配送しきい値:ドイツの事業者が仕向国で納税を要するとき

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  1. はじめに
  2. EU の配送しきい値とは
  3. 配送しきい値の設定金額
  4. 仕向国原則と原産国原則
    1. 仕向国原則
    2. 原産国原則
  5. 配送しきい値が適用されないケース
    1. 物品税の課税対象商品
    2. 新車
    3. 取得しきい値
    4. 取得しきい値の放棄
  6. BZSt が OSS で配送しきい値を超える売上に課税する仕組み
  7. 配送しきい値を超えた場合の手続き

欧州連合 (EU) 域内に所在する個人への商品配送には、事業者への商品配送とは異なるルールが適用されます。例えば、B2C の売り手は、売上が所定の範囲内であれば自国で VAT を納付できます。この売上の上限を「配送しきい値」と呼びます。

この記事では、EU の配送しきい値とは何か、また配送しきい値が適用されるケースと適用されないケースについてもご説明します。さらに、「仕向国原則」と「原産国原則」の違い、連邦中央税務局 (BZSt:Bundeszentralamt für Steuern) がワンストップショップ(OSS) で配送しきい値を超える売上に課税する仕組みについても掘り下げます。

この記事の内容

  • EU の配送しきい値とは
  • 配送しきい値の設定金額
  • 仕向地原則と原産地原則
  • 配送しきい値が適用されないケース
  • BZSt が OSS で配送しきい値を超える売上に課税する仕組み
  • 売上が配送しきい値を超えた場合

EU の配送しきい値とは

配送しきい値は、EU 域内の事業者に適用される売上高の上限です。この金額を上限として、事業者は他の加盟国で VAT を納めることなく、それらの加盟国の個人に商品を供給することができます。配送しきい値が適用されるのは、売り手が他の EU 加盟国の購入者に商品を販売し、かつ次の条件が満たされる場合のみです。

  • 顧客が取得税課税対象外の個人 (または個人に準ずる者) である。
  • その事業者自体が商品を当該国に輸送または出荷する (つまり、集荷配送は行われない)。

その販売が上記の条件を満たし、配送しきい値を超えない限りは、売り手の原産国で VAT が適用されます。売上がしきい値を超える場合、売り手は仕向国 (販売先の国) でVAT の登録を行い、適用される VAT を納付しなければなりません。

配送しきい値の設定金額

2021 年 6 月 30 日まで、ドイツ国内の事業者による域内遠隔販売には、VAT 法第 3 条 c 項 (UStG) に基づき、通信販売に関する規則が適用されていました。それまでは、EU 加盟国ごとに配送しきい値が異なっていたため、売り手は販売先の国に応じて異なるしきい値を適用しなければなりませんでしたが、域内遠隔販売を簡略化するために、UStG を補完する形で新たな遠隔販売規則が実施され、2021 年 7 月以降は、EU 全域で一律の配送しきい値が適用されるようになりました。配送しきい値は、暦年につき売上 1 万ユーロ 税抜き 以内です。

例を示します。ドイツのある事業者が、今年上半期にフランスの個人顧客に 8,000 ユーロ相当の商品を配送しました。売上が配送しきい値を下回っているので、ドイツの税務当局は国内の税率でこの取引に課税することができます。しかし、その後、同じ年の 8 月に、フランス国内の顧客に対して税抜きで 2,500 ユーロ相当の売上があったため、売上総額が配送しきい値の 1 万ユーロを超えました。したがって、税務当局は、しきい値を超えた全商品売上にフランスの VAT を課税しなければなりません。これは、この事業者による翌年のフランス向け商品配送全売上にも適用されます。このシナリオにおける課税の根拠は、「仕向国原則」と「原産国原則」と呼ばれます。

仕向国原則と原産国原則

仕向国原則と原産国原則は、EU 域内で国境を越えた商品・サービスの売上に課税する際に適用される 2 種類の考え方です。

仕向国原則

仕向国原則では、仕向国 (商品の配送先の国) が VAT を課税します。つまり、仕向国の税率と税法が適用されます。ある事業者の売上が、仕向地の EU 加盟国において配送しきい値を超えた場合、その事業者は、税務上その国で登録し、適用される VAT を徴収の上、納付しなければなりません。EU 域内での売上に関しては、第一に公正な課税を徹底させ、事業者が不当な価格優位性を得るために意図的に税率の低い国で販売することを防ぐために仕向国原則が適用されます。

原産国原則

原産国原則では、商品の原産国 (売り手の国) の規則および税率に準じて課税されます。つまり、事業者が商品を配送する先に関係なく、当局が原産国で売上に課税するということです。事業者が仕向国の配送しきい値を超えない限り、所轄の税務当局は原産国原則に従って VAT を算出します。その事業者がしきい値を超えた場合は、仕向国原則が適用されます。

配送しきい値が適用されないケース

配送しきい値が適用されず、代わりに特別な規則が適用される場合があります。配送しきい値が適用されないケースを以下に挙げます。

物品税の課税対象商品

一般に、仕向国は物品税の対象商品に課税しなければなりません。VAT 法第 1 条 a 項第 5 節 によると、これらの商品には鉱油、アルコール、アルコール飲料、タバコ製品が含まれます。これらの商品には配送しきい値は適用されません。また、配送しきい値に関して売上を計算する際にかかる手数料も適用されません。

新車

同じく、VAT 法第 1 条 a 項第 5 節 によると、仕向国原則は新車購入にも適用されます。売上高に関係なく、新車には仕向国が課税しなければなりません。

取得しきい値

個人および個人として取り扱われる人が、ある暦年に国境を越えて受け取ることができる配送は一定額までです。EU 加盟国は、「取得しきい値」と呼ばれるこの制限を個別に設定しています。顧客がこの制限を超えた場合、税務当局はその顧客を税務上、事業者として扱います。したがって、その顧客は自国内で購入した商品に対して税を納付しなければなりません。ドイツにおいてこのような状況が生じた場合、顧客は連邦中央税務局VAT 識別番号 を申請しなければなりません。
ドイツ商工会議所 (IHK) が示す 2021 年 1 月 1 日現在の EU 加盟国の取得しきい値の概要を以下にまとめました。

__ EU 加盟国の取得しきい値__

加盟国
国内通貨での金額
ユーロでの金額
オーストリア €11,000
ベルギー €11,200
ブルガリア BGN20,000 €10,226
クロアチア kn77,000 €10,196
キプロス €10,251.61
チェコ共和国 Kč326,000 €12,423
デンマーク kr80,000 €10,752
エストニア €10,000
フィンランド €10,000
フランス €10,000
ドイツ €12,500
ギリシャ €10,000
ハンガリー €10,000*
アイルランド €41,000
イタリア €10,000
ラトビア €10,000
リトアニア €14,000
ルクセンブルク €10,000
マルタ €10,000
オランダ €10,000
ポーランド zł50,000 €10,966
ポルトガル €10,000
ルーマニア レイ34,000 €7,291
スロバキア共和国 €14,000
スロベニア €10,000
スペイン €10,000
スウェーデン kr90,000 €8,970

*ハンガリーの通貨はフォリント (HUF) ですが、VAT 法に基づき、配送しきい値はユーロ建てにする必要があります。

取得しきい値の放棄

VAT法 (UStG) 第 1 条 a 項第 4 節 に基づき、顧客は取得しきい値の適用を任意で放棄することができます。規則に基づき、供給業者が VAT 識別番号を使用した場合、適用の放棄として取り扱われます。事業者がこの適用放棄を発動した場合、放棄は 2 暦年にわたって有効です。

BZSt が OSS で配送しきい値を超える売上に課税する仕組み

配送しきい値を超える商品を他の EU 加盟国に配送する事業者は、それらの国で VAT に登録し、その国で VAT を納めなければなりません。特に複数の国で販売を行う場合、その事務作業は膨大です。

そこで、連邦中央税務局 (BZSt) は、B2C 遠隔販売業者が EU 域内で行われる域内販売を記録する方法として、ワンストップショップ (OSS) を提供しています。OSS は、事業者が複数の EU 加盟国の納税義務を一元的に管理できるオンラインポータルです。その事業者の売上が配送しきい値を超えた場合は、OSS を使用して、四半期ごとの売上レポートを添え、銀行送金で納付すべき売上税を決済することができます。次に、BZSt が OSS を使用して、各 EU 加盟国に納めるべき売上税を送金します。つまり、OSS を使用する場合、BZSt は配送しきい値を 1 件ずつ検討する必要がありません。

事業者が BZSt に売上税を処理してもらうためには、次の情報を提出しなければなりません。

  • 仕向国
  • 仕向国ごとの正味売上高 (金額表記は各国の通貨建て)
  • 商品に適用される税率
  • 納付すべき VAT の税額
  • VAT 識別番号

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配送しきい値を超えた場合の手続き

配送しきい値を超えた事業者は、OSS を利用して売上にかかる税を納付するか、当該 EU 加盟国で登録し、その国で売上にかかる税を納付して、現地で個別に納税申告書を提出することができます。配送しきい値を超えそうな場合は、これら 2 つの選択肢のいずれかを選択しなければなりません。

うっかり、または故意にしきい値を超え、各 EU 加盟国で未納付の税金に対応しない事業者は刑事犯罪を犯すことになります。さらに、誤った納税申告書の提出や納税申告書の不提出は脱税と見なされるおそれがあります。納税義務について疑問がおありの場合は、適宜、自国または仕向国の税理士にご相談ください。

この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。

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