少子高齢化により日本国内市場の成長が鈍化する中、今注目されているのが、海外販売や海外物販といった海外向けの事業展開です。特に日本製品は品質や安全性への信頼が高く、海外通販サイトを通じた販売ニーズが年々拡大しています。
本記事では、日本から海外販売を始めようと思っている方に向けて注目度が高い市場、おすすめの EC プラットフォーム、海外通販サイトなどを詳しくご紹介します。
目次
- 海外販売とは
- 日本で海外販売が注目される理由
- 海外販売の対象国・地域
- 日本から海外販売を始める方法
- 海外の人気通販サイト
- 海外向けにオンラインショップを構築できる EC プラットフォーム
- 海外販売で注意すべきポイント
- 海外販売の戦略と仕組みづくり
海外販売とは
海外販売は、日本企業や個人が自社の商品やサービスを国外の市場に向けて提供する、多様なビジネス形態の総称です。
単なる輸出にとどまらず、現地での生産、フランチャイズ展開、ライセンス供与など、さまざまなモデルが含まれます。取引の方法も幅広く、物理店舗を通じたオフライン販売から、越境 EC などインターネットを活用したオンライン取引まで多岐にわたります。
販売チャネルも多様で、一般消費者への直接販売のほか、現地小売店向けの卸売や、代理店を通じた間接販売、特定の地域へのライセンス供与による展開など、ビジネス規模や目的に応じた手法が選ばれています。
日本で海外販売が注目される理由
なぜ今、日本で海外販売が注目されているのでしょうか?
その背景には、経済や社会構造の変化が大きく関係しています。
日本市場の伸び悩み
1980 年代半ば以降、日本の出生率は継続的に低下し、少子化は深刻な社会問題となっています。
その影響で国内の消費者数は減少し、市場全体の成長が鈍化しています。
こうした状況の中で、企業が持続的な成長を目指すには、成長余地の大きい海外市場への注力が不可欠だと言えるでしょう。
海外需要の拡大
日本とは対照的に、中国や東南アジアでは、近年、中間層の拡大が著しく、購買力も大きく向上しています。
特に日本製品は、高い品質と信頼性が評価され、これらの地域の消費者から強い指示を集めています。
加えて、中東も日本の輸出先として存在感を増しており、今後注目すべき市場のひとつといえるでしょう。
円安による価格競争力の向上
円安は、日本製品の海外市場における価格競争力を高める大きな要因となります。
外貨で購入する立場の消費者にとっては、日本製品が相対的に安価に感じられるため、購買意欲を刺激しやすくなります。
また、為替差益は企業にとって大きな利益拡大のチャンスにもなります。たとえば、商品を日本円で製造・仕入れ、外貨で販売した場合、円安が進むほど、為替換算後の売上額が増え、結果として収益が向上します。
海外販売の対象国・地域
日本の事業者が海外販売を検討する際には、どの国や地域をターゲットとするか検討することが重要です。
このセクションでは、2024 年度における日本から海外への輸出額と伸び率のデータに注目し、主要な販売先と、今後の成長が期待される地域について紹介します。
アメリカ合衆国
財務省貿易統計 によれば、2024 年度の輸出額で最も多かったのはアメリカ合衆国で、21 兆2947 億円でした。アメリカは日本の主要な貿易相手国のひとつであり、その巨大な市場規模と経済成長は、日本の輸出を支える重要な要素となっています。
主な輸出品目としては、自動車、機械製品、電子部品などが挙げられます。特に自動車は、日本の対米輸出の中核を占めており、高品質な日本車はアメリカ市場で高い評価を得ています。機械製品や電子部品も、現地の産業や技術革新を支える重要な役割を果たしています。
2023 年比で 5.1% という安定した伸び率を示しており、これは日米間の強固な経済関係と、日本製品の競争力の高さを裏付けるものです。
中国
アメリカに次いで日本の輸出額第 2 位を誇る中国は、2024 年度の輸出額が約 18 兆 8624 億円に達する巨大市場であり、今後も目が離せない存在です。化粧品、衣料品、日用品、デジタル製品、食品、家電製品といった多岐にわたる日本製品が、その品質とブランド力から中国の消費者に高い人気を博しています。
中国市場は、その巨大な規模に加え、安定した伸び率も魅力です。2023 年と比較して 6.2% という安定した伸び率を示しており、今後も日本製品にとって良好な市場環境が続くと見込まれます。
しかし、中国市場に進出する際には、複雑な規制や商習慣、競合の激化といった課題も存在します。このような課題を克服するためには、現地の文化や消費者のニーズを深く理解し、適切なマーケティング戦略を立てることが不可欠となります。
ASEAN (東南アジア諸国連合)
日本からタイ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、インドネシアといった ASEAN 主要国への輸出は、近年その規模を著しく拡大しており、日本経済にとって無視できない存在感を放っています。財務省貿易統計によると、2024 年の ASEAN 全体への輸出額は、15 兆 3539 億円にも達しました。これは、日本の輸出総額の中でも大きな割合を占め、日本企業のグローバル戦略において ASEAN 市場が極めて重要であることを示唆しています。
中でもシンガポールは、2023 年度と比較して 14.2% という高い伸び率を維持しており、ASEAN 地域における日本の輸出拡大を牽引する存在となっています。シンガポールは、高度な物流インフラと金融機能を持ち、ASEAN 地域へのゲートウェイとしての役割も果たしているため、単独の市場としてだけでなく、周辺国への再輸出拠点としてもその重要性を増しています。
ASEAN は経済成長、中間層の増加、若年層人口の多さ、そして地域統合の進展といった複数の要因が重なり合い、日本にとって有望な輸出市場のひとつとして位置づけられています。今後も、日本と ASEAN 諸国間の経済連携はさらに深まり、互恵的な関係が継続・発展していくことが期待されます。
中東
中東地域は、日本にとって重要な輸出市場としての地位を確立しつつあります。アメリカや中国といった主要貿易相手国と比較すると、絶対的な輸出額は依然として低いものの、2024 年度の中東全体での輸出額は 4 兆 1918 億円という規模に達しており、その潜在性は非常に大きいと言えます。
注目すべきは、2023 年度と比較した 2024 年度の輸出額の伸び率です。中でもアラブ首長国連邦 (UAE) は、31.4% という驚異的な伸び率を記録し、中東地域への輸出拡大を牽引する存在となっています。UAE に次いで高い伸び率を示しているのはカタールで、25.8% の成長を達成しました。また、オマーンも 19% の伸び率を記録しており、経済の多角化を進める中で、日本との経済関係を強化する意向が見て取れます。
上記以外では、日本から韓国、台湾、香港、ドイツ、インド、オーストラリア、メキシコ、オランダなどへの輸出額も大きく、世界各地に多様な可能性があると言えるでしょう。
日本から海外販売を始める方法
日本のものを海外に売るにはどのような方法があるでしょうか。このセクションでは、海外販売を始める代表的な方法を紹介します。
自社グローバル EC サイト
日本国内に拠点を置きながら、多言語対応の EC サイトを作成し、海外の個人に直接販売する方法です。Shopify などのプラットフォームを利用すれば、サイト作成を比較的簡単に行うことができます。
海外マーケットプレイス
Amazon、Tmall、Shopee、Lazada などの海外 EC モール に出店し、現地の消費者に商品を販売する方法です。プラットフォームが集客、決済、配送を整備している場合が多く、スムーズに販売を開始できます。
代理購入・転送サービス
Buyee、FROM JAPAN、tenso.com などのサービスを使えば、自社の既存 EC サイトを越境対応にすることなく海外居住の顧客に販売することができます。導入は比較的簡単で、初期投資も少なく済みます。
現地店舗・EC サイト開設
海外に法人を設立し、直営店舗やその国専用の海外 EC サイトを展開する本格的な進出方法です。文化や言語に合わせた商品展開ができ、現地に根付いたブランド構築を行うことができます。
卸販売
これは、現地の小売業者やディストリビューターを通じて商品を販売する形式です。たとえば、日本企業がコストコと提携し、その店舗やオンラインストアで商品を扱ってもらうケースなどが挙げられます。
フランチャイズ展開
海外の現地事業者にライセンスを提供し、自社ブランドの店舗を展開してもらう方法です。飲食業界や美容業界でよく活用されており、出店リスクを抑えながらブランド拡大を見込めます。
海外展示会・商談会出展
アメリカ、中国、東南アジアなどで行われる海外の展示会に出展し、バイヤーとの接点を作る方法です。JETRO が展示会や商談会への出展を支援しているので、積極的に利用するとよいでしょう。
それぞれの販売方法には、次のようなメリット・デメリットが存在します。どのような販売形態になるのかも踏まえて、自社の事業形態にあった販売方法を選択しましょう。
販売方法 |
販売形態 |
メリット |
デメリット |
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自社グローバル EC サイト |
B2C |
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海外マーケットプレイス |
B2C |
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代理購入・転送サービス |
B2C |
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現地店舗 EC サイト開設 |
B2C |
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卸販売 |
B2B |
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フランチャイズ展開 |
B2B / B2C |
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海外展示会・商談会出展 |
B2B |
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海外の人気通販サイト
海外に商品を販売するなら、どの EC サイトが人気なのか把握しておきたいところです。
特に海外通販サイトランキングで上位に入るサービスや、海外通販サイト一覧の中でも定番とされるプラットフォームは、海外販売の第一歩として有力な選択肢となります。
ここでは、その中からおすすめのサイトをいくつかご紹介します。
Amazon
Amazon の魅力は、圧倒的な集客力で、出店するだけで世界のオーディエンスにリーチすることが可能になります。
また、Amazon が提供するフルフィルメントサービス、FBA (フルフィルメント by Amazon) は、海外販売における物流の課題を大幅に軽減します。FBA を利用することで、商品の保管、梱包、発送、さらにはカスタマーサービスまで Amazon が代行してくれます。これにより、出品者は複雑な国際物流の手配や各国の規制への対応に煩わされることなく、販売戦略に集中できます。FBA を活用することで、世界各国の顧客へ迅速かつ確実に商品を届けることが可能となり、顧客満足度の向上にも繋がります。
さらに、Amazon は多言語対応や多様な決済方法を提供しており、海外の顧客が安心して購入できる環境を整えています。
eBay
eBay は、ニッチ商品の販売も多く見られる世界中で根強い人気を誇るオンラインマーケットプレイスです。世界各国から海外転売を行っていることもあり、Amazon では販売されていないユニークな商品も、eBay なら見つかることがあります。
出品者向けに法人と個人のプランが用意されており、事業規模や販売戦略に応じて選択できます。初期費用無料のオプションもあるため、個人事業主だけでなく、副業として海外販売を始めたい個人の方も手軽に利用できるプラットフォームです。
Shopee
成長著しい東南アジアで圧倒的なシェアを誇る Shopee は、シンガポール、台湾、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム、ブラジルへの配送に対応しています。
また、初期費用や維持費がかからないため、ノーリスクで越境 EC 販売をスタートすることができます。初めて海外販売に挑戦する方にとっては、この費用面のメリットは非常に大きいのではないでしょうか。
出店条件を満たせば、法人だけでなく法人番号や開業届を持たない個人でも出店することが可能です。個人で手軽に海外販売を始めたい方や、まずは小規模からテストマーケティングを行いたい方にとっても、Shopee は非常に適した選択肢となります。
天猫国際 (Tmall Global)
天猫国際は2014年にアリババグループが設立した、海外企業が中国法人・販売許可なしに中国市場へ参入できる EC プラットフォームです。海外企業は国内で注文・発送業務を完結でき、中国の購入者への配送方法は「直送」と、売れ筋商品に適した「保税区発送」の 2 種類から選ぶことができます。
保税区発送を利用すれば、注文を受けるまで税関手続きをすることなく現地で商品を保管でき、継続的な販売が見込まれる商品であれば即座に発送できるため、売れ筋商品の保管場所確保に適しています。
Lazada
Lazada はアリババグループが運営する、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムで展開する大手 ECモールです。日本からもグローバルアカウントを開設することで、上記 6 か国への販売が可能になります。
Lazada での販売に推奨されているカテゴリーは、美容、健康、おもちゃ、ゲーム・時計、サングラス、電子機器などです。
海外向けにオンラインショップを構築できる EC プラットフォーム
海外向けの販売に、オンラインショップを構築したい事業者様に使いやすいプラットフォームをいくつか提案いたします。
Shopify
Shopify は多言語・多通貨に対応しており、越境 EC での販売に最適なプラットフォームです。配送、翻訳、SNS 販売など、連携可能なアプリが豊富で自由度が高いのが特徴です。日本語サポートも充実しているため、初心者から上級者まで、幅広いユーザーにとって使いやすいと言えるでしょう。
Makeshop
Makeshop で EC サイトを開設すると、海外の購入者にも商品を販売できるようになります。受発注から発送までのプロセスは国内取引とほぼ同じで、手間なく低コストで導入が可能です。受注後は、日本の事業者であるジグザグ社が購入を代行し、配送業務も請け負います。注意点は、EC サイト自体のコンテンツ翻訳機能はないことです。
BASE
BASEは、費用、ウェブ技術、時間といった理由からネットショップ開業 が難しかった方でも、気軽に始められるサービスです。誰でも簡単にネットショップを作成でき、導入が簡単な決済機能、魅力的なデザインテーマ、トランザクション解析ツールなど、運営に必要な機能が揃っています。
操作が簡単なため、商品の企画・生産・製造を行う方が、ものづくりと並行して販売まで対応できるのが特長です。
また、海外販売代行アプリを導入することで、海外からの注文処理を代行業者に委任し、海外向けのネット販売ができるようになります。HTML 編集やタグ追加なしで利用を開始することができ、商品の国内発送のみで海外向けの梱包、送料設定、配送対応などは、一切不要になります。また、英語が苦手な方でも、代行業者に注文や配送に関する問い合わせに対応してもらえるため、安心して利用できます。
海外販売で注意すべきポイント
海外販売には、国内販売とは異なる注意点があります。主なポイントは以下の通りです。
輸出入規制と現地の法律確認
国により、食品、医薬品、化粧品、電化製品などへの規制が厳しくなります。たとえば、成分表示や警告ラベル、PSE や CEといった安全認証が必要になることもあります。また、インボイスや原産地証明などの貿易書類も正しく用意しましょう。
尚、海外への転売は、扱う商品や販売方法によっては規制やリスクがあります。販売を決定する前に必ず確認し、現地の法律に違反しないように注意してください。
関税、消費税と価格表示
関税 や付加価値税 (VAT) は国によって異なり、購入者側の負担になる場合もあります。そのため、関税込の価格や現地送料込みなどを明示すると、購入の不安を減らす効果があります。税込で価格表示をしている国も多いため、日本と同じように考えず、現地で採用されている価格設定を意識するようにしましょう。
Stripe Connect は、135 種類以上の通貨と 40 種類以上の決済手段をサポートしています。Connect を利用すれば、世界の様々な地域で購入を完了させることが可能です。実に 100 か国以上の売上税、付加価値税、消費税に対応しているため、オンライン、請求書、実店舗での支払いをスムーズに行うことができます。
言語や文化の違い
機械翻訳に頼りすぎると商品説明の不備などからトラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。たとえば、アパレル製品は、日本と海外ではサイズ感が違います。日本の M サイズの T シャツは海外では S サイズに相当することもあります。常に文化背景にあった表現を用いるようにしましょう。
配送、返金などのトラブル
海外への配送では、国のインフラ状況によっては荷物が届かないといったトラブルが発生しやすいため、追跡可能な配送方法の導入や明確な返金ポリシーの策定が重要です。
多言語・時差対応のカスタマーサポート
海外ユーザーからのお問い合わせには、現地言語での対応が必須です。日本のスタッフがリアルタイムでサポートを提供することは、時差の関係で困難な場合があります。チャットボットや自動応答メールなどの導入を検討し、工夫することが求められます。
海外販売の戦略と仕組みづくり
海外販売を成功させるためには、まず国内販売との違いをしっかり理解することが重要です。
販路選定、EC プラットフォーム の構築、そして現地の物流や決済手段への対応など、多くの務的な要素が絡み合います。特に、海外通販サイトでは、多通貨決済や税金処理、時差を考慮したカスタマーサポートまでを見据えた運営体制が求められます。
海外展開は多くの準備が必要なため、決して容易ではありません。しかし、事前の準備をしっかり行い、適切なパートナーを選定することで、売上を大きく拡大するチャンスにつながります。まずは、自社の商品特性や目指す市場に合った販売手法を選び、段階的に物流、決済、サポート体制を整えていくことが、持続可能な海外販売の第一歩となるでしょう。
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