資金管理システムの解説: 適切な TMS ソフトウェアを選ぶ方法

  1. はじめに
  2. 資金管理システムとは
  3. 資金管理システムでできること
  4. 資金管理と現金管理の違い
    1. 範囲
    2. 複雑度
    3. 戦略上の重要事項
    4. テクノロジー
    5. リスク管理
    6. 連携
    7. 責任
  5. 資金管理システムの課題
  6. 資金管理ソフトウェアを使用するメリット
  7. 自社に適した資金管理ソフトウェアを選ぶ方法

金融市場と規制の複雑さが増すにつれ、資金管理システムはリスク評価から資産管理まで、さまざまな活動を管理する高度なプラットフォームへと進化してきました。そこで行われる意思決定は組織全体に波及し、財務の安定性から成長見通しまであらゆる要素に影響する可能性があるため、事業者は多くのリソースを費やして、これらのシステムを使用しています。

特に、複雑なポートフォリオを持ちや国際的な事業を展開する事業者が資金管理ソフトウェアを選択して導入する場合には多くの問題が生じます。ここでは、資金管理ソフトウェアについて知っておくべき事項について詳しく取り上げます。重要な機能や連携能力、適応性、プロバイダーの条件のほか、適切なソフトウェアソリューションを選ぶことで事業者にもたらされるメリットをご紹介します。

この記事の内容

  • 資金管理システムとは
  • 資金管理システムでできること
  • 資金管理と現金管理の違い
  • 資金管理システムの課題
  • 資金管理ソフトウェアを使用するメリット
  • 自社に適した資金管理ソフトウェアを選ぶ方法

資金管理システムとは

資金管理システム (TMS: Treasury Management Systems) は、組織の財務業務を監視・管理することに特化したソフトウェアソリューションです。流動性資産、資金調達、リスク管理に関連した情報とプロセスが、これらのシステムによって一元管理されます。優れた設計の TMS は、予測、データ収集、レポート作成などの複雑な作業を自動化でき、財務上の意思決定の最適化を必要とする組織にとって重要な資産となります。Polaris Market Research の研究によると、世界の資金管理システムの市場は、この種のソフトウェアの需要の拡大から、2032 年までに 160 億ドルを超えると予測されています。

資金管理システムでできること

TMS は、組織の財務業務の最適化を中心にさまざまな役割を果たします。以下に、TMS システムが担う主な機能のいくつかをご紹介します。

  • 財務業務の自動化: TMS から直接もたらされる最大のメリットは、時間がかかる反復的な財務業務、たとえば取引の処理や、ローンや投資に関連した金利、満期日、支払いの追跡、元帳の仕訳と銀行明細書の照合を自動化できることです。スタッフはその時間や労力を、より戦略的な活動に振り向けることができます。

  • 財務データの一元化: さまざまなソースからの財務データが、TMS によって 1 つのプラットフォームに集約されます。データが一元化されることで情報の取得と分析が容易になり、意思決定のスピードアップを可能にします。

  • リスク管理: 金利の変動や急激な為替変動といった財務リスクを TMS システムで特定して分析することができます。事業者はそのデータから、効率的にリスク軽減対策を策定し、実行することができます。

  • 流動性資産管理: 利用できる現金がどれだけ、どこにあるかは、すべての企業が把握すべき重要な情報です。TMS によって組織の流動性資産の全体像が得られます。

  • 法令遵守の追跡: 絶えず変化する規制への準拠を維持し続けることは、企業が常に頭を悩ませる課題です。TMS は、規制の変更を追跡して自動的にシステムをアップデートできるため、違反のリスクを軽減できます。

  • 多通貨対応: 複数の国で事業を営む企業は、TMS の多通貨処理機能のメリットを活用できます。為替レートや通貨リスクに対し、簡単かつ効率的に対処することができます。

  • レポート作成: レポート作成機能をカスタマイズできるため、事業者は、高速かつ正確な分析が可能な形式で、必要なデータを正確に抽出できます。

  • データセキュリティ: 一般に TMS には、機密性の高い財務データを保護する強力なセキュリティ機能が備わっています。これらの機能には、多くの場合、役割ベースのアクセス制御と暗号化が含まれます。

  • ベンダーと銀行の接続性: TMS システムは、銀行をはじめとする金融機関に直接接続できるため、取引がシンプルになり、財務データの連結が簡単になります。

  • 拡張性: ビジネスが成長するにつれて、財務業務は複雑さを増します。TMS は、必要に応じて新しい機能を取り入れたり連携性を高めたりすることで、そうしたニーズの変化に対応します。

  • 予算策定と予測: TMS によるデータの一元化と強力な分析を利用することで、事業者は予算計画を立て、将来の財務シナリオをより正確に予測できるようになります。

上記の各機能が相互に連携することで、事業者の財務業務の組織化を進め、効果を高めることができます。

資金管理と現金管理の違い

「資金管理」と「現金管理」は、同じ意味で用いられることもありますが、組織内での範囲と機能は明確に異なります。ここでは、両者の違いをご説明します。

範囲

  • 資金管理の範囲は現金管理よりも広く、組織の財務に関連したさまざまな機能に拡がります。これには現金の管理だけでなく、他の財務資産、負債、リスクも含まれます。
  • 現金管理は資金管理の一部で、具体的に言えば、最適な現金保有水準の維持、決済、売掛金の回収が中心となります。

複雑度

  • 資金管理は、リスク評価、財務計画、戦略の策定など、現金管理よりも複雑な活動が含まれます。外貨エクスポージャー、金利リスク、投資戦略などの問題に対処します。
  • 現金管理の対象となるのは、日々の支出を賄えるだけの現金を確保するなど、より実務的な問題です。その職務は通常、資金管理ほど複雑ではありませんが、日々の業務にとって重要であることに変わりありません。

戦略上の重要事項

  • 資金管理には戦略上の重要事項が含まれ、組織の財務の健全性と持続可能性を最適な状態にすることを目的としています。多くの場合、長期的な投資判断や、さまざまな種類の財務リスクへの対処計画が含まれます。
  • 現金管理は、資金管理よりも戦術的であり、請求書の支払い、給与管理、ベンダーへの支払いなど、差し迫ったニーズに対応します。そのねらいは、組織の日常業務をスムーズに運営することにあります。

テクノロジー

  • TMS は多くの場合、取り扱う範囲が広く、さまざまな財務機能を処理するモジュールを数多く含んでいます。複雑な分析や財務モデリングに対応するように設計されています。
  • 現金管理ツールは、それよりもシンプルで、大規模な TMS や大企業向けソフトウェアの一部になっていることもあります。業務の効率化とスピードアップがその目的となります。

リスク管理

  • 資金管理は、市場リスク、信用リスク、オペレーショナルリスクなど、さまざまな種類の財務リスクを特定、分析、軽減します。
  • 現金管理は、流動性資産に関連したオペレーショナルリスクには対処しますが、通常、それ以外の種類の財務リスクには関与しません。

連携

  • 資金管理は機能横断型の規範であり、一般に、他の業務機能やビジネス戦略と密接に連携しています。
  • 現金管理は、それよりも限定的であるのが一般的です。財務の実務上の側面には関与しますが、より広範なビジネス戦略との整合性にまでは踏み込みません。

責任

  • 通常、資金管理は、最高財務責任者 (CFO) または専門の財務部門が担当します。
  • 現金管理は、組織の規模と性質に応じて財務マネージャーか、または業務マネージャーの担当範囲になります。

資金管理と現金管理は、どちらも組織の財務の健全性にとって不可欠ですが、その役割と複雑さ、対象範囲は大きく異なります。

資金管理システムの課題

TMS は、さまざまな形で企業にメリットをもたらす可能性を秘めていますが、固有の課題も抱えています。これらの問題を乗り越えるには、慎重な計画と継続的な監視、必要に応じて手順を調整する意欲が求められます。ここでは、TMS にまつわる課題をいくつかご紹介します。

  • 導入とメンテナンスのコスト
    TMS はえてして高額で、初期購入時だけでなく、継続的なメンテナンスとアップデートにも大きなコストが伴います。そのコストは一部の企業にとっては非現実的であるため、システムの潜在能力をフルに引き出して財務管理を最適化することが難しい場合があります。

  • 複雑さとユーザーの採用意欲
    これらのシステムは煩雑で、直感的でないことも往々にしてあるため、スタッフが採用を進めるまでに時間がかかる場合があります。システムが複雑になるほど、トレーニングに要する時間とリソースも増えます。その結果、ワークフローが混乱し、システム導入のメリットがなかなか得られないことがあります。

  • データの正確性と完全性
    TMS でデータを一元化することはできますが、その価値は、入力された情報によって決まります。入力データに誤りや不整合があると、分析や意思決定の誤りが生じます。この問題は、厳格な検証プロセスによって軽減することができます。

  • 導入に伴う課題
    どれほど包括的な TMS でも、ERP や人事管理ソフトウェアなど、社内ですでに使用されている他のシステムとの互換性が完全であるとは言えません。そのことが原因で、データフローにボトルネックが生じたり、カスタム導入のための追加のリソースが必要になることがあります。

  • 拡張性の制約
    拡大する組織のニーズに適応するように構築されたシステムもあれば、拡張に制約のあるシステムもあります。結果的に、システムのアップグレードに追加投資が必要になったり、将来より高性能のシステムへの切り替えを迫られて、さらなるコストとリソースの投入を強いられたりすることがあります。

  • セキュリティに関する懸念事項
    TMS は機密性の高い財務データを扱うため、セキュリティが重要になります。不正アクセスやデータ侵害は、事業者の財務状況や評判に深刻な影響を及ぼしかねません。堅牢なセキュリティ機能を備えたシステムは数多くありますが、リスクのないシステムはありません。

  • 法令遵守
    財務に関する規制は国ごとに異なり、時間の経過とともに変わることも少なくありません。そうした変化に適応するために TMS を最新の状態に保つには、時間もコストも必要です。そして規制に違反した場合は、厳しい罰則が科せられたり、評判が失墜したりすることがあります。

  • 自動化への過度な依存
    自動化は諸刃の剣です。スタッフは負担が減って、より重要な業務に専念できるようになりますが、自動化への過度な依存は、人間による監視が不行き届きになるということです。その結果、エラーが発生したり、問題が放置されて、後からより深刻で大きな問題となって発覚したりするおそれがあります。

  • ベンダーロックイン
    いったん TMS に投資すると、別のシステムへの切り替えには多大なコストと労力がかかります。アップデート、サポート、価格設定に関して特定のベンダーへの依存が強まり、知らず知らずのうちに、組織にとって不利な条件になっている可能性があります。

  • 意思決定の停滞
    TMS から提供されるデータや分析が膨大な量になるため、情報の取捨選択が難しくなり、経営陣のスピーディーな意思決定に支障が生じることがあります。

資金管理ソフトウェアを使用するメリット

ソフトウェアソリューションを導入して資金管理を強化することは、慎重な計画と投資を要しますが、効率、インサイト、リスク軽減の点で大きなリターンを期待できます。ここでは、資金管理ソフトウェアから得られる大きなメリットをいくつかご紹介します。

  • 財務の可視性の向上
    資金管理ソフトウェアによって財務データの場所が一元化されるため、意思決定者は重要な財務指標をすべてリアルタイムに把握できます。このように全体像を把握することで、データが複数のプラットフォームや部門に分散している場合に生じる不備を回避できます。

  • 自動化による時間短縮
    データの収集やレポート作成といった定型的なプロセスが自動化されることで、スタッフに時間的余裕が生まれ、分析や意思決定など、より戦略的な業務に専念することができます。自動化によって人為的なミスが減り、全体的な生産性を大幅に高めることができます。

  • リスク管理の強化
    優れた資金管理ソフトウェアは、為替レートの変動や金利の変化など、各種の財務リスクを監視・軽減する機能を備えています。潜在的なリスクについてユーザーに注意を喚起することで、事後的な対応ではなく事前の対処を促します。

  • データのセキュリティと制御
    社内の財務データがすべて 1 つのシステムに集約されるので、高度な暗号化方式や役割ベースのアクセス制御を導入するなどして、機密データに関連するセキュリティ対策を強化できます。外部の脅威に対する防御となるだけでなく、特定の種類の情報にアクセスできる人物を組織内で制御できるようにするというメリットもあります。

  • 拡張性と柔軟性
    資金管理ソフトウェアの中には、組織の成長に合せて進化するように設計されているものがあります。事業を拡大している組織や財務管理ニーズの変化が予想される組織にとって、これは重要なメリットとなるものです。システムの切り替えや機能の事後導入に伴う混乱または費用を回避できるようにもします。

  • 法令遵守の省力化
    資金管理システムは多くの場合、法令遵守の追跡機能やレポート作成機能を備え、常に最新の財務規制に準拠するようにサポートします。規制への準拠ができずに法的な問題に発展するリスクを、これらの機能によって最小限に抑えることができます。

  • 意思決定能力の向上
    分析や予測など、資金管理ソフトウェアの高度な機能の中には、履歴データと最新の市場動向を使用して予測モデルを生成するものがあります。意思決定者は、こうしたインサイトを利用して長期的な計画や戦略を立てることができます。

  • コスト削減
    資金管理ソフトウェアの導入には初期費用がかかりますが、この導入によって業務効率が改善するため、多くの場合で最終的に経費が削減されます。たとえば、手作業によるミスの減少、定型業務に費やされる時間の短縮、意思決定の拠り所となるデータの拡大により、最終的な収益の健全化に寄与します。

  • 利害関係者とのコミュニケーションの向上
    利害関係者に対して、リアルタイムのレポートとダッシュボードを使って組織の財務状況を効率よく伝えることができます。対象が社内のチームでも、外部の投資家でも、最新の正確な財務データを提供することで信頼が増し、データに基づいた対話や意思決定が促進されます。

  • データの完全性と検証
    すべての財務データが一元化された 1 つのシステムに集約されるため、このソフトウェアには多くの場合、データの正確さを保証する検証チェックの機能があります。監査に費やしていた時間から解放され、より確度の高いデータに裏付けられた数字で計画や戦略を立てることができます。

自社に適した資金管理ソフトウェアを選ぶ方法

適切な資金管理ソフトウェアを選ぶことは、長きにわたり影響を及ぼす重要な決定です。適切に選ぶことで業務効率が上がり、財務に関する洞察を深め、財務管理フレームワークのセキュリティを高めることができます。ここでは、選択プロセスの進め方についてご説明します。

  • 現在のニーズと将来の目標を見定める
    選択プロセスに進む前に、現在の財務管理手法を振り返ってみます。すぐに取り組むべき問題と長期的な事業戦略の両方に目を向けます。この二重の視点から見ることが、現在の問題を解決するだけでなく、事業とともに成長するシステムを選ぶための近道です。

  • 機能を吟味する
    ニーズと目標が明らかになったら、それぞれのソフトウェアソリューションがどのような機能を備えているかを評価します。定型業務の自動化に加え、データに基づく意思決定にも対応した高度な分析機能を備えた製品をお勧めします。必須の機能とあれば望ましい機能を識別します。

  • 使いやすさを評価する
    どんなに高性能なソフトウェアも、ユーザーが使いづらいと感じれば、それは負担でしかありません。ユーザーにとって使いやすいインターフェイスとシンプルなワークフローのシステムを見つけましょう。使いやすさは社内での採用意欲を高め、より短時間でチームがソフトウェアをフル活用できるようになります。

  • 財務分析の実施
    新しいシステムによって生じる財務的な影響を検討します。初期費用だけでなく、継続的なメンテナンスやトレーニング、データ移行の潜在的コストも考慮してください。時間の節約、プロセスの改善、リスクの軽減など、見込まれる利益と照らして、これらのコストを比較します。

  • ベンダーの評判を調査する
    ベンダーの評判も大切です。ユーザーの声、ケーススタディ、サードパーティーによるレビューを探しましょう。通常、定評のあるベンダーの方が、さまざまな業界へのシステムの導入実績が多く、サポートも充実しています。

  • 実際のデータでテストする
    ほとんどのベンダーはトライアル期間やデモ期間を設けていて、ユーザーはその間に、実際のデータを使ってソフトウェアをテストできます。実際の条件下でシステムのパフォーマンスを評価できるので、標準的なデモでは発覚しないような問題や期待との乖離を把握する助けとなるでしょう。

  • 連携のしやすさを考慮する
    理想を言えば、新しく導入するシステムには、会計システムや ERP プラットフォームといった既存のソフトウェアと連携し、統合的なワークフローを実現することを期待します。API やビルトインの連携オプションを備えたソフトウェアソリューションを探しましょう。データの移動がスムーズになるうえ、エラーのリスクを軽減することができます。

  • セキュリティ対策を評価する
    機密性の高い財務データをシステムに委ねることになるので、そのセキュリティ機能は念入りに調べましょう。セキュアなソリューションの基本的な要件である多要素認証、高度な暗号化、堅牢なアクセス制御を備えていることを確認してください。

  • 契約条件を精査する
    プロバイダーを選んだら、契約条件を精査します。サービスレベル契約やサポートのほか、アドオンや超過分から生じうるコストを念頭に置いてください。よく見ないとわからないような追加費用があるかもしれません。初期費用が安いと見落としがちです。

  • 導入の計画を立てる
    最後に、導入のロードマップを作成します。ロードマップには、データ移行、トレーニング、ロールアウトのタイムラインのステップ詳細を規定します。十分に計画を練ることで、混乱を最小限に抑えながら新しいシステムにスムーズに移行できます。

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