オランダ で付加価値税 (VAT) を処理するには、その制度の仕組み、
各取引に適用される税率、登録が必要なタイミングを把握しておく必要があります。ルールは厳格で、間違えるとビジネスに深刻な影響が出るおそれがあります。以下では、オランダの VAT について知っておくべきこと (概要、適用される対象、ビジネスにとっての意味) について説明します。

この記事の内容

• オランダの現在の VAT 率
  
• オランダでの国際取引における VAT の仕組み
  
• 企業の VAT 登録基準
  
• VAT の計算と徴収に必要なもの
  

オランダの現在の VAT 率

VAT は、商品やサービスの提供の各段階で課される消費税です。オランダの VAT 制度には、3 種類の税率 があります。

• 21% の標準税率

• 9% の軽減税率

• ゼロ税率

それぞれが異なる方針の役割を果たします。その実際の仕組みは次のとおりです。

21% の標準税率

これは、以下を含むオランダのほとんどの商品とサービスに適用される基準税率です。

• 電子機器、家具、化粧品などの消費財

• 法律相談、情報テクノロジー (IT) コンサルティング、財務監査、建築工事、マーケティングおよび広告サービスなどのプロフェッショナルサービス

• モバイルプラン、インターネットアクセス、ストリーミングプラットフォームなどの通信およびデジタルサービス

• アルコール飲料

• 高級時計や宝飾品などの高級品や非生活必需品

• 人事 (HR) コンサルティングやイベント企画などの一般的な B2B サービス

21% の VAT は顧客に請求する合計金額に含まれ、企業はこの税金を徴収して VAT 申告書で納付します。仕入 VAT (事業経費に対して支払われる税金) は通常、徴収した VAT から控除できます。

9% の軽減税率

軽減税率は、社会的または経済的に必要不可欠とみなされる、以下のような商品やサービスに適用されます。

• パン、牛乳、野菜、肉、コーヒーなどの食料品

• 処方薬、承認された市販薬、特定の健康関連機器などの医薬品および医療補助具

• 本、新聞、雑誌

• レストランでの食事とノンアルコール飲料

• バス、電車、タクシーなどのオランダ国内の旅客輸送

• ホテル宿泊と短期宿泊

• ペンキ塗りや左官工事などの住宅向けの特定のサービス

• 自転車、靴、衣料品などの消費財の修理

ここでの方針の目標は、必要不可欠なサービスをより手頃な価格にするとともに、小規模労働などのセクターを支援することにあります。

企業が異なる VAT 率で複数の商品とサービスを販売している場合 (食品とワインを提供するレストランなど)、各項目を個別に会計処理する必要があります。税率の異なる項目をバンドルする場合は、慎重な 請求 と VAT 処理が必要です。

ゼロ税率

ゼロ税率は VAT 免除と同じではなく、課税率が 0% の課税対象取引に適用されます。これらの売上では、顧客の請求書に VAT は追加されず、売り手は関連する仕入に対する VAT の還付を受けることができます。

この税率の対象は以下のとおりです。

• EU 域外諸国への商品の輸出入サービス

• EU 域外諸国に輸出される商品の業務

• 国際旅客輸送

VAT 免除

VAT 免除の商品やサービスには VAT は加算されず、企業は生産プロセスで支払った VAT の還付を受けることはできません。VAT 免除のカテゴリーには以下が含まれます。

• 医師や歯科医などの有資格の医療従事者による治療

• 老人ホームや介護施設などの介護サービス

• 登録センターによる保育

• 職業教育や芸術教育などの認定機関による教育

• 決済取引、ローンの利息、保険料などの金融サービスと保険

• 住宅やアパートの住宅賃貸料

• 資金調達活動

オランダでの国際取引における VAT の仕組み

VAT は仕向地ベースの税金です。つまり、通常は売り手が営業している場所ではなく、顧客の所在地で支払う必要があります。その仕組みは次のとおりです。

EU 域外の顧客への商品またはサービスの販売

通常、これらの取引は ゼロ税率 になります。これは、EU 域外での商品輸送や関連する保険などの輸出サービスにも当てはまります。オランダでは VAT の納税義務はありませんが、顧客の国では納税が必要になる場合があります。

EU 内の企業への商品またはサービスの販売

両方の企業が VAT に登録されている場合、EU 内の一般的な規則では、リバースチャージ メカニズムが適用されます。オランダの VAT は請求せず、その代わりに買い手が自国で VAT を負担します。

EU 内の顧客への商品またはサービスの販売

EU の顧客へのクロスボーダー販売の総額が 年間 €10,000 を超える場合は、自国ではなく、顧客の国に基づいて VAT を請求する必要があります。これは、以下のような状況が該当します。

• 物品の遠隔販売 (E コマースなど)

• デジタルサービス (ソフトウェア、サブスクリプション、ダウンロードなど)

それぞれの仕向国で VAT に登録するか、EU の VAT ワンストップショップ (VAT OSS) スキームを使用して、EU の顧客へのすべての売上をカバーする四半期ごとの申告書を提出します。

クロスボーダー B2C 販売の額が €10,000 未満の場合は、引き続きオランダの VAT を請求し、国内納税申告書ですべてを報告できます。

EU 域外からの商品の購入

EU 域外から商品を購入した場合、オランダに入ってきた時点で輸入 VAT を支払う必要があります。ただし、企業は 第 23 条 の許可を申請して VAT の支払いを延期できます。つまり、税関で支払うのではなく、申告書で申告することが可能です。

他の EU 諸国からの商品の購入

これらは 域内取得 として扱われ、リバースチャージメカニズムが適用されます。通常、支払うべき VAT はゼロですが、報告は義務付けられています。

外国企業としてのオランダへの販売

EU を拠点とする企業がオランダの顧客に販売し、その売上が EU 全体の €10,000 のしきい値を超える場合は、オランダの VAT を適用する必要があります。VAT OSS により、企業は 1 つの EU 加盟国にのみ登録できるため、コンプライアンスがシンプルになります。リバースチャージメカニズムは、EU 域内の B2B 販売に適用されます。

EU 域外の企業 がオランダの顧客に商品やサービスを販売する場合は、通常、オランダの VAT が適用されます。

Stripe Tax は VAT OSS の説明責任を負います。どの国の VAT が適用されるかを追跡し、報告のために各管轄区域の合計額を分け、VAT OSS 申告書の提出に必要なデータを準備します。つまり、VAT 計算エンジンを別途構築したり、請求書を国別に並べ替え直したりする必要はありません。

企業の VAT 登録基準

オランダには、VAT 登録を遅らせる一般的な売上のしきい値はありません。課税対象の供給を行う場合、ほとんどの企業は 1 日目から登録することが期待されています。ただし、特に売上高が低い場合や国外を拠点としている場合は、注意すべきいくつかの例外と特別なスキームがあります。

オランダを拠点とする企業の場合

オランダで企業を設立しており、VAT の対象となる商品やサービスの販売を計画している場合は、通常すぐに VAT の義務が課せられます。他の一部の EU 諸国のように、最低年間売上高はありません。ほとんどの場合、商工会議所に登録すると登録は自動的に行われます。オランダの税務当局は、お客様が VAT 目的での事業者であるかどうかを判断し、VAT 識別番号を発行します。

唯一の例外は、中小企業免除スキームまたは kleineondernemersregeling (KOR) を申請する場合です。年間売上高が €20,000 以下 であれば、KOR にオプトインできます。

KOR の下では、次のようになります。

• 売上に対して VAT を請求しない

• VAT 申告書を提出しない

• 事業経費から VAT を差し引くことはできない

このスキームはオプションです。一部の企業やフリーランサーは、クライアントが VAT に登録されており、タックスインボイスを求めているため、資格があってもオプトインしないことを選択します。

KOR にオプトインした後でしきい値を超えた場合は、VAT に登録し、それ以降の請求と納付を開始する必要があります。

オランダに販売する外国企業の場合

VAT 登録規則は、所在地や販売するものによって異なります。

企業が別の EU 加盟国で設立され、オランダの顧客に販売している場合は、EU 全体での クロスボーダー販売 の合計額が 1 年あたり €10,000 を超えるまで、現地の VAT 制度の下で販売できます。その後、仕向国の VAT 率 (この場合はオランダの VAT) を適用し、オランダの VAT に登録するか、EU の VAT OSS システムを使用して売上を報告する必要があります。これは、不定期にクロスボーダー B2C 販売を行う企業の登録負担を最小限に抑えることを目的としています。

オランダの顧客に商品やサービスを販売する EU 域外の企業を運営している場合、しきい値はなく、すぐに VAT に登録する必要があります。オランダに恒久的施設がない企業の場合は、税務署に直接 VAT を登録します。

Stripe Tax はクロスボーダー販売の額を監視し、新たな VAT 義務が発生する国別のしきい値に近づいたときに警告します。EU の場合、これには、すべての加盟国における B2C 遠隔販売の年間 €10,000 のしきい値が含まれます。しきい値を超えると、Stripe が適用される VAT 率を調整するため、コンプライアンスを維持できます。

VAT の計算と徴収に必要なもの

VAT 登録企業になると、VAT を徴収して納付する義務と、このプロセスを促進する特定の管理義務が伴います。VAT に登録したら、以下の義務を負います。

VAT の計算

オランダで VAT を計算するには、適用されるパーセンテージを販売価格に追加する必要があります。たとえば、€100 の販売に対する 21% の標準 VAT は €21 VAT になるため、VAT 込み価格は €121 になります。多くの企業が VAT の計算に Stripe Tax などのツールを利用しています。Stripe は、以下に基づいて、各取引の正しい VAT 率を自動的に計算できます。

• 顧客の所在地

• 販売されている商品またはサービスの種類

• 適用されるしきい値

EU の企業が VAT ID 番号を入力すると、Stripe はそれを検証し、リバースチャージメカニズムを自動的に適用できます。カタログに異なる VAT 処理 (標準、軽減、免除など) が適用される商品またはサービスが含まれている場合は、各項目に正しい税種別をタグ付けできます。Stripe は、各国でその分類に基づき、適切な税率を適用します。

請求と記録管理

VAT に登録している場合、発行する請求書は必ず以下の要件を満たす必要があります。

• VAT ID 番号、請求日、一意の 請求書番号 を記載する

• 商品やサービスの明確な説明を記載する

• 正味金額、適用される VAT 率、合計 VAT 請求額を示す

また、すべての請求書のコピーを 少なくとも 7 年間 (不動産を扱う場合は 10 年間) 保管する必要があります。

VAT 申告書の提出

オランダのほとんどの企業は 四半期ごとに VAT 申告書を提出 しており、税務当局から申告の頻度が通知されます。各申告書には以下が含まれます。

• 売上に課される VAT (仮受税)

• 事業経費に対して支払った VAT (仕入税)

仕入 VAT が売上 VAT よりも高い場合は、還付の対象となります。売上 VAT の方が高い場合は、VAT を支払う義務があります。

売上と経費の追跡

すべての売上と経費を追跡し、VAT と総額を分離し、期限内に申告するための手動または自動のプロセスが必要になります。会計ソフトウェアを使用すると、すべての仕入 VAT と売上 VAT の管理を簡素化できます。Stripe Tax は、国と税率別に徴収された VAT、地域別の課税対象の売上合計、課税済み、免除、またはリバースチャージの対象となった取引を分類した税務レポートを生成します。これらのレポートはエクスポートして、国内または VAT OSS 申告書の提出に使用できます。Stripe と連携する会計ツールや申告ツールを使用している場合は、このデータをコンプライアンスのワークフローに直接インポートできます。

いずれにせよ、コンプライアンスは必須であり、ミスがあると罰金、利息、または控除の損失につながる可能性があります。

キャッシュフローの管理

VAT コンプライアンスは キャッシュフロー にも影響します。VAT は企業が政府に代わって徴収するものであるため、口座にあったとしても使えるわけではありません。多くの場合、企業は、申告するときに不足しないように、各決済から徴収する VAT を別の口座に取っておきます。

多額の初期費用 (新しい機器など) がある場合は、VAT の還付を受けられる可能性があります。これは早い段階で、特に多額の売上が見込まれる前に事業に投資する場合に有効です。