「バーティカル SaaS」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。近年、日本の企業の間では DX 化 (デジタルトランスフォーメーション) が推進されており、これにともなう SaaS の導入が急速に進んでいます。
中でも、医療や建設など、それぞれの業界に特化したバーティカル SaaS は、多くの企業から熱い期待を集めています。バーティカル SaaS を成功させる鍵は、その業界ならではの課題をいかに解決するかにかかっています。
本記事では、バーティカル SaaS の基礎知識として、特徴やホリゾンタル SaaS との違い、日本でバーティカル SaaS 事業が注目され始めている理由、具体的な業界事例をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- バーティカル SaaS とは、医療・介護など、業界特有の課題解決を目的としている
- ホリゾンタル SaaS がさまざまな業界を対象に汎用的な機能を提供しているのに対し、バーティカル SaaS は特定の業界に特化している
- バーティカル SaaS 事業が日本で注目を集める理由の 1 つに、ターゲットとなる市場が限定的なため、競合が少なく独占しやすい点が挙げられる
- バーティカル SaaS は、日本の保育・教育業界において特に期待が高まっている
- Stripe Connect なら、ソフトウェアプラットフォームやマーケットプレイスのような資金移動の調整が複雑なビジネスにおいて、売上の分配・手数料の徴収・国際取引への対応など、決済業務全体の最適化をサポート
バーティカル SaaS とは
バーティカル SaaS とは、特定の業界にターゲットを絞り、その業界のワークフローに最適化された SaaS (Software as a Service) のことです。「バーティカル (Vertical)」は日本語で「垂直」、「縦」と訳され、ビジネスにおいては特定の業界や市場を指します。つまり、すべての業界を対象とするのではなく、医療や建設、不動産など特定の業界で求められる機能を垂直方向に深く掘り下げ、その業界特有の課題解決や業務効率化に特化して開発された SaaS を、バーティカル SaaS と呼びます。
ホリゾンタル SaaS との違い
SaaS は「ホリゾンタル SaaS」と「バーティカル SaaS」の 2 つに大きく分類されます。「ホリゾンタル (Horizontal)」は日本語で「水平」や「横」を意味します。したがって、ホリゾンタル SaaS はその言葉通り、業界を問わずあらゆる企業に共通する業務課題を解決するための汎用的な機能を備えた SaaS を指します。
一方、バーティカル SaaS は各業界で異なる固有のニーズや機能性を重視しており、各業界の根底にある独特な業務課題の解決を目的としています。
バーティカル SaaS が普及している主な業界
バーティカル SaaS はさまざまな業界で採用されていますが、普及が進んでいる主な業界には以下のものが挙げられます。
- 建設: 工程表の自動作成、建設現場情報の一元管理、図面や工事進捗の共有
- 医療・介護: 問診・予約の自動化、 医療従事者間での電子カルテ・医用画像 (MRI・CT) の共有
- 物流: 在庫・配送状況のリアルタイム可視化、伝票のペーパーレス化、拠点間のスケジュール管理やルートの最適化
- 不動産: 不動産の賃貸仲介や物件管理の最適化
- 小売・飲食: 在庫情報の一元管理、予約・注文業務の省力化、シフト作成業務の自動化
- 農業・漁業: 日報・作業記録の自動化、気象・栽培データの可視化、農機・収穫物・出荷計画の一元管理
バーティカル SaaS の特徴
ここでは、バーティカル SaaS の理解をより深めるため、その主な特徴を 1 つずつ見ていきましょう。
業界・業種に特化
バーティカル SaaS は特定の業界・業種に焦点をあて、その業界特有の商習慣や専門的なワークフローに対応している点が最大の特徴です。
ホリゾンタル SaaS では代替できない独自機能が搭載されているため、特殊な業務をともなう現場での即効性が非常に高く、一度導入されれば長期的に活用し続けてもらうことが期待できます。
開発の難易度が高い
業界特有の課題は、その複雑性と高度な専門性ゆえに解決の糸口が見出しにくく、業務効率化の大きな障壁となっています。特定の業界に特化したバーティカル SaaS は、こうした課題の解決策として多くの事業者から期待を集めています。
しかし、専門的な課題に対応できるバーティカル SaaS を開発するには、商習慣や専門用語など業界特有の深い業務知識が必須で、関連法規への準拠も不可欠なことから、開発の難易度が高まる傾向にあります。
老舗企業が開発
バーティカル SaaS は、特定の業界・業種に長年従事していた老舗企業によって開発・提供されることが多く、専門性や独自の商習慣が強い業界のバーティカル SaaS ほど、その傾向が顕著に見られます。
これは、バーティカル SaaS の開発には、業界・業種に特化した深い知見が求められるためです。その点、長年その業界に根差してきた老舗企業であれば、業界特有の課題に対する効果的なアプローチがしやすく、バーティカル SaaS の先駆者として業界全体の DX 化をリードする存在となり得ます。
日本でバーティカル SaaS 事業が注目され始めている理由
近年の日本において、バーティカル SaaS 事業が注目され始めている理由は、以下の通り 3 つあります。
日本は海外と比べると、バーティカル SaaS の普及が遅れていました。しかし、今日では海外の成功事例からバーティカル SaaS の重要性を認識した多くの日本企業が汎用型のホリゾンタル SaaS から、自社の業界知見を活かした特定の業界・業種向け SaaS の開発に乗り出しています。
市場規模が小さい一方で独占しやすい
特定の業界を対象とするバーティカル SaaS は、あらゆる業界をカバーするホリゾンタル SaaS に比べて市場規模は小さいものの、その分市場を独占しやすくもあります。
これは、バーティカル SaaS の開発には、その業界特有の専門知識が不可欠なため、新規参入のハードルが高く、比較的競合が現れにくいことが背景にあります。したがって、競合の少ないバーティカル SaaS であれば、20% を超える市場シェアを獲得することも期待できます。
参入が難しい一方で競争に巻き込まれにくい
バーティカル SaaS の場合、業界特有の業務知識やシステム構築が求められるため新規参入のハードルが高い一方で、その「業界特化」という性質が後発の競合に対する強力な参入障壁として機能します。そのため、ホリゾンタル SaaS のように競合他社との激しいシェア争いに巻き込まれるリスクが低く、安定した事業運営が可能です。
ただし、農業や不動産など IT 化が遅れている業界に向けたバーティカル SaaS は、早急な課題解決へのニーズが高まっているため、今後はこれらの業界における需要の拡大にともない新規参入が増加し、企業間の競争が激化していくと予想されます。
顧客ロイヤルティーの向上
「市場を独占しやすい」、「競合が増えにくい」ということは、顧客を取り込みやすいことにもつながります。そのため、提供するサービスが充実しており、専門性の高いバーティカル SaaS ほど、顧客との強固な信頼関係を築きやすく、長期的な顧客の維持 (カスタマーリテンション) が期待できます。
日本でバーティカル SaaS への期待が高まる業界事例
バーティカル SaaS は各業界の固有の課題を解決するため、汎用的なシステムという枠組みを超え、業界特有のインフラとして重要な役割を果たしています。
先ほども解説したように、近年は海外だけでなく日本でも、建設や介護などさまざまな業界において、バーティカル SaaS への関心が高まっています。各業界・業種で異なるワークフローの効率化を図るには、業界が抱える特有の課題解決に特化した機能を備えていることこそが、バーティカル SaaS の最大の強みです。
このように、対象とする業界ごとに異なる機能を持つバーティカル SaaS ですが、その中でも日本国内で期待が急速に高まっている保育・教育業界の事例を 2 つ紹介します。
BABY JOB
保育業界においては現在、施設運営に関わるあらゆる業務プロセスの効率化が急務となっており、その解決策としてバーティカル SaaS の導入が進んでいます。
たとえば、BABY JOB 株式会社では、バーティカル SaaS によって DX 化に向けたさまざまな取り組みを実施しています。主なサービスには、保育施設に紙おむつが直接届けられるサブスクサービスの「手ぶら登園」や、保育施設での現金のやり取りが不要なキャッシュレス決済サービスの「誰でも決済」などが挙げられ、これにより保護者・保育士双方の負担軽減を実現しています。
特に保育業界の場合、一時保育や延長保育、備品代、遠足費用など、少額の現金を取り扱うことが多く、現金を銀行へ預け入れる際の手数料負担や、園内での保管における防犯上のリスクが懸念されていました。
同サービスではこうした保育施設側の課題を解決すべく、クレジットカード決済や QR コード決済など複数の決済手段に対応しているため、金額にかかわらずスムーズな集金が可能なうえ、決済履歴の確認も簡単に行えます。
CoDMON
株式会社コドモンが提供する「CoDMON(コドモン)」は、日本で最も普及している保育・教育業界向けのバーティカル SaaS の 1 つで、保育士や教員の業務効率化と、保育・教育の質の向上をサポートしています。
CoDMON には、連絡帳や健康記録などの書類・記録の一元管理機能や、請求・集金業務を自動化する機能など、20 種類以上の機能が 1 つのシステムに集約されています。
また、同サービスでも複数のキャッシュレス決済が導入されており、保育料や給食費などの自動計算や請求書のペーパーレス化にも対応しています。これにより、現場における業務負担を大幅に軽減し、保育や教育といった本来の仕事に専念できる快適な環境づくりに貢献しています。
Stripe Connect でできること
Stripe Connect は、ソフトウェアプラットフォームやマーケットプレイスにおける複数者間での資金移動を可能にするツールです。スムーズなアカウント登録、組み込みコンポーネント、グローバル決済などの機能を備えています。
Connect の特徴
数週間でローンチ: Stripe 上の機能、または組み込み機能を活用して本番環境にスピーディーに移行できます。ペイメントファシリテーションに必要な初期費用や開発時間を軽減できます。
大量の決済取引を管理: Stripe のツールやサービスを利用することで、専任の人材がいなくても、マージンレポート、納税申告書、リスク管理、世界各国の決済手段、アカウント登録の法規制などに対応できます。
グローバルに成長: 地域固有の決済手段や、売上税、VAT、GST を簡単に計算する機能を活用することで、ユーザーが世界中のより多くの顧客にリーチできるよう支援します。
新しい収益源を構築: 各取引ごとに手数料を徴収して決済収益を最適化します。プラットフォーム上で対面決済、即時入金、消費税徴収、融資、経費用カードなどの機能を有効にして、Stripe ツールを収益化できます。
Stripe Connect について詳しくはこちらをご覧ください。今すぐ開始する場合はこちら。
よくある質問
ここでは、バーティカル SaaS に関するよくある質問を Q&A 形式で紹介します。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。