EC サイトを構築する方法には、ASP (Application Service Provider) ・SaaS (Software as a Service) や EC モール、オープンソース、パッケージなど、さまざまな選択肢があります。予算や必要な機能、運用方法、拡張性などにより、適した方法は異なるため、どの方法を選び、何から始めればよいのか迷う事業者もいるでしょう。
この記事では、日本で EC サイトを始める事業者を対象に、主な構築方法や導入までの手順、費用、決済サービスの選び方、運営時の注意点をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- EC サイトの構築方法には、ASP・SaaS、EC モール、オープンソース、パッケージなどがあります。それぞれに特徴があるため、自社の予算、技術力、拡張性、セキュリティ面を考慮して構築方法を選ぶことが大切です。
- EC サイトの開設費用や公開までの期間は、構築方法により大きく異なります。また、利益に大きな影響を及ぼす手数料や運用コストの確認も欠かせません。
- EC サイトで使用する決済サービスは、ターゲットとなる顧客が利用しやすい決済手段に対応しているか、手数料や入金サイクルが事業に合っているかを確認して選びます。
- EC サイトは、最初から機能を増やしすぎず、ビジネスの成長に合わせて機能を追加できる構成にしておくと、事業拡張時の負担を抑えやすくなります。
EC サイトを作る前に決めること
自社に合った EC サイトを作るために、以下のような項目をひとつずつ確認しましょう。
日本の EC 市場の動向を把握する
経済産業省の調査によると、2024 年の日本国内の BtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は 26.1 兆円に達し、前年比 5.1% 増加しました。
分野別では食品、衣類、家電、日用品などの物販系が大きな割合を占める一方、旅行やチケット、動画配信などのサービス系やデジタル系分野も定着しています。また、企業間取引である BtoB-EC 市場規模も 514 兆円を超えて拡大を続けています。
物販分野における EC 化率は 10% 弱と着実に上昇しており、日本国内の E コマース市場は引き続き拡大基調にあることがわかります。
実店舗での販売に限られていた従来のビジネスモデルに対し、オンライン上の販売チャネルを持つことは、個人事業主や中小企業にとっても全国や海外へと新たな顧客層・販売機会を広げる大きな好機となります。
EC サイトを作る目的を明確にする
日本ではこれからも E コマース市場の拡大が見込まれることがわかりました。次に、自社がなぜ EC サイトを構築する必要があるのかを明確にしましょう。
たとえば、実店舗だけでは届かなかった地域の顧客に販売したい、新しい販売チャネルを増やしたい、海外販売を始めたいなど、目的によって EC サイト構築の方向性は変わります。
販売する商品や顧客層を決める
EC サイトで取り扱う商品・サービスやターゲット層を明確に設定しましょう。年齢層や生活スタイル、取引形態(BtoB または BtoC)によって、最適な商品の訴求方法、サイトデザイン、導入する決済手段を調整します。
販売地域と運営体制を決める
日本国内だけで販売するのか、越境 EC も視野に入れるのかを考えます。販売する地域により、配送方法や送料、対応する言語や通貨など、違った準備が必要になります。
あわせて、商品登録、受注対応、在庫管理、発送、問い合わせ対応なども誰が担当するのかも決めておきましょう。
予算と必要な機能を整理する
EC サイトの構築や運営にかけられる予算を決め、必要な機能を整理します。機能が増えるほど費用も高くなりやすいため、初期段階ではシンプルに抑え、事業の成長に合わせて順次機能を追加していくような方法が、費用対効果の面でも優れています。
EC サイトの構築方法と選び方
EC サイトの構築方法を選ぶ際は、初期費用や月額費用などの予算に加えて、自社の技術力、機能の充実度、将来的な拡張性、セキュリティ面などを比較することが大切です。
|
構築方法
|
必要な技術力
|
機能の充実度
|
拡張性
|
セキュリティ面の負担
|
適しているケース
|
|---|---|---|---|---|---|
| ASP・SaaS | 低 | 中〜高 | 中 | 低 | 手軽に始めたい |
| EC モール | 低 | 中 | 低〜中 | 低 | モールの集客力を利用したい |
| オープンソース | 高 | 高 | 高 | 高 | 自由度・カスタマイズ性を重視したい |
| パッケージ | 中〜高 | 高 | 高 | 中 | カスタマイズ性を重視しながら、開発負担も抑えたい |
ASP・SaaS
ASP と SaaS は、EC サイトに必要な基本機能をオンライン上で利用できるサービスです。厳密には意味が異なりますが、日本の EC 分野ではほぼ同じ意味で使われることが多くあります。
ASP や SaaS を利用すれば、自社でサーバーやシステムを一から用意する必要がなく、比較的少ない技術的負担で EC サイトを始めることが可能になります。商品登録、在庫管理、注文管理、決済などの機能があらかじめ用意されているサービスも多く、初めて EC サイトを構築する事業者や、短期間で販売を始めたい場合に適しています。
代表的なものに、Shopify、BASE、STORES、カラーミーショップなどがあります。
EC モール
EC モールは、複数の事業者が出店するオンライン上のショッピングモールです。楽天市場や Amazon、Yahoo! ショッピングなどをイメージするとわかりやすいでしょう。すでに多くの利用者が EC モールにはついており、集客しやすいという特徴があります。
集客力を重視し、比較的短期間で販売を始めたい事業者に適した構築方法ですが、デザインや機能の自由度には制限があり、出店料や販売手数料などの負担が大きくなる点には注意が必要です。
オープンソース
オープンソースは、公開されているソースコードを利用して、EC サイトを構築する方法です。代表的なものに、EC-CUBE や WooCommerce などがあります。自社の要件に合わせて機能やデザインを柔軟にカスタマイズできるため、独自性や拡張性を重視したい場合に適しています。
一方で、構築や保守には一定の技術力が必要で、セキュリティ対策やアップデートも自社側で対応する必要があります。専門知識のある担当者や開発体制を確保できる事業者向けの方法といえるでしょう。
パッケージ
パッケージは、EC サイトに必要な機能をまとめたソフトウェアを導入し、自社の要件に合わせてカスタマイズする方法です。日本国内の EC 構築サービスでは、ecbeing やコマース 21 などが知られています。標準機能を活用しながら独自の機能や外部システムとの連携にも対応しやすいため、カスタマイズ性を重視する事業者に適しています。
ただし、導入やカスタマイズには専門知識が必要になることも多く、自社に技術者がいない場合は、開発会社やベンダーへの依存度が高くなる可能性があります。
EC サイト開設にかかる費用と期間
EC サイトの開設にかかる費用や期間は、選ぶ構築方法によって大きく異なります。初期費用や月額費用だけでなく、決済・販売手数料や公開までに必要な準備期間も含めて比較しておきましょう。
|
構築方法
|
初期費用
|
月額費用
|
公開までの期間
|
|---|---|---|---|
| ASP・SaaS | 無料〜 | 無料〜数万円程度 | 数週間〜数か月 |
| EC モール | 無料〜数万円以上 | 無料〜十数万円程度 | 数週間〜数か月 |
| オープンソース | ソフトウェア自体は無料の場合あり。構築・カスタマイズに別途、数十万〜数百万円以上 | 10 万円〜 | 数か月 |
| パッケージ | 500 万円〜 | 10 万円〜 | 数か月〜 1 年 |
実際の費用や期間は、利用するサービスや必要な機能、カスタマイズの範囲などによって変わります。また、決済手数料、販売手数料、広告費など、表に含まれない費用もあります。
EC サイトを作る手順
構築方法が決まったら、EC サイトの公開に向けて必要な準備を進めていきます。細かな手順は利用するサービスにより異なりますが、ここでは一般的な手順を紹介します。
利用するサービスや構築環境を準備する
選んだ構築方法に対応しているサービスへの申し込みやアカウント作成を行います。また、サーバーやドメインなどの必要な環境も準備します。
この段階で、運営に関する環境も整えていきます。たとえば、商品の販売や配送の基本ルール、配送方法や送料、在庫管理などが考えられます。日本国内で EC サイトを運営する場合は、特定商取引法に基づく表記や返品に関するルールなどにも対応する必要があります。
デザインと基本設定を行う
次に、EC サイトのデザインや基本情報を設定します。ロゴやカラー、商品カテゴリー、ナビゲーションなどを決め、顧客が商品を探しやすく、購入しやすいサイト制作を意識しましょう。
また、会社情報や問い合わせ先、プライバシーポリシーなど、サイト上に必要なページも用意します。日本ではスマホユーザーが多く、スマートフォンから購入する顧客も多いため、レスポンシブ対応ができているかどうかも忘れずに確認することが大切です。
商品登録を行う
EC サイトに商品を登録します。商品名、価格、説明文、画像、在庫数、サイズやカラーなど、購入に必要な情報を設定しましょう。
商品情報に誤りがあると、顧客満足度の低下や返品、低評価レビューにつながる可能性があります。公開前に、価格や在庫数、商品情報などに間違いがないか確認しましょう。
決済方法を設定する
クレジットカード決済、コンビニ決済、銀行振込、デジタルウォレットなど、EC サイトに導入したい決済方法を設定します。利用する決済サービスによって、対応できる決済手段や手数料は異なります。導入前に確認し、希望する決済方法が含まれているかを確かめることが大切です。
テスト注文をして公開する
公開前にテストを行い、商品選択から決済、注文確認メール、在庫反映など、注文がスムーズに完了できるかの最終確認を行います。スマートフォンやパソコン、タブレットなど、異なる端末で問題なく購入できるか確認しておくと安心です。
問題がなければ EC サイトを公開し、実際の注文受付を開始します。
EC サイトの決済サービスを選ぶポイント
EC サイトでは、顧客が使いやすい決済方法を用意するだけでなく、事業者側の手数料や入金サイクル、導入のしやすさ、セキュリティ面を確認することが大切です。
顧客に合った決済手段に対応しているか
カゴ落ちの原因のひとつに、利用したい決済方法がないことが考えられます。顧客がよく使う決済手段に自社 EC サイトが対応できているかどうかを今一度見直しましょう。
手数料と入金サイクルは事業に合っているか
手数料には、決済手数料だけでなく、月額費用や振込手数料などもあります。どのような手数料が発生するかを事前に把握しておきましょう。
また、売上金がいつ入金されるかの確認も大切です。入金までの期間が長い場合は、資金繰りに影響します。自社のキャッシュフローにあった入金サイクルであることを、事前に確認することが大切です。
EC サイトへ導入・連携しやすいか
決済サービスが、自社の EC サイトや利用しているプラットフォームに導入しやすいか確認しましょう。API やプラグイン、あらかじめ用意された連携機能が利用できれば、開発の負担を抑えることが可能です。
セキュリティと PCI DSS 対応の負担を軽減できるか
クレジットカード決済を扱う際に、カード情報の処理を外部に委託することで、事業者側のセキュリティと PCI DSS 対応の負担を減らすことが可能です。ただし、利用する決済サービスが PCI DSS に準拠しているかの確認など、事業者側で行うべきことは残ります。
EC サイト運営でよくある失敗と対策
EC サイトは公開して終わりではなく、その後の集客やコスト管理、機能追加まで見据えて運営する必要があります。無駄なコストを減らすために、よくある失敗をあらかじめ知っておきましょう。
集客の仕組みを作らないまま公開してしまう
EC サイトを公開しても、どのように顧客に自動的にサイトを見つけてもらうかの戦略がなければ、売上にはつながりません。SEO、SNS、広告、メルマガなど、集客方法を考えることは非常に重要です。
毎月発生するランニングコストを把握していない
EC サイトでは、月額利用料のほか、決済手数料、販売手数料、アプリやプラグインの利用料、広告費などが継続的に発生することが想定されます。
売上が伸びてもコストが増えすぎると利益を圧迫します。毎月どのくらいの費用がかかっているのかを定期的に確認しましょう。
将来の拡張性を考えずに構築する
EC サイトを立ち上げる段階で機能を増やしすぎると、初期費用や運用負担が大きくなります。まずは必要な機能に絞り、ビジネスの成長に応じて追加していく方法を検討しましょう。
将来的に必要な機能を追加できるか、外部サービスと連携できるかなど、拡張性を確認してからサービスを導入するようにします。
Stripe Checkout でできること
Stripe Checkout は、ウェブサイトやアプリで簡単に決済を開始できる完全カスタマイズ可能な事前構築済みの決済フォームです。
Checkout の特徴
購入完了率の向上: Checkout の決済フォームはモバイル向けに最適化され、ワンクリックで完了する決済フローが構築されています。顧客は支払い情報を簡単に入力し、再利用できます。
開発時間を短縮: Checkout を自社サイトに直接組み込むか、顧客を Stripe のオンライン決済ページへ誘導します。数行のコードで実行可能です。
セキュリティの向上: Checkout が機密性の高いクレジットカードデータを処理し、PCI 準拠を効率化します。
グローバルに拡大: Adaptive Pricing で 100 以上の通貨および 30 以上の言語に対応し、各地域に合った決済フォームを提示。購入完了率を向上させる決済手段を動的に表示します。
高度な機能: サブスクリプションのための Billing、不正利用防止のための Radar など、他の Stripe プロダクトと Checkout を連携できます。
柔軟な管理: 決済手段の保存や購入後のアクション設定など、決済体験を完全にカスタマイズできます。
Checkout を活用した決済フローの最適化について、詳しくはこちらをご覧ください。今すぐ開始する場合はこちら。
EC サイト構築についてよくある質問
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。