日本国内だけで販売する店舗とは異なり、越境 EC 事業者には、海外での販売や海外からの商品仕入れなど、外貨が関わる取引が発生します。海外市場に販路を広げられるのはとても魅力的ですが、円高や円安といった為替レートの変動には常に注意する必要があります。
また、為替リスクを十分に考慮せずに価格設定や決済方法を決めると、想定していた EC サイトの利益率を確保できなくなる恐れがあります。しかしながら、為替の影響を理解し、価格設計や決済・入金の仕組みを整えておくことで、越境 EC をより安定的に運営することが可能です。
本記事では、為替リスクの基本的な意味をはじめ、円高・円安が事業に与える影響、日本の越境 EC 事業者が押さえておきたい対策についてわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 為替リスクとは、為替レートの変動によって、外貨建ての売上や仕入れコスト、利益などが変わるリスクのことで、代表的なものに「為替取引リスク」「為替換算リスク」「為替経済性リスク」があります。
- 日本の越境 EC 事業者は、海外での販売や海外からの仕入れ、外貨建て決済などを行う際に、円安・円高の影響を受ける可能性があります。
- 一般的に、円高は海外から商品を仕入れる事業者に有利に働きやすく、円安は海外に商品を販売する事業者に有利に働きやすいとされています。
- 越境 EC 事業者は、為替予約、マリー、ヘッジ商品を活用するほか、為替変動を見込んだ価格設定や、海外顧客が現地通貨で価格を確認・決済できるような環境を整えることで、為替リスクに備えやすくなります。
為替リスクとは
為替リスクとは、為替レートの変動によって、外貨建ての売上や仕入れコスト、利益などが変わるリスクのことです。越境 EC では、海外の顧客への商品の販売や、海外からの商品の仕入れなど、外貨が関わる取引が発生します。そのため、為替レートの変動は、事業者の収益に直接影響する可能性があります。
たとえば、日本の事業者が海外から 100 ドルの商品を仕入れる場合、1 ドル 100 円であれば仕入れ額は 10,000 円ですが、1 ドル 150 円になると仕入れ額は 15,000 円になります。販売価格を変えなければ、その分だけ利益率が下がることになります。
一方、海外の顧客に 100 ドルの商品を販売する場合、1 ドル 100 円であれば円換算の売上は 10,000 円ですが、1 ドル 150 円であれば 15,000 円になります。
このように、円高・円安のどちらが有利に働くかは、事業者が海外に販売しているのか、海外から仕入れているのかによって異なります。越境 EC を安定的に運営するためには、為替レートの変動を前提に、販売価格や仕入れ価格、決済通貨、入金通貨を確認しながら事業計画を立てるようにしましょう。
為替リスクの主な種類
為替リスクには、主に為替取引リスク、為替換算リスク、為替経済性リスクの 3 つがあります。
為替取引リスク
為替取引リスクとは、外貨建ての取引において、契約時や注文時の為替レートと、実際に決済・入金される時点の為替レートが変わることで発生するリスクです。
たとえば、日本の事業者が海外から商品を仕入れる場合、注文時には 1 ドル 140 円だったとしても、支払い時に 1 ドル 150 円になっていれば、円換算では仕入れコストが増えます。
一方、海外の顧客に外貨建てで商品を販売する場合も、注文時と入金時のレートが変わることで、最終的な円換算額が想定と異なることがあります。
越境 EC 事業者にとっては、仕入れ、販売、決済、入金のタイミングがずれることで発生しやすい、もっとも身近な為替リスクと言えるでしょう。
為替換算リスク
為替換算リスクとは、外貨建ての資産や負債、売上などを日本円に換算するときに、為替レートの変動によって円換算額が変わるリスクです。
たとえば、海外口座に外貨で売上を保有している場合や、海外拠点・海外子会社の財務情報を日本円に換算する場合、為替レートによって帳簿上の金額が変動することになるため、現在の評価額について把握しておくことが大切です。
為替経済性リスク
為替経済性リスクとは、為替レートの変動によって、事業の価格競争力や収益構造が中長期的に変わるリスクです。
たとえば、円安が続くと、海外から仕入れる商品のコストが高くなり、販売価格を上げなければ利益率が下がる可能性があります。一方で、価格を上げすぎると、競合他社との価格競争に負けてしまいます。
このように、為替経済性リスクは、一時的な損益だけでなく、販売価格の見直しや仕入れ先の変更など、事業戦略全体に影響する可能性があります。
円高・円安が事業に与える影響
為替リスクを理解する上で、円高と円安が事業にどのような影響を与えるのかを押さえる必要があります。一般的に、円高は海外から商品を仕入れる事業者にとって有利に働きやすく、円安は海外に商品を販売する事業者にとって有利に働きやすいとされています。ただし、実際の影響は、仕入れ先、販売先、決済通貨、入金通貨、価格設定により異なります。
円高傾向の場合
円高とは、外国通貨に対して円の価値が高くなることです。たとえば、1 ドル 150 円から 1 ドル 120 円になった場合、同じ 1 ドルの商品を購入するために必要な円の金額は少なくなります。
そのため、海外から商品を仕入れる事業者にとっては、円高によって仕入れコストを抑えやすくなります。一方で、海外の顧客に外貨建てで商品を販売している場合は、円換算した売上が減少し、利益率が下がることがあります。
円安傾向の場合
円安とは、外国通貨に対して円の価値が低くなることです。たとえば、1 ドル 120 円から 1 ドル 150 円になった場合、同じ 1 ドルの商品を購入するために必要な円の金額は多くなります。
そのため、海外から商品を仕入れる事業者にとっては、円安によって仕入れコストが上がりやすくなります。一方で、海外の顧客に外貨建てで商品を販売している場合は、円換算した売上が増え、利益が出やすくなります。
円高と円安の影響は、事業者の取引内容により異なります。海外から仕入れて海外に販売する場合や、複数の通貨が取引に関わる場合は、上記のようなシンプルな計算では判断しにくく、より多くの要素を考慮する必要があります。
日本の越境 EC 市場拡大と為替リスク
日本企業にとって、越境 EC は海外の顧客に商品やサービスを届ける有力な販売チャネルになります。国内市場だけでなく、海外市場にも販路を広げることで、新たな売上機会を得られるようになるでしょう。
経済産業省の令和 6 年度電子商取引に関する市場調査によると、2024 年の日本、米国、中国の 3 か国間における越境 EC 市場規模は、いずれの国の間でも増加しています。特に、中国消費者による日本事業者からの越境 EC 購入額は 2 兆 6,372 億円となっており、日本の商品やサービスに対する海外需要の大きさがうかがえます。
一方で、越境 EC では、海外顧客からの決済、外貨建ての売上、海外への送金、海外からの商品仕入れなど、国内取引とは異なるお金の流れが発生することがあります。そのため、為替レートの変動は、売上や仕入れコスト、利益率に影響する重要な要素になります。
越境 EC 市場が拡大するほど、日本の事業者にとって為替リスクは無視しにくい経営課題になります。海外販売を安定的に続けるためには、為替の影響を理解し、価格設定や決済や入金の仕組みを整えておくことが大切です。
為替リスクの対策方法
為替リスクを完全になくすことは難しいものの、事前に対策を行うことで、為替レートの変動による影響を抑えやすくなります。
為替予約、マリー、ヘッジ商品を活用する
将来の外貨建ての支払いや入金が決まっている場合は、金融機関とあらかじめ為替レートを決めておく為替予約を利用する方法があります。為替予約を活用すると、将来の支払い額や入金額を見通しやすくなります。ただし、事業者が自由に好きなレートを設定できるわけではなく、予約レートは金融機関がその時点の為替レートや取引期間などを基に提示します。
また、外貨建ての売上と支払いがある場合は、同じ通貨で収入と支出を管理することで、円に換算する回数を減らせる場合があります。このように、外貨建ての収入と支出を調整して為替リスクを抑える考え方は、マリーといいます。
金融機関が提供するヘッジ商品を活用して、為替変動による損失に備える方法もあります。ただし、商品によって仕組みやコスト、リスクが異なるため、利用する際は金融機関や専門家に相談し、自社の取引規模や目的に合っているかを確認しておくと安心です。
為替変動を考慮して価格を設定する
越境 EC では、為替レートの変動を考慮した価格設定が大切になります。海外から商品を仕入れている事業者の場合、円安によって仕入れコストが上がると、販売価格を据え置いたままでは利益率が下がる可能性があります。
価格を決める際は、現在の為替レートだけでなく、一定の変動幅を見込んだ上で利益を確保できるかを確認しておくと安心です。また、為替レートが大きく変動した場合に備えて、価格改定のタイミングやルールをあらかじめ決めておくようにしましょう。
利用可能な通貨や決済方法を確認する
越境 EC では、顧客が支払う通貨と、事業者が実際に入金を受ける通貨が異なる場合があります。たとえば、顧客は米ドルで支払っていても、事業者には日本円で入金されるなどです。その場合、どの時点の為替レートが適用されるのか、為替手数料はいくらになるのかを確認しておきましょう。
海外の顧客に商品を販売する場合、EC サイトの多言語化、ユーザーが普段使っている通貨での価格の表示、現地で人気のある決済方法の導入などは欠かせない対策です。
しかし、対応する通貨や決済方法が増えるほど、為替換算、手数料、入金管理は複雑になります。越境 EC では、顧客にとって支払いがしやすく、事業者にとっても売上や入金を管理しやすい決済環境を整えるように意識することが大切です。
Stripe Payments でできること
Stripe Payments は統合型のグローバル決済ソリューションです。成長中のスタートアップから大企業まで、あらゆるビジネスがオンライン、対面、世界各地でスムーズに決済を導入できます。
Stripe Payments の特徴
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日本における為替リスクに関するよくある質問
日本の事業者が抱きやすい為替リスクに関する質問には以下のようなものがあります。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。