自社のビジネスで必要な商品やサービスにかかるサブスクリプション費用は、経費として計上することができます。サブスクリプション(以下、サブスク)の費用は主に、通信費、支払手数料、消耗品費などの勘定科目に分けられますが、サービスの使用用途に応じて適切な勘定科目を用いる必要があります。
本記事では、日本の事業者が知っておくべきサブスクの「勘定科目」に焦点を当てて、具体的な仕訳方法や仕訳する際の注意点などについて解説します。
目次
- サブスク (サブスクリプション) とは
- サブスク利用料金は経費にできる?
- サブスクの仕訳に用いられる勘定科目
- サブスク利用料金の仕訳方法
- サブスク利用料金を仕訳する際の注意点
- サブスク利用料金の勘定科目についてよくある質問
- 自社の会計方針に合わせて勘定科目を適切に選ぶことが大切
サブスクリプションとは
サブスクリプション とは、一定の月額料金で商品やサービスを提供するビジネスモデルを指します。たとえば、動画配信や音楽配信、電子書籍、クラウドなどがサブスクリプション型のビジネスとして代表的です。「モノを増やさずに良い生活をおくりたい」という消費者のニーズを満たすことのできるサブスクリプションの市場規模は、近年拡大しており、今後さらに成長し続けると予測されています。
サブスクリプションビジネスには多くの事業者が参入しており、サブスクリプションの成功事例としてはさまざまな B2B や B2C のサービスが挙げられます。プライベートやビジネスシーンでこれらのサブスクリプションサービスを利用する最大のメリットには、定額料金を支払うことで継続的にサービスを受けられる点が挙げられます。たとえば、映画やTV番組の動画配信サービスの場合、月額料金さえ支払えば、いくらでも自由に動画を視聴できるため、コンテンツごとに料金を支払う必要がありません。
また、サブスクリプションの利用料金は定額制のため、支出額について把握しやすく、その都度購入する売り切り型商品のような支出の変動もありません。したがって、思わぬ高額な支出が発生する心配もなく、事業者の資金繰りやプライベートでの家計管理がしやすい点が、サブスクリプションサービスが幅広く普及している大きな要因といえるでしょう。
サブスクリプションの利用料金は経費にできますか?
冒頭の解説のように、自社ビジネスに関係するサブスクリプションの利用料金は、経費として会計処理することが可能です。法人だけでなく、個人事業主でも業務に関わるものであれば、サブスクリプションの利用料金を経費にすることができます。
ただし、サブスクリプションが業務と個人目的の両方に使用される場合、支出は区分する必要があります。これは日本語で「経費区分」と呼ばれ、業務経費と個人経費を区別するものです。つまり、経費区分プロセスで業務経費として分類された項目のみが支出として計上されます。これらのプランが個人と業務の両方のニーズを満たす場合、適切なコスト配分を行うため、正確な業務記録を保持することが重要です。
なお、サブスクリプションを経費として会計処理する際には通常、領収書や請求書のような証書類が必要です。したがって、サブスクリプションの利用料金をクレジットカードで支払っているため、領収書が毎回発行されない場合は、クレジットカードのアカウントにログインして、明細書を PDF で保管しておくほか、申込書や契約書などがあれば、揃えて保管しておきましょう。
サブスクの仕訳に用いられる勘定科目
以下に、サブスクを仕訳する際に使用される主な勘定科目をご紹介します。
通信費
通信費とは一般的には、業務上で発生する電話代、インターネット回線代、切手代などが当てはまります。また、通信費として計上できるサブスクには、インターネット上でデータをやり取りするメールソフトやウェブ会議システムの利用料、会計ソフトのような業務に関わるクラウド型ソフトの利用料があります。
支払手数料
音楽や動画などのコンテンツ配信のサブスクサービスを使用する場合は、支払手数料を用いることができます。たとえば、飲食店やヘアサロンなど不特定多数の人が集まる場所で、BGM 用に音楽をかけたり、店内のムードに合わせた映画などを顧客に視聴してもらうために、コンテンツ配信サービスを取り入れるケースが代表的です。
福利厚生費
福利厚生費とは、従業員の福利厚生にかかる費用を意味します。サブスクサービスの一例としては、社員用にオフィス内に設置されるコーヒーメーカーやソフトドリンクなどのドリンクサーバーが、社員の福利厚生を目的としているため福利厚生費に当てはまります。このほかにも、社員に提供されるオンライン動画のフィットネスレッスンや、ヘルスケアアプリのサブスク利用料金なども、福利厚生費に含まれます。
ただし、使用可能年数が 1 年未満または取得金額が 10 万円未満にあたる場合は、福利厚生に関わる費用であったとしても、次に解説する消耗品費を用いることも可能です。
消耗品費
消耗品費とは、その言葉どおり、業務上で消耗される備品に対する費用です。オフィスで日常的に使用するコピー用紙や文具などがこれに該当しますが、消耗品費の条件は、耐用年数 (消耗期間) が 1 年未満のものまたは取得金額が 10 万円未満のものと定められています。つまり、消耗品費として会計処理できるのは、10 万円未満で購入できるもの、あるいは、1 年以内に完全に使い切れるものに限られます。
したがって、購入金額が 10 万円を超えていたり、長期的な使用を目的とするものは、消耗品費の対象外となります。
交際費
交際費とは、取引先との良好な関係を維持することを目的に、接待や贈答などにかかる費用として計上される勘定科目です。
サブスクの場合では、取引先に贈る食品ギフトのサブスクサービスの利用料金などが交際費に該当します。また、先ほど「福利厚生費」でご紹介したドリンクサーバーが、取引先など来客者専用に設置されている場合も、交際費として会計処理します。
貸借料・リース料・地代家賃
OA機器やパソコン、オフィス家具や社用車などを所有せずに、これらを借りてサブスクでまかなう場合の利用料金は、貸借料やリース料として計上します。貸借料はレンタル契約のもと利用する機器など、リース料はリース契約として借りて使用する際にかかった費用の仕訳の際に用いる勘定科目です。
また、コワーキングスペースやシェアオフィスをサブスクで借りる場合、こうした土地や建物にかかる賃料は、勘定科目として地代家賃に仕訳します。
雑費
雑費は、上記のどの勘定科目にも該当せず、少額なものや、一時的に生じた費用を仕訳する際に用いる勘定科目です。サブスク費用については、個別の管理が特に必要でない場合、雑費として会計処理できます。一般的な雑費としては、ビジネス専用クレジットカードの年会費や、レンタル料やキャンセル料などが該当します。
サブスクリプション利用料金の仕訳方法
ここでは、通信費のグループにおけるサブスクリプション料金の仕訳方法の例を見ていきます。
毎月決済の場合
例えば、ウェブ会議システムの利用料として月額¥2,000のサブスクリプション料金を支払っているとします。この費用は「通信費」として分類する必要があります。以下では、決済方法が銀行振込と「クレジットカード」の2つのケースにおける仕訳方法を説明します。
普通預金から銀行振込で支払った場合
- 借方: 通信費 2,000 円 / 貸方: 普通預金口座 2,000 円
クレジットカードで支払った場合
クレジットカードの支払時
借方: 通信費 2,000 円 / 貸方: 未払金 2,000 円決済が普通預金口座から引き落とされた時
借方: 未払金 2,000 円 / 貸方: 普通預金口座 2,000 円
1 年以内の契約期間で一括払いする場合
サブスクリプションサービスを利用する期間が 1 年以内で、継続的に生じる費用に対して同一の会計処理を行う場合において、短期前払費用の特例が適用されます。
以下の例は、1年間の計画に関する費用の一括支払いの仕訳例です。年間料金が ¥20,000 のウェブ会議システムに関する仕訳を見てみましょう。このケースの仕訳方法は、以前に見た月次決済方法とほぼ同じです。
普通預金から銀行振込で支払った場合
- 借方: 通信費 20,000 円 / 貸方: 普通預金口座 20,000 円
クレジットカードで支払った場合
クレジットカードの支払時
借方: 通信費 20,000 円 / 貸方: 未払金 20,000 円決済が普通預金口座から引き落とされた時
借方: 未払金 20,000 円 / 貸方: 普通預金口座 20,000 円
1 年を超える契約で数年分を一括払いする場合
サブスクリプションサービスを数年間契約して利用する場合の仕訳方法について説明します。たとえば、「ウェブ会議システムの利用料金 3 年分 (年額 2 万円)」を一括で支払う場合は、以下のように仕訳します。
普通預金から銀行振込で支払った場合
支払時
借方: 前払費用 60,000 円 / 貸方: 普通預金口座 60,000 円_経費の記録 (年次決算) _
借方: 通信費 20,000 円 / 貸方: 前払費用 20,000 円
契約期間が1年を超える場合、まず前払費用として決済を記録します。その後、精算時に該当期間中に利用された金額 (年間料金) を通信費の勘定科目に振り替えます。
サブスク利用料金を仕訳する際の注意点
サブスクの勘定科目の仕訳をスムーズに行うためには、以下のような点に注意する必要があります。
一度決めた勘定科目を使用し続ける
会計上で一貫性を保つためには、勘定科目を一度これ、と決めたら以後同じ勘定科目で計上することが大切です。
ただし、サブスクサービスの主な内容が大きく変更したり、自社での使用目的が変わった場合は、変更に応じて勘定科目の修正が求められます。たとえば、もともと来客専用としてコモンスペースに設置していたウォーターサーバーを、オフィス内に移動させて社員専用に提供する場合、「交際費」から「福利厚生費」に修正する必要があります。
勘定科目は一般的にわかりやすいものを使用する
基本的にサブスクの勘定科目は自由に決めることができますが、一般的に認知されている通信費や消耗品費のような、わかりやすいものを使用するようにしましょう。これにより、社内でも共通の認識を持つことができ、税務署から確認の問い合わせがあったときにも、わかりやすく明記されていれば、内容を迅速に把握できるため適切な対応が可能となります。
公私兼用でサブスクを使用する場合は家事按分に気を付ける
本記事の前半部分にて解説したように、ビジネスとプライベートで兼用してサブスクを利用する場合、ビジネス使用分の割合に応じて料金を按分しなければなりません。つまり、利用金額全体のうち家事按分した分だけが、経費として会計処理することができます。
たとえば、スマートフォンのように仕事中はビジネス用途で、それ以外はプライベートで使用する場合は、仕事で使用した通話時間やデータ通信量について、記録をとっておくようにしましょう。記録がないと経費としての計上が認められない可能性があります。そのため、サービスを公私兼用する場合は、くれぐれも注意が必要です。
サブスクリプション利用料金の勘定科目についてよくある質問
Adobe のサブスクリプションはどの勘定科目になりますか?
Adobe のソフトウェアのように、クラウド上で動作するものについては通信費として処理するのが一般的です。これは、Adobe Creative Cloud などのサブスクリプションサービスが、オンライン上で提供されるクラウド型ソフトに該当するためです。クラウド型ソフトの勘定科目は、通信費となります。
マイクロソフトのサブスクリプションはどの勘定科目になりますか?
マイクロソフトのサブスクリプションを利用した場合の勘定科目も通常、通信費を用いて会計処理します。これは、サブスクリプションの定額利用料を毎月支払う場合だけでなく、契約期間が1年を満たない場合に一括払いした場合も同様の仕訳方法となります。
サブスクリプション利用料の減価償却費はどうなりますか?
減価償却費とは、設備や機械装置、備品などの高額な固定資産の購入費用を、使用可能な耐用年数に応じて、1年ずつ分割して費用計上する会計処理です。つまり、長期間の使用を目的とする高額なものは、購入および取得した段階で購入金額すべてを経費にすることはできません。このような資産は、時間とともに劣化することで価値が減少していくことから、減価償却資産といいます。サブスクリプションサービスの利用料金については、この減価償却費は不要です。
サブスクリプションとは「ものを所有せずに、商品・サービスを継続的に利用」することを目的としています。そのため、サブスクリプションサービスにかかった料金は、あくまでも「サービスの利用」として、支払手数料や消耗品費、リース料などの勘定科目で経理処理ができるため、ソフトウェアや車を購入した場合と異なり、資産に該当しないため減価償却の処理が不要となるのです。
適切な会計処理の重要性
サブスクリプションは性質や内容が大幅に異なるため、その会計分類に関する法的ガイドラインは依然として明確ではありません。複数の企業が同じ会員サービスを利用する場合、それぞれの具体的な実務に基づいて費用の分類を異にする可能性があります。
このため、事業の方針に最も適した適切な会計処理方法を選択することは、適切な財務管理を確保するために重要です。どの方法を選択すべきか迷っている場合は、税務アドバイザーや他の専門家に相談することを検討してください。
さらに、サブスクリプションを使用してオペレーションを実行する際は、経費処理を簡素化するために、会計処理の柔軟性を提供するサブスクリプションを優先してください。
契約を結ぶ前に、サブスクリプション提供者が多様な定額プランと決済オプションを提供しているか確認し、会計記録に必要な請求書と領収書を発行するかどうかを確認してください。
なお、Stripe Billing を導入済みのサブスクリプションサービスなら、複数の定額プランを顧客に提供することが可能となっているため、サブスクリプションをビジネスに利用する事業者の方は、自社に見合った最適なプランを選ぶことができるでしょう。また、Stripe Billing が搭載されているサブスクリプションの場合、クレジットカードやモバイルウォレット、銀行振込、店舗での支払いなどの多様な決済手段にも対応しているため、サービスのユーザーは、決済においても効率的で柔軟なサービスを受けられます。
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