今日、イギリスの成人の 10 人に 9 人は口座振替を少なくとも 1 件以上契約しています。口座振替は、会社と顧客の支払いプロセスを簡素化できる最も簡単な方法のひとつです。口座振替を利用すると、手動でのフォローアップや支払い遅延に対する手間をかけずに、事前設定したスケジュールで顧客の銀行口座から継続支払いを自動で回収することができます。メンバーシップやサブスクリプション、もしくは定期的に請求書が発行されるビジネスを運営している場合、口座振替を利用すれば確実かつスケジュールどおりに資金が流入するため、個々の支払いの追跡・処理に費やされる時間も節減されることになります。
本ガイドでは、Stripe アカウントで口座振替を有効化する方法から、通知の自動化、支払い失敗の処理方法に至るまで、顧客に口座振替を設定するための必要な手順を解説します。
本記事の内容
- イギリスで口座振替を設定するための手順
- 口座振替の要件
- 顧客から収集する情報
- 口座振替の設定と支払いを自動化する方法
イギリスで口座振替を設定するための手順
イギリスで口座振替を設定するためのプロセスは比較的簡単であり、Stripe のようなプロバイダーを利用することはもちろん、自らプロセスを処理するのでも問題ありません。口座振替を設定する手順は次のとおりです。
口座振替の処理方法を決定する
まず、口座振替を内部で処理するか、サードパーティープロバイダー経由で処理するかを決めます。プロバイダーの利用は、ほとんどの企業にとって最も作業負担の少ない選択肢になります。プロバイダーは、法令遵守や決済処理、Bacs 決済システムへのリクエスト送信など、会社の代わりに面倒な作業を引き受けてくれます。Stripe の場合、口座振替以外の決済手段も一緒に利用することが可能で、それらを容易に会社のウェブサイトやアプリに実装できます。ただし、大企業に該当するような会社は、Bacs の公認組織になり決済を自社で直接処理する方が賢明かもしれません。そのためには、銀行を通じて申請した上で必要なソフトウェアを購入し、内部でコンプライアンスを徹底する必要があります。
サービスユーザー番号 (SUN) を取得する
サービスユーザー番号 (SUN) は、口座振替システムで会社を識別するために使用されます。Stripe などのプロバイダーを利用する場合、口座振替のリクエストにはプロバイダーの SUN が使用されるため、そのまま次の手順に進むことができます。プロバイダーを利用しない場合は、銀行を通じて SUN を申請する必要があります。会社が財務的に安定した状態にあり、かつ支払いを管理するための適切なプロセスが整備されていることを示せるよう準備しておきましょう。
委任プロセスを設定する
顧客によって署名されるこの委任は、口座振替指示 (DDI) とも呼ばれ、顧客の口座から支払いを受け取れるようにするための契約書として機能します。Stripe などのプラットフォームは、ルール準拠のデジタルフォームを提供することでこの手順の作業を簡略化しています。このフォームは顧客がオンラインで入力した後、プロバイダーのシステムで安全に保管されます。プロセスを自ら処理する場合は、ルール準拠の委任状をデジタルか紙ベースのいずれかで作成する必要があります (デジタルの委任状は処理がスピーディーで追跡もしやすく、顧客にとって便利なオプションです)。また委任状には、口座振替保証に基づいて顧客の権利を表明するステートメントを記載しなければなりません。
顧客情報を収集する
委任の準備ができたら、次は顧客情報の収集に取り掛かります。収集する顧客情報には以下のものが含まれます。
氏名および連絡先
銀行口座番号およびソートコード
支払いのスケジュールおよび金額の確認書 (途中で変更される場合は変更後の内容も記載)
支払い開始前に顧客に通知する
企業は、最初の支払いを受ける前に顧客に通知する義務があります。これは事前告知と呼ばれ、通知には以下の内容を含めなければなりません。
最初の支払いの金額および日付
今後の支払いについての詳細
問い合わせ先
Stripe をはじめ、多くのプラットフォームはこの通知の作成を自動で処理していますが、会社で直接処理する場合は、最初の支払いの前にこの通知を手ずから送信しなければなりません。
支払いの回収を開始する
委任を設定し、顧客への通知を終えたら、支払いの受け付け準備は完了です。Stripe を利用している場合は、ダッシュボードから支払いを管理できます。口座振替を自社で管理する場合は、Bacs に都度、支払いリクエストを送信してください (通常は回収日の 3 日前)。
支払いを監視して問題に対処する
すべての支払いが順調に完了するわけではありません。一部のケースでは、顧客の残高が不足していたり、銀行を通じて委任をキャンセルしていたりすることがあります。これらの問題に備え、失敗した支払いを再試行するプロセスを設定し (Stripe はこれを自動で設定します)、支払いに関する問題は顧客に通知するようにします。Stripe のレポートツールを使用すると、取引で何が起こっているかを簡単に確認できるため、問題の迅速な解決が可能です。
コンプライアンスの維持
プロバイダーを利用する場合であっても、口座振替を直接管理する場合であっても、会社は口座振替保証の規則に従う義務があります。その具体的な内容は以下のとおりです。
支払いの金額やスケジュールの変更に関する通知を送信すること
返金リクエストに迅速に対応すること
顧客がいつでも口座振替をキャンセルできるようにすること
Stripe やその他のプロバイダーは、これらの義務の多くを代わりに処理することで会社のコンプライアンス業務を簡素化していますが、それでも会社は、常に情報を入手し、自らの責任を果たす義務があります。
レビューと改善
口座振替システムが無事立ち上がったら、その稼働内容を評価します。顧客は支払いの設定を手軽に感じていますか?失敗した支払いは迅速に解決されていますか?Stripe などのプラットフォームには、支払いパフォーマンスに関するインサイトをもたらし、会社の成長に合わせてプロセスを改善する分析ツールが用意されています。
口座振替の要件
イギリスで口座振替を設定・管理する場合、会社と顧客を保護するためのルールがいくつか適用されます。以下のルールについて押さえておきましょう。
口座振替保証
これは、顧客にとってのセーフティネットです。この保証の下、顧客には次の権利が与えられます。
支払いが誤って行われた場合、全額の返金を受ける
金額、期日、回数の変更について事前に通知を受ける
銀行を通じて、または会社に連絡していつでも口座振替をキャンセルできる
企業には、この保証内容に従う義務があります。また、委任状など、顧客に署名を求める場合はいつでも保証を明示しなければなりません。その目的は、間違いが起こったとしても資金は保全されることを顧客に伝え、安心させることにあります。
口座振替の委任
ここでいう委任とは、会社が顧客の口座から資金を回収するために必要な、顧客の書面による許可を指します。委任は次のルールに従う必要があります。
顧客から見て誰が支払いを受け取っているかがわかるよう、会社名を表示する
口座振替保証の照会先を説明する
顧客がデジタルまたは紙の委任状に署名する
有効な委任がない場合、会社は支払いを受ける法的根拠を持ちえません。Stripe などのプロバイダーを利用している場合は、このプロセスのほとんどが代理で処理されます。
事前告知
会社は、最初の支払いを受ける前に、または金額の増額や支払い日の変更などの変更を行う前に、その旨を顧客に通知する義務があります。この通知は、以下の情報を踏まえた上でわかりやすく作成する必要があります。
会社名
請求金額
支払いの回収日
サービスユーザー番号 (SUN)
口座振替を回収するには、SUN と呼ばれる一意の識別子が必要です。Stripe などのプロバイダーを利用している場合は、プロバイダーの SUN が使用されるため、この手順で心配すべき点はありません。ただし、プロセスを自分で処理する場合は、銀行を通じて SUN を申請する必要があります。SUN の取得にあたっては、会社が財務的に安定している状態にあり、かつ責任を持って支払いを処理するための適切なプロセスが整備されていることを証明しなければなりません。
セキュリティ・法令遵守
口座振替は、イギリスの口座振替決済システムである Bacs を通じて処理されます。口座振替を自社で処理する場合は、次のことを行う必要があります。
支払いリクエストを期限内に正しく送信する
顧客の銀行口座情報を安全に保護する
データの保管方法と使用方法に関する厳格なルールに従う
プロバイダーを利用する場合、技術的な側面はプロバイダーが担当しますが、顧客データが安全に処理されるようにする責任は会社が負います。即ち会社は、データの暗号化、機密情報へのアクセス制限、GDPR 規則への準拠を徹底しなければなりません。
顧客から収集する情報
支払いを正しく回収し、Bacs の要求する要件を確実に満たせるようにするには、口座振替の設定時に顧客から特定の情報を聞き出しておく準備が必要です。口座振替の委任に必要な情報として以下のものが含まれます。
銀行口座を保有している口座名義人の氏名
メールアドレスや電話番号などの連絡先情報
銀行口座番号およびソートコード
これらの顧客情報を口座振替の委任に含めてください。顧客が電子的または物理的に署名することで委任は確定します。
複数の顧客を管理している場合は、各顧客の口座振替に一意の照会番号を割り当てると、取引が整理しやすくなります。
口座振替の設定と支払いを自動化する方法
Stripe を通じて口座振替による支払いを設定・自動化できます。これは時間を節約するだけでなく、エラーを最小限に抑え、顧客体験を向上させるアプローチとなります。この項目では、Stripe を利用した口座振替の設定方法についてご紹介します。
口座振替の有効化
まず初めに、Stripe アカウントで口座振替を有効にします。Stripe は、イギリスの Bacs ダイレクトデビットをはじめ、地域に応じてさまざまな決済システムをサポートしています。Stripe ダッシュボードにログインし、支払い設定に移動して Bacs ダイレクトデビットを有効にします。口座振替が有効化されると、Stripe が技術的な設定を引き継ぎ、Bacs 要件への準拠を保証します。
委任の収集
口座振替には委任 (顧客による口座振替の承認) が必要です。Stripe では、Stripe Checkout または埋め込み決済フォームを使用して、銀行情報 (口座番号、ソートコードなど) を収集できます。Stripe は、Bacs 準拠のデジタル委任状を自動的に生成・保管しています。
継続支払いの自動化
継続支払いを自動化するには、Stripe ダッシュボードで継続サービス (月額メンバーシップなど) のサブスクリプションを作成する必要があります。顧客をサブスクリプションに関連付け、支払いの詳細 (金額、回数、開始日など) を定義します。必要に応じて、変動請求額を設定することもできます。これらの詳細を設定すると、Stripe はスケジュールに従って自動的に支払いを処理します。
顧客への通知
顧客に情報を提供し続けることは、口座振替の一要件であり、またベストプラクティスでもあります。Stripe は、支払いの確認メールとリマインダーを自動で送信し、金額やスケジュールの変更について顧客に通知することでこれをサポートします。通知のメッセージには Stripe のメールテンプレートを使用するか、または Mailchimp などのプラットフォームと連携して内容をさらにカスタマイズすることもできます。
支払いの失敗の処理
顧客の口座残高が不足していたりすると、支払いが失敗することがあります。支払いが失敗した場合、Stripe は設定されたスケジュールに基づいて失敗した支払いの処理を再試行し、失敗した支払いについて顧客とチームに通知します。また、Stripe の API を使用して、支払いの問題が解決されるまでサービスを一時停止するなど、特定のアクションを設定することもできます。
他のソフトウェアとの連携
自動決済を最大限に活用するには、Stripe を他のソフトウェアと組み合わせて利用することをお勧めします。たとえば、Stripe を QuickBooks や Xero などの会計ソフトと連携させ自動照合を有効にしたり、HubSpot や Salesforce などの顧客関係管理 (CRM) システムを通じてサブスクリプションと支払いを追跡したり、Zapier でカスタムワークフロー (支払いが成功したときに CRM で顧客をタグ付けするなど) を構築したりすることが可能です。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。