決定システムです。経路選定が動的に行われることで、支払いの失敗を最小限に抑え、オーソリ率を向上させ、ダウンタイムを防ぐことができます。
事業が拡大するにつれて、経路選定の重要性も増します。顧客と事業者のコアインフラストラクチャーの地理的、財務的、技術的な距離が遠ければ遠いほど、スマートな経路選定ができるかどうかが支払いの成功に大きく影響します。
支払いの経路選定の機能
顧客が支払いを行うたびに、その取引の支払い経路をシステムで決定し、承認、敏速な処理、優れた費用対効果が得られるようにする必要があります。この決定は、支払いの経路選定エンジンで行われ、このエンジンで取引が評価され、自動的かつリアルタイムで最適な経路が選択されます。
顧客が支払い情報を送信すると直ちに、カードの種類、発行国、通貨、取引額、デバイスなどの詳細情報がシステムに収集されます。設定されているルールやアルゴリズムに基づいて、システムで支払いの送金経路が決定されます。ルールでは、地理的な距離 (ヨーロッパのカードにヨーロッパのアクワイアラーへの経路を決定するなど)、カードブランドのパフォーマンス (代行業者 A は Visa との連携が良好、代行業者 B はアメリカン・エキスプレスとの連携が良好など)、リアルタイムのアップタイムや遅延データ、そのカードの種類や取引額のコスト効率などを考慮して、優先順位が決まります。
支払いは、選択された代行業者またはアクワイアリング銀行に送られます。代行業者は、適切な決済ネットワークが経由されるように顧客の銀行に取引を送る経路を選定して、取引のオーソリが得られるように試行します。オーソリが得られると、取引は決済と売上処理に進みます。取引が拒否された場合や、技術的な問題で最初の経路が失敗した場合、スマートな経路選定システムではすぐに別のルートが使用され、再試行することができます。
これらはすべてミリ秒単位で行われます。こうした決定を経ていることを顧客は認識できません。支払いの完了のみが表示されるか、選定された経路のすべてが失敗した場合は、取引の拒否が表示されます。
経路の決定は、ルール (手動で構成)、動的 (リアルタイムで更新)、またはハイブリッド (パフォーマンス データに基づいて調整されるルール) を基準にすることができます。最も効果的な設定は、過去の成功率、現在の状況、取引のコンテキストを使用して、そのときそのときで最善の経路が決定されるようにすることです。
経路選定の設計が優れている場合は、障害処理も考慮されます。代行業者でタイムアウトが発生したり、あいまいな支払い拒否が返されたりした場合、システムは処理のスピードを下げることなく、自動的に別の場所で取引を再試行できます。これはフェイルオーバーまたはスマートリトライと呼ばれる機能です。
事業者の成長における支払いの経路選定の重要性
小規模な事業者の場合、決済システムをシンプルにすることもできます。しかし、さまざまな通貨、市場、決済手段に対応し、処理の規模が大きくなると、各取引がたどる経路の重要性が高まります。
経路選定は、決済システムの一部であり、取引が成立する確率、費用、最初の試行が失敗した場合の対応を決定します。これらの要素は、成長中の事業者から見て理論的なものであるとは言えず、売上の損失、混乱した顧客からのサポートチケット、予期せぬ支払いの失敗を招きかねないものです。
経路選定機能が優れている事業者が実現できることをご紹介します。
支払いの成功を増やす
あらゆる地域、カードの種類、ネットワークでパーフェクトな承認率を得られる代行業者は存在しません。スマートな経路選定を採用することで選択の幅が広がります。地域、カードブランド、取引額、過去の実績などに基づき、実績が最も高い経路に取引を誘導することができます。これにより、支払いの誤拒否が減少すると、カゴ落ちが減り、処理される実際の売上が増加することになります。
レジリエンスの構築
サービス停止は起こりかねないものです。ゲートウェイのダウン、銀行でのタイムアウト、ネットワークの混雑などの原因で発生することもあります。支払いの経路が 1 つしかない場合は、上流で発生した問題のすべてが原因になり得ます。しかし、経路選定システムが柔軟であれば、障害が何か発生したときにトラフィックを自動的にバックアッププロバイダーに移行できます。
手数料の支出を減らす
決済処理 のコストは規模が拡大するにつれてどんどん膨れ上がります。2 つの代行業者の差は数ベーシスポイントかもしれませんが、取引が数千、あるいは数百万の規模になると、見過ごせないほどの差になります。経路選定を使用すると、成功率を損なうことなく、取引を最もコスト効率の高い経路に誘導できます。これは、わずかな手数料の差でも問題になる利益率の低い商品に特に有効です。
顧客の所在地に合わせる
事業が拡大するにつれ、「標準」ということができる支払いは少なくなります。顧客が銀行振込や現地のデジタルウォレットの使用を望む国もあります。アクワイアラーによっては、国外カードと比較して国内カードの処理に秀でています。経路選定では、新たな市場に参入するたびにシステムを再構築することなく、プロバイダーを組み合わせて、顧客が望むあらゆる決済手段に対応できます。
顧客体験を保護する
支払いが失敗すると、顧客は銀行やペイメントゲートウェイではなく、事業者を非難しがちです。経路選定の機能が順調であるときは、ユーザーに意識されにくいものですが、決済フローの使用感の信頼性と信用を形成するものです。経路選定ロジックによって無益な支払い拒否や遅延が回避できていれば、顧客が支払う可能性が高まり、離脱する確率は低くなります。
経路選定ルールの設定時に考慮すべき要素
すべての取引にその取引がどこへ向かうものであるかを示す手がかりが得られるコンテキストが含まれています。経路を選定する際に把握できるコンテキストが多いほど、結果に活かすことができます。経路選定ロジックを設定する際は、以下の点に注意します。
場所
顧客の所在地は、支払いの承認に大きく影響することがあります。特に越境取引が詳細に調べられる市場では、通常、取引を現地のアクワイアラー経由にすると、銀行が取引を承認する確率が高まります。
複数の地域で販売している場合は、現地で経路選定を行うことで、不要な外貨換算を回避し、支払い拒否率を低下させ、地域の規制順守を確実にできます。
通貨
経路の決定は、使用される通貨の影響も受けます。複数の通貨を受け付けている場合、経路選定ロジックでは、各支払いをネイティブに処理できる決済代行業者を介して届けられるようにする必要があります。これにより、両替手数料が節約され、顧客の負担を最小限に抑え、銀行が疑わしい支払いであると見なす可能性が低くなります。
カードの種類や決済手段
すべてのネットワークや決済手段で同じパフォーマンスを発揮できる代行業者は存在しません。Visa カードや Mastercard カードで一貫してより良い結果が得られる代行業者もあれば、SEPA ダイレクトデビットや iDEAL などの特定の銀行振込方法の連携が強力な業者も存在します。経路選定ルールでは、各手段を最も確実に処理する代行業者と組み合わせることで、得手不得手を反映できるようにする必要があります。
取引額とリスク
リスクや優先順位は支払いごとに異なるものです。高額な取引は、手数料が若干高くても、強力な認証ツールを利用し、不正防止手段が優れている代行業者を経由させることが推奨されます。一方、低額または低リスクの取引は、コスト効率やスピードを重視した経路選定をお勧めします。
社内でリスクを基準にして取引をスコア評価しておくことで、チェックを追加するか、微妙な事例で寛容な判断をする代行業者を選ぶか、状況に応じて経路を選定できるようになります。
過去の実績
経路選定で見逃しがちな絶好の要素の 1 つに、自社データの利用があります。時間の経過とともに、いくつかのパターンが見えてきます。たとえば、代行業者 A はアメリカのカードの承認率が高い、代行業者 B は東南アジアでの週末のトラフィックに対する結果が良い、代行業者 C は月末のピーク時に減速する傾向がある、などです。
優れた経路選定ロジックとは、これらのパターンに合わせて調整できるものです。最適なシステムは、取引データから得られる知見を活かして開発されます。
コスト
手数料体系は、代行業者、支払いタイプ、地域、数量階層によって異なります。スマートな経路選定の設定では、そのナレッジを使用して現実的なトレードオフを行います。たとえば、利益率の低い購入にはデフォルトとして最も安価な代行業者を設定し、初回の試行が失敗したときにより高価な代行業者に切り替えることができます。
コストの微調整の際はパフォーマンスを犠牲にしないように注意してください。取引の失敗が、特に顧客の消失につながると、数ベーシスポイント以上の追加コストがかかります。
可用性と健全性
パフォーマンスの優れた代行業者でも、サービス停止、低速化、エラーの発生があると選択肢として勧められません。経路選定ロジックでは、代行業者の健全性も考慮する必要があります。言い換えると、障害発生時の経路の再選定や、遅延がピークに達している代行業者からのトラフィックの移動などを考慮することが必要になります。健全性を自動的に監視するシステムも、手動のルールやアラートに依存するシステムも存在します。
規制上または契約上の制約
現地のアクワイアリング要件、データ所在地に関する法律、あるいは銀行や決済代行業者との契約上の義務はいずれも、経路選定の選択肢を形成する際に制約となる場合があります。これらの制約はシステムメトリクスでは示されないこともありますが、ルールでは当初から考慮しなければなりません。
全体的な目標は、コスト、承認率、遅延、信頼性、法令遵守など、それぞれの状況における最重要事項のバランスを取ることです。これらの可変要素はすべて時間の経過とともに変化する可能性があるため、最適な経路選定ロジックも変化に柔軟に対応できなければなりません。このロジックは可変ルールに基づいて構築され、支払い動作が反映されるデータから情報が取り込まれます。Stripe Payments が高度な再試行メッセージと経路の組み合わせを使用して、誤拒否された支払いから売上の 10% を回収した方法について、詳細はこちらをご覧ください。
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