有限責任会社 (GmbH) は、ドイツで最も選択されている企業の法人形態の 1 つです。GmbH が選ばれている理由の 1 つに、税の優遇措置が適用されることが上げられます。この記事では、GmbH が支払い義務を負う税金、利用可能な税の優遇措置、マネージングディレクターが実行できる税負担の軽減策についてご説明します。また、GmbH のマネージングディレクターが個人の税負担を軽減できる方法も併せてご紹介します。
この記事の内容
- GmbH が支払い義務を負う税金
- GmbH の税制上のメリット
- GmbH のマネージングディレクターが実行できる税負担の軽減策
GmbH が支払い義務を負う税金
有限責任会社は GmbH と呼ばれており、独自の法人格を持ち、税金の支払い義務を負います。つまり、株主に依存せず、企業自身が税金を支払います。GmbH に課される税金の種類は次のとおりです。
- 法人税
- 連帯付加税
- 営業税
- 付加価値税 (VAT)
- キャピタルゲイン税
- 雇用税
- 固定資産税
- 土地譲渡税
法人税と連帯付加税
GmbH は法人であるため、法人税法 (KStG) の規制対象となります。GmbH の利益には 15% の税金がかかります。さらに、GmbH は法人税額の 5.5% の連帯付加税を支払う必要があります。
営業税
法律により、GmbH を含むドイツ企業はすべて、営業税の支払いを義務付けられています。実際に適用される営業税の水準は、企業の利益と管轄自治体が定める営業税率によって異なります。住民が 2 万人を超える 701 の地域を対象としたドイツ商工会議所 (DIHK) の調査によると、2023 年の営業税の全国平均は 435% でした。
VAT
GmbH は自社の商品・サービスに対する VAT を徴収し、税務当局に直接納税することが義務付けられています。VAT の標準税率は 19% ですが、7% の軽減税率が設けられています。実際に支払う金額は企業が自ら計算する必要があります。ただし、売上税法 (UStG) 第 19 条に従い、前年の年間売上高が 2 万 2,000 ユーロ未満で、現行年の年間売上高が 5 万ユーロ未満の企業の場合、小規模事業者規定の適用を受けることができます。小規模事業者規定の適用を受けた GmbH は VAT の支払いが免除されます。
キャピタルゲイン税
GmbH は配当を行うことが可能です。配当には、25% のキャピタルゲイン税と 5.5% の連帯付加税が課されます。配当に対するキャピタルゲイン税を支払うのは配当の受取人ではありません。GmbH が直接源泉徴収したうえで、税務当局に納税します。
雇用税
GmbH が従業員を雇用している場合、従業員の給与に応じた雇用税を毎月支払わなければなりません。また、教会税の支払いが必要になる場合もあります。雇用税の金額は各従業員の給与と個人の状況によって異なります。
固定資産税
GmbH が開発地または未開発地を所有している場合、固定資産税を支払う必要があります。固定資産税は不動産所在地の自治体機関によって課される税金です。固定資産税の計算は以下の 3 段階で行います。
- 管轄税務当局が固定資産税価額 (土地価額) を判定します。GmbH はすべての必要なデータを提出します。具体的には、不動産の場所、地域、地価、不動産または建物の種類などのデータを提出します。
- 次に、固定資産税価額に法定の連邦基本税率をかけます。GmbH の場合は 0.0035 です。計算結果が固定資産税の基本額となります。
- 最後に、固定資産税の基本額に各自治体の評価率をかけます。評価率は一定ではありません。地域以外の要素によっても変化します。評価率は地方議会または市議会の決議によって決定され、予算に計上されます。そのため、毎年増減する可能性があります。
土地譲渡税
GmbH が自己の資産を用いて不動産を購入する場合、1 回限りの土地譲渡税が適用されます。納税額は土地の購入金額によって異なります。土地の購入金額に州ごとの税率をかけて算出されます。税率は 3.5 ~ 6.5% で、一律ではありません。
GmbH の税制上のメリット
有限責任と利益分配の柔軟性だけでなく、税の優遇措置の存在も、法人形態として GmbH が選ばれ続けている理由です。税の優遇措置を受ける方法を把握することで、企業は税負担を軽減できます。
税負担の制限
GmbH には、利益への課税が比較的低いというメリットがあります。GmbH は法人として法人税を支払います。つまり、株主は利益に対して個人所得税を支払う必要がありません。たとえば、個人事業主や共同事業は個人所得税の支払いが必要です。所得が高い場合、最大 45% の税率が適用される可能性があります (所得税法第 32a 条を参照)。
マネージングディレクターの報酬の最適化
税金対策として GmbH のマネージングディレクターの報酬を最適化することが可能です。原則として、給与または利益分配によって報酬を支払うことができます。税務上、マネージングディレクターの給与、賞与、謝礼は GmbH の事業活動費として控除できるため、給与による報酬がおすすめです。また、マネージングディレクターは被雇用者であるため、その報酬分、GmbH の課税利益を減らすことができます。これは、マネージングディレクターに支払われる報酬が法人税と営業税の課税対象外であるためです。これにより、企業全体の税負担を軽減し、GmbH により多くの利益を残すことができます。
持株会社を通じた利益分配
マネージングディレクターへの利益分配を行う場合、たとえば 25% のキャピタルゲイン税と 5.5% の連帯付加税が適用されます。ただし、持株会社体制をとることで税負担の軽減が可能になります。持株会社とは、子会社の株式を所有する親会社を指します。最も単純な形態は、2 社の GmbH で構成される体制または 1 社の UG (有限責任事業会社) と GmbH で構成される体制です。持株会社では、子会社である GmbH から他の法人に利益を分配できます。その場合の税率はわずか 1.5% です。これにより、個人への利益分配に課されるキャピタルゲイン税の適用を回避できます。そのため、持株 GmbH を特殊な資産管理 GmbH と捉えることができます。
不動産 GmbH の賃貸収入の節税
税負担の軽減を可能にする特殊な資産管理 GmbH として、ほかにも、不動産 GmbH があります。GmbH の株主から見て、個人の資産ではなく、企業の資産を通じて不動産を購入することは道理にかなっています。私有財産の賃貸やリースを行った場合、賃貸収入に対して最大 45% の税金が課されます。しかし、不動産 GmbH を通じて賃貸を行った場合に課される税金は、15% の法人税だけです。営業税の支払いは不要です。
ただし、営業税の義務が免除されるのは、不動産 GmbH が自己の不動産の賃貸のみを行っている場合に限られます。商取引は許可されていません。企業が 5 年間に 3 つ以上の不動産を購入し、それを売却した場合、商取引に該当するとみなされます。また、企業の所有資産ではない不動産を賃貸した場合も商取引とみなされます。
GmbH のマネージングディレクターが実行できる税負担の軽減策
GmbH のマネージングディレクターが個人の税負担を軽減したい場合、実行できる軽減策がいくつかあります。
企業の給与体系を最適化し、税の優遇が適用される給与構成を採用できます。たとえば、マネージングディレクターは、すべての従業員と同様に、年間 1 万ユーロの現物給付を受けることができます。現物給付には一律 30% の税率が適用されます。現物給付とは基本報酬に加えて提供されるものであり、現金給付ではないことに注意する必要があります (所得税法第 37b 条を参照)。
年金制度を設けている GmbH の場合、マネージングディレクターは給与総額の一部をその企業年金に拠出できます。これにより、拠出期間中は税金と社会保険料を減額できます。企業年金が課税対象となるのは支給時のみです。
また、マネージングディレクターは課税対象の所得を減らすため、一定の必要経費を申告できます。たとえば、職務遂行上必要とされる業務用品、研修、出張の費用を必要経費として申告できます。
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