越境販売におけるグローバル VAT: 事業者が押さえておくべき基礎知識

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Stripe Tax が国内外での税務コンプライアンス対応を一から十まで自動化するため、お客様は事業拡大に専念できます。納税義務の特定から税務登録、税額の計算と徴収、納税申告までを 1 カ所で管理可能です。

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  1. はじめに
  2. VAT とは?
  3. VAT 制度は国によってどのように違っていますか?
    1. VAT 税率
    2. 非課税とゼロ税率
    3. 登録の閾値
    4. 法令遵守と報告
  4. 国際的に事業を展開する事業者は、世界各地でどこに VAT (付加価値税)の納税義務があるかをどのように判断すればよいですか?
    1. 物理的に事業を行っている場所から始めましょう
    2. 販売先の場所、特に顧客の所在地を確認しましょう
    3. デジタルサービスに気をつけましょう
    4. 顧客の種類を確認しましょう
    5. 事業活動と VAT 規則の追跡とモニタリング
  5. 事業者がグローバルな VAT を効率的に管理するには?
    1. 決済時の税額計算を自動化
    2. 事業拡大に伴う VAT 納税義務の変化を追跡
    3. VAT 業務の統合
    4. 可能な限り納税申告を簡素化
    5. 信頼の構築

自国で付加価値税 (VAT) の納税義務を把握することと、15 カ国で同時にそれを行うこととはまったく別の話です。後者の場合、各国ごとに異なる税率、規則、登録要件があるからです。国際的な事業者にとって、VAT は価格設定や販売方法、新市場への迅速な進出に大きな影響を与えるものです。

ここではグローバルな VAT の仕組みと、事業拡大に合わせて VAT を管理する方法についてご説明します。

目次

  • VAT とは?
  • VAT 制度は国によってどのように違っていますか?
  • 国際的に事業を展開する事業者は、世界各地でどこに VAT (付加価値税)の納税義務があるかをどのように判断すればよいですか?
  • 事業者がグローバルな VAT を効率的に管理するには?

VAT とは?

VAT は消費に課される税で、サプライチェーンの各段階、つまり調達、製造、流通、小売、サービスなどで付加価値が加えられるたびに課税されます。売上税 が最終販売時にのみ課されるのに対し、VAT はプロセス全体で段階的に徴収され、精算されます。

基本的なフローは次のとおりです。

  • 事業者は、自社の販売に対して VAT を課します。これを売上 VAT と呼びます。
  • 事業者は、仕入れ時に支払った VAT を差し引きます。これを 仕入 VATと呼びます。
  • 売上 VAT の方が多い場合、事業者はその差額を政府に納付します。仕入 VAT の方が多い場合、事業者はその差額の還付を受けます。

最終的な負担はエンドユーザーが担い、事業者はその過程で VATの徴収と納付 を行っているに過ぎません。

イギリスや EU 加盟国を含む 170 カ国以上がVATを使用しています。VAT はほとんどの商品やサービスに適用されます。国際的に事業を展開する場合、どのタイミングで登録すべきか、どのように課税して、どの国に申告すべきかを正しく理解する必要があります。これを怠ると罰金の対象となるほか、特定の市場へのアクセスを失ったり、重大な場合には禁固刑が科される可能性もあります。

VAT 制度は国によってどのように違っていますか?

各国は独自の VAT 制度を敷いています。そのため、税率、規則、非課税、報告などの制度が異なっています。事業者は、自社が事業を展開する国の VAT 規則を理解する必要があります。

その違いが最もよく現れるのは以下の点です。

VAT 税率

標準的な VAT 税率は国によって大きく異なります。

多くの国では、書籍、医薬品、公共交通機関など特定の品目に対して軽減税率を適用したり、輸出品や一部の生活必需品に対してはゼロ税率を適用したりしています。税率の変更は定期的に行われます。たとえば、COVID-19パンデミック時の一時的な減税や、インフレや選挙周期に伴う政策変更は、最新情報を把握していないと事業者が予期せぬ影響を被ることがあります。

正確な税率は、国、製品、サービスの種類、取引の状況によって異なります。

非課税とゼロ税率

「非課税」と「ゼロ税率」という2 つの用語は一見すると類似しているようですが、意味合いが異なります。ゼロ税率の取引は、税率 0% で課税対象とされ、売り手は仕入にかかった VAT を還付請求できます。非課税の取引は課税対象外であり、売り手はその売上に関連する仕入 VAT を還付請求することはできません。

例えば、輸出は通常ゼロ税率の対象となります。海外の顧客には VAT を請求しませんが、精算や輸送にかかった VATは還付を受けることができます。一方、金融サービスは多くの場合非課税で、VAT を請求しない代わりに、それに関連費用で支払った仕入 VAT は還付されません。この違いは利益率に直接影響します。

こうした区分の定義は国によって異なります。ある国ではゼロ税率の対象となる製品が、別の国では非課税または通常の課税対象となる場合があります。

登録の閾値

VAT の登録が必要かどうか、またその時期は、事業を行う国や自社が国内事業者か海外事業者かによって異なります。国内事業者の場合、一定の売上高の基準を超えるまでは登録が不要なことが多い一方で、外国事業者にはより厳しい規則が適用されるのが一般的です。多くの国では、非居住事業者に対して登録義務の発生に売上基準を設けておらず、1 件の取引だけでも登録が必要になる場合があります。

例えば、EU 加盟国はそれぞれ、自国内に設立された事業者に対して独自の登録基準 (閾値) を設けています。一方で、EU域内での越境販売に対しては、EU全体として共通の 閾値 10,000ユーロ を設けています。この金額を超えると、EU 域内の事業者販売先となるすべての国で VAT を支払う義務が生じます。しかし、EU 域外事業者は、この閾値に関係なく、最初の1券の販売から VAT の納税義務が生じます。

このような精度のばらつきが、VAT の納税義務を大規模に管理する上で難しくしている要因です。どの市場でも同じように課税されると安易に考えることはできません。

法令遵守と報告

登録が完了すると、その後の申告義務は国ごとに異なります。

  • 申告の頻度は、国の管轄区域、売上高、または ビジネスモデル によって、月次、四半期、または年次となる場合があります。
  • 一部の国では、VAT請求書に特定の書式、言語、または開示要件が定められています。
  • 申告ポータルは現地語でしか利用できない場合があり、デジタル署名、二要素認証、または認定税理士の関与が求められることもあります。

EUでは、One Stop Shop (OSS) 制度により、事業者はEU域内の越境B2C取引すべてをまとめて申告でき、報告が簡素化されています。EU域外では、通常、各国ごとに別々に申告する必要があります。

VAT 請求書に関する要件も異なります。一部の管轄区域ではリアルタイム報告や電子請求書 (e-invoicing) を義務付けているのに対し、他の地域では比較的自由ですが、監査時には完全な記録の提示が求められます。

国際的に事業を展開する事業者は、世界各地でどこに VAT (付加価値税)の納税義務があるかをどのように判断すればよいですか?

VAT の納税義務 は、販売する商品やサービスの種類、販売量、顧客の所在地、顧客が企業か個人かによって異なります。対応を誤ると、後々、思わぬ負担や法令遵守の問題が発生する可能性があります。

納税義務を決定する方法は以下の通りです。

物理的に事業を行っている場所から始めましょう

ある国に事務所や倉庫、あるいは委託在庫など物理的な拠点がある場合は、通常、その国で VAT の登録を行う必要があります。多くの場合、売上の最低基準 (閾値) は設けられていません。物理的に存在する場合、納税義務は初日から発生します。

販売先の場所、特に顧客の所在地を確認しましょう

現地に拠点を持たなくてもその国へ販売するだけで VAT の納税義務が生じます。EU 加盟国をはじめ多くの国々では、外国事業者に対して、初回の販売から VAT 登録および徴収を義務付けています。法令を遵守するためには、売上高だけでなく、販売先の国を正確に把握する必要があります。

デジタルサービスに気をつけましょう

サービスとしてのソフトウェア (SaaS) 製品、デジタルダウンロード、ストリーミングサービス、その他電子的に提供される商品を販売する場合、VAT の納税義務は国によって異なります。多くの場合、1回の取引で納税義務が発生します。グローバルに展開するデジタルファースト企業であれば、このカテゴリーが最も大きな VAT 納税義務の発生源となる可能性が高いです。

顧客の種類を確認しましょう

VAT の規則は、販売先が誰かによって異なります。

  • 顧客が事業者で、有効な VAT 番号を持っている場合、通常は VAT を請求する必要はありません。その代わりに、顧客側で 逆課税方式 を用いて VAT を申告・納付します。
  • 顧客が VAT 登録をしていない個人または事業者である場合、おそらく現地の VAT を支払う必要があります。

この区別は重要です。登録の必要性、決済時の課税、取引の報告方法などに影響するからです。しかし、特に顧客登録が自動化されている場合、顧客を誤って分類してしまうということは容易に発生します。大量の取引に対応するためには、VAT 番号や顧客の種別を確認する信頼性の高い処理が必要です。

事業活動と VAT 規則の追跡とモニタリング

VAT の納税義務を管理するには、次のことが必要になります。

  • 販売量と顧客の所在地を追跡する
  • 各国の VAT 規則を把握する (特にリモート販売やデジタル販売)
  • 新たな納税義務が発生しそうなときに通知し、期限内に登録できるようにする

多数の国や販売チャネルにわたるこれらすべてを手作業で管理するというのは、持続可能ではありません。社内で管理システムを構築する企業もありますが、他は閾値を監視して自動でアラートを出すサードパーティの税務プラットフォームを利用しています。例えば、Stripe Tax は、管轄区域ごとの売上をを追跡し、VAT の閾値に近づくと通知してくれます。

事業者がグローバルな VAT を効率的に管理するには?

事業が拡大するにつれ、VAT の複雑さも増していきます。各市場ごとに税務チームを設置することなく法令を遵守するには、拡張可能な システムが必要です。ここでは、グローバル企業が業務を停滞させることなく VAT を管理する方法をご紹介します。

決済時の税額計算を自動化

手作業による税率の照会や税率表を、リアルタイムでVAT を計算する一元化されたシステムに置き換えましょう。

各取引について、次のことを判断する必要があります:

  • 商品、所在地、顧客のタイプに応じた正確な税率
  • VAT 適用の可否 (例えば 免税商品、B2B のリバースチャージ)
  • 軽減税率、ゼロ税率などの特別なケースの扱い方

こうしたことを国ごとに手作業で行うのは、特に税率が代わるときにリスクが高く時間もかかります。その代わりに、この処理を自動で行うツールを使いましょう。Stripe Taxは、決済 時に顧客の所在地と販売商品に応じて正しい税率を適用します。

事業拡大に伴う VAT 納税義務の変化を追跡

越境販売を始めたら、各国の登録基準に近づいているかをモニタリングし、基準を超える前に対応する必要があります。

そのために次のことが必要になります。

  • 国別に売上高と取引量を追跡
  • 各国の閾値 (商品の種類、顧客層、売り手の所在地によって異なる) とこれら合計額とを比較
  • 登録のタイミングと処理にかかる時間の把握

Stripe Taxは、事業が現地の VAT 登録基準に近づいている状況を自動で追跡し、登録手続きを開始できるように通知します。

VAT 業務の統合

一定の規模になると、VAT 管理は個々の取引を追うことよりも、手間を最小限に抑える再現可能な業務フローの設計が重要になります。

それには次のことが含まれます。

  • プラットフォーム間で税設定を一元管理する
  • 各国の要件に対応した 請求書 の自動作成
  • 決済、税務、会計システムを連携させ、チェックアウトから会計帳簿まで VAT データがスムーズに流れるようにする

システムが分散化すればするほど、連携を保つことが難しくなります。地域ごとに異なる税務ツール、分断化された決済プラットフォーム、場当たり的なスプレッドシートの使用は、規模が大きくなると問題を引き起こす可能性が高くなります。

可能な限り納税申告を簡素化

複数の国に事業登録を行うと、返品や返金が発生して業務量が増えます。

それを管理する方法は以下の通りです。

  • 各国・地域での VAT データの収集・報告方法を標準化
  • 国別の VAT レポートを作成したり、申告サービスと連携したりするツールを活用
  • EU の OSS のような制度を活用して、域内の 越境販売 に対して一括申告を行う

Stripe Tax は詳細なレポートを提供し、申告代行が可能なパートナーと連携しています。

信頼の構築

VAT を大規模に管理するということは、リスクを増やさずに新しい市場に進出する方法を見つけるということでもあります。

そのために次のことが必要になります。

  • 規制変更の把握
  • すべての取引について明確な監査記録を保持する
  • 部分的免税や分割発送などの例外ケースに対するため、システムのストレステストを実施する
  • 組織内で VAT コンプライアンスの責任者を明確にし、適切なツールを提供する

注文数が倍増したり、ある国が突然申告要件を更新したりしても対応できるプロセスが必要です。

この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。

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