現金主義会計とは、現金の入りまたは支払い時にのみ収益と費用を認識する金融取引の記録方法です。この方式は、現金のやり取りの時期に関係なく、収益の獲得または費用の発生時点で収支が計上される発生主義会計とは対照的です。

以下では、現金主義会計の長所と短所、この方法が税務申告に与える影響、および企業が現金主義から発生主義会計に切り替える方法について説明します。

この記事の内容

• 現金主義会計の仕組み
  
• 現金主義会計の長所と短所
  
• 現金主義会計が適している事業
  
• 現金主義会計が税務報告に与える影響
  
• 企業が現金主義会計から発生主義会計に切り替える方法
  

現金主義会計の仕組み

現金主義会計では、口座に出入りする現金を追跡します。その仕組みは次のとおりです。

• 収益の計上: 収益は、実際の支払いを受け取った時点でのみ計上されます。たとえば、6 月に請求書を送付し、7 月まで支払いがなかった場合、収益は 7 月に計上されます。

• 経費の計上 経費は、経費が支払われた時点でのみ計上します。たとえば、4 月に事務用品の請求書を受け取り、5 月に支払った場合、5 月に計上します。

この方式ではキャッシュフローが重視されます。まだ支払われていない資金 (売掛金) やまだ支払っていない資金 (買掛金) は考慮されません。このため、全体的な財務状況を把握することが難しくなる可能性があります。

現金主義会計の長所と短所

現金主義会計は他の会計処理方法よりも簡単ですが、デメリットもいくつか存在します。

現金主義会計の長所は次のとおりです。

• 特に財務状況が単純な中小企業や個人の場合には、理解しやすく管理しやすい

• 現金の受け取りや使用を追跡するため、いつでも現金の利用可能性を明確に把握できる

• 収益を受け取るまでは税金を支払わないため、納税義務の管理を促進する

• 他の会計形式に比べ、維持に必要な時間とリソースが少なくて済む

現金主義会計の短所は次のとおりです。

• 売掛金や買掛金を考慮していないため、財務の健全性が実際よりも良く見える可能性または悪くも見える可能性がある

• 歪みにつながる可能性がある (例: ある月に多額の費用を計上したが、関連する収益は別の月に計上する)

• 発生主義会計を必要とする一般に公正妥当と認められた会計原則(GAAP)に準拠していない

• 将来の負債や収益を確認できないため、経時的なパフォーマンスの追跡や重要な意思決定が困難になる

現金主義会計が適している事業

アメリカでは、3 年間の収益が 2,500 万ドル以上の企業は GAAP に従い発生主義会計を採用しなければなりませんが、小規模企業には現金主義会計を採用するという選択肢があります。現金主義会計ではプロセスが簡素化されるため、発生主義会計を使用する必要がない場合は、現金主義会計が適しています。これは、目先のキャッシュフローを重視し、長期的な財務に関するインサイトを求めていない事業に最適です。これには次のような事業が含まれます。

• 複雑な金融取引や大量の在庫を扱わない中小企業や個人事業主

• 販売時に支払いが行われる事業 (小売店、小規模サービスプロバイダーなど)

• 起業したばかりであるか、または個人事業のスタートアップやフリーランサー

現金主義会計が税務報告に与える影響

現金主義は、現金の取引が発生するタイミングを追跡します。これが税務申告にどのように影響するかについて説明します。

• 収益認識: 収益を報告するのは、請求書の送付時ではなく、支払いを受けたとき、つまり資金が口座に入った時点のみです。つまり、クライアントが翌課税年度まで支払いを遅らせた場合、当年度にその収益を報告する必要はありません。

• 経費控除: 控除は、請求書を受け取った時点ではなく、支払いを行った時点でのみ行われます。たとえば、12 月に消耗品を注文し、1 月まで支払わなかった場合、その経費は翌年の税の対象となります (課税年度が暦年と同じ国の場合)。

• 課税のタイミング: 現金主義会計では、このタイミングを細かく制御できます。支払うを受け取るタイミングや経費を支払うタイミングを管理することで、課税年度間で収益や控除を移動して、税額を微調整できます。たとえば、課税所得を翌年に繰り越すために、年末の請求書の送付を遅らせることができます。

• 納税申告: 現金主義会計は銀行取引を追跡するため、収入と支出の追跡と報告が容易になり、納税申告書で売掛金と買掛金を調整する必要がありません。

企業が現金主義会計から発生主義会計に切り替える方法

発生主義会計では、収益は入金時ではなく発生時に計上されます。請求書がまだ未払いの場合でも、経費は発生した時点で計上されます。現金主義会計から発生主義会計に切り替える理由はさまざまですが、現金主義会計では対応しきれなくなった場合や、投資家や貸し手、または税務要件によってより詳細な報告が求められる場合などがあります。理由が何であれ、発生主義会計に切り替えることで、事業の状況をより明確かつ正確に把握できるようになります。

その方法は次のとおりです。

• 新しい記録を作成する: まず、現金主義会計の記録が最新かつ正確であることを確認してください。そこから次のように期首貸借対照表を準備します。

  • 売掛金: まだ支払われていない資金
    
  • 買掛金: まだ支払っていない資金
    
  • 前払費用: 支払い済みで完全には使用していないもの
    
  • 前受収益: まだ提供していないサービスまたは製品に対して受け取った支払い
    

• ツールをアップグレードする: 会計ソフトウェアが発生主義の仕訳を処理できる状態になっている必要があります。ほとんどのプラットフォームでサポートされていますが、設定の調整が必要な場合があります。まだ手作業で帳簿を管理している場合は、今こそソフトウェアに切り替える時です。適切なツールを導入していれば、この切り替えは容易になります。

• 専門家を招き入れる: 会計士は、この切り替えにおいて力強い協力者となる可能性があります。財務状況の調整、税務上の影響の解決、事業に適したシステムの構築を支援します。

• 計画的な税金対策: 発生主義会計に切り替えると課税所得が変わる可能性があるため、事前に対策を策定してください。会計士または税務専門家と協力して、保険が適用され、納税時に予期せぬ事態が発生しないようにしてください。

• チームに最新情報を伝える: 財務処理を担当するチームがある場合は、売掛金の追跡や買掛金の追跡など、新しいプロセスと新しいワークフローをチームが確実に理解しているようにしてください。

• 変更を周知する: 投資家、貸し手、その他の関係者と財務情報を共有している場合は、切り替えを行うことを周知します。