AP 処理の自動化は買掛金処理の自動化ともいい、買掛金処理をシンプルにし、スピードアップを実現するテクノロジーです。これにより、企業は仕入先請求書の処理や支払いの管理に必要な手作業を減らし、重複支払いやデータ入力の誤りなどのエラーの発生を減らすことができます。
こうした支払いプロセスのスピードアップや正確性の向上により、ベンダーとの関係を改善し、事業経費を節約できます。自動化された買掛金処理のコストは、主に人件費を低減できることが理由となって、手動コストに占める割合のわずか 33% にすぎません。この記事では、AP 処理の自動化の仕組み、投資収益率 (ROI) を決定する主な要素、ROI の計算方法、および AP の展開を成功させる方法について説明します。
この記事の内容
- AP 処理の自動化の機能
- ROI に影響する AP 処理の自動化の主な要素
- AP 処理の自動化の ROI の計算方法
- AP 処理の自動化による効率の向上
- AP 処理の自動化の展開を成功させる方法
- AP 処理の自動化の採用を進める方法
AP 処理の自動化の機能
AP 処理の自動化では、買掛金処理のステップを合理化および自動化するテクノロジーを使用します。一般的な機能の概要は次のとおりです。
請求書のキャプチャー
AP 処理の自動化は、電子請求書と紙の請求書に対応できます。
電子請求書: 電子請求書は、構造化されたデジタル形式 (拡張マークアップ言語 [XML]、電子データ交換 [EDI] など) でサプライヤーから直接受信でき、AP システムに自動的にインポートされます。
紙の請求書: 紙の請求書は、光学式文字認識 (OCR) テクノロジーを使用してスキャンまたはキャプチャーされ、関連データ (ベンダー名、請求書番号、ラインアイテムなど) が抽出され、デジタル形式に変換されます。
データの抽出と検証
AP 処理の自動化ソフトウェアは、請求書から重要なデータを抽出し、発注書と領収書 (該当する場合) と照合して検証し、不一致がある場合はフラグを立てて確認を求めます。不正検出機能があるシステムもあります。機械学習を使用して精度を向上させ、時間の経過とともにパターンを認識するものもあれば、特定のフィールドに対して手動による確認がひつようなものもあります。
請求書の照合と承認
照合: 請求書は、事前定義されたルールと許容範囲に従って、対応する発注書や領収書と自動的に照合されます。ソフトウェアによっては、支払いの重複を防ぐための重複請求検出ツールもあります。
承認: 一致が見つかった場合、請求書は、承認者としきい値を定義する事前構成済みのワークフローに従って転送され、承認が求められます。承認者は通知を受け取り、電子的に請求書の確認と承認を行うことができます。多くの場合はコメントや質問を追加する機能が付属しています。一部のソフトウェアには、承認者がモバイルで請求書の確認と審査を実行できる機能もあります。
支払い処理
請求書が承認されると、AP システムは、会社の支払い条件と希望する決済手段 (小切手、ACH送金、クレジットカードなど) に従って支払いを開始します。システムによっては、支払いのスケジュールを立ててキャッシュフローを改善し、早期支払い割引の利用を可能にすることもできます。
アーカイブとレポート作成
アーカイブ: 請求書、補足文書、監査証跡はすべて安全にアーカイブされるため、簡単に検索でき、法令や規制の遵守を実現できます。
レポート作成: AP システムは、支出パターン、ベンダーのパフォーマンス、承認サイクルタイム、その他の主要な指標に関するレポートと分析を生成します。
ROI に影響する AP 処理の自動化の主な要素
AP 処理の自動化の ROI を決定するには、このソフトウェアの使用による直接的な経済的利益と間接的なメリットを評価する必要があります。これらの要素から貴社が得られる AP 処理の自動化の ROI を判定できます。
初期費用と継続費用: AP 処理の自動化の導入時の初期費用には、ソフトウェアの購入やサブスクリプション料金の支払い、財務システムとの統合、カスタマイズの利用が含まれます。継続的なコストには、ソフトウェアの保守、更新、スタッフのトレーニングが含まれます。
プロセスの効率性: 自動化によって、データの手入力作業をなくし、承認ワークフローをスピードアップするため請求書の処理に必要な時間を短縮できます。請求書処理に必要な時間と人員を削減することで、特に請求書の量が多い大規模な組織では、人件費を大幅に節約できます。
エラーの減少: システムが自動化されると、財務上の損失や時間のかかる修正が必要になりかねない重複支払いや誤ったデータ入力などのヒューマンエラーを最小限に抑えることができます。
規制順守のサポート: 自動化によって、企業は正確で追跡可能な記録の維持管理が可能になるため、規制要件への順守や内部統制に利用して、反則金などの発生リスクを軽減できます。
ベンダーとの関係と割引: 支払いをよりスピーディーに処理することで、企業はベンダーが提供する早期支払い割引を利用して、キャッシュフローを改善し、コストを削減できます。敏速かつ正確な支払いプロセスは、サプライヤーとの関係も改善し、より有利な契約条件を引き出せる可能性もあります。
スケーラビリティにかかわるコスト: AP 処理の自動化システムは、多額の追加費用を投入することなく、処理可能な請求書を増やせるように拡張できます。
レポート作成と分析のインサイト: 自動化されたシステムは、支出パターンとフィナンシャルコミットメントに関する優れたインサイトを提供するため、財務上の意思決定の改善を可能にします。高度な分析は、非効率性の特定、調達から支払いまでのプロセスの改善に活用でき、全体的なコストの削減を可能にします。
AP 処理の自動化の ROI の計算方法
AP 処理の自動化の ROI を計算するには、システムの導入と保守のコストを、システムが生み出す財務上のメリットおよび節約と比較する必要があります。ここでは、そのプロセスを順を追って説明します。
AP 処理の自動化のコストを決定する
ソフトウェアのコスト: AP 処理の自動化ソフトウェアの初期購入またはサブスクリプション料金、および継続的なライセンスまたは保守費用。
導入コスト: ソフトウェアのセットアップ、ワークフローの構成、従業員のトレーニング、および既存のシステムとの統合に関連する費用。
運用コスト: クラウドホスティング料金、サポートサービス、将来発生しうるアップグレードなど、システムの稼働にかかる継続的なコスト。
メリットと節約額を特定する
人件費の削減: データ入力、請求書照合、承認ワークフローなどの手動タスクの自動化による時間短縮。短縮される時間に、これらのタスクを実行する従業員の平均時給を乗じます。
早期支払割引: 請求書処理のスピードアップの実現で可能になる早期支払い条件の利用で得られる割引額。
遅延手数料の軽減: 支払い処理を適時実行で可能になる延滞手数料の回避によって可能になる節約額。
エラー率の低減: 重複支払い、過払い、延滞料など、手動処理に付随するエラーのコスト。AP 処理の自動化により、これらのエラーを大幅に減らし、コスト削減につなげることができます。
効率の向上: 承認サイクルのスピードアップ、AP 処理のプロセスの可視性の向上、不正リスクの軽減など、効率の向上から得られる無形のメリット。
純削減額の計算
総利益と節約額から AP 処理の自動化に関連する総コストを差し引き、システムによって生み出される正味節約額を決定します。
ROI の計算
純削減額を AP 処理の自動化の総コストで割り、100 を乗じて ROI の割合を求めます。
式:
(純削減額 / AP 処理の自動化の総コスト) x 100 = ROI (%)
計算例: たとえば、ある企業が AP 処理の自動化に 50,000 ドルを投資し、年間次のような節約とメリットを実現したとします。
人件費の削減: $30,000
早期決済割引: $5,000
遅延手数料の低減: $2,000
エラー関連コストの低減: $3,000
純節約額は 40,000 ドルになります。AP 処理の自動化の総コストが 50,000 ドルの場合、ROI の計算方法は次のようになります。
ROI = ($40,000 / $50,000) x 100 = 80%
この例の企業は、AP 処理の自動化を導入した初年度に 80% の ROI を達成しました。ROI は、初期投資が回収され、節減額が引き続き蓄積されるため、後続年度では増加を見込めます。
AP 処理の自動化による効率の向上
以下に AP 処理の自動化を最大限に活用する方法を紹介します。
PDF や電子請求書などの電子形式で請求書を取得します。これにより、自動化ソフトウェアは、それらを速やかにキャプチャーして簡単に処理することができます。
ソフトウェアが請求書から重要なデータを自動的に抽出できるため、手動でデータを入力する必要がなくなります。
請求書と発注書および領収書を自動的に照合するルールを設定して、承認プロセスを大幅にスピードアップします。
ソフトウェアを使用して、今後の支払いのリマインダーのスケジュールを作成し、期限内に支払い、資金の節約を可能にします。
どこからでもアクセスできるクラウドベースやモバイル対応の AP 処理の自動化ソフトウェアをお勧めします。
会計ソフトウェアと統合できるソフトウェアを探し出すと、複数のシステムを操作する必要がなくなります。
このソフトウェアを使用することで、請求書の処理時間や支払いの正確性などの主要指標に関するレポートを生成し、改善すべき領域の特定に活用できます。
トレーニングとサポートリソースを使用して、最新の機能とベストプラクティスを最新の状態に保ちます。
AP 処理の自動化の展開を成功させる方法
計画を立てることで、AP 処理の自動化を効果的に展開し、そのメリットを享受することができます。プロセスを構成する方法は次のとおりです。
ニーズを評価する
AP プロセスの分析: 課題、ボトルネック、改善すべき領域を特定します。自動化の目標を決定します(例: コスト削減、効率化、精度の向上)。
要件の定義: 請求書の量、請求書の形式、承認ワークフロー、統合のニーズ、予算などの要素について検討します。
ビジネスケースの作成
潜在的なメリットの定量化: ニーズとデータに基づいて、コスト削減、効率の向上、その他のメリットを推定します。
__ ROI の計算:__ ソフトウェアと導入のコストが正当なものであることを証明するため、見込まれる ROI を判定します。
利害関係者へのビジネスケースの提示: メリットと ROI を明確に伝えて、主要な意思決定者の賛同を得ます。
ベンダーとソリューションの選択
複数のベンダーの評価: ソフトウェアの機能、価格、カスタマーサポート、導入プロセス、統合機能などの要素を検討します。
デモとトライアルのリクエスト: ソフトウェアをテストして、ワークフローに適合し、ニーズを満たしているかを確認します。
ベンダーの選択: 要件と予算に合ったベンダーとソリューションを選択します。
導入の計画と準備
プロジェクトチームの編成: 財務、情報技術 (IT)、調達、およびその他の関連部門の利害関係者を含めます。
実施計画の策定: プロジェクトの各フェーズの範囲、タイムライン、マイルストーン、責任を定義します。
データの準備: ベンダーと請求書のデータをクレンジングして標準化し、新しいシステムへの移行が円滑に進められるようにします。
ソフトウェアのカスタマイズ: ワークフロー、承認ルール、支払い条件、その他の設定を自社のプロセスに合わせて構成します。
システムとの統合: 必要に応じて、AP 処理の自動化ソフトウェアを企業資源計画 (ERP) システムまたはその他の財務システムと統合してデータフローを実現し、データの手入力を回避します。
チームのトレーニング
包括的なトレーニングの提供: 関連するすべての従業員が、新しいシステムとその機能の使用方法を理解していることを確認します。
継続的なサポートの提供: 導入中および導入後に発生した疑問や問題に対処するサポート体制を確立します。
本番移行と監視
パイロットフェーズから開始: 可能であれば、AP プロセス全体に展開する前に、請求書またはベンダーの小さなグループでシステムをテストします。
パフォーマンスの監視: 請求書の処理時間、エラー率、承認サイクルタイムなどの主要な指標を追跡して、システムが想定どおりであるかどうかを確認します。
フィードバックの収集: ユーザーからのフィードバックを収集して、複雑な問題や改善が必要な領域を特定します。
必要に応じた調整: ワークフローの改善、設定の調整、問題への対処を通じて、システムのパフォーマンスを向上させます。
AP 処理の自動化の採用を進める方法
AP 処理の自動化を開始する場合は、直感的で使いやすいソフトウェアを選択してください。可能であれば、組織全体に展開する前に、少人数のユーザーグループや請求書を使用してシステムを試験的に稼動します。システムの実稼動が可能になったら、次の主要な戦略を使用して、社内での利用を進めることができます。
メリットを伝える
AP 処理の自動化によって、手作業の削減、エラーの最小化、コラボレーションの改善など、従業員の生活がどのように楽になるかを説明します。
AP 処理の自動化を導入した他の企業や部門の事例や、それが業務に与えたプラスの影響を伝えます。
AP 処理の自動化が、コスト削減、効率の向上、リスクの軽減など、より広範な事業目標とどのように整合するのかを説明します。
懸念や抵抗に対処する
新しいシステムに関する懸念事項や不安について従業員と話します。一般的な懸念事項には、雇用の安定、学習曲線、変化への不安などがあります。
懸念事項に直接対処し、トレーニング、リソース、継続的なサポートを提供して、従業員が安心して移行できるようにします。
オープンなコミュニケーションを奨励し、従業員が改善に向けたフィードバックや提案を共有できるようにします。
包括的なトレーニングを提供する
スタッフのトレーニングは、各従業員の役割と責任との関連があり、該当する各従業員にとって有益なものであるようにします。
オンラインモジュール、テクニカルサポート、対面セッション、ワークショップ、ユーザーガイドなどのチャネルを通じてトレーニングを提供します。
継続的な学習機会を提供し、従業員が新機能やベストプラクティスの最新情報を入手できるようにサポートします。
成果に好評価を与える
導入の初期段階から得られた肯定的な結果を伝え、勢いと興奮を高めます。
システムの採用過程において積極的に参加した従業員を認め、報酬を与えます。
AP 処理の自動化プロセスにさらに微調整を加えるためのアイデアや提案を共有するよう従業員に奨励します。
模範を示す
重役や経営幹部が採用プロセスに積極的に関与し、新しいシステムへの取り組みを示すようにします。重役は、AP 処理の自動化ソフトウェアを積極的に使用して、業務における価値が高いことを従業員に示す必要があります。
変化には時間がかかることを理解し、移行期間全体を通じて、従業員に励ましとサポートを提供します。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。