運転資金は企業が流動性を維持し、成長に資金を投じ、入金と出金とのタイミング差を乗り切る方法に影響を及ぼします。オーストラリア経済の特徴はコストの増加、支払いの遅延、季節性の高い需要にありますが、運転資金についての理解を深めることで競争優位が高まります。
ここでは、運転資金とは何か、その計算方法、オーストラリアの様々な企業が運転資金についてどのようなことを経験しているかを解説します。また、企業がキャッシュフローをスムースかつ持続可能にするための戦略もご紹介します。
目次
- 運転資金とは
- オーストラリア企業は運転資金の必要性をどのように計算しているのか
- 運転資金がオーストラリアの企業にとって重要である理由
- オーストラリアの各業界において運転資金の必要量に影響する要因
- オーストラリア企業が健全な運転資金を維持するうえで抱える問題
- オーストラリアにおける運転資金管理支える資金調達手段の仕組み
- 運転資金を増やすために事業運営を最適化する方法
- Stripe Capital でできること
運転資金とは
運転資金とは、仕入れ先への支払い、給与の支払い、在庫の確保、予期せぬ少額のコストへの充当などに利用できるように企業が確保している資金のことです。
運転資金はキャッシュフローと混同されることがありますが、それぞれ異なる視点から経営状態を把握するための概念です。運転資金は、いま現在利用可能なリソースが十分にあるかを示すスナップショットのようなものです。それに対してキャッシュフローは一定期間の資金の出入りを追跡するもので、支出を賄うのに十分なスピードでキャッシュが流入しているかを判断する指標となります。
たとえ収益性の高い企業でも、顧客からの支払いが遅かったり在庫の回転が遅くなったりすれば流動性の問題を抱えることがあります。したがって企業は流動比率 (流動資産を流動負債で割って算出) のような指標に注目し、短期の支払い義務を円滑に果たす方法を模索しています。流動比率が 1.0 を下回ると資金繰りが圧迫されることを示し、どこでキャッシュが滞っているかを詳しく調べるきっかけとなります。
オーストラリア企業は運転資金の必要性をどのように計算しているのか
運転資金のニーズの計算方法は次の通りです: 流動資産 – 流動負債。流動資産とは1年以内に現金化できる資産のことで、銀行口座にある資金、未回収の売掛金、在庫などが該当します。流動負債とは同じく 1 年以内に支払うべき請求書や短期の負債のことです。
企業はキャッシュコンバージョンサイクルも策定しています。これは仕入れ先への支払いから在庫の保持・生産、そして最終的な顧客への請求と代金の回収までを追跡するものです。このサイクルは例えば次のようなものです。30 日後に仕入れ先に支払い、60 日で在庫を販売し、45 日後に代金を回収する。ここからわかるのは、手元を離れた現金が自分の銀行口座に戻ってくるまでどのくらいの時間がかかるか、ということです。
多くの企業は早期に流動性の停滞を察知できるように、短期のキャッシュフローモデルを用いたローリング方式で運転資金の予測を行っています。2025 年に倒産した小規模事業者の 67% は適切なキャッシュフロー予測を行っていませんでした。つまり資金ニーズを事前に把握できていなかったために最終的に経営破綻につながった可能性が高いといえます。
運転資金がオーストラリアの企業にとって重要である理由
運転資金は、収支のタイミングが一致しないときに、オーストラリア企業の経営を安定させる役割を果たします。
その仕組みは以下のとおりです。
事業の継続性を維持する: 運転資金は仕入代金、人件費、諸経費などの支出が発生する時期と顧客からの入金とのタイムラグを埋める役割を果たします。収益を得るためのコストが先行し入金が後になる場合でも、事業が停滞しないようにします。
経済的な変動から事業を守る: インフレによる原材料費の上昇、高金利に伴う資金調達コストの増大は経営を圧迫します。潤沢な運転資金はそうした経済的衝撃に対する緩衝材となります。それにより企業は外的条件が変化するたびに混乱することなくうまく調整することができます。
支払い遅延による負担をカバーする: オーストラリアに根づく支払い遅延の慣習は企業の流動性に対して大きな負担となっています。小規模の仕入業者に 30 日以内に支払を行う大企業は 10 社中約 3 社にとどまり、中には支払期限を 120 日まで延ばす企業もあります。そのため、利益を上げている企業であっても、未回収の売掛金が積み上がることで資金不足に陥るリスクがあるのです。
新たな機会を生む: 潤沢な運転資金がある企業は、繁忙期の需要を見越した先行仕入れ、初期費用を伴う新規契約の受注、さらに最適なタイミングで設備投資や生産能力の増強が可能になります。オーストラリア市場では 2024 年に小規模企業のほぼ 80% がキャッシュフローの困難を経験しており、こうした機動力を持つことは極めて重要です。
オーストラリアの各業界において運転資金の必要量に影響する要因
運転資金の必要量はオーストラリアの業界によって差があります。それは経営モデルごとに資金サイクルが異なるからです。
ここでは業界別に見ていきます。
小売・卸売業: この業界の企業は需要を見越して事前に在庫を確保する必要があるため、在庫の保有により運転資金が圧迫されます。クリスマスや新学期といった季節的な需要のピーク時には仕入れ額が増大し、商品の回転が鈍ると予定より長く資金が棚に押し込められる恐れがあります。
製造業・建設業: この業界ではプロジェクトの期間が長く初期費用も高額になります。入金より早い段階で多額の出金が発生します。建設業者や製造業者は顧客からの入金に先だって資材費、労務費、外注費を常時支払う必要があり、それが運転資金の必要量を押し上げる要因となっています。
専門職サービスおよび代理店: この業界では在庫を確保する必要がほとんどなく、運転資金が逼迫する主な要因は売掛金の管理にあります。プロジェクト単位の請求や、支払いサイクルの長い法人顧客との取引はキャッシュフローを圧迫する要因となります。特に、売掛金の入金時期にかかわらず、給与の支払いは毎週または各州で発生するため、そのギャップが大きな負担となります。
季節産業 (観光業、農業など): この業界ではキャッシュフローが年間を通じて大きく変動します。繁忙期に備えて多額の初期費用が必要になる一方で、長期にわたる閑散期を乗り越えるために手元資金の蓄えが必要になります。観光業者や農場の場合、まったく収入がないまま、人件費、資材費、生産コストを何カ月にもわたって投じ続けなければならない場合もあります。
鉱工業: この業界の企業は長期にわたる採掘と輸送のサイクルに対処します。そのため生産コストがキャッシュに転換される時期が非常に遅くなります。鉱業サプライチェーンに関わるサービス事業者は大手企業からの支払いを長期間待たなければならないことが多く、運転資金のニーズが高まります。
支払いが遅い大口顧客に依存する事業: どの業種でも、大手企業の仕入れ先業者は支払いサイクルが時に 120 日を超えるほど遅くなり、そのため財政面の負担を強いられています。つまり、中小企業のほうがその収益率が示す以上の運転資金を必要しているということです。
オーストラリア企業が健全な運転資金を維持するうえで抱える問題
オーストラリアでは経営状態の良い企業であっても運転資金が予想以上の速さで逼迫し、その厳しさを痛感することがあります。
ここではキャッシュフローのタイミングにズレを生じさせる外的要因と日常業務について詳しく見ていきます。
顧客からの支払いの遅延: 支払い遅延の慣習は流動性に深刻な影響を与えています。実際、多くの小規模企業は 30 日という支払い条件を大幅に過ぎても入金を待ち続けなければならないという状況にあります。
コストの上昇と経済環境の変動: インフレによる原材料費の高騰に加え、高金利が資金調達コストを押し上げています。これは資金調達コストが上昇する一方で、手元資金がインフレ発生前より早く費消されるということです。
従来型融資へのアクセスの限界: 多くの中小企業は担保不足や信用実績の短さがネックとなり、銀行融資の審査を通過することに苦心しています。その結果生じる資金不足を補うために、会社経営者は個人の預金を投入したり事業継続のために自身の給与の支払いを先延ばしにしたりしています。
社内の盲点と精度の低い予測: 請求漏れや売掛金の回収の遅れ、在庫の過剰発注、必要以上に早い支払いなどにより、手元資金は少しずつ減っていきます。継続的なキャッシュフロー予測を行っていない企業は、問題が深刻化して初めて事態に気づくということが少なくありません。
オーストラリアにおける運転資金管理支える資金調達手段の仕組み
オーストラリアの企業は新旧様々な資金調達手段を組み合わせて活用しています。それにより手元資金の不足を補填したり、先行投資に対応したり、また現金収支のサイクルを円滑に回しています。
企業が活用できる資金調達手段としては次のものがあります。
ラインオブクレジット (当座貸越): この方法では、企業は必要に応じて限度額まで資金を引き出し、売上入金などがあったときに返済します。入出金のタイミングのずれを埋めるのに適していますが、利用の可否は高い信用実績や担保の有無に左右されます。
短期事業資金融資および貿易金融: タームローンやサプライヤー向けの資金調達手段は、企業が売上の計上に先駆けて在庫や原材料の代金を支払えるようにするものです。輸入業者や製造業者はこの種の融資を頻繁に利用して、仕入から収益化まで期間をカバーしています。
請求書ファイナンス: 企業は未回収の請求書を担保にした借り入れや売却を行うことで、売掛金をほぼ即座に現金化できます。これは、支払条件が一般に 30 ~ 90 日とされている業界で特に有効で、資金回収サイクルの停滞で健全な企業の経営が圧迫されるのを防ぐ役割を果たします。
仕入先との支払い条件および商取引信用: 支払い期限の延期を交渉することには、実質的に組み込みの融資のような効果があります。支払期限を 1 ~ 2 週間程度延長するだけでも、企業は正式な負債を抱えることなく運転資金の圧迫を緩和することができます。
政府および輸出支援プログラム: オーストラリア輸出ファイナンス (EFA) は、企業が海外からの受注に対応できるように運転資金の融資や債務保証を提供しています。これらのプログラムは、製造コストの先行支払いが多額にのぼる必要な企業にとって特に重要な役割を果たしています。
フィンテックおよびレベニュー・ベースド (収益還元型) ファイナンス: Stripe Capital のようなツールは、従来型の融資が受けられない、または従来の借入を望まない企業にとって新たな選択肢となります。返済額は日々の売上の一定割合に連動するため、事業の浮沈に合わせた柔軟なキャッシュフロー管理が可能になります。
運転資金を増やすために事業運営を最適化する方法
一般に運転資金の状況が最も速やかに改善するのは、キャッシュが停滞している箇所を特定して対処したときです。
ここでは事業全体で資金をより迅速に動かす方法を見ていきます。
リアルタイムのキャッシュフローを可視化する: キャッシュフローのローリング予測を毎週更新すると、チームはいつ資金不足や黒字が発生するかを事前に予測できるようになります。このように見通しを立てることで、実際に資金繰りが悪化する前に支出を抑え、早期に請求を行い、融資を取り付けたりすることができます。
意図的な在庫管理: 過剰な在庫はキャッシュフローを停滞させます。需要の見通しを厳格に行い、規模は小さくとも多くの注文を受け、出荷が遅い商品を一掃することで、在庫を実際の販売パターンに沿ったものにできます。生鮮品を扱う業界では、先入れ先出し法 (FIFO) などで運転資金の費消を防ぐことができます。
売掛金回収の迅速化: 迅速で正確な請求書の発行は基本ですが、そのフォローアップも重要です。継続的に督促を行い、わかりやすい支払い条件を設け、様々な支払い方法を提供すること――特に顧客が即座に支払えるオンライン決済――は、商品やサービスの提供から顧客からの銀行振込までの時間を短縮できます。
買掛金を賢く活用する: 支払いを急ぎすぎると流動性が低下しますが、常習的な支払遅延は取引先との関係を損ないます。支払い期限を最大限活用し、主要な仕入れ先と支払い延期の交渉を行ったり、メリットが大きい場合には早期払いの割引を利用したりするといった対応は、いずれも信頼を傷つけることなく運転資金を強化する鍵となります。
キャッシュバッファーの維持: 少額であっても手元資金があれば高コストの最終手段となる融資に頼る必要性が低下し、予期せぬ支出や入金の遅れに対処する余裕ができます。
融資を戦略的に活用する: 当座貸越や収益還元型融資のような短期融資は、受動的ではなく積極的に活用すれば効果があります。融資計画を立てれば、支出、回収、再投資のサイクルの健全性を高めることができます
Stripe Capital でできること
Stripe Capital は、事業の成長に必要な資金へのアクセスを支援する収益連動型の資金調達ソリューションを提供します。
Capital でできることは次のとおりです。
成長資金への迅速なアクセス: 従来の銀行融資のような時間のかかる申し込みプロセスや担保要件なしに、融資またはマーチャントキャッシュアドバンスの承認を数分で受けられます。
収益に連動した融資: Capital の収益連動型モデルでは、毎日の売上の一定割合を支払うため、返済額は事業の実績に応じて増減します。売上からの支払額が各返済期間の最低支払額に満たない場合、Capital は期間終了時に不足分を銀行口座から自動的に引き落とします。
安心して事業を拡大: マーケティングキャンペーン、新規採用、在庫拡充などの成長施策に資金を充当できます。持分を希薄化させたり、個人資産を担保に差し入れたりする必要はありません。
Stripe の専門知識を活用: Capital は、Stripe の深い専門知識と決済データに基づくカスタム資金調達ソリューションを提供します。
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