会計において「n / 30」 (net 30) とは、請求書の全額が請求日から 30 日以内に支払われるべきであるということを示す支払い条件です。n / 30 は支払いの期待を伝えるもので、10 日以内の早期支払いに対して顧客に割引 (2% など) を提供する 2 / 10 などの支払い条件とは異なります。

n / 30 などの支払い条件の施行は、ビジネスの成功を左右します。2023 年のレポートによると、支払い遅延を経験したイギリスの中小企業 (SMB) の 26% が事業に再投資できず、20% が事業目標を達成できていなかったことがわかりました。

以下では、企業が net 30 を使用する理由、キャッシュフローの形成方法、企業が期限内の支払いを促す方法など、net 30 について知っておくべきことについて説明します。

この記事の内容

• 企業が n / 30 の支払い条件を使用する理由
  
• n / 30 条件がキャッシュフローに与える影響
  
• n / 30 の一般的な代替手段
  
• n / 30 条件の適用方法
  

企業が n / 30 の支払い条件を使用する理由

企業は、n / 30 の支払い条件を使用することで、顧客に対する公平性とキャッシュフロー管理の両立を図っています。この支払い条件が双方にとって有効な理由は次のとおりです。

• 顧客に柔軟性を提供する: 多くの場合、顧客は 30 日の支払い期間をありがたく感じています。購入した製品を販売したり、自分の事業から現金を生み出したりする時間を得ることができます。この柔軟性は、リピートビジネスを促進し、関係を構築するのにも役立ちます。

• 丁寧でかつ実用的: 30 日間という期間は、顧客に不必要なプレッシャーをかけずに済むだけでなく、売り手を支払いのために長く待たせることにもなりません。

• 売り手の財務計画に役立つ: ほとんどの支払いが 30 日以内に完了することがわかっているため、企業は経費、給与計算、在庫補充をより確信を持って計画できます。

• 標準的なビジネス慣行である: n / 30 は、業界全体で既定の支払い条件として広く認識されています。馴染みがあり、簡単に合意でき、請求書ごとに再交渉する必要がありません。

• リスクを負いすぎずに信頼を示す: 30 日間の支払い期間の延長は、信頼を示しますが、売り手を過度なリスクにさらすわけではありません。支払い期日までの期間が比較的短いため、顧客が 60 日以内に支払う必要がある n / 60 などのより寛大な条件よりも安全な代替手段になります。

n / 30 条件がキャッシュフローに与える影響

支払いの管理方法によっては、n / 30 条件が手持ちの資金に大きな影響を与える可能性があります。

キャッシュフローに関しては、n / 30 に関連する次のような利点があります。

• 理想的には 30 日以内に資金を受け取ることができます。このような予測が可能なことにより、サプライヤーへの支払い、給与計算、または新しい機会への投資の計画が容易になります。

• ロイヤリティとリピートビジネスを促進することができます。長期にわたる安定した相互に有益な関係は、健全なキャッシュフローに貢献することができます。

n / 30 にはいくつかの欠点もあります。以下に例を示します。

• キャッシュフローにギャップが生じる可能性があります。支払いに 30 日間の時間枠があるため、入金から出金までの間にストレスの多い遅延が生じる可能性があります。家賃、給与、サプライヤーへの支払いは、多くの場合、n / 30 の請求書の前に支払う必要があります。

• 再投資が制限される場合があります。 30 日間の支払い期間に資金が拘束されるため、事業に投資できる金額や、予期せぬ出費を処理する能力が制限される可能性があります。

• すべての顧客が期限を守るわけではありません。支払いが遅れたり、未払いのままだったりすると、財務計画に支障をきたす可能性があります。

n / 30 のメリットとデメリットを最大限に活用するには、請求書の支払いを待っている間も経費を処理できるように現金準備金を積極的に構築し、支払い遅延のリスクを減らすために信頼できる顧客にのみ n / 30 を適用することを検討してください。早期支払いを促進するために、早期支払いに対して少額の割引 (2 / 10、n / 30 など) を提供し、請求サイクルを短縮することもできます。

n / 30 の一般的な代替手段

n / 30 は広く使用されていますが、多くの企業は、特定のニーズ、業界、および顧客関係に適した他の支払い条件を使用しています。各オプションには、それぞれ独自の利点とリスクがあります。n / 30 の一般的な代替手段を以下に示します。

• 前払い: 顧客は、商品またはサービスが提供される前に全額を支払います。これにより、キャッシュフローの遅延がなくなり、リスクが軽減されますが、より柔軟な支払い条件を重視する潜在顧客や、ビジネス業務に不慣れな潜在顧客を躊躇させる可能性があります。このオプションは、通常、リスクの高い業界、カスタムオーダー、または新しいクライアント関係で使用されます。

• 代金引換 (COD): 支払いを納品時に行います。これにより、遅延や未払いのリスクが軽減されますが、特に大量注文や継続注文の場合、物流が複雑になる可能性があります。この方法は、通常、小売、物流、および小口商品を扱う業界で使用されます。

• net X: これは、標準の net 支払い条件の一種であり、「X」は支払い期日までの日数を表します。net X は、業界の基準や顧客のニーズに応じて調整できる柔軟性があります。たとえば、n / 60 または n / 90 の場合、購入者は支払い期限までより多くの時間を確保することができます。ただし、キャッシュフローの問題が発生する可能性があります。これらのカスタム条件は、販売サイクルが長い、大規模な契約、または顧客の信頼が高い業界でよく使用されます。

• 早期支払割引: 2 / 10、n / 30 などの条件では、顧客が 10 日以内に全額を支払った場合、2% の割引が適用されます。早期支払いをしない場合、支払い期限は 30 日になります。このオプションを使用すると、顧客にある程度の柔軟性を与えながら支払いの迅速化が促進されます。しかし、割引が提供されるため、割引が使用されすぎると収益に影響を与える可能性があります。この方法は、通常、大量注文や高頻度な取引を伴う B2B 関係で使用されます。

• マイルストーン支払い: 支払いが、プロジェクトのマイルストーンまたは納品物に基づく段階に応じて分割されます。支払いを特定のベンチマークに結び付けることで財務リスクが軽減されますが、企業がマイルストーンを管理および追跡する方法が複雑になる可能性があります。このオプションは、通常、建設、ソフトウェア開発、または大規模なカスタムプロジェクトで使用されます。

• サブスクリプションまたはリテーナー: 顧客は、定期的に (毎月、毎年など) 所定の金額を支払います。この頻度により、売り手は経常収益を予測できますが、1 回限りの支払いや金額が変動する支払いに依存する業界には適していません。この方法は、通常、サービスとしてのソフトウェア (SaaS) 企業、コンサルティング、または保守サービスで使用されます。

• 信用状 (LC): 銀行が買い手の支払いを保証し、条件が満たされると資金を利用できます。これを利用すると、国際貿易や高額取引のリスクは軽減されますが、買い手の銀行の関与が必要であり、双方に手数料や管理作業が加わる可能性があります。このオプションは、通常、輸出入および大規模な資本プロジェクトで使用されます。

• 掛け売り: 顧客は前払いなしで商品やサービスを受け取り、定期的に (毎月など) 残高を決済します。これにより、顧客の取引が簡素化されますが、顧客が支払いを怠った場合、リスクが高くなる可能性があります。この方法は、通常、確立されたビジネス関係で使用されます。

n / 30 条件の適用方法

n / 30 支払い条件を適用するということは、顧客が期待していることを確実に理解し、支払いが遅れた場合はフォローアップすることを意味します。ここでは、支払い条件を適用する方法に関するガイダンスをご紹介します。

意思疎通を図る

支払い条件は分かりやすく表記してください。契約書、提案書、請求書に n / 30 条件を明記し、透明性を確保します。理想的には、新しいクライアントとの取引を開始する際に説明しておきます。たとえば、「支払い期間は 30 日ありますので、お支払いには十分な余裕があります。何か問題がございましたら、いつでもお気軽にお知らせください」などと伝えます。

分かりやすい請求書を送る

請求書は、フォーマルでありながら、すべての関係者が理解できるほどシンプルである必要があります。曖昧さを避けるために、明確な期日と n / 30 の支払い条件を記載します。目標は、顧客ができるだけ簡単に支払いを行えるようにすることなので、請求書に支払いへのリンクを追加することをご検討ください。

支払い期日の前にフォローアップを行う

31 日目まで待たずに確認しましょう。期日の 1 週間前に、好意的なリマインダーを送ります。たとえば、「いつもお世話になっております。請求書 #1234 の支払い期限が来週であることをお知らせします。期限までにお支払いいただくために、ご要望やご不明点がございましたらお気軽にご連絡ください」などが考えられます。

早期支払いに対して報酬を与える

2 / 10、n / 30 などの条件を設定して早期支払いを促します。「10 日以内にお支払いいただけますと 2% の割引が適用されます。早期支払いへのご協力をよろしくお願いいたします」などのメッセージを送ることができます。

モニタリングし必要に応じてアプローチを変更する

支払いが遅れた場合は速やかにフォローアップしますが、友好的な対応を心がけましょう。「いつもお世話になっております。請求書 #1234 のお支払いがまだ確認できておりません。恐れ入りますが、ご確認いただけますでしょうか」などのように連絡します。

顧客からの応答がなく、それでも支払いが行われない場合は、「請求書 #1234 の支払いが遅れております。契約では、お支払い期限は [日付] と設定されておりました。[新しい日付] までにお支払いいただけないと、遅延料金が発生する場合があります」のようなメッセージでアプローチを強化していくことができます。

毅然と、しかし配慮して対応をする

遅延料金は効果があるかもしれませんが、使用には注意を要します。後のトラブルを避けるために、遅延料金ポリシーについて事前にクライアントに説明しておきましょう。たとえば、「請求書のお支払いが期日を過ぎて行われた場合、月ごとに 1.5% の遅延料金が発生します」のように伝えます。

強きに出るべきタイミングと譲歩すべきタイミングを見極める

クライアントの支払いが遅れているのは、何かしらの問題を抱えているのかもしれません。顧客に確かな実績がある場合は、ある程度の柔軟性を持って対応することを検討してください。相手の状況に寄り添いながらコミュニケーションを行い、支払い計画の作成を提案してみましょう。ただし、クライアントが常に支払いを遅延している場合は、n / 30 の延長を停止します。今後の業務のために前払いまたはより短い期間を要求します。

手間のかかる作業をこなすツールを使う

Stripe Invoicing などのソフトウェアは、自動リマインダーを送信したり、支払いを追跡したりできるため、クライアントが支払うべき金額と期限を一目で確認できます。

必要に応じて段階的に対応する

丁寧なリマインダーや遅延料金が有効でない場合は、回収業者を雇ったり、法的措置を取ったりする必要がある場合もあります。しかし、戦略的に考えてください。未払いの請求書が少額である場合、時間とリソースをかけてまで追求する価値はないかもしれません。

あらゆる状況から学ぶ

支払いが常に遅延している場合は、自身のビジネスを批判的に見直し、以下について自問自答する必要があります。

• 間違ったクライアントと仕事をしていないか？

• n / 30 条件を提示する前の信用調査をもっと厳格に行う必要がないか？

• 請求プロセスを厳格化すべきでないか？

支払いの遅延をシステムを調整する機会として活用します。