GmbH において責任が有限であることは、この種の形態の重要な利点の一つです。ただし、株主と取締役は法的義務を遵守する必要があります。
この記事では、GmbH における有限責任の仕組みと、どのような場合に株主と取締役が個人として責任を負うのかについて説明します。さらに、出資者が個人としての責任から身を守る方法についても解説します。
この記事の内容
- GmbH とは何か
- GmbH では誰が責任を負うのか
- GmbH の株主が責任を負う場合
- GmbH の取締役が責任を負う場合
- 社員が GmbH の責任から身を守る方法
GmbH とは何か
有限会社 (GmbH) はドイツの法人形態です。一人創業者として、または他の創業者と共同で設立することができます。通常は 2 名以上の者が共通の事業利益を追求するために GmbH を設立します。共同出資者は自然人または法人です。GmbH を設立するためには (ドイツ有限会社法 [GmbHG] 第 5 条第 1 項を参照) 、2 万 5,000 ユーロの最低資本金が必要です。この半額を直ちに預け入れ、残額を 5 年以内に払い込まなければなりません。
すべての GmbH は、組合契約 (定款) に準拠します。定款は、株主の権利および義務、法人の目的、ならびに事業体の組織などについて規定します (GmbHG 第 2 条および第 3 条。一般に、GmbH の業務は、1 名または複数名の取締役が執行します。取締役は必ずしも共同出資者である必要はありません (GmbHHG 第 6 条を参照)。
GmbH は法人税、営業税および連帯付加税の課税対象であるため、税務上、独立した事業体と見なされます。GmbH の法的根拠を定めるのは GmbHG です。多数の利点があるため、この構造はドイツで大変人気があります。
GmbH では誰が責任を負うのか
GmbH の際立った利点は、その名称の由来である有限責任です。株主の責任は、各人の出資額 (初期投資額) に限定されます。GmbHG 第 13 条第 2 項 に基づき、株主の資産は事業体の資産と分離され、株主は個人資産による賠償責任を負いません。
GmbH は法人として、株主および取締役から独立して債務を負います。したがって、債務の返済に充てられるのは事業体の資産のみです。この資産額は商業登記簿に記録され、有限責任の根拠となります。
一般に、GmbH が負う債務の引当てには、株式資本だけでなく事業資産全体が含まれます。たとえば、ある GmbH の総資産が 10 万ユーロである場合、払込資本に関係なく、この金額の全てを引当てとして責任を負います。
GmbH の株主が責任を負う場合
株主は GmbH の債務を負わないという原則には例外があります。共同出資者の個人資産が引当てとされるケースをいくつか紹介します。
商業登記前の債務
GmbH は商業登記簿に登録されるまで、法的に特殊な暫定的段階にあります。設立中ドイツ有限会社 (GmbH in formation、GmbH i.G.) の場合は、すでに部分的に能力を有しており、法人として活動することができます。とはいえ、会社資産に対する有限責任は、商業登記簿に登録されて初めて完全な効力を発揮します。それまでは、株主が設立中 GmbH の債務に対して個人として共同で責任を負います (GmbH 第 11 条を参照)。
GmbH の最低資本金への違反
株主が GmbHG 第 5 条第 1 項の最低資本金要件に違反した場合、株主は個人として責任を負う可能性があります。これは、保有資産を隠蔽した場合や、持ち分について虚偽の申告を行った場合に適用されます。たとえば、現物出資を過大に見積もった場合などが挙げられます。
保証および個人の借入
株主が自発的に保証を引き受けたり、GmbH の債務に個人で担保を提供したりした場合には、GmbH の責任が株主の個人資産にまで及ぶ可能性があります。ドイツ民法 (BGB) 第 765 条 ff. によれば、保証とは、GmbH が返済不能に陥った場合に保証人がGmbH に対する債権を保証する義務を負うことを意味します。銀行は、GmbH に対して先に執行することなく個人に求めることができる個人保証をしばしば要求します。
私有不動産への担保設定など、上記以外の形での個人保証でも、同じように有限責任による保護はなくなります。
第三者に損害を与える会社形態の悪用
重大な過失または意図的不正行為があった場合、株主の個人資産が差し押さえられる可能性があります。判例法において、これは「法人格否認」と呼ばれています。たとえば、債権者に故意に損害を与えるためにこの会社形態を悪用した場合、GmbH の有限責任による保護は適用されません。
このような事例としては、過少資本 (長期的な事業運営が望めない GmbH の設立) や、禁じられている返還 (GmbHG 第 30 条を参照) によって会社設立後に株式を引き上げ、破産させたり、債権者に損失を与えたりすることが挙げられます。
また、表見的合法性の原則により、株主が GmbH に明確に言及することなく契約に署名した場合や、債権者が勘違いして個人的責任を想定するような表現を株主がした場合にも、株主の個人的責任が問われる可能性があります。
社会保障拠出金の不納付
ドイツ刑法 (StGB) 第 266a 条 のもとでは、社会保障拠出金の不納付は刑事犯罪です。この場合、基本的に責任を負うのは取締役ですが、共同出資者が意思決定に積極的に関与している場合には、共同出資者も責任を負うことがあり、重大なケースでは、罰金または 5 年以下の懲役が科される可能性があります。
破産申請の遅延
重大な義務違反の 1 つに破産申請の遅延があります(破産法[InsO])第 15 条 a 項参照)。取締役は、財務的困難または債務超過の発生から 3 週間以内に破産申請を行わなければなりません。期限が守られなかった場合、株主は個人的に責任を負うことになります。また、株主が事実上の取締役として行動した場合、または申請遅延に大きな影響を与えた場合には、株主も責任を負うことがあります。破産手続きが遅れた場合には、罰金または 3 年以下の懲役が科される可能性があります。
GmbH の取締役が責任を負う場合
例外的なケースではありますが、株主と取締役が GmbH に対して責任を負うことがあります。社会保障拠出金の不納付や破産申請の遅延以外にも、次に挙げる状況下では取締役の責任負担が生じる可能性があります。
設立時の義務の不履行
会社を設立する際には、GmbH の取締役が将来的に負う責任を考慮してください。取締役は、GmbH の商業登記簿に登録する、免許を取得する、税務署に通知する、関係当局に従業員を登録するなど、すべての正式な手続きをきちんと完了しておかなければなりません。個人の責任が除外されるのは、すべての期限が守られた場合のみです。
デューデリジェンス実施義務への違反
取締役は、デューデリジェンス実施義務への違反についても責任を負います。GmbHG 第 43 条第 1 項 およびドイツ商法 (HGB) 第 347 条第 1 項に基づき、取締役は、分別ある事業主が事業体を保護するためのデューデリジェンスを実施する義務を負います。
この義務の核心は適正な会計への責任です。取締役は、年次決算書を作成するにあたって、すべての金融取引を正確に記録し、法的要求事項を遵守しなければなりません。誤りがあれば、税務上の問題が生じたり、法的責任を問われたりするおそれがあります。
また、取締役は、株主総会を適時速やかに招集する義務を負います。さらに、要求があった場合は、事業体の財務と活動状況に関する情報を提出しなければなりません。これらの義務に違反したり、重要な情報を隠蔽したりすると、個人で責任を負うことになる可能性があります。
加えて、取締役が GmbH の目的に反する活動を行うことはできません。福利厚生に過度な費用がかかるような契約を結ぶことは避けなければなりません。さらに、危険な信用取引に参加した場合も、結果的に個人が責任を負う可能性があります。
株式資本の違法な払い戻し
GmbH の取締役が GmbHG 第 43 条第 3 項に反し、株式資本の違法な払い戻しを命じて事業体の資産を減少させた場合は、当該取締役がその責任を個人的に負います。また、資本準備金からの貸付も認められません。株主資本の半分以上が失われた場合、取締役は直ちに株主総会に通知しなければなりません。
外部に対する義務への違反
上記では、社内関係に関する事柄を取り上げましたが、このほか、債権者との対外関係における責任も存在します。これは、次のような状況で起きることがあります。
- 取締役が GmbH の代表者を務めていることを明確にしていないとき。
- 契約交渉が取締役の性格や個人の知識に影響されたとき。
- 取締役が、広告宣伝に関して競争法の規定や工業所有権保護の規則に違反したとき。
- 取締役が GmbH の年次財務諸表を商業登記簿で開示するのが遅れたとき。
- 取締役が株主の変更を商業登記簿で隠蔽したとき。
- 取締役が欠陥商品を速やかにリコールしなかったとき。
- 取締役が会社資産を横領したとき。
- 取締役が、契約締結の前に、破産が差し迫っていることを株主に隠したとき。
これらの点は、GmbH の有限責任が絶対的ではないことを示します。共同出資者または取締役が法的義務に違反したり、故意に違法行為を行ったりした場合には、個人として責任を問われる可能性があります。
社員が GmbH の責任から身を守る方法
GmbH の株主と取締役は、次の点に注意すれば個人で責任を負うリスクを軽減することができます。
法的要求事項の遵守
共同出資者と取締役は、自分と事業体に関係する法規を包括的に把握しなければなりません。付随する義務に関する知識は、個人の責任を防ぐために大変重要です。これらの義務の対象は、事業体、行為者、債権者、公的機関です。
入念な経理
適正な会計処理は、事業体の財務健全性を維持し、法定基準への適合を保証します。監査や法的紛争の際に証拠を提示できるように、すべての関連文書を整理し、追跡できるようにしておかなければなりません。
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法的な助言
特に法律的または経済的に危険を伴うと思われる決定を下す場合は、税理士や法律顧問に助言を求めることをお勧めします。GmbH の義務と関連する法的枠組みの変更に関して定期的な講習を受けることは、個人が責任を負うリスクを最小化する上で役立ちます。
リスクの早期発見
金銭的な問題や過剰債務のリスクを早期に発見すれば、関係者は速やかに対応することができます。経営難に陥った場合は、破産に関する規則を遵守し、必要に応じて破産申請を行うことが重要です。
D&O 保険への加入
会社役員賠償責任 (D&O) 保険は、義務違反に起因する賠償請求から身を守るための価値ある防御です。一般に、法的紛争の費用と、違法行為に起因する損害賠償請求が補償の対象となります。ただし、故意の義務違反は補償されません。
この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。