「Software as a Service」の略語である SaaS は、近年 DX 化が進むにつれますます需要が高まっています。ビジネスシーンにおいては企業から企業に対しクラウド上で提供されるソフトウェアサービス、すなわち B2B SaaS に注目が集まっています。
本記事では、B2B SaaS の基礎情報を理解することを目的として、市場規模や B2B SaaS ビジネスの特徴、成功に導くポイント、企業例をまじえて解説します。
目次
- B2B SaaS とは
- B2B SaaS の日本国内市場規模
- B2B SaaS ビジネスの特徴
- B2B SaaS ビジネスを成功に導くポイント
- 国内・海外別: 代表的な B2B SaaS の企業例
- Stripe Billing でできること
B2B SaaS とは
インターネットさえあれば手軽に利用できるソフトウェア、SaaS は、サブスクリプション形式 (以下、サブスク) で成り立っているサービスがほとんどです。従来は、買い切り型として一度購入したパッケージソフトをパソコンにインストールしたうえで、起動して利用する形態が主流でした。しかし、SaaS の場合ソフトウェアのインストールは不要で、ブラウザからそのままアクセス、ログインするだけで利用することができます。
B2B SaaS (または BtoB SaaS) とは、SaaS の中でもビジネスでの利用を目的とし、事業者に向けて提供されているソフトウェアサービスとなります。
なお、「SaaS」は一般的には日本語で「サース」といいますが「サーズ」と呼ばれることもあります。
B2C SaaS との違い
B2B が企業間で行われる取引であるのに対し、B2C は企業が一般の消費者を対象とする取引です。したがって、B2C SaaS で提供されるサービスは個人向けとなっており、契約も企業単位ではなく個人の意思決定によって行われます。
一方、B2B SaaS は企業が顧客となることから、1 人のユーザーが決裁者となるケースはほとんどなく、通常は社内の上層部との話し合いを経て、サービスを契約するかどうかの決断が下されます。
このように、ユーザーが必要と思えばすぐに契約して使用を開始できる B2C SaaS とは異なり、B2B SaaS の場合、組織内での段階的なプロセスを踏まなければならず、実際に使用開始に至るまでには比較的時間がかかる傾向にあります。たとえば SaaS を検討するにあたって、担当社員は複数の企業が提供する SaaS のコスト比較や費用対効果の分析に加え、最終的な決裁者とのやり取りについても、入念に行う必要があります。
B2B SaaS のサービス例
身近な B2B SaaS の代表例には、以下のようなものが挙げられます。
- タスク・プロジェクト管理ツール
- スケジュール・カレンダー管理ツール
- 社内専用チャット・SNS ツール
- Web 会議ツール
- 会計ソフト
- 名刺作成・管理システム
- CRM ツールなど
このほかにも、B2B SaaS で扱われる分野は多岐に渡りますが、これらのサービスは、各社員が日々仕事をこなす上で必要不可欠といっても過言ではないでしょう。
B2B SaaS の日本国内市場規模
富士キメラ総研の 2024 年の調査データによると、企業向けクラウドソフトウェア (SaaS だけでなく PaaS [パース: Platform as a Service] を含む) の日本国内市場規模は以下のとおりで、前年と比べるとわかるように、いずれの分野においても年々成長しています。
- 労務管理: 335 億円 (前年比: 139%)
- EPM (企業パフォーマンス管理): 237 億円 (前年比: 131.7%)
- Web データベース・ノーコード開発: 200 億円 (前年比: 124.2%)
また、2028 年には市場規模が 3 兆 6,638 億円にも拡大することが見込まれており、2023 年比では 45.8% 増しの予測となります。中でも、労務管理システムの市場規模については、今日においてバックオフィス業務の DX 化が注目されていることから、2028 年には 940 億円 (2023 年比で 3.9 倍) にものぼると予想されています。
B2B SaaS ビジネスの特徴
B2B SaaS には、買い切り型とは異なる以下のような特徴がいくつかあります。
収益構造が従来とは異なる
B2B SaaS の場合は月単位の従量課金型 (リカーリング) が基本です。つまり、サービスを継続的に利用するサブスク形式でありながら、アップセルやクロスセルによって毎月のサブスクの売上が上下する仕組みとなっています。
そのため、B2B SaaS を運営する事業者は、買い切り型のように一度限りの取引ではなく、継続的な収益を見込むことができます。その一方で B2B SaaS では、買い切り型のように一度で大きな収益を得られるというわけではないので、損益分岐点が数か月後となるケースもあります。
顧客維持が成功の鍵
上述したように、B2B SaaS は継続的な課金によって収益を得るビジネスモデルとなります。つまり、もし顧客にサービスを解約されてしまうと、収益に大きな影を落とすことになるため、新規顧客の獲得だけでなく、いかにして顧客との長期的視野を踏まえた良好な関係を維持できるかが、重要ポイントとなります。
したがって、B2B SaaS を提供する事業者には、サービスを継続利用してもらうための工夫が求められるほか、中長期的な収益モデルを設計および構築することが何よりも大切といえるでしょう。
収集可能なデータが多い
顧客とのより良い関係を築くためには、取引上のデータを活用した顧客分析が欠かせません。B2B SaaS の場合、買い切り型とは異なり、取引が継続的に行われるため、顧客とのやり取りによって得られるデータの量は、買い切り型に比べると豊富な点がメリットです。
たとえば、サービスの活用頻度や利用状況のほか、サービスの購買頻度など、広範囲に渡るデータを収集し分析すれば、事業者はより効果的なマーケティング戦略を講じることが可能になるでしょう。また、データ分析によって改善すべき点が見つかった場合、顧客にとってより価値のあるサービスを再設計、開発したりと、新たな方向性を導き出すことにもつながります。
B2B SaaS ビジネスを成功に導くポイント
B2B SaaS ビジネスの特徴を理解したところで、ビジネスを成功させるためのポイントについて見ていきましょう。
継続率とユーザー数
既存ユーザーの継続率とユーザー数は B2B SaaS においてとても重要です。そのため、マーケティングや営業、カスタマーサポートなどの各部署が一丸となって、顧客ニーズを見据えた各部署ごとの戦略を実施し、カスタマーエンゲージメントの強化を図る必要があります。
たとえば、特定のプロダクトに対して解約率が高い傾向にある場合は、解約の原因を明らかにし、解約率を下げる対策を考案、実行に移せる組織体制の構築が求められます。
また、B2B SaaS を成長させるには、既存ユーザーからの売上維持率のみに注力するのでなく、積極的な新規顧客の獲得も大切です。したがって、自社サービスに興味のある見込み客に対しては、彼らのニーズを十分に把握したうえで、よりパーソナライズされたアプローチをするとよいかもしれません。
付加価値の向上
独自の収益構造によって成り立つ B2B SaaS 事業で、収益性を最大化させるには、自社ならではの付加価値の向上が不可欠です。そのためには、競合他社との品質や価格への差別化を図り、B2B SaaS 市場の動向を常に注視する必要があります。
また、比較的安価なプランやプロダクトがよく購入されている場合、効果的な追加収入を見込めるアップセル・クロスセル施策も検討するとよいでしょう。
これに加え、LTV の最大化を目指すには、積極的なコミュニケーションを通じて顧客が抱える期待や不満に耳を傾け、適切な解決策を提供するなど、顧客が自社サービスに価値を見出せるような手厚いサポートを提供することも大切です。
顧客目線のサービス提供
どんなビジネスでも同じことがいえるかもしれませんが、B2B SaaS では顧客のニーズに寄り添った柔軟なサービスの提供が、成長を続ける市場での競争力向上において欠かせません。
特に、収益率が比較的高い主要顧客や、改善による効果が見込める課題を持つ顧客からのフィードバックは有益性が高いことから、これらに対する施策を積極的に講じることで、よりよいサービスを提供できるようになるでしょう。
早めのコスト回収
顧客の獲得にかかるコストのことを略して CAC といいます。B2B SaaS 事業を展開するうえで、この CAC を早期に回収することは、成功への大きなステップといえます。これは、CAC の回収期間にどれくらいの時間を要するかが、事業運営上のキャッシュフローに大きな影響を及ぼすためです。したがって、回収期間が予定していた達成時期よりも長い場合は、コストの回収を早める改善策を見出す必要があります。
なお、理想的な回収期間は 1 年以内とされており、1 年を超えると投資効果率が下がると一般的に考えられています。
顧客データの活用
顧客データを有効かつ最大限に活かすことができれば、顧客ニーズを的確に把握でき、上述した顧客目線での効果的なサービス展開が可能になります。そのためには、まず顧客データの収集にはじまり、整理と分析を適切に行うことが大切です。
なお、収集した顧客データについては、1 つのシステムで一元的に集約・管理すれば、複数の部署間で、最新かつ正確な情報をリアルタイムで共有することが可能です。したがって、このような管理システムを導入し、必要な際にいつでもアクセスできる体制を整えておくことで、異なる部署同士でも、円滑な連携業務を実現できるでしょう。
国内・海外別の B2B SaaS 企業例
ここでは、日本国内と海外に分けた B2B SaaS の企業例を紹介します。
日本の企業例
Sansan (サンサン)
法人向けクラウド名刺管理サービスを提供する Sansan は、日本特有の名刺文化を深く理解し、オンライン名刺のような事業者ニーズにも柔軟に対応する、代表的な B2B SaaS 企業です。また、名刺だけに特化しているわけではなく、企業情報や営業履歴、商談レポートなども一括で管理できるため、会社全体で取引先データを共有しやすい仕組みとなっています。
名刺は、紙のままで保管をすると、ファイリング作業や整理整頓が煩雑になりがちです。さらに、紛失や破損リスクがあるほか、一社員だけに情報が偏ってしまうと潜在顧客の発掘の妨げになる可能性もあります。しかし、システム上に名刺をアップロードすれば、社内アセットとしてフル活用できるため、効率的な新規顧客の獲得につながります。
データ X (データエックス)
データ X (旧: フロムスクラッチ) も日本国内の代表的な B2B SaaS 企業の 1 つです。データ X では、事業者向けのマーケティングクラウドシステム「b→dash (ビーダッシュ)」を提供しており、顧客となる企業の効果的なデータマーケティングを後押ししています。
b→dash にはデータマーケティングに必要なあらゆる機能が備わっているため、データの活用状況に応じて、機能を拡張して利用することができます。また、エンジニアへの作業負担を軽減できるようノーコード開発にも対応していることから、高度なスキルを必要とせずに誰でもデータ構築が可能となっています。これにより、データの取込・連携・加工・統合・抽出といった一連の作業が無駄なくスピーディーに行えるようになります。
アストロラボ
アストロラボでは、「備品管理クラウド」、「契約書クラウド」、「消耗品管理クラウド」といったクラウド上の情報管理に対応したさまざまな B2B SaaS を展開しています。ここでは、備品管理クラウドを一例として見てみましょう。
備品管理クラウドでは、企業が抱える備品に関する悩みを解決すべく、1 つのシステム上であらゆる備品管理業務をまとめて行うことができます。たとえば、具体的な企業の悩みとして「棚卸に時間がかかる」あるいは「貸出申請のアイテムが見つからない」などが挙げられますが、備品管理クラウドなら以下のようにして解決へと導くことができます (下記は同社備品管理クラウドの一部機能となり、ほかにも多様な機能が備えられています)。
棚卸に時間がかかる: どの利用者または部署に何の棚卸しを依頼するかを決め、担当者や担当部署に自動メールを送信し、棚卸し作業を分担します。写真付きの報告依頼も可能なため、虚偽報告の防止にもつながります。
貸出申請のアイテムが見つからない: 貸出を希望する本人がシステム上でアイテムの有無を確認したうえで申請する手順となるため、申請を受け付ける側は承認だけと貸出にかかるフローがスムーズになります。また、備品の設置場所も明記されているため、アイテムを探し出す時間を削減でき、紛失リスクも防ぐことができます。
海外の企業例
Google (グーグル)
検索エンジンとして知名度が高く、世界中で使用されている Google は、複数の B2B SaaS を展開しています。たとえば、表計算ソフトの Google Sheet や文書作成ソフトの Google Docs はその代表格といえます。
また、Google ではビジネス向けクラウドベースのグループウェア、Google Workplace を提供しています。これにより、Gmail や Meet、上述した Docs や Sheet など Google のあらゆるツールが統合され、場所や利用するデバイスに関係なくシームレスで生産性の高いチームとの連携作業や情報共有が行えるようになっています。
Slack (スラック)
Slack はビジネス上のコミュニケーションツールとして、多くの企業によって取り入れられています。
Slack の場合、チャット感覚でありながらも、プログラムコードを共有できるなどの優れた情報共有機能が注目されています。また、Google Calendar や Zoom などの外部ツールとの連携が可能で、外部ツールで分散されている情報を Slack 上で一箇所にまとめられるため、効率性の高いスムーズなコミュニケーションが可能です。
Stripe Billing でできること
Stripe Billing は請求および顧客管理のためのプロダクトです。シンプルな継続請求から従量課金、商談による契約への対応まで、貴社のニーズに合わせた請求管理や顧客管理を実現します。コーディング不要で、グローバルな継続課金をわずか数分で開始できます。API を活用した独自システムの構築も可能です。
Stripe Billing の特徴
柔軟な料金体系: 従量課金、段階制料金、定額料金および超過料金など、あらゆる料金体系モデルを用意して、ユーザーのニーズにすばやく対応。クーポン、無料トライアル、日割り計算、その他の拡張機能も含まれます。
グローバル展開: 顧客が希望する決済手段に対応し、購入完了率を向上。Stripe は 100 を超える地域固有の決済手段と 130 種類以上の通貨をサポートしています。
売上を伸ばし解約を防止: Smart Retries と回収ワークフローの自動化で、支払い回収を効率化し、意図しない解約を減らします。Stripe のリカバリツールは、2024 年に 65 億ドル以上の支払い回収をサポートしました。
業務効率の向上: Stripe のモジュール型税務管理、収益レポート、データツールを活用して複数の収益管理システムを 1 カ所に統合。外部のソフトウェアとも簡単に連携できます。
Stripe Billing について詳しくはこちらをご覧ください。今すぐ開始する場合はこちら。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。