長年にわたり、後払い (BNPL) サービスを提供するプロバイダーは、オーストラリアの他の貸し手事業者と同じ規制を受けていませんでした。しかし、この状況は変わりつつあります。最近の規制変更により、BNPL サービスの提供・促進・利用のあり方が全国的に見直されています。
ビジネスが決済時に BNPL を提供している場合や、BNPL プロバイダーと提携している場合、あるいは既存の BNPL インフラを活用している場合は、これらの変更を理解しておく必要があります。この記事では、オーストラリアの後払いの規制に自信を持って対応する方法を詳しく解説します。
この記事の内容
- 後払い (BNPL) とは
- オーストラリアにおける BNPL の仕組み
- BNPL プロバイダーが遵守すべき規制
後払い (BNPL) とは
BNPL は、顧客が商品をすぐに受け取り、代金を時間をかけて支払う仕組みのことです。決済時に BNPL プロバイダーが総額を分割し、短期間のスケジュールに沿って支払いが行われます (多くの場合、無利子です)。
一般的な支払いの仕組みは以下のようになります。
総額の一部を前払い
残額を翌月以降の分割で返済
支払いが期限内であれば利息は不要
小売業者が直接融資を行うことはありません。BNPL プロバイダーが購入金額の全額 (手数料を差し引いた金額) を事業者に前払いします。事業者にとっては、即時決済が可能な、支払い保証付きの販売手段と言えます。顧客からの返済は BNPL プロバイダーが回収し、そのリスクもプロバイダーが引き受けます。
収益モデル
BNPL プロバイダーは、クレジットカード発行会社のように、月々の未払い残高に利息を課すことはありません。顧客が一定期間、BNPL 残高を保有します。プロバイダーは、主に以下の 2 つの方法で収益を得ています。
支払い遅延による顧客手数料
取引ごとの加盟店手数料 (通常は売上の一定割合)
顧客が期日どおりに支払った場合、基本的に購入金額以上の負担はありません。ただし、支払いが遅れた場合は、追加料金が発生することがあります。
承認プロセス
BNPL プラットフォームは、特に少額の取引では、数秒以内にユーザーを承認することが一般的です。多くの場合、承認は簡単な本人確認と、BNPL プロバイダーでの過去の返済履歴に基づいて行われます。
BNPL は、クレジットカードのように利息を支払うことなく、買い物客に短期的な柔軟性を提供します。また、ビジネスにとっても、決済時に手軽に導入できる決済手段です。BNPL プロバイダーは、小売業者のウェブサイトへのトラフィックも促進します。顧客は、アフィリエイトマーケティングプラットフォームと同様に、プロバイダーのマーケットプレイスや店舗ディレクトリを通じて商品ページを閲覧できます。
オーストラリアにおける BNPL の仕組み
Afterpay や Zip など、オーストラリアの BNPL プロバイダーは、10 年以上前から国内でサービスを展開しています。多くのオーストラリアの顧客は、日常の支払いに Afterpay を利用しています。ファッションサイト、家電量販店、歯科医院、旅行代理店など、さまざまな場所で導入されています。
2024 年には、BNPL の普及率が世界の中でも最も高い国となりました。特に若年層の利用が顕著で、2023 年には 18 歳から 39 歳の顧客の 40% が BNPL を利用しています。
Afterpay と Zip が主要なプロバイダーですが、Klarna のような国際的なプロバイダーも市場に参入しています。多くのプラットフォームは「3 回払い」または「4 回払い」のモデルを採用しており、購入金額を 6 ~ 8 週間にわたり 3 回または 4 回の均等払いで分割します。高額な購入に対しては、返済期間を延ばし、与信限度額を高く設定する場合もあります。
BNPL での支払いを希望する顧客は、決済時に BNPL を選択します。その後、既存のアカウントにログインするか、新たにアカウントを作成します。
承認されると、顧客は返済スケジュールに同意します。初回の分割払いは、プロバイダーによって即日、または 14 日以内の期日となります。以降の支払いは、顧客が指定したカードや銀行口座から、BNPL プロバイダーが自動で引き落とします。支払いが遅れると、手数料が発生します。
利用限度額は、通常は低めに設定され、返済実績を積み重ねることで徐々に引き上げられます。
BNPL プロバイダーが遵守すべき規制
つい最近まで、後払いサービスはオーストラリアの法制度におけるグレーゾーンで運営されていました。サービスのイメージも機能もクレジットとほとんど変わりませんでしたが、法的な定義には該当していませんでした。そのため、BNPL プロバイダーは、貸し手事業者としての規制を受けることなく、短期ローンを提供してきたのです。
正式な与信規制がなかったものの、BNPL プロバイダーはオーストラリア消費者法のもと、誤解を招く表示や不公平な契約条件の禁止対象となっていました。さらに 2021 年には、オーストラリア金融業協会が BNPL Code of Practice を導入し、業界のベストプラクティスを定めました。主要な BNPL プロバイダーは、この自主規制の取り組みに署名しています。
その後、National Credit Code が改正され、BNPL プロバイダーもその対象に含まれるようになりました。2025 年 6 月 10 日には新しい規制の枠組みが施行され、オーストラリア国内の BNPL プロバイダーは、他のクレジットプロバイダーと同じ規制基準に従うことになります。新たな規制には、ライセンスの取得、融資審査、情報開示のルール、価格管理などの要件が含まれています。一部の変更点は、すでに BNPL Code of Practice の中で取り組まれていた内容と重なりますが、今回の違いはそれが法的義務となる点です。
ここからは、新しい要件にどのように対応する必要があるかをご紹介します。
ライセンスの取得
BNPL サービスを提供する企業は、オーストラリアのクレジットライセンスを取得し、Australian Financial Complaints Authority (オーストラリア金融苦情局) に加盟しなければなりません。ライセンスの申請は、オーストラリア証券投資委員会 (ASIC) を通じて行います。
責任ある融資
現在、多くの BNPL 商品は、法的には「低コストクレジット」に分類されています。そのため、プロバイダーは、従来の RLO (責任ある貸付義務) よりも緩やかな修正型 RLO の枠組みを選択できます。
修正された RLO のもと、プロバイダーには以下の義務があります。
顧客を承認する前に、その財務状況や目的、ニーズについて合理的に確認すること
財務状況を確認するために、合理的な措置を講じること
提供する与信契約が顧客にとって適切かどうかを評価すること
法律上、少額の購入には一定の柔軟性が認められています。BNPL 契約が 2,000 オーストラリアドル (AUD) 未満の場合、プロバイダーは契約が顧客のニーズと目的に適合していると見なすことができます。ただし、それでも顧客の財務状況について推測することは認められていません。たとえ 100 AUD の購入であっても、プロバイダーは顧客の財務状況を基本的に確認する必要があります。
もし顧客が返済に重大な困難を抱える可能性が高いと判断された場合、プロバイダーはその取引を拒否しなければなりません。
手数料の上限
BNPL 商品は、今回導入される規制の枠組みのもとで厳格な手数料の上限内に収まる場合に限り、提供が認められます。この上限を超えると、その商品は「低コストクレジット」とは見なされず、より厳格な標準与信法の対象となります。
現時点での手数料の上限は、以下の通りです (法案に基づく)。
最初の 12 カ月間にかかる手数料 (債務不履行によるものを除く): 最大 200 AUD
13 カ月目以降は、年ごとに: 最大 125 AUD
延滞に対する手数料 (月あたり): 最大 10 AUD
このような上限設定により、手数料の過剰な上昇を抑制し、不当に高い手数料を課す BNPL モデルの開発を防ぐ効果が期待されます。
情報の開示
BNPL プロバイダーには、契約締結前に顧客に対して重要な情報を開示する義務があります。その内容には、以下が含まれます。
事業者のライセンス番号
顧客を不適切な与信契約から保護する義務に関する説明
苦情申し立て先の連絡先情報
このような開示によって、プロバイダーと顧客の間により高い透明性が確保されます。
苦情処理
BNPL プロバイダーは、ASIC の基準に準拠した紛争解決プロセスを整備する必要があります。これにより、顧客は自身の権利についてより深く理解でき、苦情が適切に扱われていることを確認できるようになります。
規制回避の防止
新たに導入される法律では、規制逃れを防ぐための対策も講じられています。プロバイダーが、手数料の構造を変更する、手数料の名称を変更する、1 つの契約を複数に分割するなどの手法で規制を回避することは認められていません。また、ASIC は商品の形式にかかわらず、その実質に基づいて規制対象かどうかを判断できる広範な権限を持ちます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。