付加価値税 (VAT) 申告書は、VAT 登録企業がイギリスの税務当局に定期的に提出することが義務付けられている申告書です。この申告書では、特定の期間 (通常は毎月または四半期ごと) に売上に対して顧客に請求した VAT の金額と、購入に対して支払った VAT の金額を報告します。

VAT 申告の目的は、企業が税務当局に追加の VAT を支払う必要があるかどうか、または還付の対象となるかどうかを計算することです。この方法により、イギリス政府は VAT の徴収を追跡し、200 万を超える VAT 登録事業者が正しい金額を支払っているか、または還付請求しているかを確認しています。これらの申告書を提出することは、税務コンプライアンスを維持し、罰則を回避するための重要要素です。

以下では、VAT 申告書を提出する必要がある人、注意すべき期限、オンラインで申告書を提出する方法、およびよくある間違いについて説明します。

この記事の内容

• VAT 申告書の提出が必要なケース
  
• イギリスの VAT 申告の期限
  
• VAT 申告書をオンラインで提出する方法
  
• VAT 申告に必要な情報
  
• VAT 申告におけるよくある間違い
  

VAT 申告書の提出が必要なケース

VAT 登録事業者は必ず、VAT 申告書を提出する必要があります。これは、以下に関わらず当てはまります。

• ビジネスの規模

• その期間に徴収または支払った VAT の金額 (VAT を支払う義務がない場合でも)

• VAT 登録の理由 (課税対象の売上が 90,000 ポンドのしきい値を超えている、自発的な登録など)

VAT に登録していない場合は、VAT 申告書を提出する必要はありません。VAT の登録を行っていない事業者には、次のようなビジネスが含まれます。

• 収入が VAT しきい値未満である

• 自発的に登録していない

• VAT 非課税の商品・サービスのみを扱っている (特定の金融サービスや教育など)

イギリスの VAT 申告の期限

イギリスでは、VAT 申告書の提出と支払いの期限は、会計期間とビジネスの VAT 税制によって異なります。支払いスケジュールは次のとおりです。

• 四半期申告: ほとんどの企業は四半期ごとに VAT 申告書を提出します。申告書の提出と未払いの VAT の支払いの期日は、会計期間の終了から 1 か月と 7 日後です。たとえば、3 月 31 日に終了する VAT 四半期の期日は 5 月 7 日です。

• 月次申告: 一部の企業、特に定期的に VAT を還付している場合は、毎月申告書を提出することを選択します。期限は同じで、会計期間の終了から 1 か月と 7 日後です。

• 年次申告: ビジネスで年次会計制を使用している場合は、年に 1 回 VAT 申告書を提出します。この申告の期限は、12 か月の会計期間の終了から 2 か月後です。年間を通じて、月次または四半期ごとに VAT 納付額の前払いを行い、最終の支払い期日は VAT 申告書の提出時となります。

すべての VAT の支払いは電子的に行う必要があり、支払いは期限までに歳入関税庁 (HMRC) の口座に届く必要があります。期限日が週末や祝日に当たる場合、その前の最終営業日に HMRC の口座を清算する必要があります。VAT 申告書を提出しなかったり、期限内に VAT を支払わなかったりすると、罰則が科せられる可能性があります。2023 年 1 月 1 日より、提出が遅れた場合にはポイント制の罰則システムが設けられています。このシステムの下では、提出が遅れるごとに 1 点のペナルティポイントが与えられ、一定のしきい値に達すると 200 ポンドの罰金が科せられます。

しきい値は、提出頻度によって異なります。支払いが遅れた場合の罰金は支払いの遅れによって異なり、罰金の金額は 16 日および 31 日後に増加します。

VAT 申告書をオンラインで提出する方法

手順さえ把握すれば、イギリスでは VAT 申告書をオンラインで簡単に提出できます。その方法は次のとおりです。

• ビジネスが VAT に登録されていない場合は、今すぐ登録してください。登録が完了すると、HMRC から VAT 番号が付与されます。

• VAT 登録番号を使用して、オンライン VAT アカウントを開設します。ここで申告の期日を確認し、支払いを行うことができます。アカウントを設定するには、以下の手順に従います。

  • HMRC の VAT サービスのウェブサイトにアクセスします。
    
  • 「今すぐ開始」をクリックし、「ログイン情報を作成」をクリックします
    
  • 手順に従ってアカウントを設定します
    

• 次に、適切な会計ソフトウェアを入手します。ほとんどの企業は、QuickBooks、Xero、Sage などの Making Tax Digital (MTD) 互換ソフトウェアを使用して VAT 申告書を提出する必要があります。HMRC には、認可したソフトウェアの一覧が用意されています。

• ソフトウェアのセットアップが完了したら、VAT アカウントに接続します。この手順は、プラットフォームごとに異なります。

• VAT の詳細を入力します。一部のソフトウェアでは、販売記録や購入記録から支払ったVAT 額や請求した VAT 額が自動的に投入されますが、手動で入力しなければならないソフトウェアもあります。

• 準備ができたら、ソフトウェアの「送信」ボタンをクリックして、申告書を提出します。申告書が正常に送信されると、確認メッセージが表示されます。

• VAT を支払わなければならない場合は、期限までに支払う必要があります。以下の方法で支払えます。

  • 口座振替
    
  • 銀行振込
    
  • デビットカードまたはクレジットカード
    
  • オンライン銀行口座
    
  • 自動振替 (年次会計制または前払いを使用する企業のみ)
    
  • 銀行または住宅金融組合
    

申告後、HMRC の要求に従い、少なくとも 6 年間、すべての VAT 記録 (デジタル形式) を保管してください。これには、VAT 請求書、領収書、販売と購入の記録が含まれます。

VAT 申告に必要な情報

VAT 申告については、会計期間中のビジネスの売上、購入、および VAT 活動に関する具体的な詳細を収集する必要があります。必要なものは次のとおりです。

• 期間中のすべての売上と収入の合計額 (VAT 課税対象の売上とゼロ税率の売上を含む)

• 期間中に売上に対して顧客に請求した VAT の合計額 (「売上 VAT」とも呼ばれます)

• 期間中にビジネスで行ったすべての購入の合計額 (再販目的で購入した商品、事務用品などの運営コストを含む)

• ビジネス向けに購入した商品・サービスに対して支払った VAT の合計額 (「仕入 VAT」とも呼ばれます)

• 請求した VAT (売上 VAT) と支払った VAT (仕入 VAT) の差額

• 以前の VAT 申告書の修正、不良債権の救済、機械や資産などの大規模な購入に対する資本財税制のための調整

売上 VAT が仕入 VAT を上回る場合、HMRC に対して VAT を支払う義務があります。仕入 VAT が売上 VAT を上回る場合は、その差額の還付を受けることができます。

VAT 申告におけるよくある間違い

ビジネスは VAT 申告書を提出する際に、特定の間違いを犯す可能性があります。その結果、罰則が科せられたり、法令遵守の証明が困難になったりする場合があります。ここでは、注意すべき間違いと、それを回避するための戦術をいくつか紹介します。

• 期日を守らない: VAT 申告書の提出期日や納付期日に間に合わないと、罰則を科される可能性があります。これを回避するには、余裕を持って VAT の期限のリマインダーを設定するか、支払いが自動的に行われるように口座振替を設定することを検討してください。

• 計算ミスをする: VAT を独自に計算する場合、特に異なる VAT 率や多くの取引を扱う場合は、複雑になる可能性があります。小さなエラーでも、過払いまたは過少支払いにつながる可能性があります。これを回避するには、VAT 対応の会計ソフトウェアを使用して計算を処理し、ミスの可能性を減らします。

• 個人的な支出に VAT 還付を請求する: HMRC は、厳密にビジネスに関連する VAT を還付請求すべきであると定めています。個人的な支出に対して請求すると (たとえ意図せずに行われた場合でも)、ビジネスに問題が生じる可能性があります。これを回避するには、ビジネスと個人の財務を分けて、ビジネスに明示的に関連する購入の還付請求のみを行います。

• 対象外の事業経費に VAT 還付を請求する: ビジネス関連のすべての支出が VAT の還付の対象となるわけではありません。たとえば通常、クライアントの接待に対する請求は還付請求できませんし、部分的に個人的な目的で使用されるアイテムは、完全には適格とならない場合があります。不適格な経費の還付を請求しないように、VAT 規則で許可されている経費を再確認してください。混合用途のアイテム (仕事用と個人用にラップトップが 1 台ある場合など) の場合は、ビジネスでの使用量に比例した金額のみを請求します。

• すべての売上を含め損なう: 税率がゼロであっても、売上を除外すると、申告で問題が発生する可能性があります。VAT を請求しなかった場合でも、すべての売上を記録します。ソフトウェアを使用する場合は、各種 VAT カテゴリー (税率ゼロなど) を処理できることを確認してください。

• 海外販売で間違いを犯す: 海外の顧客やサプライヤーとの連携は複雑になる可能性があります。イギリスの EU 離脱後に規則が変更されたため、リバースチャージ (顧客が VAT を処理する場合) を適用したり、EU での売上の報告を変えたりする必要があるかもしれません。輸入と輸出の VAT ルールをよく調べて、リバースチャージが適用されるタイミングを確認し、リバースチャージを考慮した機能を備えた税務ソフトウェアの使用を検討してください。

• 不良債権救済策を忘れる: 6 か月が経過しても顧客が支払わなかった場合は、その販売に対して HMRC に支払った VAT の還付を受けることができます。多くの企業はこれを忘れており、節約の機会を逃しています。この間違いを避けるには、期日超過の請求書を監視し、6 か月に達した時点で、VAT 調整の対象となるかどうかを再確認してください。

• 間違った VAT 税制を使用する: VAT 税制が異なれば、ルールも異なります。定額制または年次会計制を利用している場合に、「通常」税制のやり方で申告書を提出すると問題が発生する可能性があります。特定の税制のルールに従っていることを確認してください。

• すべてを手入力する: データを手動で入力すると、タイプミスや数値の欠落などが起こり、VAT 申告で誤りが発生する可能性があります。これを回避するには、請求書と領収書からデータを自動的に投入する会計ソフトウェアを使用します。ミスが減るだけでなく、時間の節約にもなります。

• 適切な記録を保管していない: HMRC は、少なくとも 6 年間、請求書と領収書を含む VAT 記録を保管するよう求めています。記録が欠落していたり、整理されていなかったりすると、特に監査の際に法令遵守の問題が発生する可能性があります。この要件をスムーズに満たすには、すべての VAT 記録をデジタルで保存します。ほとんどの会計ソフトウェアはすべてを 1 か所にまとめられるため、HMRC から要求されたときに必要なものを簡単に見つけることができます。

• 調整を見落としている: 以前の申告での誤りを修正したり、機器や機械などの高額購入で VAT の還付を請求したりといったケースで、VAT 申告書を調整しなければならない場合があります。これらの調整を忘れると、コストがかかることがあります。申請する前に、これらの請求を見逃さないように、調整が必要なものがあるかどうかを確認してください。