事業を日本国外に展開するときに、海外販売の価格をどのように決めればよいのでしょうか? 日本での販売価格を基準に、そのまま換算するだけでは、適切な価格を設定できない場合があります。現地の市場環境や販売にかかるコストなども踏まえて、価格を検討する必要があります。
たとえば、輸送費や関税、決済手数料に加え、現地の競合価格や購買力、為替変動なども確認しておきたいポイントです。また、自社 EC、海外 EC モール、代理店販売では、それぞれ手数料やマージンの仕組みが異なるため、同じ商品でも最終的に残る利益は同じではないでしょう。
また、海外での売上が伸びていても、必要なコストを価格に十分反映できていなければ、思ったほど利益が残らないこともあります。無理なく海外販売を続けていくためには、現地の顧客に受け入れられる価格と、自社に必要な利益の両方を踏まえて価格を決めることが求められます。
この記事では、日本から海外販売する際に確認しておきたいコストや、現地市場に合った価格の決め方をわかりやすく解説します。これから 越境 EC にチャレンジしたい方や、すでに海外販売を行っていて価格設定を見直したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事でわかること
- 海外販売の価格は、日本国内の販売価格をそのまま現地通貨に換算するのではなく、現地の価格帯や購買力、競合状況を踏まえて設定することが大切です。
- 海外販売の価格を決めるときには、商品原価だけでなく、輸送費、関税、販売・決済手数料、為替変動なども含めて採算を管理する必要があります。
- 販売チャネルごとのコストや役割を踏まえ、必要に応じて販売価格を見直しながら、継続的に利益を確保できる仕組みを整えるのがポイントです。
海外販売の価格はどう決める?
海外販売の価格は、日本での販売価格に一定額を上乗せしたり、為替レートに合わせて現地通貨へ換算したりするだけでは決められません。
まずは、現地の競合商品がどのくらいの価格で販売されているかを調べ、購入者に受け入れられる価格帯を見出します。その上で、商品原価や輸送費、関税、決済手数料、販売プラットフォームの手数料、代理店のマージンなどを含めて、必要な利益を確保できる価格を逆算します。
海外販売では、現地で売れやすい価格と、自社に利益が残る価格の両方を考える必要があります。市場価格に合わせるだけでは利益が不足することがあり、反対に、コストをそのまま上乗せすると現地相場より高くなり、購入されにくくなってしまうからです。
価格を決める際には、次の 3 つの条件が重なる範囲を意識してみましょう。
- 現地の顧客に受け入れられる価格
- 販売にかかるコストを回収できる価格
- 目標とする利益を確保できる価格
また、自社 EC、海外 EC モール、代理店販売など、利用する販売チャネルによりコストは変動します。同じ商品でも、チャネルごとに手数料やマージンを確認し、それぞれの採算を計算した上で価格を設定するようにしましょう。
日本企業にとって海外販売の価格設定が重要な理由
日本の商品を海外から購入する動きは、年々広がっています。経済産業省の令和 6 年度電子商取引に関する市場調査によると、2024 年に中国の消費者が日本の事業者から越境 EC で購入した金額は 2 兆 6,372 億円で、前年から 8.5% 増加しました。また、米国の事業者による越境 EC 購入額も 3 兆 1,397 億円に達しており、日本の商品に対する海外の需要の大きさがうかがえます。
越境 EC 市場の拡大は、日本の企業だけでなく、個人事業主やソロプレナーにとっても、海外に販路を広げる機会となります。一方で、販売する国や利用するチャネルが増えるほど、価格設定や利益管理は複雑になります。
たとえば、自社 EC では、決済手数料や集客費、海外 EC モールでは販売手数料や物流費、代理店経由では卸売価格や代理店マージンを考慮しなければなりません。同じ商品を同じ価格で販売していても、販売チャネルによって利益率は異なるはずです。
それでは、利益率の高いチャネルだけを選べばよいかというと、必ずしもそうとも限りません。海外 EC モールや代理店を利用することで、新しい顧客との接点が生まれたり、現地でのブランド認知度が高まったりする可能性があるためです。短期的な利益率は低くても、販路の開拓や将来の販売拡大につながるのであれば、長期的にはより大きな効果が期待できることもあります。
ため、海外販売の価格を決める際には、目の前の利益率だけではなく、各チャネルの役割や中長期的な目的も踏まえて、慎重に採算を見極めるようにしましょう。
海外販売の価格を決める前に確認すべきコスト
海外販売の価格を決める前に、商品原価だけでなく、輸送費や手数料、税金など、販売にかかるコストを確認する必要があります。費用の負担者や金額は、販売国や販売チャネルによって異なることも押さえておきましょう。
国際輸送費
海外へ商品を発送する場合は、国際送料のほか、梱包資材、追跡サービス、配送保険などの費用がかかります。商品の大きさや重量だけでなく、配送先の国や地域、配送スピードによっても料金は変わります。
さらに、返品や配送トラブルが発生した場合の費用も考えておく必要があります。海外からの返品では、返送料が商品価格を上回ることもあります。返品率がある程度見込まれる商品では、返品や再発送にかかる費用を注文に配分して、価格に反映する方法もあります。
また、一定額以上の購入で送料無料にするとした場合も、実際には運送会社から徴収される運賃が無料になるわけではありません。実際には自社で負担することになるため、平均注文額や粗利益を確認し、送料を吸収できるかを計算しておくことが大切です。
関税・消費税
海外販売では、商品の種類や販売先によって、関税、輸入税、付加価値税 (VAT) などが発生することがあります。誰がこれらの費用を負担するかによって、購入者が最終的に支払う金額や、自社に残る利益が変わります。
たとえば、商品価格や送料とは別に、商品を受け取る際に購入者が関税や税金を支払う場合があります。購入前に追加費用がわかりにくいと、受取拒否や返品につながることもあるため、価格に含まれる費用と含まれない費用を明確にしておく必要があります。
特に BtoC では、購入者が最終的な支払額を把握しやすいよう、可能であれば関税や税金を商品価格に含めるか、遅くともチェックアウト時までに追加費用を明示するようにしましょう。購入後や商品受取時に予想外の費用が発生すると、不満やチェックアウトからの離脱につながる可能性があります。
販売国や商品カテゴリーによって税率や規制は異なります。実際の取引条件に合わせてあらかじめ確認するようにしましょう。
販売・決済にかかる手数料
自社 EC で販売する場合は、決済手数料、サイト運営費、集客費など、海外 EC モールの場合は、販売手数料、出店料、広告費、保管料、発送代行費などを考慮する必要があります。また、代理店経由で販売する際は、代理店へ支払うマージンや卸売価格の設定が採算に大きく影響します。
販路によってかかる費用は少しずつ違いますが、最終的には、販売価格のうち自社にいくら残るのかを理解することが大切です。
為替変動による利益の減少を考慮する
海外販売では、価格を決めた時点と売上を受け取る時点で為替レートが変わることがあります。現地通貨では同じ価格でも、円換算したときに売上額が減り、想定していた利益を下回ることもあるでしょう。
価格を設定する際は、現在の為替レートだけで計算するのではなく、一定の変動があっても必要な利益を維持できるか確認することが求められます。
現地市場に合った販売価格を決める方法
海外販売の価格は、発生するコストだけを考えるのではなく、現地の顧客が受け入れられる価格帯も考慮する必要があります。競合価格や購買力を理解した上で、必要な利益を確保できるかを計算し、販売チャネルごとに採算がとれるかを確認しましょう。
現地の競合商品と価格帯を調べる
まずは、現地の EC モールや小売店で、類似商品がどのくらいの価格で販売されているかを調べます。ただし、価格だけを単純に比較するのではなく、商品の容量、品質、ブランドの知名度、レビュー、送料なども確認しましょう。
たとえば、日本製で高品質であることの強みや、独自の素材などに価値がある場合は、現地の一般的な商品よりも高い価格で受け入れてもらえるかもしれません。一方で、類似商品がすでに低価格で流通している場合は、価格競争で負けてしまう可能性もあります。
複数の競合商品を比較する際は、最安値だけでなく、主な価格帯や中央値を確認すると、市場全体の水準を把握することができます。
購買力と心理的価格を踏まえて価格帯を決める
同じ金額でも、国や地域によって消費者が感じる負担は異なります。そのため、現地の所得水準や一般的な購入単価、商品を購入する頻度を考慮した上で、消費者の負担にならない価格帯を設定しましょう。
目標利益から販売価格を逆算する
販売価格を決める際は、商品原価や輸送費に利益を単純に上乗せするのではない、販売手数料や決済手数料も含めて最低販売価格を計算しましょう。
販売価格は、次のように求めることができます。
販売価格 = 1 件あたり固定額でかかるコスト ÷ (1 - 手数料率 - 目標利益率)
たとえば、商品原価、梱包費用、輸送費など、1 件の販売ごとに固定額で発生するコストが 5,500 円あり、販売価格に対する手数料が 15%、事業者が確保したい利益率が 30% の場合、最低販売価格は次のように計算できます。
5,500 ÷ (1 - 0.15 - 0.3) = 10,000 円
この場合、最低販売価格は 10,000 円になります。
販売チャネルごとに採算を確認する
自社 EC、海外 EC モール、代理店販売には、それぞれ別の役割があり、事業者が求めているものも異なります。
たとえば、次のような目的が考えられます。
- 自社 EC では顧客データを蓄積する
- 海外 EC モールでは新規顧客との接点を増やす
- 代理店販売では、自社だけでは開拓しにくい地域へと販路を広げる
ブランド認知度の向上や販路開拓、将来の売上拡大など、中長期的な効果も踏まえて、チャネルごとの価格と採算を検討しましょう。
海外販売の価格設定で注意したいポイント
海外販売では、価格そのものに加え、現地通貨での表示方法や為替変動に応じた見直しも大切です。
現地通貨で価格を表示する
海外の EC サイトで商品を購入する際、見慣れない通貨で価格が表示されていると、顧客は自分で換算しなければなりません。商品の価格が高いのか安いのかを判断することが直感的に難しくなり、購入を見送ることも考えられます。
たとえば、米国の顧客には米ドル、日本の顧客には円というように、普段使用している通貨で価格を表示させましょう。複数の国や地域へ販売する場合は、顧客が表示通貨を手軽に選択できる工夫も求められます。
追加費用をわかりやすく表示する
商品価格のほかに、国際送料、関税、輸入税などがかかる場合は、できるだけ早い段階で顧客に伝えるのがベストです。商品ページでは手頃な価格に見えても、いざチェックアウトに進んだ際に予想外の費用が発生すると、カゴ落ちの原因になります。
為替変動に合わせて価格を定期的に見直す
現地通貨で同じ価格を表示していても、為替レートが変われば、円換算した売上や利益も変化します。このような為替リスクを抑えるためには、価格を定期的に見直すことが必要ですが、あまりに頻繁に価格を変更すると、顧客にとってもわかりにくく、代理店や取引先との調整も増えてしまいます。
そこで、月に 1 回、四半期に 1 回など、あらかじめ価格を確認するタイミングを決めておくと管理しやすくなります。また、為替レートが一定の範囲を超えて動いた場合や、利益率が基準を下回った場合に価格を見直す方法もあります。
現地通貨への換算を自動化する
販売する国や通貨が増えると、それぞれの為替レートを確認して価格を更新する作業が複雑になり、手動で行うことが難しくなります。
Stripe Adaptive Pricing を利用すれば、顧客の公開 IP アドレスを基に適切な表示通貨が判定されるため、商品価格を現地通貨に自動換算することができます。たとえば、日本円で設定した商品価格を米国の顧客には米ドルで表示し、そのまま米ドルで支払ってもらうことが可能になります。
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日本から海外向け販売を行う際の価格設定戦略に関する FAQ
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。