顧客の多くは、ニーズに合わせて成長するデジタル体験を高く評価しています。そして、多くの企業でも、サブスクリプションがユーザーとの直接的なチャネルを開き、専門的なコンテンツ、精選された製品、またはプレミアム特典を提供するために有効な手段であることを見出しています。サブスクリプションは安定した収益源を生み出し、企業が顧客と力強い関係を築くのに一役買います。世界を取り巻くサブスクリプション経済は、2028 年までに約 1 兆ドルの市場規模になることが予測されています。
ですが、これまでにサブスクリプションサービスを手がけた経験がない方は、そのプロセスを複雑なものに思われているのではないでしょうか。本記事では、ビジネス選びのコツから決済処理に関するヒントに至るまで、顧客を惹きつけるサブスクリプションベースのウェブサイトを構築する方法について解説します。
本記事の内容
- サブスクリプションサイトとは?
- サブスクリプションサイトを作成するメリット
- サブスクリプションサイトのビジネスを選ぶコツ
- サブスクリプションサイトの構築手順
- サブスクリプションサイトに関する Stripe のサポート
- サブスクリプションサイトの運営における一般的な課題
サブスクリプションサイトとは?
サブスクリプションサイトは、顧客が継続的に料金を支払って限定コンテンツにアクセスしたり、会員特典を得たりすることができるオンラインサービスの一種です。サブスクリプションサイトは、専門的なトピックに焦点を当てた限定の記事やコース、ビデオを共有するコンテンツライブラリの形式をとる場合などがあります。別の例としては、非公開制のディスカッションボード、Q&A セッション、専門家との直接交流などのサービスを提供する、会員制コミュニティなどが挙げられます。それ以外にも、職人が手がける食品の詰め合わせや選りすぐりのブッククラブなど、物品の配送サービスに力を入れているサブスクリプションサイトもあったりします。
サブスクリプションビジネスの登場によって、それまで 1 回限りの取引で終わっていた顧客との関係が継続的なものへと変わっています。この仕組みを利用する企業は、1 冊の電子書籍やビデオセットを販売するのではなく、継続的なサービスや商品を提供し、定期的な支払いサイクルでユーザーから料金を回収します。サブスクリプションサイトを運営している企業の多くは、無料またはサンプルのプランモデルをサブスクリプションに取り入れています。たとえば、ポッドキャスターはポッドキャストの一部を無料で公開し、インタビューの続きを有料会員向けに公開するシステムを採用していたりします。出版ビジネスのケースも同様で、記事の一部は無料で公開していますが、長文のレポートなどは料金を支払った後に閲覧できるようになっています。
経常収益は、企業にとって大事な財務資産です。企業は、売上を毎月新たに追い求める形から、既存顧客のサブスクリプションの更新によって獲得できるようになります。この変化は、事業計画や予算編成に役立つケースがほとんどです。この継続的な取引関係により、登録者は繰り返し価値を享受する一方、企業は一貫したフィードバックを受け取れるため、両者のつながりはますます深まることが期待できます。
サブスクリプションサイトを立ち上げる場合、価格設定、コンテンツ戦略、技術的な設定について慎重に検討する必要があります。この計画が考え抜かれたものであれば、作成されるサブスクリプションサイトは会社のデジタルプレゼンスを支える強力な柱となるでしょう。
サブスクリプションサイトを作成するメリット
サブスクリプションは、1 回限りの売上よりもはるかに安定性の高い経常収益をもたらします。しかし、サブスクリプションサイトを作成するメリットは他にもたくさんあります。
顧客関係:サブスクリプションは、顧客とより深い関係を築くためのツールでもあります。顧客をメンバーとして扱うことで、これまでとは違ったダイナミックさが生まれ、コミュニティの育成、フィードバックの収集、サービスのリアルタイム調整が捗ります。
継続性:1 回限りの売上はそれっきりで取引が完結します。一方のサブスクリプションでは、継続性のある商品やサービスが提供されます。そのため、商品やサービスの価値を毎月強化していくことで、ロイヤルティから得られる利益を次第に大きくしていくことが可能です。
柔軟性:サブスクリプションモデルは、クリエイター、中小企業、大企業など、さまざまな規模の事業者が活用できます。デジタルアートを教える個人事業主であろうと、厳選された体験を提供するグローバルブランドであろうと、サブスクリプションはビジネスオーナーのビジョンに合わせて拡張することが可能です。
サブスクリプションサイトのビジネスを選ぶコツ
運営ビジネスの選択は、サブスクリプションモデルの成功を左右する要因となります。取れ得る選択肢は数多く存在します。フィットネスプラン、音楽教室、料理レッスン、コーディングブートキャンプ、会員制教室などもその例に含まれます。顧客の関心を惹きつけ、リピートを促し、進んでサブスクリプションに投資したくなるような刺激的なビジネスを見出しましょう。この項目では、最適なビジネスを見つけるためのコツをいくつかご紹介します。
専門知識と情熱の度合いを把握する:もしもあなたが熟練したパン職人や教育熱心なソフトウェア開発者であれば、その人物像はサブスクリプションサービスの強力な基盤となります。また、顧客もその信頼性に反応を示すことでしょう。真摯に仕事に向き合えれば、一定のスパンで新鮮なコンテンツを作る意欲も保ちやすくなります。
需要を特定する:意欲がわくビジネスを選ぶことはもちろんですが、潜在的な顧客層がいるかどうかを確認しておくことも重要です。ソーシャルプラットフォームで会話スレッドを調査し、質問が集中しているトピックや、人気の勢いが強い競合他社のサービスをチェックしましょう。
持続可能性を評価する:教材の量が短期コースを終えられるくらい十分であっても、トピックが継続的に発信・更新されないようであれば収益にはつながりません。サブスクリプションは継続的なリリースによって初めて最適に機能するため、何を長期的に提供するか考えておきましょう。
競合相手を視野に入れる:一部のビジネスはすでに飽和状態にあるため、存在感をアピールするには独自の切り口が求められます。また、プレーヤーの少ないビジネスは、全体としてあまり注目のない分野である可能性があるため注意が必要です。
サブスクリプションサイトの構築手順
サブスクリプションサイトを構築するための方法は一つではありませんが、次の大まかな手順で方針を整理できます。
プラットフォームの選択:ウェブサイトをどのように強化するかを決めます。起業家はそれぞれ、WordPress などのコンテンツ管理システム (CMS) を導入したり、登録と支払いを処理するためのメンバーシッププラグインをインストールしたりしています。また、コンテンツ管理、決済処理、メンバーシップ機能が一体となったホスト型ソリューションを好む企業もあります。管理が簡単で、ビジネスプランに合った柔軟なセットアップを見つけましょう。
ユーザー体験の構築:プラットフォームを選択し終えたら、無料コンテンツとプレミアムコンテンツを区分わけします。ホームページには、提供するサービスやメンバーが受け取る価値の説明と、明確な行動喚起を記載・設置してください。登録フローはユーザーに優しいつくりにしましょう。登録手続きが複雑すぎると顧客が遠のく可能性もあるため、フローの設定後は、初めてサイトを訪れる人の視点に立ってテストするようにしてください。
価格とメンバーシップレベルの設定:価格戦略は慎重に検討するようにしましょう。月額制または年額制のプランを導入しているサイトオーナーもいれば、メンバーのレベルによって利用可能なサービスが異なる階層型モデルを導入しているサイトオーナーもおり、その戦略はさまざまです。シンプルなアプローチは不要な混乱を抑えられますが、一方で複数のレベルを設定しておくと、さまざまな層の顧客にサービスを提供できます。まずはベータフェーズや限定的なリリースをロールアウトして価格戦略をテストし、それから集めたフィードバックを基に戦略を調整しましょう。
コンテンツ / 製品パイプラインの構築:サブスクリプションは、定期的に価値を提供する場合にのみ機能します。毎週更新の記事やビデオ、毎月更新のチュートリアルなど、継続したスケジュールで新鮮な製品を配信する形式がまさにその例です。これらの更新をリリースする頻度を決定し、新しいコンテンツやアーカイブされたコンテンツを簡単に見つけられるようにサイトを整理してください。
決済ソリューションの実装:継続支払いを処理するには、安全で信頼できる方法が必要です。継続請求を処理し、カード情報を保存し、サブスクリプションの変更やキャンセルを最小限の手間で管理できるソリューションを探してください。
テスト、改良、立ち上げ:本番環境に移行する前に、登録、支払いの確認、コンテンツへのアクセス、キャンセルなど、サブスクリプションのフローをテストします。また、メール通知とユーザーダッシュボードが想定どおりに機能することを確認してください。少数の友人やアーリーアダプターを招待してサイトの動作を試してもらい、残されている問題を見つけましょう。問題が何もないようであれば、サイトを一般に公開します。特に最初の数週間は、ユーザーからのフィードバックを注意深く観察し、必要に応じて微調整してください。
サブスクリプションのマーケティング:立ち上げが終わったら、サイトを宣伝します。これには、ソーシャルメディアでの発表、関連するポッドキャストへのゲスト出演、メーリングリストの作成などが含まれます。サブスクリプション運営者の中には、その分野のインフルエンサーとコラボしたり、既存の登録者が新しいメンバーを誘致すると報酬がもらえる紹介プログラムを実施している人もいます。どのような方法を選ぶにせよ、何が顧客に響いたかを記録し、マーケティング活動に役立てることが大切です。
サブスクリプションサイトに関する Stripe のサポート
Stripe では、さまざまな企業で利用できる経常収益を処理するためのツールキットをご用意しています。サブスクリプション管理を効率化できる Stripe サービスとして、以下のようなものがあります。
継続請求:Stripe では支払い情報が安全に保存されるため、お客様や登録者は追加作業を行うことなく、スケジュールどおりに請求・支払いを行うことができます。請求サイクルは、月単位、年単位、またはカスタムで指定可能です。
失敗した支払いの自動処理:クレジットカードの有効期限が切れていたり、銀行口座に十分な残高がなかったりと、処理エラーはさまざまな原因で発生します。Stripe Billing には Smart Retries の機能があり、失敗した支払いをローリングスケジュールで自動的に再試行して、支払いの回収率を高めます。
サブスクリプションレベルの調整:Stripe Billing は、サブスクリプションにプランが一つしかない場合でも、複数のレベルが設けられている場合でも、カスタム料金、無料トライアル期間、プロモーション割引に対応できます。
請求書の作成:一部のサブスクリプションサービスでは、顧客にアイテム別の請求書を提供する必要があります。Stripe はそのようなサービスのために、必要なすべての情報が記載された PDF 請求書を作成します。
法令遵守:データプライバシー規制や業界標準は常に変化しています。Stripe は最新の要件に対応しているため、企業の法令遵守も一段と容易になります。
サブスクリプションサイトの運営における一般的な課題
継続支払いによる安定したキャッシュフロー、ロイヤルティの維持、恒常的なエンゲージメントなど、サブスクリプションにメリットがあることは明らかです。しかし、サブスクリプションサイトは、障害発生時の対応計画がなければ中断に陥ることもあります。最後に、サイトが直面する可能性のある課題と、それを克服するためのヒントをご紹介します。
登録者の解約
サブスクリプションベースのビジネスを運営する上で特に扱いが困難なシチュエーションとされているのが、登録者によるメンバーシップの解約です。その要因は個人的な理由であったり、価格設定によるものであったり、ときには、サイトで得られるものをすべて手に入れたことの満足感さえ当てはまります。解約率が高くなると、経常収益の予測を見誤りやすくなるため注意しましょう。
- 対処方法:解約の傾向を追跡して、問題となっている点を特定します。最初の請求サイクル後にキャンセルしていたり、6 カ月を目処にキャンセルしていたりと、ユーザーのパターンを見つけたら、それに応じて戦略を立てます。アカウント登録プロセスの早い段階からヘルプガイドを活用させることで、新規ユーザーはより長く引き留められるようになります。また、キャンセル後に簡単なメールでフィードバックを求めることも検討しましょう。些細なことでも、それ以上登録者が解約しないようにするための知見が得られます。
コンテンツ制作に対する意欲の低下
多くの場合、サブスクリプションには新鮮なコンテンツを安定して供給することが求められます。コンテンツ制作は、最初のうちは盛り上がるかもしれませんが、ペースを誤ると、次第に燃え尽き症候群に陥る可能性があります。
- 対処方法:新しいコンテンツを制作する場合、現実的なカレンダーを設定しましょう。新鮮なコンテンツを毎日投稿してすぐにネタを使い切るのではなく、毎週または隔週にスケジュールを設定するなどして品質を高く保つようにしてください。また、従来のブログ記事をポッドキャストに変えたり、関連資料を電子書籍にバンドルさせるなど、過去のコンテンツを新しい方法で再利用することも検討できます。
支払いに対する不審請求の申し立て
時折、登録者が支払いに関する異議を申し立てることがありますが、これはチャージバックと呼ばれるものです。チャージバックは、サブスクリプションに登録していることを忘れていたり、利用規約を誤解していたりすることで発生します。
- 対処方法:登録時に明確な条件を提示します。また、更新前にリマインダーメールを送信してください (通知を送るのが適切なビジネスモデルの場合)。Stripe では、不審請求の申し立ての処理方法に関するドキュメントも公開しています。多くの場合、顧客にすばやく対応することが誤解の解消につながります。
価格設定
ビジネスによっては、適切な価格帯を見つけることが難しい場合があります。また価格を高く設定しぎると、顧客を不安にさせる可能性もあります。一方で価格を低くしすぎると、サービスの価値が下がり、見込み収益の低下にもつながります。
- 対処方法:オプションを色々試してみてください。一部のオーナーは、低い料金が設定されたクローズドベータやパイロットプログラムから顧客の関心を測り、それを反復しています。また、基盤が確立されてからプレミアムレベルを導入している企業も珍しくありません。ユーザーからのフィードバックには耳を傾けましょう。彼らには機能が追加されればよりお金を払う意思がありますか?料金が高いのを見て登録の最後のステップで引き返していませんか?初日からすべてを正しく行う必要はありませんが、価格戦略は明確な意図を持って設定しましょう。
技術的な問題
計画が最善な内容であっても、技術的な問題はつきものです。決済代行業者が不審なアクティビティにフラグを立てたり、プラグインが競合したり、不適切なタイミングでサイトがダウンしたり、その要因はさまざまです。
- 対処方法:サイトのコンテンツとユーザーデータのバックアップを取ります。プラグイン、テーマ、サードパーティーのシステムの更新に注意しましょう。サイトのビジネスが会社の重要な収益源であるならば、稼働時間保証が優れたホスティングサービスの利用を検討してください。また、問題が発生した場合 (メーリングリストがオフサイトでホストされているケースなど) に、登録者とどのように連絡を取るかについて計画を立てておくのも有効な手段です 。
ユーザーの期待の変化
登録者のニーズは時間の経過とともに変化することがあります。最初は新鮮で魅力的に感じられたものでも、一年後には価値を感じなくなっているかもしれません。この変化に適応できなければ、顧客離れにつながる可能性があります。
- 対処方法:サブスクリプションを、一度設定してそれで終わりの製品と見なすべきではありません。定期的にアンケートを送ってパターン (どのコンテンツが最も多くアクセスされているかなど) を分析し、必要に応じて調整を加えてください。オーナーによっては、ブランドそのものを一新したり、ボーナスイベントや限定商品などの新機能を追加するなどの試みを行う人もいます。また、ロイヤルティを高めるために、コミュニティツールを開発してメンバー同士のつながりを促している企業もあります。ユーザーの声に耳を傾け、定期的に改善することで、両者の関係が維持されるだけでなく、会社がユーザーの意見を尊重していることが示せます。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。