2029 年 4 月以降、電子請求書はイギリスの事業者に対して義務付けられます。それ以降、付加価値税 (VAT) に登録しているすべての事業者は、構造化された電子形式で VAT 請求書を発行する必要があります。
以下では、イギリスの電子請求書義務化で求められる内容、EU 法との整合性、2026 年にイギリスの事業者に電子請求書の義務があるかどうか、そして技術仕様の公表に先立って準備する方法について説明します。
主なポイント
イギリスでは 2029 年 4 月に、すべての VAT 請求書で電子請求書が義務化されます。VAT 登録済み事業者は、データに基づく請求書を発行できるソフトウェアに切り替える必要があります。
イギリス政府は現在も実施に向けたロードマップを策定中です。全体計画は 2026 年予算案で公表される予定です。
2029 年に導入される電子請求書モデルは分散型で、欧州全体で使用されている Peppol の構造に似たものになります。これによりイギリスは、電子請求書の制度を導入予定またはすでに導入している多くの EU 諸国と足並みをそろえることになります。
イギリスの電子請求書義務化の概要
イギリスの電子請求書義務化では、すべての VAT 登録済み事業者に対し、2029 年 4 月 1 日から所定の構造に従った電子請求書の発行が義務付けられます。
電子請求書は、人の介在なしに 2 つの財務システム間で請求書情報を直接やり取りします。データはそのまま買い手の会計ソフトウェアに流れ込みます。PDF、Word 文書、紙の請求書、JPEG は、人または別のソフトウェアがデータを抽出して再入力する必要があるため、電子請求書には該当しません。
2026 年に一部のイギリスの事業者に対して電子請求書が義務付けられるケース
現在のイギリスの規則では、公共部門と民間部門の取引が区別されています。電子請求書に関する法的要件が適用されるかどうかは、事業者が行う取引の種類によって異なります。
以下の事業者は、イギリスですでに電子請求書への対応が義務付けられています。
NHS (国民保健サービス) に納入する事業者は、Peppol ネットワークを通じて電子請求書を発行する必要があります。これは、NHS と取引するための条件です。
2023 年調達法に基づき、同法の対象となるすべての公共機関は、欧州規格 (EN) 16931 に準拠した電子請求書を受信して処理できなければなりません。サプライヤーにこの形式での請求書提出義務はありませんが、中央政府、地方自治体、その他の対象となる公共部門組織では、その受信インフラが整備されています。
イギリスの VAT 登録済み事業者に対する電子請求書義務化の開始時期
イギリスでは、2029 年 4 月 1 日から、すべての VAT 請求書について電子請求書が義務化されます。その日以降、イギリスのすべての VAT 登録済み事業者は、指定された電子形式で VAT 請求書を発行する必要があります。2025 年 11 月に公表された 2025 年予算案では、2029 年 4 月の義務化が確認されるとともに、政府が推奨する分散型モデルの概要を示した協議結果への回答も公開されました。
政府は、2026 年予算案で電子請求書の実装に関する詳細なロードマップを公表する予定です。これには、技術標準、システム要件、段階的な展開の詳細が含まれます。2026 年から 2028 年にかけては、法的および技術的仕様の策定、関係者との協議、テストとパイロットの段階が見込まれます。その後、義務化は 2029 年 4 月に全面施行されます。
イギリスの 2029 年の電子請求書義務化の要件
義務化の完全な技術仕様は 2026 年予算案まで公表されないため、一部の詳細はまだ流動的です。ただし、政府の協議結果への回答には、計画を立てるうえで十分な情報が含まれています。
形式
VAT 請求書は、英国歳入関税庁 (HMRC) の請求書に関するルールを満たす、構造化された機械可読な電子形式で発行する必要があります。PDF や Word 文書は対象になりません。政府は相互運用性標準の策定にも取り組むとしています。つまり、イギリスのすべての VAT 登録済み事業者は、異なる種類のソフトウェアを使用していても、電子請求書をやり取りできるようになる見込みです。
モデル
イギリスは、電子請求書について分散型モデルを採用しています。請求書は、買い手に届く前に検証のため政府のプラットフォームを経由することはありません。その代わり、電子請求書は Peppol の分散型 4 コーナーモデルに近い仕組みになります。少なくとも義務化の初期段階では、HMRC は請求書交換のプロセスから完全に外れます。
適用範囲
この義務化は、VAT 登録済み事業者間の VAT 請求書を対象としています。境界事例 (例: セルフビリング契約、リバースチャージ VAT の取引) については引き続き検討が進められていますが、電子請求書がすでに導入されている管轄区域では、こうしたケースに関する懸念に対処していることを HMRC は確認しています。
コスト
電子請求書への移行には、ソフトウェアの購入、システムのアップグレード、スタッフのトレーニングが必要です。協議では、関係者からコストに関する懸念が示されましたが、電子請求書の処理コストは、紙の請求書の平均処理コストのわずか 38% にすぎないと推定されています。政府は、実装ロードマップに小規模事業者への支援を盛り込み、低コストの電子請求書ソリューションの開発を後押しすることを約束しています。ただし、その支援が実際にどのような内容になるかは、まだ明らかにされていません。
イギリスの電子請求書のアプローチと EU 規則の比較
イギリスは電子請求書制度を独自に構築していますが、技術的な基盤には EU と重なる部分があります。事業のサプライチェーンの一部が欧州にまたがる場合は、EU 規則の以下の点を理解しておく必要があります。
越境取引に関する義務化: EU の VAT in the Digital Age (ViDA) パッケージでは、2030 年 7 月 1 日から EU 域内の越境 B2B 取引で電子請求書が義務付けられます。これは、イギリスの義務化開始から約 15 ヵ月後に当たります。
国内の義務化: 各加盟国は、EU 全体の期限に先んじて対応を進めています。フランス、ドイツ、ポーランド、ベルギーでは、国内の電子請求書義務化がすでに開始されているか、高度な実装段階にあります。イタリアでは 2019 年から電子請求書が義務化されており、その結果、1 年間で 127 億ユーロの VAT コンプライアンス向上があったと報告されています。
2029 年までにイギリスの制度への対応を進めている場合、多くの ViDA の越境要件もすでに満たしている可能性があります。ViDA に基づくイギリスと EU 間の取引に関する具体的な義務については、今後ルールの整備が進むにつれて引き続き個別に注意を払う必要がありますが、イギリス政府は電子請求書の枠組みを EU の ViDA の構造と相互運用できるものにする方針を示しています。たとえばイギリスは、公共調達向けに、EU の電子請求書の基盤となっているものと同じデータ標準である EN 16931 をすでに採用しています。そのため、規制の枠組みは別でも、電子請求書は両制度間で互換性を持つことになります。
イギリスの事業者による 2029 年以前の電子請求書義務化への準備方法
慌ただしい移行を避けるためにも、電子請求書義務化に向けた準備は早めに始めるべきです。準備作業は 2 つの段階に分かれます。技術仕様が公表される前の今できることと、2026 年予算案が発表された後に必要になることです。
2026 年予算案の発表前
現在の請求プロセスの監査: 請求書の生成方法、送信、受領、保管の方法を確認します。印刷、スキャン、手作業でのデータ入力、または PDF のメール送信を含む工程は、変更が必要になります。
会計ソフトウェアのロードマップを確認: 主要な会計プラットフォームは、構造化された電子請求書の出力と受領に対応する必要があります。プロバイダーに、何を開発しているのか、いつ利用可能になるのかを確認してください。
サプライチェーンへの影響の把握: この義務化は、発行側と受領側の両方に影響します。サプライヤーが 2029 年までに電子請求書に対応できていない場合、それは自社にとっても問題になりかねません。どのサプライヤーで対応が難しそうかを前もって把握しておき、それを踏まえて計画を立てる時間を確保してください。
2026 年予算案の発表後
ソフトウェアオプションの評価: 確定した標準を基に、電子請求書ソリューションを厳密に比較してください。既存の会計プラットフォームでネイティブに対応できる場合もあれば、専用のアクセスポイントプロバイダーが必要になる場合もあります。
システムの更新とテスト: 2029 年の期限までに、既存のプロセスと並行して新しい電子請求書の運用を試せるだけの十分な時間を確保してください。
財務チームのトレーニング: PDF の請求書から構造化データへの移行により、請求書の作成、送信、照会、保管の方法が変わります。移行の理由と、例外やエラーへの対処方法をスタッフが理解できるようになります。
Stripe Invoicing でできること
Stripe Invoicing は、請求書の作成から入金回収まで、売掛金プロセス (AR) をシンプルにします。単発請求でも継続課金でも、Stripe はビジネスが支払いを受けるまでの時間を短縮し、業務の効率化をサポートします。
AR 処理の自動化: コーディング不要で、プロフェッショナルな請求書を簡単に作成、カスタマイズ、送信できます。Stripe は請求書のステータスを自動で追跡し、支払いリマインダーの送信や返金処理も行うため、キャッシュフローの管理がスムーズになります。
キャッシュフローの改善: 統合されたグローバル決済、自動支払いリマインダー、AI を活用した督促ツールにより、売掛金回収日数 (DSO) を短縮し、より早く、より多くの収入を回収できます。
顧客体験の向上: 25 以上の言語、135 以上の通貨、100 以上の決済手段をサポートする最新の決済体験を提供します。請求書へのアクセスは簡単で、セルフサービスのカスタマーポータルから支払うことも可能です。
バックオフィスの負担軽減: 数分で請求書を作成し、自動支払いリマインダーや Stripe のオンライン請求書ページにより、回収業務にかかる時間を削減します。
既存システムとの統合: Stripe Invoicing は、主要な会計ソフトや ERP (企業資源計画) ソフトと統合し、システム間の同期を保ちながら手入力を減らします。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。