ドイツの有限責任会社の税負担

  1. はじめに
  2. GmbH が支払う必要がある税金
    1. 獲得利益に対する法人税
    2. 事業収入に対する営業税
    3. 商品・サービスに対する VAT
    4. 労働者の給与に対する所得税
    5. 利益分配に対するキャピタルゲイン税
    6. 土地・不動産に対する土地譲渡税
    7. 不動産の所有に対する固定資産税
  3. GmbH の税金の計算方法
    1. GmbH の税額計算例
    2. 取締役の給与に対する課税
  4. 利益分配時の税金に関する重要な考慮事項
    1. 税金の観点から考えた場合の、利益分配を差し控えることの妥当性
  5. GmbH の税制上のメリット
    1. 部分的免除の計算例
  6. GmbH の税負担の軽減策

有限責任会社 (略称: GmbH) は、税の優遇措置が適用されるため、ドイツの起業家から人気のある企業形態です。この記事では、GmbH が一般に支払い義務を負う税金、各税金の計算方法、検討すべき税の優遇措置についてご説明します。

この記事の内容

  • GmbH が支払う必要がある税金
  • GmbH の税金の計算方法
  • 利益分配時の税金に関する重要な考慮事項
  • GmbH の税制上のメリット
  • GmbH の税負担の軽減策

GmbH が支払う必要がある税金

ドイツでは通常、GmbH への課税は、その企業 が獲得した利益に基づいて計算されます。GmbH は法人として、法人税の課税対象です。また、営利事業者として、営業税の課税対象でもあります。GmbH の課税水準は通常、個人事業主よりも低くなります。個人事業主の場合、パートナーシップとして所得税がかかるほか、事業者として営業税がかかります。法人税と営業税に加えて、GmbH のマネージングディレクターに他の種類の税金が課税されることもあります。これは各企業の状況によって異なります。この概要については後述します。

獲得利益に対する法人税

法人税法 (KStG) の規定に基づき、GmbH は法人として、獲得した利益に応じて法人税 (KSt) を支払う義務を負います。ドイツの現在の法人税率は 15% です。

事業収入に対する営業税

法人税と異なり、営業税の規制は一律ではありません。営業税は、GmbH の事業収入に課される地方税です。実際の税率は、企業の登記地の自治体が定めている営業税率によって異なります。営業税は営業税法 (GewStG) によって規制されています。

商品・サービスに対する VAT

通常、GmbH は自社の商品・サービスにかかる VAT 徴収し、税務当局に納税することが義務付けられています。そのため、VAT は GmbH の税負担とはなりません。VAT の法的根拠は VAT 法 (UStG) に規定されています。

労働者の給与に対する所得税

労働者を雇用している GmbH の場合、所得税を税務当局に納税する義務を負います。所得税は従業員の給与から直接源泉徴収されます。所得税の法的根拠は所得税法 (EStG) に規定されています。

利益分配に対するキャピタルゲイン税

GmbH が株主に利益を分配する場合、分配される金額に対して課税されます。所得税法第 44 条の規定に従い、キャピタルゲイン税 (KESt) は GmbH によって源泉徴収され、税務当局に納税されます。

土地・不動産に対する土地譲渡税

GmbH が購入または譲渡によって土地または不動産 (例: オフィス) を取得した場合、土地譲渡税が課税されることがあります。ドイツの土地譲渡税は州ごとに税率が異なります。不動産譲渡税法 (GrEStG) に規定されるように、土地譲渡税の税率は購入価格または価値の 3.5 ~ 6.5% です。

不動産の所有に対する固定資産税

GmbH が不動産を所有している場合、自治体によって固定資産税 (年税) が課税されます。固定資産税の税率は自治体が設定します。適用される税率は、自治体が定める税率だけでなく、不動産の場所、規模、価格によっても異なります。固定資産税を決定する規定は固定資産税法 (GrStG) に記載されています。

GmbH の所得税の支払い義務の有無

GmbH には 15% の法人税が適用されます。利益 (「所得」) に対して所得税を支払う必要はありません。この点は個人事業主と異なります。たとえば、個人事業主の場合、最大 42% の所得税率が適用されます (所得が 6 万 2,810 ユーロを超える場合)。2024 年時点では、所得が 27 万 7,826 ユーロを超える場合、実効税率が最大で 45% に達する可能性もあります。これは「富裕税」として知られています。

GmbH が企業として所得税を支払うことはありませんが、マネージングディレクターが GmbH の従業員として自身の給与を受け取っていることを考慮する必要があります。マネージングディレクターは所得税法に従って、給与に対する所得税を支払う必要があります。

GmbH の税金の計算方法

GmbH の税負担額を計算する際に、基本的に重要となる税金が 2 種類あり、そのうちの 1 つが法人税です。現在の法人税の税率は総獲得利益の 15% です。もう 1 つが営業税で、税率は平均 14 ~ 17% です。営業税の場合、GmbH の場所によって負担額が異なります。これは、市または自治体によって営業税の税率が異なるためです。営業税は GmbH の事業所得 (利益) に対して課税されます。全体では、法人税と営業税を合わせると GmbH の利益の約 30% になります。

これら 2 つの税金にキャピタルゲイン税を含めて試算する場合、現在の税率 25% を考慮に入れる必要があります。計算例では他の税金の正確な金額を指定することはできません。所得税、土地譲渡税、固定資産税が各 GmbH の状況によって異なるためです。

GmbH の税額計算例

10 万ユーロの利益を得た場合の税負担額:

  • 15% の法人税: 1 万 5,000 ユーロ
  • 14% の営業税: 1 万 4,000 ユーロ (営業税率 400%、基本税率 3.5%)

またオプションとして、1 万ユーロの利益分配に対して 25% のキャピタルゲイン税がかかるとします。その場合、2,500 ユーロの税負担額が加算されます。

この例では、GmbH の税負担額はキャピタルゲイン税を含めて 3 万 1,500 ユーロとなります。

VAT はここでは考慮しません。これは、GmbH の税負担額を計算する際は、最終的に利益に対する課税が決定要因となるためです。連帯付加税は税金の一種ではなく、追加課徴金であるため、これも除外しています。通常は法人税の 5.5% に設定されています。

取締役の給与に対する課税

個人事業主とは異なり、マネージングディレクターが自身が所有する GmbH に雇用されている場合、経営陣の給与コストは利益から差し引かれます。マネージングディレクターは自身の給与を事業活動費として申告できます。これにより、個人事業主よりも支払う税金を減らすことができます。

利益分配時の税金に関する重要な考慮事項

GmbH の株主に利益を分配する場合は、以下の 2 種類の課税方法から選択できます。

  • 分割課税方式 (TEV): 分配額の 60% に対し、適用される所得税と同じ税率で課税されます。残りの 40% は課税対象外となります。

または

  • 源泉課税: 源泉課税により、分配額に対し、固定税率で課税されます。これは 25% のキャピタルゲイン税の一形態です (GmbH が教会税の課税対象となる場合、キャピタルゲインに対し、地域に応じて 8% または 9% の教会税が加わります)。

利益分配を行うと、株主が所得税またはキャピタルゲイン税の支払い義務を負うことになります。

税金の観点から考えた場合の、利益分配を差し控えることの妥当性

利益が GmbH の法人資産としてそのまま残る場合、約 30% の課税が 1 度行われるだけです (正確な税率は市または自治体の営業税率によって異なります)。一方で、利益を分配した場合、分配額に対する 25% のキャピタルゲイン税が追加課税されます。利益を企業の資産として残すことで、その金額を投資や企業資産の増加に充てることができます。これにより、GmbH 全体の価値を高めることになります。さらに、企業の流動性も向上します。したがって、税金面から考えると、利益を GmbH に残し、可能な限り分配を差し控えることが妥当であるといえます。

この件に関しては、税務上の助言を求めて、あらゆる面を考慮するようにしてください。それにより、最も節税効果の高い戦略を立てることができます。

GmbH の税制上のメリット

多くの場合、GmbH への課税は個人事業主への課税よりも有利となります。そのほとんどは課税の種類によるものです。ただし、個人事業主に適用される税の優遇措置もあります。個人事業主の場合、営業経費と減価償却費を税金から控除し、課税対象の利益を減らすことができます。新しいシステムやイノベーションなど、事業への投資によって税制上の減価償却が可能になるため、課税対象の利益を減らすことができます。

一方、GmbH の場合は、株式、ベンチャーキャピタル (VC) ファンド、不動産、先物への投資で税の優遇が得られます。ただし、これは部分免除が可能な場合に限られます。たとえば、ドイツ法人からの配当所得には 5% の部分免除が適用されます。このため、配当所得の 95% だけが課税対象とみなされます。この規制は、分配される利益には分配側の企業にすでに課税されているため、利益に対する二重課税を防ぐことを目的としています。

部分免除が適用されない場合、GmbH が獲得した利益すべてに課税されます。ただし、部分免除によって法人税が減額されるため、税制上大幅に有利になります。

部分的免除の計算例

GmbH が他の法人から 10 万ユーロの配当支払いを受けた場合、その獲得利益に対する法人税は下記のように計算されます。

  • 配当支払い: 10 万ユーロ
  • 部分免除後の課税対象の割合: 10 万ユーロの 95% = 9 万 5,000 ユーロ
  • 法人税率: 9 万 5,000 ユーロの 15% = 14,250 ユーロ

この例では、GmbH が配当所得に対して支払うべき法人税の金額は 1 万 5,000 ユーロ (部分免除がない場合の 100%) ではなく、1 万 4,250 ユーロとなります。

GmbH の税負担の軽減策

上記の税制上のメリット以外にも GmbH の税負担を軽減し、納税額を減らすための方法があります。

  • マネージングディレクターの報酬の最適化: 固定給と変動報酬 (賞与、非金銭的給付など) のバランスを調整することで、GmbH の税負担を最適化できます。
  • 損失の繰り戻しの請求: 過年度の損失を現行年の利益と相殺することで、GmbH の税負担を軽減できます。それとは逆に、現行の会計年度に損失が発生した場合、損失を繰り戻して過年度の利益と相殺し、過去に支払った税金の還付を請求できます。
  • 投資控除の利用: 投資控除を利用すると、計画中の投資の想定される取得または生産コストの最大 40% を控除できるため、利益を減らすことができます。これにより、控除を利用した年の税負担が軽減されます。計画した投資を 3 年以内に実行しなければなりません。

GmbH が税負担を軽減するための適切な戦略を立てる際は、税務コンサルティング企業の支援を得てください。GmbH の構造や規模によって、考慮すべき税務情報が多数存在します。GmbH の個別の状況に応じて利用できる税の優遇を最大限に活用するには、専門家に税務上の助言を求める必要があります。また、税務上の助言を得ることで、必要なすべての法的要件を確実に満たし、GmbH の税務業務に関して、さまざまな法的規制を確実に考慮することができます。

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