延滞請求書の追跡と請求の管理は、企業にとって特に大きな負担を強いられる作業であるため、多くの企業が自動クレジットカード決済を用いてこれに対応しています。自動クレジットカード決済では、事前に設定したスケジュールで顧客のカードに請求がいくため、手動でリマインダーを送る必要はありません。また自動支払いは、企業のキャッシュフローの管理方法を決定する要素でもあり、支払い遅延を減らすことが期待できます。2024 年現在におけるアメリカのクレジットカード普及率が約 67% と推定されていることからも、このタイプの請求は多くの人が利用できることを意味します。
以下では、自動クレジットカード決済の仕組み、長所と短所、Stripe を利用して継続請求を簡単にさせる方法など、企業が自動クレジットカード決済について知っておくべきことを解説していきます。
本記事の内容
- 自動クレジットカード決済とは?
- 企業における自動支払いの仕組み
- 自動クレジットカード決済の長所と短所
- 自動クレジットカード決済が利用されている業界
- 自動支払いのセキュリティを確保する方法
- 継続請求の管理に Stripe を役立てる方法
自動クレジットカード決済とは?
自動クレジットカード決済は、保存されている顧客のカード情報に企業が一定の頻度 (毎週、毎月、毎年、または両当事者が合意した別の期間) で請求する取り決めの一種です。顧客が許可を与え、カード情報を提供すると、請求日に支払いが完了します。
この支払いでは、繰り返しデータを入力する手間は発生せず、また支払いが完了するかどうかの検討を重ねる必要もありません。多くの企業にとって自動クレジットカード決済は、小切手の郵送や、決済用リンク付きの 1 回限りの請求書の送付に比べて魅力的なオプションとなります。一方で顧客側も、請求書の設定を大幅に簡素化できる自動クレジットカード決済の利便性を高く評価しています。
企業における自動支払いの仕組み
自動支払いは、請求頻度の取り決め、支払いの承認、および記録を管理するシステムまたはツールセットが揃うことで初めて実現します。そして自動支払いを効果的に処理していくには、通常、次の要素を考慮する必要があります。
顧客契約:利用者には、継続請求への同意が求められます。登録プロセスを通じて顧客は、クレジットカード情報を共有し、請求スケジュールを設定します。この契約により、顧客がサブスクリプションをキャンセルするまで企業は定期的にカードに請求できるようになりますが、支払いの透明性を確保する責任を企業は負います。
支払い情報の保存:顧客のクレジットカード情報は、データ漏洩やその他の問題の発生を抑えるために、厳格なセキュリティ要件を満たす安全なデジタル環境に保存されなければなりません。多くの企業は、カード情報を自社に保存することを避け、サードパーティーのプラットフォームにこれを頼っています。
継続請求サイクル:支払い情報が登録されると、請求スケジュールが開始されます。指定された日付にソフトウェアまたはオンラインプラットフォームが支払いをトリガーした後、支払いの試行が自動的に行われ、支払いが成功するとサービスが続行されます。
失敗した取引:支払いが失敗した場合、システムは企業と顧客の両方にアラートを送ります。この場合、カード情報を更新するか、別の決済手段をリクエストするように利用者に求める電子メールがシステムから送信されることがあります。
領収書・確認書:支払いが成功すると、プラットフォームは、メールまたはダッシュボード通知を介して、顧客に確認書を送信する必要があります。
報告と照合:レポートシステムには、どの顧客が最新支払いを行ったか、請求サイクルに間に合わなかったか、またどの請求が返金されたかの情報が表示されます。このインサイトは、企業が収益を予測するのはもちろん、注意が必要な領域を特定するのにも役立ちます。
自動クレジットカード決済の長所と短所
他の支払いモデルと同様に、クレジットカードによる自動請求にも独自のメリット / デメリットがあります。この項目では、自動クレジットカード決済の長所と短所をいくつかご紹介します。
長所
予測可能な収益
多くの企業は、安定した収入源をサブスクリプション、メンバーシップ、または月額サービスに依存しています。これらのモデルを展開している企業は、請求書が処理されるのを待つ (または小切手の到着を確認する) のではなく、設定した期日に支払いを受け取っています。この予測可能性は、予算や拡張を計画する上で非常に役立ちます。
時間と労力の節約
自動カード決済では、請求書の手動処理やフォローアップメッセージに費やす労力を削減できます。そのためスタッフは、未払いの顧客を追跡する作業でなく、製品の改善や新機能の開発など、より大きな取り組みに集中できます。
顧客体験の向上
顧客の多くは、複数回の支払いを忘れずに済むという利便性を高く評価しており、この利便性がブランドへのロイヤルティ向上に寄与しています。また、支払い情報を手動で再入力する必要がないことから、解約率の削減手段としても効果的です。
支払い遅延の抑制
自動請求は、支払い遅延を防ぐのに役立ちます。顧客には即座に請求がいくため、延滞料やストレスに感じるリマインダーといった問題はあまり発生しません。これにより、買い手と売り手は良好な関係を築いていくことができます。
短所
懐疑心を抱く顧客
継続請求を許可することに不安を抱く人は珍しくありません。そのような人々は、隠れた料金や誤った請求、あるいは無料トライアル後のキャンセル忘れの問題を懸念しています。そのため企業は、利用規約の内容を明確にし、キャンセルポリシーが参照しやすくなるよう顧客に配慮する必要があります。
不審請求の申し立ての可能性
自動支払いが何カ月もの間気づかれずに行われると、顧客との確執を生む可能性があります。顧客がサブスクリプションのキャンセルを忘れたり、更新条件を見落としたりするとチャージバックが発生する可能性があり、さらにこの問題が頻繁に起こると、その企業の財務と評判も傷付きかねません。
カード支払いの拒否
カードの有効期限が切れていたり、利用がブロックされているような場合、顧客が情報を更新するまで自動支払いは停止されます。この問題は、サービスの中断や収益の低下につながる可能性があります。請求情報を最新の状態に保つには、徹底したコミュニケーション戦略の実施が不可欠です。
その他のセキュリティリスク
継続支払いの処理には、機密データの保管やサードパーティーの Vault での作業が含まれます。そしてどちらのプロセスにもデータ漏洩のリスクは伴います。安全なデータ管理に力を入れているプラットフォームは、安心を得る上で重要な決め手となります。
自動クレジットカード決済が利用されている業界
業界の枠を超えて、継続請求の利用度は高まっています。その中でも特に自動カード決済が利用されている業界をここでご紹介します。
サービスとしてのソフトウェア (SaaS)
月単位または年単位のサブスクリプションは、テック製品で長年にわたって特に利用されているモデルです。プロジェクト管理プラットフォーム、デザインツール、マーケティングスイートのいずれであっても、SaaS プラットフォームは多くの場合、ユーザーに継続的かつ無制限のアクセスを提供するため、クレジットカードによる自動請求を採用しています。
サブスクリプションボックス / 会員制クラブ
決まった頻度でミールキット、クラフトボックス、高級菓子などを販売するビジネスは、継続配送に依存しているため、自動継続支払いが自然に当てはまります。ジム、メンバーズクラブ、会員制組織についても同様のことが言えます。
メディア配信
映画や音楽のストリーミングサービスは、月額または年額のメンバーシップ登録を頼りに運営されています。新聞や雑誌も同じコンセプトでデジタル購読を導入しており、読者は毎月の請求書の支払い忘れを心配する必要はありません。
公益事業 / 電気通信
電力会社、インターネット会社、携帯電話会社など、公益事業会社の多くは、自動請求に利用するクレジットカード情報が保存されるようになっています。これにより、支払い漏れの可能性が低くなり、双方の支払いプロセスもスムーズになります。
オンライン学習プラットフォーム
月額または年額の料金を請求する E ラーニングサービスでは、定期的な支払いによって受講生の在籍が維持されます。
自動支払いのセキュリティを確保する方法
オンラインでクレジットカードを使用する顧客は、データの機密性が保たれ、かつ企業が請求を正確に処理することを期待しています。ハッキングやヒューマンエラーを完全に防げるシステムは存在しませんが、データを安全に保つための対策ならあります。そのための手順を以下で解説します。
PCI DSS 要件に従う
PCI データセキュリティ基準 (PCI DSS) は、企業がカードデータを保存、送信、処理する方法を規制しており、この要件の遵守を義務付けています。つまり、企業は検証済みの決済プラットフォームを利用した上で、データを暗号化し、セキュリティプロトコルを定期的に見直す義務があります。
信頼できる決済プロバイダーを利用する
セキュリティを強化する方法の一つは、データの安全性を優先する決済プラットフォームと提携することです。これにより企業は、費用と時間のかかるトップレベルのセキュリティ対策を自社で構築・管理せずに済みます。セキュリティが優れたプロバイダーは、トークン化やデータセキュリティなどに対するコンプライアンス意識も徹底しています。
適切な認証を使用する
強力なパスワードの使用や 2 要素認証 (2FA) の有効化を顧客に求めることで、不正アクセスを抑えることができます。何者かがアカウントのログイン情報に不正にアクセスすると、保存されている支払い情報が開示されてしまうおそれがあります。そのため、本人確認の手続きを追加することは重要です。
購入通知を送る
スケジュールされている取引が始まる前に顧客に通知することで、顧客は不正な請求や誤った請求をより簡単に見分けられるようになります。また、メールやプッシュ通知でカードへの請求が完了したことを確認できるようにすると、顧客は安心感を得られます。
わかりやすいキャンセルポリシーと返金ポリシーを作成する
事業を行う以上、不測の事態というのはつきもので、ときには意見の対立も起こります。支払いをキャンセルする方法、または返金を受ける方法を顧客に正確に説明しておくと、長期にわたって不審請求の申し立ての対応に追われるといった事態は避けられます。たとえ最終的に解約することになったとしても、プロセスが簡潔で手間のかからないものであれば、顧客に好印象を抱かせたまま契約を終えられます。
定期的にセキュリティ監査を実施する
ビジネスが成長するにつれて、決済システムに対する要求も高まります。定期的な脆弱性テストとパッチ適用で脅威に備えることは可能です。不審な点に気づいたら、すぐに対応して被害を最小限に食い止めるよう心掛けましょう。
継続請求の管理に Stripe を役立てる方法
高度な柔軟性を維持している Stripe がいかにして継続請求の簡素化を実現できているか、以下で詳しく解説していきます。
柔軟なサブスクリプションモデル
企業は、定額月額料金の請求から、従量課金プランの設定、顧客がサイクル途中でアップグレードした場合の日割り計算の適用に至るまで、さまざまな方法で支払いを調整しています。そして Stripe Billing は、以下をはじめとする複数の価格戦略に対応しています。
定額制サブスクリプション
ユーザー単位の請求
使用量に応じた段階制料金
割引とトライアル期間
事前構築済みの決済ページ
すぐにでも自動支払いを導入したい企業向けに、Stripe Checkout では、サブスクリプションや継続支払い用に改良されたオンライン決済ページを提供しています。読み込みが早く使いやすいページで、さまざまなデバイスに自動で適応します。また Stripe のカスタマーポータルでは、決済手段の更新やプランのキャンセルなど、ユーザーがサブスクリプションを直接管理できます。
カードの自動更新
支払いの失敗が起こったとしても、キャッシュフローがかき乱される心配はありません。Stripe は主要なカードネットワークと連携し、自動カード更新機能 (CAU) を通じて顧客のカード情報を自動的に更新することで、期限切れのカードによる失敗を極力減らしています。これはバックグラウンドで実行されるため、支払い情報の更新をメールで要求するといった手間は発生しません。混乱を最小限に抑えることで、企業は解約率を減らし、支払いの追跡に費やす時間を減らすことができます。
売上回収機能
支払いが失敗した場合の面倒な作業も Stripe が代わりに処理します。Smart Retries は、支払いの成功率を高めるため、細かい頻度で自動的に請求を再試行します。督促管理は、失敗した支払いや期限切れの支払いについて顧客に通知するプロセスであり、Stripe のプラットフォームにも事前に組み込まれています。したがって、これらのやり取りを管理するために個別のワークフローを作成する必要はありません。
高度な日割り計算処理
サブスクリプションビジネスの多くは、顧客がサイクルの途中でプランをアップグレード、ダウングレード、または切り替えることを認めています。Stripe の日割り計算ロジックは、部分請求または部分返金の金額を自動で算出します。
詳細な分析とインサイト
Stripe を通じて企業は、サブスクリプションのパフォーマンスをリアルタイムで把握することが可能です。Stripe ダッシュボードには、月間経常収益 (MRR)、顧客生涯価値 (LTV)、解約率などの指標が表示され、成功点と改善点の評価に必要なインサイトをここで得られます。この分析を行うことで、支払いの傾向を特定し、潜在的な問題にフラグを立て、さらには価格設定や顧客維持戦略についてより俯瞰的に意思決定を下せるようになります。
開発者ファーストの設計
Stripe は開発者にとって使いやすいプラットフォームとなっており、提供されるアプリケーション・プログラミング・インターフェイス (API) は十分に文書化され、カスタムワークフローと簡単に連携できるよう設計されています。より細かい制御を必要とする企業のために Webhook とカスタムロジック機能も提供しており、請求プロセスのあらゆる側面をシステムに適合させることを可能にしています。成長途中のスタートアップであれ、グローバル企業であれ、その企業の正確なニーズに合ったソリューションを Stripe は構築します。
グローカルなサポート
Stripe は 135 以上の通貨で継続請求を提供しており、海外の顧客を抱える企業にとって心強い存在となっています。ヨーロッパの SEPA Direct Debit やオーストラリアの BECS Direct Debit など、現地の決済手段も Stripe で受け付けられるため、会社の顧客の支払い設定も国や地域を問わず柔軟に対応できます。
セキュリティとコンプライアンス
トークン化などのセキュリティ機能は、生のカードデータを安全な識別子へと置き換え、会社の潜在的なリスクを減らします。加えて、Stripe は PCI DSS に完全に準拠しているため、会社が PCI DSS の要件を単独で満たさなければならないといった心配はありません。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。