EU の VAT およびヨーロッパの VAT OSS の概要

このガイドでは、EU 内の顧客に販売するビジネスを対象に、VAT および VAT OSS の基本事項をお届けします。

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  1. はじめに
  2. EU 付加価値税 (VAT) とは
    1. ヨーロッパの VAT 法に準拠することの重要性
    2. VAT はアメリカで導入されている?
  3. ヨーロッパの付加価値税 (EU VAT) に準拠する方法
    1. 1. VAT と VAT OSS に登録する
    2. 2. VAT を計算する
    3. 3. 買い手の所在地の証拠を収集する
    4. 4. VAT 申告書を提出する
  4. Stripe Tax がビジネスを支援

ヨーロッパの顧客に商品やサービスを販売する会社は、ヨーロッパで設立された会社でなくても、付加価値税 (VAT) を徴収する必要があります。ヨーロッパの国々はそれぞれ異なる VAT の規則と税率を設定しているため、それぞれの税法に準拠するのは簡単ではありません。欧州委員会は VAT の徴収と支払いの簡易化に努めてきましたが、それでも VAT 徴収の複雑性が完全に取り除かれたわけではありません。たとえば、EU 内の B2B 販売の場合、両方のビジネスが拠点とする場所によっては、VAT の徴収が不要となることがあります。また、VAT を徴収するあらゆる販売において、企業は顧客の住所を確認するための追加データを政府から求められます。

このガイドでは、EU 内の顧客に販売するビジネスを対象に、VAT および VAT ワンストップショップ (VAT OSS) の基本事項をお届けします。VAT の徴収時期と登録方法、VAT の計算方法と徴収方法、VAT の申告方法、さらに、Stripe Tax を利用した税法への準拠についてもご紹介します。

EU 付加価値税 (VAT) とは

付加価値税 (VAT) とは、EU で販売されるあらゆるデジタル商品および物品またはサービスに適用される消費税です。生産から POS までのサプライチェーン全体で、商品に価値が付加されると、VAT が課されます。

実際に VAT が課される例を紹介します。

ある宝飾品店が、高級品を扱う E コマースの小売業者に €1,000 のネックレスを VAT 率 23% で販売したとします。この小売業者は、ネックレス自体の代金に加え、€230 の VAT を宝飾品店に支払います。次にこの小売業者が、このネックレスに利幅を加えて、€1,500 でオンラインの店舗に出品します。顧客はオンライン決済時に 23% の VAT を加算して支払います。VAT の金額は €345 で、これを小売業者が徴収します。最終的な取引が完了した時点で、小売業者は宝飾店に支払った VAT を取り戻したことになります。政府に納税申告をする際には、小売業者は €115 (€345 から、宝飾店に支払った VAT の €230 を引いた金額) のみを支払います。

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商品に VAT が追加される一連の流れ

ヨーロッパの VAT 法に準拠することの重要性

EU で物品またはデジタル商品を販売するあらゆるビジネス (EU 以外の売り手を含む) は、地域の規制と法律に従って VAT を徴収しなければなりません。登録が遅れた場合や登録しなかった場合には、追徴金が発生するだけでなく、多大な罰金と罰則が課されるおそれがあります。たとえばオーストリアでは、ビジネスが故意に VAT 登録をしなかった場合、納めるべき VAT がなくても、最大 €5,000 の罰金が課されることがあります。

VAT はアメリカで導入されている?

アメリカでは付加価値税は導入されていません。その代わりに、州および地方政府が売上税を徴収する責任を負います。多くのビジネスは、売上税の規則と法律に準拠するための特別なステップを踏む必要があります。アメリカの顧客に販売する際の税金の詳細については、アメリカの売上税とエコノミックネクサスについてのガイドをご覧ください。

ヨーロッパの付加価値税 (EU VAT) に準拠する方法

ヨーロッパの VAT 規則は、売り手の所在地、販売する商品、顧客の拠点、顧客が企業か個人かによって変わります。規制は国によって異なりますが、EU 内で販売する場合、VAT 規則に準拠する手順は常に次のようになります。

1. VAT と VAT OSS に登録する

各国の VAT 登録

EU では、VAT の登録と徴収のしきい値は、企業が拠点を置く国によって異なります。

たとえば、スペインでは登録のしきい値はありません。一方、アイルランドの企業には 2 種類の VAT しきい値があり、商品を販売する地元企業の場合は 85,000 ユーロ、サービスを販売する地元企業の場合は 42,500 ユーロです。このような国内登録のしきい値は、国内の企業にのみ適用されます。ヨーロッパ外に拠点を置く企業や、ヨーロッパ内で越境販売する企業は、初回の販売を行う前に登録が必要です。

ただし、いずれかの EU 加盟国で設立され、別の EU 加盟国の個人に物品やデジタル商品を販売する EU の企業に対しては例外があります。このような企業・消費者間 (B2C) の販売では、顧客の居住国ではなく、企業の所在国の税率で VAT を徴収する必要があります。B2C の売上が 10,000 ユーロを超えると、顧客の居住国の税率で VAT を徴収する必要があります。EU 域外の企業が EU 域内の個人に販売する場合は、このような例外はありません。

VAT に登録すると、VAT 識別番号が割り当てられます。この番号は 4 桁から 15 桁で、2 文字の国コード (ベルギーの場合は BE、キプロスの場合は CY など) で始まり、その後に 2 文字から 13 文字が続きます。企業は、売上請求書に自社の VAT ID 番号を記載します。別の VAT 登録事業者に販売する場合は顧客の VAT ID 番号を収集する必要があります。

ヨーロッパの企業の場合の VAT OSS 登録 (連合スキーム)

複数の EU 加盟国で個人に販売 (B2C 販売など) するヨーロッパの企業は、VAT ワンストップショップ (VAT OSS) 連合スキームに登録できます。このプログラムは、EU 加盟国間での VAT の徴収と納付のプロセスをシンプルにすることを目的として設けられたものです。

VAT OSS に登録すると、商品やサービスをリモートで販売する各 EU 加盟国での登録が不要になります。EU 加盟国に拠点を置いている場合は、自国の VAT OSS ポータルで登録できます。徴収した VAT はすべて自国の税務当局に納付し、税務当局がこの VAT 収入を他の EU 加盟国に分配します。言い換えるならば、EU 全域に対して販売している場合、27 カ国それぞれ登録して申告するのではなく、1 カ国の VAT OSS に登録し、VAT OSS の納税申告書を一度で済ませることができるということです。

ヨーロッパ以外の企業の場合の VAT OSS 登録 (非連合スキーム)

EU 域外を拠点とする企業 (ブレグジット後のイギリスの企業を含む) が EU 域内の個人にデジタル商品を販売する場合は、VAT OSS 非連合スキームに登録できます。このような企業は、ヨーロッパの任意の国の中から、VAT OSS の登録先を選択できます。一般に、EU 域外の企業は、顧客の大半が所在する国で登録するか、最も利用しやすい登録ポータルがある国で登録します。EU 域外の企業が VAT OSS に登録すると、EU で始まる形式の一意の VAT ID 番号が割り当てられます。

輸入ワンストップショップ (IOSS) への登録

EU の企業も EU 域外の企業も、EU の消費者に商品を販売していて、その商品が 150 ユーロを超えない範囲で委託販売輸入されている場合、IOSS に登録できます。IOSS スキームでは、売り手は販売時に購入者の国の VAT を請求することができます。このため、商品が EU に到着したときに国境で VAT が課されることはありません。EU 域外の企業はヨーロッパのどの国でも IOSS に登録できますが、EU の企業は法人を設立した国で登録する必要があります。IOSS の登録は任意です。EU 域外の売り手の場合、IOSS を利用するために仲介業者の任命を求められることがよくあります。

2. VAT を計算する

取引に課される VAT を計算するには、顧客のステータス (企業か個人か)、VAT を徴収する国、正しい VAT 率の 3 点を判断する必要があります。

顧客が企業 (B2B) か個人 (B2C) かを判断する

VAT を計算する前に、顧客が企業か個人かを判断する必要があります。これは、VAT を請求する必要があるかどうかを判断する重要なステップです。

顧客が有効な VAT ID 番号を提示した場合は、企業と見なすことができます。番号の有効性は、VAT 情報交換システム (VIES) ポータルで確認できます。脱税を防ぐために、企業側で VAT ID 番号の有効性を確認する必要があります。

ヨーロッパの企業が別の EU 加盟国の企業に販売している場合、たいていは VAT の請求は不要です。このような企業間 (B2B) 販売では、リバースチャージ方式 (買い手が売り手を通さずに政府に直接 VAT を納付する)、または VAT 率ゼロ (売り手は VAT を納付する必要がない) のいずれかが適用されます。

physical goods & digital services - JA

EU のビジネスが、EU 内で販売される物品とデジタルサービスの正しい VAT 率を判断する方法

VAT を徴収する国を判断する

クロスボーダー取引では、どの国が VAT を徴収すべきかを判断することが重要です。税金を徴収すべき国を判断するルールは非常に複雑で、サービスのタイプ、顧客の概要、商品の発送元の国、商品の発送先の国など、多くの要素によって決まります。

VAT 率を判断する

VAT 率は EU 加盟国ごとに異なります。EU の加盟 27 カ国における標準の最低 VAT 率は 15% です。実際の EU 各国の VAT 率は 17% ~ 27% となっています。スイスは EU に加盟しておらず、標準 VAT 率は 8.1% で近隣の国よりも非常に低くなっています。

Europe map - JA

ヨーロッパ各国で異なる VAT 率

標準の VAT 率は各国で設定されますが、大半の国では、販売される商品やサービスの種類に応じて軽減税率や免税が用意されています。VAT 率は多様であるため、販売する商品を各国の法律に基づいて分類できるようにしておくことが重要です。

デジタル商品の VAT 率

EU 法によると、デジタル商品とは以下の条件を満たすものを指します。

  • 物品ではない。
  • 商品がオンラインで提供される。
  • 商品の提供時に人間の介在が最小限である。
  • テクノロジーがなければ存在し得ない商品。

電子書籍、ゲーム、音楽、ソフトウェア、SaaS、ウェブサイトのホスティングなど多くの商品やサービスがこのカテゴリーに該当します。一般にデジタル商品は標準の VAT 率の対象となりますが、例外が適用されることもあります。たとえば、電子書籍の VAT 率は、オーストリアでは 10%、スペインでは 4% と低く設定されています。

物品の VAT 率

物品の VAT 率は、欧州委員会のウェブサイトで確認できます。取引によっては軽減税率、特別税率、または税率ゼロの対象となります。たとえばアイルランドでは、子供用のオムツや装飾のないロウソクなどの商品は非課税で販売されます。また、クロアチアでは、一部の食品の VAT 率が低く設定されています。

3. 買い手の所在地の証拠を収集する

買い手の所在地によって税率が大きく異なるため、政府から、買い手がデジタル商品を購入した時点で所在していた場所を確認する記録が求められます。通常は、デジタル商品を販売するたびに、顧客の住所を確認する証拠を 2 つ保管する必要があります。

この補足資料によって、企業や個人が間違った税率で請求や支払いをして脱税を犯す可能性が限定されます。顧客の居住地を確認し、正しい税率で請求と支払いが行われるようにするために、次のうち 2 つを収集して保管する必要があります。

  • 銀行の所在地
  • IP アドレス
  • 請求先住所
  • カード発行国

ただし、例外があります。デジタル商品の売上が年間 100,000 ユーロ未満の場合、必要な顧客情報は上記のうち 1 つのみです。これらの記録は、EU 法に従って 10 年間保管してください。

法人顧客に販売する場合は、VAT を請求しない場合でも VAT の請求書を発行する必要があります。販売側の企業は、自社の事業情報、販売価格と適用された VAT 率、買い手の名前と住所、VAT ID 番号などの記録を、当該国の規制当局が定めた期間にわたって保管する必要があります。

4. VAT 申告書を提出する

VAT 申告書の提出は、法令を遵守するために重要な手続きです。納付する VAT や還付を受ける VAT がない場合でも、期限内に申告書を提出する必要があります。顧客に請求した金額 (売上 VAT) とサプライヤーに支払った VAT 額 (仕入れ VAT) という 2 種類の VAT の申告が必要です。また、請求した VAT から支払った VAT を差し引く必要もあります。たとえば、宝石商から購入したネックレスを販売する小売業者の場合、宝石商に支払った 23% のVAT (230 ユーロ) の還付を受けることができます。申告書を提出する際には、最終顧客が支払った VAT (345 ユーロ) と最初に支払った VAT (230 ユーロ) の差額となる 115 ユーロのみを納付します。

申告書の書式と申告頻度は国によって異なります。申告頻度は年間売上高によっても異なります。たとえば、ドイツでは、標準の申告頻度は四半期ごとですが、前年の納税額が 7,500 ユーロを超えた売り手は毎月の申告、前年の納税額が 1,000 ユーロ未満の売り手は年に 1 回の申告が必要です。

OSS 登録を選択した場合は、登録国で四半期ごとに OSS 申告書を提出する必要があります。この申告書に加えて、国内の VAT 申告書を提出する必要があればそれも合わせて提出が必要です。OSS 申告書には、すべての EU 加盟国の顧客に対する OSS 対象の売上額と、それぞれの VAT 額を記載します。VAT OSS の登録国ですべての VAT を納付すると、その国の税務当局が申告者に代わって VAT 収入を他の国に配分します。

正しい金額の VAT を申告しないと、税金の徴収と納付が求められていたすべての国で追徴金と罰則が科せられる可能性があります。たとえば、ポルトガルでは、VAT を正しく申告しなかった場合、最大 3,750 ユーロの罰金が科せられることがあります。ドイツでは、VAT の申告が遅れると、VAT 額の最大 10% の罰金が科せられ、上限は 25,000 ユーロです。

Stripe Tax がビジネスを支援

Stripe Tax を使用すると、税務コンプライアンスの複雑さが軽減されるため、ビジネスの成長という本来の目的に集中できます。Stripe Tax は、ヨーロッパ (EU、イギリス、ノルウェー、スイス)、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの物品とデジタル商品やサービスの両方の売上税、VAT、物品サービス税 (GST) を自動的に計算し、徴収します。Stripe の税務処理自動化ソリューションは、Stripe に組み込まれているため、すぐに使用を開始できます。サードパーティーとの連携やプラグインは不要です。

Stripe Tax は、次の局面でビジネスを支援します。

  • どこで税金を登録して徴収するかを把握: Stripe で扱った取引に基づいて、どこで税金の徴収が必要かを把握します。登録後、ほんの数秒で新しい国や州の税金徴収を開始できます。すでに Stripe をご利用中の方はコードを 1 行追加するだけで、税金の徴収を開始できます。または、ボタンをクリックするだけで、Invoicing などの Stripe のノーコードプロダクトに税金徴収を追加できます。
  • 税金を自動的に徴収: 何をどこで販売するかにかかわらず、Stripe Tax が正しい税額を計算して徴収します。数百種類の商品やサービスに対応しており、最新の税法や税率の改正が常に反映されます。
  • 申告と納付が簡単に: Stripe の信頼できるグローバルパートナーを利用すれば、Stripe の取引データとシームレスに連携するというメリットを活用できます。これにより、税務申告書の管理をパートナーに任せることが可能になり、ユーザーはビジネスの成長に専念できます。

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