付加価値税 (VAT) は、事業主にとって不測の事態になり得ます。VAT は、起業間もないビジネスには義務付けられていないかもしれませんが、一度対象となった場合はエラーなく適用する必要があります。イギリス (UK) のビジネス組織の収益が、VAT 登録しきい値に近づいている場合、それがどういう意味であるか分からないかもしれません。または、自発的に登録しようと思っているが、それが正しい対処であるか分からないかもしれません。
以下では、イギリスの VAT しきい値について知っておくべきこと、しきい値を超えた場合にどうなるか、一部の事業者があらかじめ登録している理由について説明します。
この記事の内容
- VAT とは
- イギリスにおける現在の VAT 登録しきい値
- VAT しきい値を超えた場合について
- 自発的に VAT を登録できるか
VAT とは
VAT は、イギリスのほとんどの商品やサービスに適用される消費税です。この税金は顧客が支払い、企業が税金を徴収して納付する義務があります。イギリスでは、1973 年に VAT が施行され、多額の政府歳入を生み出してきました。所得を対象とする所得税や法人税とは異なり、VAT は支出に基づいています。個人または企業が購入すればするほど、支払う VAT が増えます。
その仕組みは次のとおりです。
VAT は、製造、卸売、小売など、価値が創造される生産のすべての段階で適用されます。
VAT を登録した企業は、売上に対して VAT を請求し、英国歳入税関 (HMRC) に提出する必要があります。
VAT 登録済みの企業は、消耗品、設備、サービスなどの対象経費の VAT を還付できるため、自費で税金を支払う必要はありません。
登録を行った企業には、一定の責任があります。
VAT を課税する: 課税対象の売上に VAT を適用し、顧客に VAT 請求書を発行する必要があります。
経費に対し VAT を追跡する: 事業経費として支払う VAT の還付を申請する場合は、その詳細記録を保持する必要があります。
VAT 申告書を提出する: 売上から徴収した VAT と経費に対して支払う VAT を照合するレポートを、定期的に提出する必要があります。
イギリスにおける現在の VAT 登録しきい値
VAT しきい値に達した時点で、イギリスの企業は VAT に登録する必要があります。2024 年 4 月現在、12 か月間の課税売上高のしきい値は 90,000 ポンドです。企業は、毎月売上高を監視して、しきい値に近づいているかどうかを確認する必要があります。
過去 12 か月間に課税売上高が 90,000 ポンドを超えた場合、または今後 30 日以内に 90,000 ポンドを超えると予想される場合は、VAT の登録 が法的に義務付けられています。しきい値に近づいている場合、特に売上高が 70,000 ポンドから 90,000 ポンドの場合は、収益を注意深く追跡し、事前に VAT 登録の準備をしておく必要があります。制限を超えると VAT 登録は任意ではなく、期限内に登録をしないと罰則が科せられる可能性があります。
課税売上高とは
課税売上高には、VAT が免除されない商品・サービスの売上すべてが含まれます。ここでは、さまざまな種類の販売に VAT を適用する方法を説明します。
ほとんどの日用品・サービスは、標準税率 20% で課税されます。
家庭用エネルギーやチャイルドシートなどの特定の品目は、5% の軽減税率で課税されます。
ほとんどの食品、書籍、子供服など、一部の商品は税率がゼロであるため、VAT は 0% を適用します。
金融サービスや教育などの商品・サービスは VAT が免除されます。VAT は課税されず、これらの売上は課税対象の収入には入りません。
VAT しきい値を超えた場合について
VAT のしきい値を超えると、VAT に登録して請求することが法的に義務付けられます。その方法は次のとおりです。
期限内に VAT を登録する
うっかりしきい値違反をしてしまわないため、毎月 12 か月分の売上高を監視するシステムを確立し、それに応じて準備します。
売上高が 90,000 ポンドを超えた場合は、しきい値を超えた月の末日から 30 日以内に登録する必要があります。
今後 30 日以内に 90,000 ポンドを超えることが予想される場合は、その期間が終了する前に登録する必要があります。
収益が 90,000 ポンドに近づいている場合は、VAT を処理するように請求、価格設定、会計システムを更新します。
登録期限を過ぎた場合、顧客に請求していなくても、登録すべき日付から VAT を支払う義務が発生します。また、経過期間によっては、登録遅延の罰則が科される場合があります。
登録は、GOV.UK からオンラインで行えます。承認されると、HMRC から以下が発行されます。
VAT 登録番号
VAT 登録の発効日 (VAT の課税を開始する必要がある日付)
課税売上高がしきい値を超えたものの、後に 88,000 ポンドを下回った場合は、HMRC に登録のキャンセルを依頼できます。
売上で VAT の課税を開始する
登録の発効日以降、該当するすべての売上に正しい VAT 率で VAT を加算する必要があります。請求書には VAT 番号を記載し、VAT の金額を明確に示す必要があります。現在、貴社のビジネスは HMRC に代わり VAT を徴収しているため、正確な記録管理が必要です。多くの企業は、請求ソフトウェアを更新するか、Stripe などの自動支払いシステムを使用して、VAT を正しく計算し適用しています。
VAT を申告し HMRC に支払う
VAT 申告書は通常四半期ごとに提出し、税務のデジタル化ルールに基づいてデジタルで提出する必要があります。各申告書には、顧客に請求した VAT 額、事業経費に対して支払った VAT 額、および差額の概要を記載します。後者によって、HMRC に支払うべき額があるか、返金を受ける資格があるかが決まります。
自発的に VAT を登録できるか
はい。VAT に登録するのに、売上高が 90,000 ポンドになるまで待つ必要はありません。多くの企業は、収益がしきい値を下回っている場合でも、自発的に登録することを選択しています。経費に対して VAT の還付を請求する場合、VAT 登録済みのクライアントと取引する場合、または成長に備える場合は、自発的に登録することが理にかなっています。ただし、顧客が価格の変更に敏感な場合や、管理タスクを最小限に抑えたい場合は、しきい値を上回らないようにする方が良いかもしれません。
ここでは、自発的な VAT 登録のメリットとデメリットをご紹介します。
自発的な VAT 登録のメリット
自発的に VAT 登録をする最大のメリットは、消耗品、機器、サービスなどの購入に対して支払った VAT の還付を請求できることです。次のことが当てはまる場合に、特に恩恵を得られる可能性があります。
VAT 支払いを含む多額の初期費用がある。
課税 VAT を還付請求できる VAT 登録済みの企業に販売している。個人顧客への販売とは異なり、これらの企業に対して VAT を含むように価格を引き上げても、最終的な支払い額には影響しません。
税率ゼロの商品 (ほとんどの食品や書籍など) を販売しているが、経費に対して VAT を支払っている。このシナリオで VAT を登録すると、HMRC から通常、四半期ごとに VAT の還付を受けられます。
また VAT 登録番号があると、よりしっかりした企業であるという印象になります。一部のクライアント (特に大企業) は、VAT 登録済みのサプライヤーとの提携を希望します。売上高が 90,000 ポンドを下回っていても、登録があればビジネスは成長しており、拡張に向けて配備しているという姿勢を示せます。事業を拡大する場合は、しきい値に近づいた時点で VAT を登録するのが理にかなっています。早めに登録することで、VAT 準拠のシステムを事前に実装し、後に慌てて移行する必要がなくなります。
自発的な VAT 登録のデメリット
VAT 登録には、自発的に登録するか、必要に迫られて登録するかにかかわらず、追加の法令遵守責任が伴います。具体的には、VAT 申告書の提出、VAT 記録の保管、すべての売上と経費に対する VAT の正確な計算、などです。VAT の管理により、会計処理が複雑になり、法令遵守を維持するために、ソフトウェアツールや専門家の支援が必要になる場合があります。
顧客が主に VAT に登録していない個人または企業である場合、20% の VAT を加算すると、価格の引き上げを余儀なくされ、競争力が低下する可能性があります。一部の中小企業は、VAT 登録済みの競合他社よりも価格を低く抑えるために、VAT しきい値を上回らないようにしています。ほとんどの顧客が VAT を還付請求できない場合は、税金の一部を負担することが現実的であるか、価格が上がっても顧客が支払えるかどうかを、判断する必要があります。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。